top of page

第255回 モーツァルティアン・フェライン例会 2006年12月3日

 
  事務局レター【第130号】/2006年12月

 【編集者】倉島 収/塙 雅夫/山本 廣資/古田 佳子 bxp00423*yahoo.co.jp(スパムメールが増えてきましたのでリンクを外しました。お手数ですが*を@に替えて送信願います)

●12月例会(第255回)のお知らせ 

生涯の友、ドゥーシェク夫人   お話…若松 茂生氏(本会会長)

 日時:2006年12月3日(日)午後2時

 会場:「龍名館」本店会議室(JR「御茶ノ水」聖橋口下車・徒歩3分)

 例会費:¥1500(会員・一般共)

 


今年も、ニューヨークから帰国中の若松会長のお話を聞く時期となりました。今回も楽しみな演題となっています。会長からのメッセージをどうぞ。 

 

 


メイナード・ソロモンは大著「モーツァルト」(石井宏訳)の中で、ベルリン旅行中にモーツァルトがドゥーシェク夫人と不倫を働いていたという議論を展開しています。しかし、講演のタイトルは「生涯の友」としました。ソロモンのいうような「愛人」ではなく「親友」です。いろいろ準備をしている内にそう確信してきました。

ザルツブルクに里帰りしたヨゼファ・ドゥーシェク夫人にモーツァルトが最初に会ったのは、マンハイム・パリ旅行に出る年(1777年)で、出発直前に素晴らしいアリアを彼女に贈っています(K272)。

 当時モーツァルトは21歳で、ヨゼファは2つ年上の23歳。夫のフランツは妻の2倍の歳、つまり46歳。何かいわくありげな奇妙な夫婦。噂好きの女房連中の陰口の対象となりました。実際彼女の結婚はゴシップの対象となるものでした。それはどんなゴシップだったのでしょうか?

プラハのドゥーシェク夫人の別荘《ベルトラムカ》はモーツァルトの隠れ家、憩いの場となりました。《ドン・ジョヴァンニ》の仕上げをし、初演のすぐ後にヨゼファのためにこれまた素晴らしいアリアK528を作曲しています。K272もこのアリアも長大で、何度聴いても感激するような傑作ですが、このアリアと、ゴシップ的雰囲気が漂うヨゼファとの関係と何か関係があるのでしょうか? これらのアリアは、ヨゼファに対する「愛の告白」といえるのでしょうか?

 「愛の告白」と考えてみたい所ですが、どうもこれらのアリアとヨゼファとの私的な関係とを結びつけるのには無理があり、誤りのようでもあると考えています。その根拠はどこにあるのでしょうか?

 前回に続いて皆さんを18世紀の現場にご案内して、例によって見てきたような「うそ」ではなく、ほんとうくさい「お話」を一席伺ってみたいと思います。 

 

 

 今回もまた会長独自の視点による大変興味深いお話が伺えそうですね。皆様のお越しをお待ちしております。例会後の懇親会にもぜひご参加ください。(F)

会場:スカイラークガーデンス・御茶ノ水店(クリスチャンセンター隣り) TEL:03(5282)2226 


 ●今後の例会のご案内

 1月13日(土) 第6回会員参加例会(会場:お茶の水クリスチャンセンター)
2月17日(土) 倉島収氏(本会副会長)
 3月18日(日) 三澤寿喜氏(北海道教育大学教授)
 4月14日(土) 田辺秀樹氏(一橋大学教授)

※会場と開催日(曜日)が変更になる可能性があリますので、ご注意ください。

 

●11月例会の報告(第254回/11月19日)

モーツァルト天才の秘密   お話…中野 雄氏(音楽プロデューサー)

1.モーツァルト論 執筆の動機
 天才の能力を分解して考えると、聴音能力、記憶力、ピアノ演奏能力、など個々の面でモーツァルトを上回る人が存在したかも知れないが、「何故、モーツァルトだけが、モーツァルトになり得たのか」ということを、近代脳科学の手法を活用したり、天才を育てる教育の観点などから、作品や記録文書などの原点に戻って、深く突き詰めて考えてみた。
 結論として、モーツアルトの場合は、優秀な遺伝子を持って此の世にうまれた子供であった上に、父親が1世紀に何人と言う抜群の教育者的資質の持ち主であったことが幸いしたと言えそうである。   
2.モーツァルトの場合の天才性
 演奏者としては、聞き手に感動を与える内容と、それを確実に伝達できる表現能力をどうして備えたかが重要であり、モーツァルトの場合は、さらに、作曲技法・演奏技法の錬磨はどのようになされ、作品内容がなぜ進化したかを考察する必要がある。

3.音楽家の人生を決める三要素
 音楽プロデユーサーとしてプロの音楽家達と接触してきた体験から、天才やプロになるためには、遺伝子(天与の資質とDNA)、環境(時代、教育、場所など)、運(出会いと、それを運に変える能力)が重要であるので、モーツァルトの人生と作品をこの3要素を基に考察してみた。

イ)遺伝子的には、3歳の時に才能を見いだされ、音楽家としての幼児教育・少年期教育を徹底して受けており、理想的な教育であった。
ロ)教育者の父レオポルトは、当時の人としては最高の教育者であり、レオポルトが届かない専門領域には、対位法はマルティーニ神父、ピアノ技法はショーベルト、クリスチャン・バッハには交響曲や旋律法など、天才を育てる環境が最高であった。
ハ)旅行などによりハイレベルの人との出会いが多く、好奇心や探求心に優れており、出逢ったものを直ぐに取り込み、新しく創造していく表現意欲が強かった。
  このような条件に恵まれた作曲家は、他におらず、自然に天賦の才能が開花し、高度の作曲技法を身に付けていったと言えよう。

4.天賦の才能と高度の作曲技法に加えて、もっと彼の音楽を深めた三つの事件
イ)母の死、就職の失敗、失恋などマンハイム・パリ旅行の失敗など挫折体験・敗者体験が、それ以降の音楽に深みを与えた。
ロ)結婚とウィーンでの自立により、バッハ体験、フリーメーソン体験、予約演奏会などの新しい現場体験がなされ、新たな創作力を生み、開花していった。
ハ)父レオポルトの死により、恩師からの独立をし、父への悔恨の情や現代と異なる死生観が作曲内容に影響を与え、深化するようになっていった。

モーツァルトを取り巻く色々な事件を自身が自ら克服し、それらを自身の糧とすることによって、作品内容が高度化し、深化していった傾向があり、作品の時系列的評価により類推することができよう。

これらのことが重なり合って、モーツアルトの場合は、間違いなく父レオポルドの「作品」であったばかりでなく、いろいろな人生体験をし、それらを創作活動に生かせたことが、「モーツアルトだけが、モーツアルトになり得た」天才の秘密と言うことができよう。 

5.晩年の凋落の原因
 「ドン・ジョヴァンニ」以降の凋落は、戦争のため作曲・演奏機会が激減したことや、自らの経済観念のなさ、「フィガロ」などの貴族達の軽視などの要因が重なっているが、その基本には、芸術家にとって必要な「支える人と金」を失ったからである。

イ)自分の能力を過信して、資金と鑑賞能力に恵まれた重要な貴族たちの聴き手を、敵に回してしまい、一度離れた人は戻らなかった。「魔笛」の成功は、別の聴き手である。
ロ)もがけばもがくほど才能が暴走し、聴き手の能力を超える作品となったこと。即ち、天才の悲劇として、時代を先取りし過ぎ、15年先の音楽を書いてしまったことによる。

6.レクイエムについて
巷間語られているレクイエムの挿話があるが、当時のモーツァルトは、シュテファン寺院の楽長を目指しており、レクイエムを成功させることは、そのための最高の素材であった。そのため、貴族からの依頼による作曲であったにせよ、自身のために意欲を持って全力で作曲した作品であることが、もっと強調されても良い。(O.K)

 

●情報コーナー

 コンサート情報

★12/5(火)19:00/四谷区民H/イリーナ・メジューエワP演奏会/M:ソナタK281、K283、K570、K576他/\2500新宿文化C03-3350-1141

 ★12/10(日)15:00東京オペラシティCH03-5353-9999、\9000~4000、12/16(土)16:00さいたま芸術劇場H048-858-5511、\8000~7000学2000/M:ヴェスペレK339、レクイエム/バッハ・コレギウム・ジャパン、鈴木雅明指揮、森麻季S、M・キーラントA、A・ヴェラーT、D・ヴェルナーBs

 ★12/10(日)15:00/新宿文化C/M:ホルン協奏曲、P協奏曲23番、「踊れ、喜べ、幸いなる魂よ」、交響曲41番/東京都交響楽団、金聖響指揮、J・ヒンターホルツァーHr、I・メジューエワP、本松三和S/\3000新宿文化C03-3350-1141

 ★12/13(水)、14(木)19:00/サントリーH/N響定期/M;「魔笛」序曲、クラリネット協奏曲、3つのドイツ舞曲、交響曲41番/L・ツァグロゼク指揮、S・マイア-バセットcl/\8500~1500学・25歳以下1500N響ガイド03-3465-1780

 ★12/19(火)18:45/東京文化(小)/日本モーツァルト協会/M:弦楽4重奏曲1番、クラリネット5重奏曲他/\4500学2000日本モーツァルト協会03-5467-0626

 ★12/24(日)15:00/サントリーH/ヘンデル=モーツァルト編曲K572「メサイヤ」/バッハ・コレギウム・ジャパン、鈴木雅明指揮/\9000~3500学1000サントリーH03-3584-9999(M) 

オペラ情報

★ワルシャワ室内歌劇場「後宮からの誘拐」、12/4(月)18:30オーチャードH

★ワルシャワ室内歌劇場「皇帝ティトの慈悲」、12/5(火)18:30オーチャードH

★ワルシャワ室内歌劇場「コシ・ファン・トゥッテ」、12/6(水)18:30オーチャードH

★ワルシャワ室内歌劇場「ドン・ジョヴァンニ」、12/9(土)15:00アミューたちかわ、12/1015:00千葉文化、12/18(月)18:30東京文化

★ワルシャワ室内歌劇場「魔笛」、12/13(水)18:30神奈川県民H、12/17(日)15:00東京文化会館、12/22(金)18:30東京文化 光藍社:03-3943-9999(M) 


CD情報(外盤価格は新宿タワー又は渋谷HMV:違いはわずか) ★こちらからどうぞ(Y)


 

 

●11月例会の講師中野 雄先生を囲む楽しい懇談会の風景の写真が出来ました。


 今回も新しい懇談会会場をテストしておりますが、人数が少なかったせいか今までと雰囲気が異なり、こじんまりしておりました。いつもと違う密度の濃いお話もあったようで、とても盛会で、楽しい一時を過ごしました。

トップに戻る

第254回 モーツァルティアン・フェライン例会 2006年11月19日

 
  事務局レター【第129号】/2006年11月

 【編集者】岩島 富士江/塙 雅夫/山本 廣資/古田 佳子 bxp00423*yahoo.co.jp(スパムメールが増えてきましたのでリンクを外しました。お手数ですが*を@に替えて送信願います)

●11月例会(第254回)のお知らせ 

 モーツァルト天才の秘密   お話…中野 雄氏(音楽プロデューサー)

 日時:2006年11月19日(日)午後2時

 会場:「龍名館」本店会議室(JR「御茶ノ水」聖橋口下車・徒歩3分)

 例会費:¥2500(会員・一般共)

 


今月は著書「モーツァルト天才の秘密」が大好評の中野先生をお迎えしました。著作と同じ、そのものズバリのタイトルでお話ししていただきます。先生からのメッセージをご紹介します。 

 

 


 1.【モーツァルト論 執筆の動機】語られていない疑問。「何故、モーツァルトだけがモーツァルトになり得たのか」

 2.【モーツァルト伝説の検証】
・作品の素晴らしさ、特にその完成度の高さに幻惑されて、才能を「天与」のものとして特殊例化しない。
・特殊例化、神秘化等の説明は、鑑賞と賛美の対象たるにとどまる。
・モーツァルトという人間とその創作能力を正しく理解するためには、普遍化という知的作業が必要。

 3.【モーツァルト理解のための「方法」】
・原点に戻り、作品と文章に虚心に接する。
・近代脳科学の手法を活用し、生涯をたどる。
・時代的背景と社会環境の理解。

 4.【考察の原点―音楽とは何か】
・音を媒体とした、表現楽のメッセージ。
・メッセージ伝達の手段としての作曲技法と演奏技巧。
・聴き手に伝達するメッセージの内容。
・一流=プロフェッショナルの条件とは

5.【モーツァルトの場合】
・作曲技法・演奏技巧の練磨はどのようになされたか。
・作品内容は、何故深化したのか。

 6.【モーツァルト音楽を変えた3つの事件】

 7.【人生を決める3要素】モーツァルトの人生と作品を、この3要素をもとに考察する。

 8.【晩年の落魄】自己過信と才能の暴走

 9.【レクイエム(鎮魂ミサ曲)と音楽史のイフ】 

 

 

 盛り沢山の話題で大変楽しみです。皆様のお越しをお待ちしております。(F)


 ●今後の例会のご案内

  12月3日  若松 茂生(本会会長)
  2007年1月13日(土) 第6回会員参加例会(会場:お茶の水クリスチャンセンター ※また会場の都合により土曜日になりましたのでご了承ください)
  


●10月例会の報告(第253回/10月15日)

モーツァルトのバッハ体験と《ミサ曲ハ短調》   お話…樋口 隆一氏(明治学院大学教授、バッハ研究家)


 樋口氏は1987年40回「バッハとモーツァルト」、1997年154回「アーノンクールのモーツァルト」、に続き今回で3回目の登場です。

 1.作曲の動機・・・ハ短調ミサ曲は1782年夏~83年5月にウィーンで作曲された。モーツァルトは全能力でミサ曲を作曲し、新妻をつれて、故郷に錦を飾り、妻の実力を見せて紹介、教会に奉納することを誓願していた。注文主からの制約もなく、自由気ままにかき、幸せに満ちた妻への想いがオペラのアリアのように、美しく反映している。

 2.バッハ、ヘンデルとのかかわり・・・バッハの直弟子、シリンデルを音楽教師に持つ、音楽好きのフリードリッヒ大王の妹、アンナマリア。VlやPを弾き、バッハをよく理解していた、レオポルト二世。宮廷図書館長であり、当時の音楽よりもヘンデル、バッハを最上に置いていて、日曜コンサートに音楽家を招いていたスヴィーテン男爵。バッハのロ短調ミサ、マタイの楽譜を持っていたと思われるハイドン。モーツァルトはハイドン四重奏のために、平均率や美しいフーガを書き写している。

この人たちとの音楽的なかかわりの中で、モーツァルトは、バッハ・ロ短調ミサ、マタイ、ヘンデルのメサイアなどを知ったと推察される。諸国を巡って、あらゆる音楽を知り尽くして作曲した後、エマヌエル・バッハ、クリスティアン・バッハ、ハイドンに会い、更にその先のバッハ、ヘンデルを知ったモーツァルトの驚きはどんなものだったか?

 


 3.ハ短調ミサのバッハ色、ヘンデル色、モーツァルト色・・・バッハ的;壮大な密度の高いキリエ冒頭。クイトリス二重合唱、低音オステナート。クオニアム対位法。イエズクリステの合唱フーガ。
ヘンデル的;グローリアの壮大な楽想はハレルヤに匹敵。
モーツァルト的;キリエのコロラトゥーラ独唱、愛するコンスタンンツェへの想いは、まさにオペラアリア。グローリアの壮大と優しさ静けさの対置。クイトリスの歌詞に沿った見事な表現。クレドは神秘的で、力まず、オペラのアリアのような美しいものに。力強いオケと合唱の掛け合いと美しい恍惚なコロラトゥーラの対比。

 4.まとめ・・・しっかりしたバッハ、ヘンデルの壮大なポリフォニー様式を基に、モーツァルトのオペラ様式を、コンスタンツェへの愛によって息づかせ、見事に融合したのが、ハ短調ミサ曲である。(事務局レター128号、10月例会のお知らせ、樋口氏からのメッセージをあわせて、ご参照下さい。)

 5.CD・・・演奏は、樋口氏の指揮による、バッハアカデミー管弦楽、合唱団。ソリストのレベルも高く、古楽器使用の難関をも見せない好演奏。音楽ファミリーに育った樋口氏は、ドイツ本場での音楽体験をプラスして、耳からの批評家であり、楽しみとしての指揮ぶりも、バッハ体験をしっかりと基本に、自然に呼吸し、自由に動くモーツァルトであった。(I)

 

●情報コーナー

 コンサート情報

★11/20(月)19:00/紀尾井H/ヴィーン・ウィンド・アンサンブル/M:Pと管楽器のための五重奏曲K452、「フィガロの結婚」より、セレナード11番他/谷川かつらP/\8000~6000チケット・ムジカ03-3225-3636

 ★11/20(月)19:00/浜離宮朝日H/平野実貴P協奏曲の夕べ/M:P協23番、20番他/\4000ミリオンコンサート協会03-3501-5638

 ★11/22(水)19:00/浜離宮朝日H/ヴィレム・ブロンズPリサイタル/M:ソナタK533/494、K457、ベートーヴェン:ハンマークラヴィーア/\5000学3000プロアルテムジケ03-3943-6677

 ★11/24(金)19:00/王子H/イョルク・デムス(フォルテP)&原田陽Vデュオ・リサイタル/M:ソナタK379、K454、変奏曲K360、ロンドK511他/\4500リトルCH03-3440-0540

 ★11/24(金)19:00/四谷区民H/パウル・グルダ、モーツァルトPソナタ演奏会/ソナタK309、K310他/\3000新宿文化センター03-3350-1141

 ★11/26(日)19:00/東京文化(小)/M:P協奏曲12番、P四重奏曲1番他/M:ノスティッツ四重奏団、宮坂純子P/\5000国際芸術連盟03-3356-4140

 ★11/30(木)14:00、18:45/東京文化(小)/日本モーツァルト協会03-5467-0626例会/ロバート・レヴィンfp、/\4500学2000

 ★12/1(金)19:00/かつしかシンフォニーヒルズ/久元祐子ピアノ講座、モーツァルト・生涯と作品-陰り行く日々と死/\2800リリオH03-5680-3333

 ★12/2(土)14:00/横浜みなとみらいH/アンサンブルdeヨコハマ演奏会/M:P協奏曲23番、フルート協奏曲1番、交響曲40番/イェルク・デムスPf、マインハルト・ニーダーマイヤーFl/\5000、\4000アーデル044-854-7625(H) 

オペラ情報

★ワルシャワ室内歌劇場「コシ・ファン・トゥッテ」、11/25(土)14:00、神奈川県民H、神奈川芸術協会045-453-5080

 ★ワルシャワ室内歌劇場「後宮からの誘惑」、11/28(火)18:30、武蔵野市民文化0422-54-2011、11/4(月)18:30、オーチャードH、光藍社03-3943-9999

 ★ワルシャワ室内歌劇場「フィガロの結婚」、11/2(土)14:30、19:00、オーチャードH、光藍社03-3943-9999(H) 


CD情報(外盤価格は新宿タワー又は渋谷HMV:違いはわずか) ★こちらからどうぞ(Y)

 

 

●生誕250年記念シンポジウム

会員の皆様には先月別紙をお送りしていますが、明治学院大学主催のシンポジウムについてお知らせします。(Y)

モーツァルト生誕250年記念国際シンポジウム 「モーツァルトの大衆性」

 2006年11月11日(土)12日(日)
 明治学院大学白金校舎アートホール(入場無料 ※明治学院バッハ・アカデミー定期演奏会を除く)

 11日(土)
◇ゲルノート・グルーバー(ウィーン大学)「モーツァルトの大衆性」
◇西川尚生(慶應義塾大学)「ラノワ・コレクション(グラーツ)のモーツァルト資料」
◇オットー・ビーバ(ウィーン楽友協会)「ウィーンのモーツァルト受容」
◇マンフレート・ヘルマン・シュミット(テュービンゲン大学)「ザルツブルクのモーツァルト受容」
◇福田 弥(明治学院大学)「モーツァルトとリスト」

◇明治学院バッハ・アカデミー第41回定期演奏会「古楽器で聴くモーツァルト」( 一般5000円/学生2000円)

12日(日)                     
◇樋口隆一(明治学院大学)「日本のモーツァルト伝承」
◇星野宏美(立教大学)「モーツァルトとメンデルスゾーン」
◇海老澤 敏(日本モーツァルト研究所)「日本のモーツァルト受容」
◇マティァス・シュミット(ウィーン音大)「モーツァルトと20世紀」
◇オスヴァルト・パナーグル(ザルツブルク大学)「文学におけるモーツァルト受容」
◇ラウンドテーブル「モーツァルトの大衆性」 参加者全員


 

 

●10月例会の講師樋口隆一先生を囲む楽しい懇談会の風景の写真が出来ました。


 今回も新しい会場をテストしておりますが、人数が少なかったせいか今までと雰囲気が異なり、こじんまりしておりました。いつもと違う密度の濃いお話もあったようで、とても盛会で、楽しい一時を過ごしました。

第253回 モーツァルティアン・フェライン例会 2006年10月15日

 
  事務局レター【第128号】/2006年10月

 【編集者】倉島 収/塙 雅夫/山本 廣資/古田 佳子 bxp00423*yahoo.co.jp(スパムメールが増えてきましたのでリンクを外しました。お手数ですが*を@に替えて送信願います)

●10月例会(第253回)のお知らせ 

 モーツァルトのバッハ体験と《ミサ曲ハ短調》   お話…樋口 隆一氏(明治学院大学教授)

 日時:2006年10月15日(日)午後2時

 会場:「龍名館」本店会議室(JR「御茶ノ水」聖橋口下車・徒歩3分)

 例会費:¥2500(会員・一般共)

 


今月はバッハ研究の第一人者、明治学院大学の樋口先生のお話です。先生からのメッセージをご紹介します。 

 

 


ザルツブルク時代のモーツァルトのミサ曲が、イタリアの教会音楽様式の影響が顕著なのに対して、《ミサ曲 ハ短調》は、ウィーン時代のモーツァルトならではの確乎たる個性の発露と、バッハやヘンデルに代表される壮大なポリフォニー様式を特徴としている。

モーツァルトはウィーンにおいて、宮廷図書館長だったゴットフリート・ファン・スヴィーテン男爵によって、バッハやヘンデルの偉大な音楽に目を開かされていたのであった。さらにいえば、ほかならぬコンスタンツェがとりわけフーガを好んだことも、この個性的なミサ曲に色濃く反映していると言われている。

 《ミサ曲 ハ短調》の冒頭のキリエは、「主よ憐れみたまえ」という切なる願いを、深い想いで表現する。集中力に満ちた表現はさながらバッハだ。そこにソプラノ独唱が朗々たるコロラトゥーラで、「キリストよ憐れみたまえ」と歌う。そこにはモーツァルトのオペラ様式が息づいている。

バロックの伝統と彼自身の新しい様式の対峙と融合。作曲家モーツァルトが、このミサ曲でめざした音楽的「誓願」の内容は、まさにそこにあった。

グロリア「いと高きところに栄光、神にあれ」の合唱の力強く壮大な楽想には、ヘンデルの「ハレルヤ」にも匹敵する迫力があるが、そこに「地には平和」と「善意の人々にあれ」の優しさと静けさを対置するところがモーツァルトの新しさなのである。

ラウダムスでは、ソプラノ独唱が、ナポリ派ふうの華麗なコロラトゥーラを披露する。

グラツィアスでは、ソプラノが2部に別れた5部合唱が、神の栄光への感謝を歌い、クイ・トリスでは二重合唱が、痛切な贖罪の願いを叫ぶ。それを強調する低音のオスティナート(固執低音)も、まさにバッハではないか。

ドミネ・デウスでは、弦楽4声部とふたりのソプラノ独唱とが、巧緻な対位法を繰り広げる。父なる神と子なる神への賛美は、深い瞑想を誘う。

 贖罪の祈りとしてのクイ・トリスは、ラメント・バスを基調とした低音主題にもとづくパッサカリアで、「世の罪を除きたもう主よ」と、「父の右に座したもう主」は強く確乎たる調子、「われらをあわれみたまえ」と「われらの願いをききいれたまえ」は弱々しいシンコペーションのリズムで歌われ、歌詞内容の周到な表現がねらわれている。

クオニアムでは、ふたりのソプラノ独唱とテノール独唱が壮麗な対位法を繰り広げるが、「汝のみひとり聖」の「聖sanctus」が、長いコロラトゥーラの装飾で歌われる。

イェズ・クリステ(イエス・キリスト)は、それだけが合唱のアダージョとして強調され、そのままクム・サンクト・スピリトゥ「聖霊とともに」の合唱フーガへと流れ込む。

 信仰の宣言をあらわすクレドの部分は、5声合唱による「われは信ず、唯一なる神を」以下の部分と、ソプラノ独唱による「聖霊によりて、みからだを受け」の部分のみが作曲されたに過ぎない。力強いオーケストラと合唱の掛け合いによって始まる前者と、ヘ長調、8分の3拍子の超俗的な響きの中でソプラノが霊的ともいえる美しいコロラトゥーラをちりばめる後者の対比がすばらしい。その後に続くべきクルツィフィクスス(十字架に付けられ)の場面にモーツァルトがどのような音楽的イメージを描いていたのかは、もはや想像する以外にない。

サンクトゥスとベネディクトゥスの部分の、自筆総譜はすでに失われており、アウクスブルクの聖十字架修道院に残るオリジナルパート譜の中に、不完全な形で伝えられている。

 「聖なるかな」の歓喜の合唱と「いと高きところにホザンナ」のフーガは、『旧モーツァルト全集』版ではそれぞれ5声と4声として扱われていたが、エーダー校訂『新モーツァルト全集』版ではどちらも8声の二重合唱として復元されている。こうすることによって力強く、また確信に満ちたフーガは、その効果を完全な形で発揮することができる。

 4人の独唱者が「祝福あれ」と歌い和す壮麗なベネディクトゥスの最後に、エーダー版はホザンナの合唱を追加することによって、華やかな終結をもたらすことに成功している。 

 

 

 今回も興味深いお話が伺えることと思います。例会後のパーティも先月からの新しい会場で行いますので、皆様のお越しをお待ちしております。(F)


 ●今後の例会のご案内

  11月19日(日) 中野雄氏(音楽プロデューサー)
  12月3日(日)  若松 茂生(本会会長)
  2007年1月13日(土)第6回会員参加例会
  


●9月例会の報告(第252回/9月10日)

モーツァルトの歌曲を聞く   お話…青柳 省三氏(本会会員)


 「はじめに」…モーツァルトは生涯に「歌曲」というジャンルで三十数曲の作品を書いているが、多分彼はこれらを自分の主要な作品群とは認識していなかったに違いない。恐らくモーツァルトの時代には、これらはプライヴェートで楽しむ団欒の歌だったからである。

またそれらは簡素な小品だからというだけでなく、周囲の身近な交友関係の集まりの場などで、突然生まれた「使い捨て」の機会音楽だったという側面もあったからだ。幼少時代は姉ナンネルらと歌う団欒の歌だったかもしれないし、長じてウィーン時代では親しい友人への献呈だったり、またふざけたり遊んだりする集まりの道具だったりした。
  
 「歌曲」をクラヴィーアの伴奏でソロの声楽曲とここで定義すると、「歌曲」は歌詞を作った詩人の心と、歌詞に触発されて音楽にした音楽家の心との融合体なので、そこには人の心の微妙で繊細な動きが現れる特別な音楽の分野と考えることも出来よう。

 「歌曲」の鑑賞にあたって、詩はできれば原語で味わうものであろう。詩の翻訳は極めて困難な仕事で、とくに欧米語と日本語の場合、語彙のリズムや文法などの大きな違いから、殆んど「絶望的」とさえ言われている。

しかし、訳文でしか味わえない者にとっては、それが不十分のものであろうとも、翻訳を頼りに理解するしか方法がない。そのぶん対訳を十分に読み込んで、その内容をよく把握すべきであろうが、実際は、われわれはメロディを優先して聴き、モーツァルトの「歌曲」を理解したように思っている嫌いがないだろうか。

 


お話の始めに、以上のような重要な発言があり、このようなご自身の反省から、今回は少し歌詞の読み込みにこだわって、モーツァルトの厳選された16曲の歌曲を、歌詞を読み上げ予め考えながら、厳選された歌手によるCDで、一緒に聴いていくことになった。 選ばれた16曲と歌手は下表の通りであるが、青柳氏は歌詞の意味合いと曲の作りとの関係や聴きどころなどを簡潔に解説して下さり、改めて聴く上で、非常に参考になった。

 1.カンツオネッタ「安らぎは微笑みつつ」K.152(210a)イタリア語で作詞者不明、歌手;バーバラ・ボニー
2.アリエット「寂しく暗い森で」K.308(295b)フランス語、マンハイムにて、歌手;フォン・オッター
3.「おいで、愛しのツイターよ」K.351(367b)ドイツ語、マンドリン伴奏、歌手;エリー・アメリンク
4.「孤独に寄す」(私の慰めであって欲しい)K.391(340b)ドイツ語、歌手;エディット・マティス
5.「魔術師」K.472 ドイツ語、歌手;リタ・シュトライヒ
6.「満足」K.473 ドイツ語、歌手;白井光子
 7.「すみれ」K.476 ドイツ語、歌手;バーバラ・ボニー
8.「自由の歌」K.506 ドイツ語、歌手;ペーター・シュライヤー
9.「老婆」K.517 ドイツ語、歌手;エリザベート・シュヴァルツコップ
10.「ひめごと」K.518 ドイツ語、歌手;E.アメリンク
11.「別れの歌」K.519 ドイツ語、 歌手;バーバラ・ボニー
12.「ルイーゼが不実の手紙を焼いたとき」K.520、ドイツ語、歌手;E.マティス
13.「夕べの想い」K.523 ドイツ語、歌手;E.アメリンク
14.「クローエに」K.524 ドイツ語、歌手;ルチア・ポップ
15.「夢のすがた」K.530 ドイツ語、 歌手;エリザベート・シュヴァルツコップ
16.「春への憧れ」K.596 ドイツ語、歌手;E.アメリンク
(番外:「春への憧れ」K.596 日本語、歌手;島田祐子)

 「あとがき」…歌謡詩人なかにし礼氏が、10年ほど前に歌える「モーツァルト歌曲集」を翻訳した。20曲すべてがベストの出来とは言えないかも知れないが、その勇気と労苦は敬服に値する。その中の数曲でもいいから小学、中学の音楽教材になり、若い人達の日常を潤す「愛唱歌」として、素晴らしいモーツァルトの歌曲が身近な言葉で歌われることを願わずにいられない。(OK)

 

●情報コーナー

 コンサート情報

★10/17(火)19:00/かつしかシンフォニーヒルズ03-5670-2233/久元祐子モーツァルトピアノ講座第3回/モーツァルト絶頂期の作品/\2800

 ★モーツァルトの夕べ‐宇宿允人(指揮)の世界/M:アイネ・クライネ・ナハトムジーク、VとVaのための協奏交響曲、交響曲40番/東京芸術音楽協会03-3333-7278/10/18(水)19:00、トッパンH、\5000学2000/10/20(金)19:00、東京芸術\7000~4000学2000

 ★10/21(土)14:30/王子H/江端津也子Pリサイタル/M:カプリッチョK395、ソナタK330、K332、「リゾンは森で眠った」の主題による9つの変奏曲/\4000新演奏家協会03-3561-5012

 ★10/21(土)14:00/神奈川県民H/M:「バスティアンとバスティエンヌ」(演奏会形式)、P協奏曲27番/井上道義指揮、神奈川フィル、小林沙羅S、竹内俊介T、三原剛Br、室井摩耶子P/\4000学3500神奈川県立音楽堂045-263-2255

 ★10/22(日)19:00/東京文花(小)/池本純子モーツァルトP協奏曲の夕べ/P協奏曲9番、23番他/\4000学3000コンサートプロジェクト北見0422-54-2011

 ★10/23(月)~27日(金)19;00、28(土)、29(日)18:30/サントリー(小)/モーツァルトで二期会週間、23日(フォルテピアノで聴くM歌曲)、24日(美的調和の夜)、25日(M家族会議の夜)、26日(爆笑バラエティーオペラの夜)、27日(ブルーアイランドの夜)、28日(劇的なMの夜)、29日(豪勢なアリアの夜)/各\4000、通し券7夜\21000二期会チケットC03-3796-1831

 ★10/24(土)19:00、10/25(日)14:00/東京文化(小)/日本モーツァルト協会例会03-5467-0626/寺神戸亮(指揮・V)&レ・ボレアード/M:セレナード「ハフナー」、P協奏曲17番/\6500~5000学2500

 ★イェルク・デームス(モーツァルト時代のPと現代のPによる演奏)/M:ソナタ10番、11番、ロンドK511、アダージョK540他/10/27(金)19:00、\3500かつしかシンフォニーヒルズ03-5670-2233/11/7(火)13:30、横浜みなとみらいH、\3800神奈川芸術協会045-453-5080

 ★11/5(日)15:30/神奈川県立音楽堂/M:レクイエム他/牧野成史指揮、バッハアカデミー管弦楽団、山田英津子S、小嶋康子Ms、藤牧正充T、北村哲朗Bs、横浜モーツァルト・アカデミー 04-2922-8429 (H) 

オペラ情報

★新国立「イドメネオ」、10/20(金)18:30、22(日)14:00、25日(土)14:00、30日(月)18:30、新国立劇場03-5352-9999

 ★二期会オペラ「コジ・ファン・トゥッテ」、11/3(金・祝)17:00、4(土)、5(日)、11(土)、12(日)15:00、日生劇場、二期会チケットセンター03-3796-1831

 ★ワルシャワ室内歌劇場「フィガロの結婚」、11/17(金)18:30、さいたま市文化C、光藍社03-3943-9999

 ★モーツァルト劇場「劇場支配人」、11/3(金・祝)、4(土)14:00、18:00、5(日)15:00モーツァルト劇場03-3338-3773 (H)


CD情報(外盤価格は新宿タワー又は渋谷HMV:違いはわずか) ★こちらからどうぞ(Y)


 

 

●9月例会の講師青柳さんを囲む懇談会の写真が出来ました。


 新しい会場で、今までと雰囲気が異なるようですが、いつもながら、とても盛会で、楽しい一時を過ごしました。皆さんの元気なお顔が揃っております。

 

第252回 モーツァルティアン・フェライン例会 2006年9月10日

 
  事務局レター【第127号】/2006年9月

 【編集者】倉島 収/塙 雅夫/山本 廣資/古田 佳子 bxp00423*yahoo.co.jp(スパムメールが増えてきましたのでリンクを外しました。お手数ですが*を@に替えて送信願います)

●9月例会(第252回)のお知らせ 

 モーツァルトの歌曲を聴く   お話…青柳 省三氏(本会会員)

 日時:2006年9月10日(日)午後2時

 会場:「龍名館」本店会議室(JR「御茶ノ水」聖橋口下車・徒歩3分)

 例会費:¥1500(会員・一般共)

 


皆様、モーツァルト生誕250年の夏休みをいかがお過ごしでしたか。今月は久しぶりに青柳さんのお話をお聞きします。青柳さんからのメッセージをご紹介します。 

 

 


モーツァルトは生涯に「歌曲」というジャンルで三十数曲の作品を書いていますが、多分彼はこれらを自分の主要な作品群とは認識していなかったかも知れません。

それは簡素な小品だからというだけでなく、周囲の身近な交友関係の集まりの場などで、突然生まれた「使い捨て」の機会音楽だったという側面もあるからです。

 幼少時代は姉ナンネルらと歌う団欒の歌だったかもしれないし、長じてウィーン時代では親しい友人への献呈だったり、またふざけたり遊んだりする集まりの道具だったりしました。

だからこの分野を語るには、重唱で歌う多様な「カノン」(30曲ほど)の世界を切り離せないでしょう。ときには友人に自作品を提供し、他人名義の出版まで認めたりしています。

ところで、詩はできれば原語で味わうものでしょう。詩の翻訳は極めて困難な仕事で、とくに欧米語と日本語の場合、語彙のリズムや文法などの大きな違いから、殆んど「絶望的」とさえ言われています。

しかし訳文でしか味わえない者にとっては、それが不十分のものであろうとも、翻訳を頼りに理解するしかありません。そのぶん対訳を十分に読み込んで、その内容をよく把握すべきですが、実際はメロディを優先して聴き、歌曲を理解したように思っている嫌いがないでしょうか。

こんな自らの反省から、今回は少し歌詞の読み込みにこだわって、ご一緒にモーツァルトの歌曲を聴いてみたいと思います。 

 

 

また、今月より都合でカーサ・モーツァルトがお借りできなくなり、急遽新しい会場になりましたが、アクセスは便利ですので大勢のお出かけをお待ちしております。恒例のパーティも同会場で予定しています。(F)


 ●今後の例会のご案内

  10月15日 樋口隆一氏(明治学院大学教授)
  11月19日 中野雄氏(音楽プロデューサー)
  12月3日  若松 茂生(本会会長)
  2007年1月14日 第6回会員参加例会
  


●7月例会の報告(第251回/7月9日)

モーツァルトとJ.N. フンメル―― 両者の音楽的関係を巡って ――   お話…安田 和信氏(国立音楽大学非常勤講師)


 1.フンメルの生涯 ―― ヨハン・ネポムク・フンメル(1776~1837)は、モーツァルトの弟子のなかでは、最も成功を収めた音楽家の一人であったとされる。ウイーンで子供の頃にモーツァルトの弟子となり、師と同様に少年時代は神童として父と演奏旅行を行った。

 1790年にロンドンに滞在して、ヨーゼフ・ハイドンと知り合い、ウイーンでアルブレヒツベルガーやサリエリなどに師事し、ベートーヴェンの登場に衝撃を受けつつ友人として共に音楽界で活躍した。

 1804年にハイドンの推薦を受けて、後継者としてエステルハージ家の宮廷楽長となったが、1811年にウイーンに戻り、作曲活動を続けながらピアニストとしても有名な存在となった。

その後1816年から1818年まではシュトゥットガルト宮廷楽長として活躍し、1819年から1837年に亡くなるまでワイマール大公宮廷楽長として活躍するなど、終始社会的・経済的に安定した地位に就き、作曲家、クラヴィーア奏者、教育者として名声をあげてきた。

 


ベートーヴェンとは友人にして良きライヴァルの関係にあったが、少なくともベートーヴェンがウィーンに移住してからの数年間は、「モーツァルトの後継者」に相応しいキャリアを積んでいたのは、直弟子たるフンメルだったかも知れない。

しかし、ベートーヴェンが先輩の遺産を批判的に受け継いで、新しい個性を生み出し「「大作曲家」として君臨し続けているのとは対照的に、現在の私たちはフンメルの音楽を「モーツァルトの亜流」などと感じてしまう面があるが、フンメルの音楽がモーツァルトの様式を継承していることは間違いないと考えられる。

 今回のお話では、フンメルもまたベートーヴェンとは違った意味で正統にモーツァルトの精神を受け継いだのではないかという前提に立ちながら、師弟の音楽を比べてみながらフンメルの姿を考察するものである。

 2.フンメルとモーツァルトの音楽的関係については、先生の用意されたフンメルがモーツァルトの音楽を引用あるいは借用した例(少なくない数が存在する)のリスト(作品リストにCDリストが対照できる優れもの)に基づいて、CDを聴きながら、解説していただいた。

2-1.モーツァルトのピアノ協奏曲のためのカデンツァについては、7曲ほど作曲されており、モーツァルトのカデンツァが残されていないもの(例K.537)が貴重である。

2-2.フンメルによるモーツァルト作品の編曲は、いずれも当時流行したピアノ、フルート、ヴァイオリン、チェロの四重奏曲であり、ピアノパートだけでも音楽的実質が確保可能な編曲法であった。曲種は後期のハフナー以降の交響曲6曲、

 7曲のピアノ協奏曲及び魔笛・フィガロ・ドン・テイトの4オペラであった。CDで聴いた曲は、リンツ交響曲K.425の第一楽章、二台のピアノのための協奏曲K.365の1台への編曲であったが、いずれも原曲の品位を崩さない編曲で、中には5オクターブを超えるものもあるそうである。

2-3.モーツァルトの作品を引用したフンメル作品の例としては、フンメルが作曲したファンタジア・ポプリト・セレナードなどの小品の接続曲的な作品の小品の一部に、モーツァルトの曲の一部が編曲されて使われていた。CDで聴いた作品66セレナードト長調では、テイトの序曲と魔笛の「絵姿のアリア」の一部が使われていた。また、作品124のフィガロの「もう飛ぶまいぞ」によるファンタジア(変奏曲)ハ長調の一部を聴いた。

2-4.モーツァルトのアイデアを借用したフンメル作品は、先生のあくまで主観的な推測による例であるとされたが、CDで聴くといずれも確定犯とおぼしきものを10例ほど、断片的に聴かせていただいた。「ジュピター音形」をコーダにフガートで借用した例、K.608のコラール風の冒頭楽想の例、クラリネット五重奏曲の弦の冒頭主題とクラリネットの入り方などが似たクラリネット四重奏曲の例など、様々な例があった。

 最後にフンメルが作品113(1827)のピアノ協奏曲変イ長調の第一楽章を聴いたが、この曲は、モーツァルトの芸術の奥義を授けられた正統的な弟子として位置づけされそうな、モーツァルトとショパンとを橋渡しするような楽想が度々あり、驚かされた。

 安田先生のフンメルのお話は、とても具体的で面白く、初めてこの作曲家を知る機会に恵まれ、当時は彼はベートーヴェンと肩を並べて音楽界をリードしていたこともあるので、もっと注目されて良い作曲家であり、今後、彼の作品を聴く機会があれば、恐らく聴き方が変わるであろうと思われるほど、いろいろな刺激を受けました。(OK)

 


●情報コーナー

 コンサート情報

★9/16(土)19:00サントリーH/内田光子Pリサイタル/M:幻想曲K475、ソナタK457、576、アダージョ540他/¥1000~4000学1000サントリーH03-3584-9999

 ★9/23(土・祝)18:00/東京芸術、9/24(日)14:00/横浜みなとみらいH/グレゴリオ聖歌、M:フリーメイソンのための葬送音楽、証聖者のための盛儀挽歌(ヴェスペレ)より、レクイエム、アヴェ・ヴェルム・コルプス/M・ホーネック指揮、読売日響、国立音大/東京\8000~3000、横浜\8000~3000中高1000小500読売日響03-3562-1550

 ★9/24(日)14:00/東京文化/P・アントルモン指揮とP、スーパーワールドオケ/M:V協奏曲5番、P協奏曲20番、交響曲41番/\9000~4500毎日新聞社事業本部03-3226-9999

 ★9/29(金)18:45/東京文化(小)/日本モーツァルト協会例会/M:クラヴィーア協奏曲K39~K41他/武久源造P/\4500学2000日本モーツァルト協会03-5467-0626

 ★10/6(金)19:00/東京オペラシティコンサートH/D・ハーディング指揮、マーラー・チェンバー・オーケストラ/M:交響曲39番~41番/\17000~4000カジモト・イープラス0570-06-9960

 ★10/7(日)15:00/保谷こもれびH/古楽器で聴くM名曲コンサート/M:交響曲30番、36番、V協奏曲5番/諸岡範澄指揮、桐山健志V、安田和信(お話)/\3000学1500こもれびH0424-21-1919

 ★10/11(水)19:00/東京オペラシティコンサートH/M:交響曲39番、レクイエム/飯森泰次郎指揮、東京シティ・フィル、星川美保子S、手嶋眞佐子A、望月哲也T、成田博之Bs、東京シティ・フィル・コーア合唱/\6000~3000、60歳以上4000~3800、25歳以下2000/東京シティ・フィル03-5624-4002

 ★10/13(金)19:00/四谷区民H/イェルク・デムスPリサイタル/M:幻想曲K396、K397、ソナタK311、K330、シューベルト:3つのP曲他/\3500新宿文化C03-3350-1141

オペラ情報

★東京二期会「フィガロの結婚」、9/16(土)17:00、17(日)15:00、18(月・祝)15:00、オーチャードH、二期会チケットC03-3796-1831

 ★ヴィーンの森バーデン市立歌劇場「フィガロの結婚」、9/16(土)15:00グリーンホール相模大野、9/24(日)17:00ミューザ川崎SH

★錦織健プロデュースオペラ「ドン・ジョヴァンニ」、9/17(日)15:00ハーモニーH座間、9/30(土)14:00東京文化、10/8(日)14:00東京文化


CD情報(外盤価格は新宿タワー又は渋谷HMV:違いはわずか) ★こちらからどうぞ(Y)

 

 

●第6回会員参加型例会出演者募集!

 引き続き参加者を募集中です。モーツァルトに関するお話・CD/映像鑑賞・演奏等どんな内容でも結構です。できるだけ今まで出なかった方の出演を期待します。

 受付は先着順とし、希望者多数の場合は次回に繰り延べさせていただきますので、ご了承ください。(F)

♪日 時…2007年1月14日(日)
♪募集内容…【1】お話:日頃の思いを熱く語る。【2】CD&映像(DVD、VTR 、LD):お気に入りやおすすめをかける。【3】演奏:楽器や歌(ソロでもアンサンブルでも)
♪持ち時間… 1人20分以内、10分でも15分でもOK。(応募時におおよその出演時間を自己申告して下さい)
♪条 件…モーツァルトに限る
♪締 切…2006年9月末日

 【1】【2】【3】の参加部門とその内容をメールにて、下記世話人までご連絡ください。

 川口ひろ子 fortuna-h*kuf.biglobe.ne.jp(スパムメール対策です。*を@に替えて送信してください)

 


●11月例会の若松会長インタビュー その2


 (前号より続きます) モーツァルトを毎日聴いていると心と身体の健康のためにいいのは確かです。頭にもいいのでしょう。それを商売にして、CDとか本を売るというのが問題なのかもしれません。 

 日々の糧のように聴いてください。とにかく毎日聴いてみる。そのうち「啓示」が訪れるでしょう。何百回と聴いてきた曲でも、聴くたびに発見があります。日々聴くことが、趣味の領分を超えて、生きることの不可欠な一部分を形作ります。それは時がたつにつれて確信に満ちた喜びとなり、ある種の存在感となって生活の中に定着していきます。モーツァルトの音楽は人の心をさわやかにし、人の命を豊かにします。(聞き手は共同通信編集委員・山崎博康、写真 山下純司)


 

 

●7月例会の安田先生を囲む懇談会の写真が出来ました。

第251回 モーツァルティアン・フェライン例会 2006年7月9日

  
 事務局レター【第126号】/2006年7月

 【編集者】栗田 久暉/塙 雅夫/山本 廣資/古田 佳子 bxp00423*yahoo.co.jp(スパムメールが増えてきましたのでリンクを外しました。お手数ですが*を@に替えて送信願います)

●7月例会(第251回)のお知らせ 

 モーツァルトとJ.N. フンメル―― 両者の音楽的関係を巡って ――   お話…安田 和信氏(国立音楽大学非常勤講師)

 日時:2006年7月9日(日)午後2時

 会場:原宿カーサ・モーツァルト(原宿医院)3Fホール(JR「原宿」下車・徒歩5分/地下鉄「明治神宮前」下車・徒歩3分)

 例会費:¥2500(会員・一般共)

例会会場;原宿【カーサ・モーツァルト案内図】


 

今月は安田先生のお話です。フンメルというとベートーヴェンに関する話で耳にすることが多い人ですが、モーツァルトとはどういうつながりがあったのでしょうか。先生からのメッセージです。


  ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


周知のように、ヨハン・ネポムク・フンメルはモーツァルトの弟子のなかでは、最も成功を収めた音楽家の一人でした。師と同様に少年時代は神童として演奏旅行を行い、長じてはあのヨーゼフ・ハイドンの後継者としてエステルハージ家の宮廷楽長となるだけでなく、ピアニストとしても有名な存在となりました。

ベートーヴェンとは友人にして良きライヴァルの関係にありましたが、少なくともベートーヴェンがウィーンに移住してからの数年間は、「モーツァルトの後継者」に相応しいキャリアを積んでいたのは、直弟子たるフンメルだったかも知れません。フンメルの音楽がモーツァルトの様式を継承していることは間違いないでしょう。

しかし、ベートーヴェンが先輩の遺産を批判的に受け継いで、新しい個性を生み出し 「大作曲家」として君臨し続けているのとは対照的に、現在の私たちはフンメルの音楽を「モーツァルトの亜流」などと感じてしまう面もあります。

 今回のお話では、フンメルもまたベートーヴェンとは違った意味で正統にモーツァルトの精神を受け継いだのではないかという前提に立ちながら、師弟の音楽を比べてみたいと考えています。とくに、フンメルがモーツァルトの音楽を引用あるいは借用した例(少なくない数が存在します)などを聴きながら、偉大な師をもつ弟子の姿を垣間見ることができればとも考えております。


  ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


恒例の懇親会にも是非ご参加ください。(F)懇親会場:ステージY2(渋谷区神宮前1-13-12 TEL:3478-1031)

 

●今後の例会のご案内

  8月     ――― 夏休み ―――
 9月10日  青柳 省三(本会会員)
  10月15日 倉島 収(本会副会長)
  11月12日 (交渉中)
  12月3日  若松 茂生(本会会長)
  2007年1月14日 第6回会員参加例会
  
 

●6月例会の報告(第250回/6月25日)

ピアノ・コンチェルト/弾きどころ、聴きどころ   久元 祐子氏(ピアニスト)


 6月は久し振りに久元祐子先生のレクチャーコンサート、荻窪駅南口から10分程新宿方面に歩いた「かん芸館」にて行なわれました。

プレイエルピアノ(グランド・ピアノ)によるさほど広くはない会場いっぱいに広がる見事な音響効果のもと、【1】先ず最初は、誰でもが幼稚園で習ったことのある「トウィンクル・リトゥルスター」の原曲ともいえるモーツァルトのフランスの歌曲「ああ、お母さん聴いて下さい」によるピアノの12の変奏曲、ハ長調(KV265)でした。筆者独自の見解ですが、これを聴いていたら懐かしい幼年時代の思い出が頭の中いっぱいに広がり、しばし感慨無量!

 


 【2】第二曲目はモーツァルトの作、P協奏曲変ホ長調KV271(ジュノム)ここでは、モーツァルト自身、二つのカデンツァを遺しているが、この大部分が彼の欲求を満たしているということ。長調と短調という二つの光の影が時折りチラチラと聴かれ、これはため息のモチーフ、つまり心の振るえとため息といえましょう。例えば、魔笛の中のアリア等にもため息のアリアが見られるが、これも喜びと悲しみの二つの対照が見られると言うこと。

 【3】第三曲目は1786年の作、P協奏曲二短調KV466が演奏。(10分程の休憩をはさんで)【4】第四曲目は、ピアノ・ソナタハ長調(KV309)の第三楽章でした。モーツァルトが父親と共に旅をして楽しい気持ちが込められた曲、又、彼の楽しみの一つの言葉併せと喜び、廻るという意味のロンドが各所に聴かれました。

 【5】第五曲目は、P協奏曲イ長調KV488。これはフィガロと併行して作曲されたもので、映画の中の一つのテーマとしてもとられており、フルート、クラリネット、ファゴットによる柔らかい印象。又、モーツァルトの絶頂期に作曲された名曲として一般に知られている。

 【6】第六曲目はP協奏曲ニ長調KV537「戴冠式」の一部。これはトランペットとティンパニー等をを含めた戴冠式にふさわしい、華やかな曲。特に第二楽章には第一楽章にも多いが、アンドレ版がほとんどの場合使用されていること。なお、当時の楽器より現代の楽器で演奏するほうがモーツァルトの曲としては難しいし、原点版にはモーツァルトのアーティキュレーションが入っていない、しかしそれを考えて演奏するところが、演奏者の腕の見せ所でしょう、とのお話しでした。

 【7】最後に締めくくりとしてモーツァルトのファンタジーKV397が演奏されましたが、この曲は何時聴いてもそのタイトルの示すとおり、幻想的境地に陥るような気持ちになりますが、久元先生のトロリとした演奏振りに、筆者自身大変良い気持ちになり、かなり眠くなってしまい全くの夢心地の気分。(久元先生は音楽による催眠術師か?とは現在これを書いている筆者の独断的見解!)このような盛り沢山のプログラムでした。

かなり専門的な内容であったとはいえ、種々の事例を提供されながら久元先生の大変丁寧な細かい解説が各曲ごとにおこなわれ、筆者としてもシロウトながらも、音楽と言うよりも“音学”として非常に良い勉強になったことは確かでした。この先生のレクチャーコンサートの後、荻窪駅前の居酒屋にて、先生を交えて、一同和気あいあいとビール片手に懇親会が行なわれました。(H.K)

 

当日のご案内のポスター1およびポスター2を参考のため掲載します。


 

●情報コーナー

 コンサート情報

★7/15(土)19:00/浜離宮朝日H/オーケストラの都マンハイム/M:「ポストホルン」K320、オーボエ協奏曲、交響曲K338、カンナビヒ:交響曲D13/諸岡範澄指揮、三宮正満Ob、安田和信(お話)/\3000学3000、オフィスアルシュ03-3320-2274

 ★7/17(月・祝)19:00/紀尾井H/RMFヴィーン・アンサンブル/M:CL五重奏曲、FLとハープのための協奏曲、武満徹:エア/\5000~3000、チケットスペース03-3234-9999

 ★7/25(火)19:00/東京文化/Rコルサコフ:歌劇「モーツァルトとサリエリ」、M:レクイエム/チェコ国立ブルノ劇場/都民劇場03-3572-4311

 ★7/27(木)19:00/紀尾井H/M:CL協奏曲、V協奏曲3番他/沼尻竜典指揮、トウキョウ・モーツァルト・プレーヤーズ、ジル・アパップV、亀井良信CL/\6500~3500、アリオンチケット03-5465-1233

 ★8/12(土)16:00/ミューザ川崎SH044-520-0200/パリに暮らすモーツァルト/M:交響曲1番、31番パリ他/矢崎彦太郎指揮、東京シティ・フィル/\3000~2000

 ★8/17(木)19:00/かつしかシンフォニーヒルズ/久元祐子P講座モーツァルト・生涯と作品第2回ザルツブルク~天才と大司教/\2800リリオH03-5680-3333(H)

CD情報(外盤価格は新宿タワー又は渋谷HMV:違いはわずか) ★こちらからどうぞ(Y)


 


●第6回会員参加型例会出演者募集!

 来年1月は恒例となりました全員参加型の例会です。
モーツァルトに関するお話・CD/映像鑑賞・演奏等どんな内容でも結構です。できるだけ今まで出なかった方の出演を期待します。

 受付は先着順とし、希望者多数の場合は次回に繰り延べさせていただきますので、ご了承ください。(F)

♪日 時…2007年1月14日(日)
♪募集内容…【1】お話:日頃の思いを熱く語る。【2】CD&映像(DVD、VTR 、LD):お気に入りやおすすめをかける。【3】演奏:楽器や歌(ソロでもアンサンブルでも)
♪持ち時間… 1人20分以内、10分でも15分でもOK。(応募時におおよその出演時間を自己申告して下さい)
♪条 件…モーツァルトに限る
♪締 切…2006年9月末日

 【1】【2】【3】の参加部門とその内容をメールにて、下記世話人までご連絡ください。

 川口ひろ子 fortuna-h*kuf.biglobe.ne.jp(スパムメール対策です。*を@に替えて送信してください)

 


 ●11月例会の若松会長インタビュー その1


 11月例会の後半に行われた若松会長のインタビューが年明けに新聞に掲載されました。これはフェライン会員で共同通信に勤務されている山崎博康さんによる企画です。

 掲載は主に地方紙が多いため、お読みになれない会員のためにと、山崎さんから転載許可を頂きました。些か遅きに逸した感もあり、またスペースの都合上、2回に分けるかたちになりますが、ご了承ください。(F)

 

 


愛に満ちた洒脱な精神/耳傾ければ心身健康に…若松茂生(モーツァルト研究家)

 


2006年1月27日はウォルフガング・アマデウス・モーツァルトの250年目の誕生日。ことし一年、多彩な記念公演が世界中で行われる。この作曲家が生んだメロディーは今も、人々を魅了してやまない

若い時に人間というものが信じられなくなったことがありました。しかし、モーツァルトを熱心に聴いていくうちに人間への信頼感が戻ってきました。これほど美しい音楽を人間はつくってきた。それが信頼につながった。「愛」という何だか分からないものが「定義」できたんです。この世の中も捨てたものではない。モーツァルトがいるではないか、と信じています。

 没後二百年の1991年はまさにモーツァルト・ブームでした。LPからCDに移行した時代で、気軽に聴けるようになったこともあります。そしてIT(情報技術)革命があり、DVDの時代に移行したことで聴き方も変わってきたような気がします。今後は映像が主流になることが予想されます。そうなると、オペラの場合には演出が中心になって、どうも音楽の方が二の次になるような気がします。しかし、モーツァルトは「オペラでは、詩は音楽の従順な娘でなくてはならない」と書いています。音楽の中で登場人物の心の動きを表現しているんです。それを聴き取らなければいけません。

 


国際経済が専門だが、ひたむきなモーツァルト探究で国内有数の研究者。熱心な愛好者の組織「モーツァルティアン・フェライン」の会長を務める。東京・神田育ちで落語にも造詣が深い。落語はモーツァルトの遊び心と通じるという

突然、落語調になりますが、モーツァルトの「ココロは?」とお尋ねならば、彼が自分の名前を「トラツォーム」と逆さに呼んでいましたんで、ひとつ「逆さ言葉」で考えてみるッてェのはどうでしょう。「ココロ」の逆さは「ロココ」ッてェわけです。

ロココは貴族階級のもので落語は庶民のものだなんてェ、むずかしい能書きは抜きにして、文化が成熟してくると軽妙洒脱(しゃだつ)な精神、ユーモアを解する精神、そんな雰囲気が出てきますな。モーツァルトにはそれがあるッてェこッてす。

 彼のカノンを聴いてみねえ、熊さん八っあんの落語の世界と同じで、駄じゃれの宝庫だッてェことは愛好者なら誰でも知っておりやすよ。(以下次回)


 


6月例会写真集-二次会でご機嫌の皆さんですー

2006.11
2006.10
2006.9
2006.7
bottom of page