第299回 モーツァルティアン・フェライン例会 2010年12月5日
事務局レター【第174号】/2010年12月
【編集者】若松 茂生/澤田 義博/近藤 光宏/富田 昌孝/古田 佳子 bxp00423*yahoo.co.jp (スパムメールが増えてきましたのでリンクを外しました。お手数ですが*を@に替えて送信願います)
●12月例会(第299回)のお知らせ
江端 津也子サロン・コンサート・・・解説:江端 伸昭氏
日時:2010年12月5日(日)午後2時30分(2時開場) ※曜日、開場時間をご確認ください!!
会場:代々木アトリエ・ムジカ(JR「代々木」下車・徒歩3分)
例会費:¥3000(会員)/¥3500(一般) ※当日券あり!!!
――――― 江端津也子さんからのメッセージ
モーツァルトの命日にちなんだプログラムのコンサートです。どうぞよろしくお願い致します。
プロフィール・・・・・・東京都出身。3歳より母の手ほどきにてピアノを始め、第22回日本学生音楽コンクール入賞。都立芸術高校音楽科を経て、東京芸術大学音楽学部器楽学科卒。同大学院修了。在学中にヴィーン国立大学夏季国際ゼミナールコンクール第1位。ピアノを安川加寿子、奥村洋子、河村昭三の各氏に、室内楽をH=ピュイグ・ロジェ女史に師事。1982年に演奏活動を始め、リサイタル、サロンコンサートシリーズ、フランス国営放送、NHK-FMに出演、ポーランド大使館にて招聘演奏、市民講座「モーツァルトの魅力」講師等、ソロ、室内楽、伴奏に活躍。現在日本演奏家連盟、日本フォーレ協会、日本ピアノ教育連盟、モーツァルティアン・フェライン会員。
【プログラム】
シューマン
子供の情景 op.15
フォーレ
3つの言葉のないロマンス 第3番 変イ長調 op.17-3
マズルカ op.32
・・・・・・・・・・・・
モーツァルト
ピアノソナタ 変ロ長調 K570
パイジェルロの主題による6つの変奏曲 K455
フリーメイソンの葬送音楽 K477(K479a)
通奏低音氏の葬送行進曲 K453a
例会後は江端さんを囲む懇親会への参加をお待ちしております。会場はホールのすぐ前になります。会場:イタリアン・パスタ・ダイニング「トスカーナ」/03(3372)3400
●今後の例会のご案内(会場記載のないものはお茶の水クリスチャンセンターです)
1月15日(土) 300回例会・新年会10回記念パーティー ※会場:ホテル・グランドパレス(九段下)
2月19日(土) 幸松 肇氏
3月12日(土) 山田 高誌氏
4月 田辺 秀樹氏
5月 ジェラール・プーレ氏
●会員の皆様へのお知らせ
◇例会300回記念新年会パーティーのご案内
・日時: 2011年1月15日(土) 午後12:00-14:00 (通常の例会と時間が異なりますのでお気をつけ下さい)
・場所: グランド・パレス・ホテル(九段下)
・形式: ビュッフェ形式の昼食会
・会費: 7,000円
・ゲスト: 田辺秀樹顧問、久元祐子顧問。(森治夫顧問、カーサ・モーツァルト中村ご夫妻は未定です)
・参加方法:12月例会で前売券を発売致します。例会に参加できない方は澤田会長、石津副会長、または川口副会長までメールまたは電話にてお申し込み下さい。ホテル側に確定した人数を事前に知らせる必要がある為、前売券形式とします。フェラインの記念すべきパーティーです。様々なサプライズも用意しています。奮ってご参加下さい。前売券は既に半分売れています。当日券はありませんのでご注意ください。定員は50~60名になっています。
◇訃報
元会員の五十嵐實さんが本年10月にご逝去されました。山歩きとモーツァルトがお好きだった氏のお姿を偲びご冥福をお祈り申し上げます。
●第3回会員総会議事録
1.日時:2010年11月13日 13:00-13:50
2.場所:御茶ノ水クリスチャン・センター
・決議事項
1.2009年度の会計報告
隅田理事より、報告。
その後青柳監事より、監査報告。特段の異議なし。
・報告事項
1.澤田会長より今年度活動報告今月まで)及び来年度(既に決まっているもの)を説明。
2.澤田会長より、会員アンケートの結果につき説明。前回のアンケートとの相違点について、質問あり。―――特段大きな差異はなしと回答
3.その他
フェラインHPの「広場」についての最近の状況について、澤田会長より「本来、この広場はモーツァルトについての意見交換の場であり、会員が切磋琢磨し合う場である。」旨、注意を喚起した。以上
【会長よりのメッセージ】
前回よりは出席者は多かったが、まだまだ十分ではありません。会員がフェラインの運営等についても意見を言える格好の場でありますので、是非多くの会員の皆様にご参加頂きたいと思います。(S)
●11月例会の報告(第298回/11月13日)
季刊「モーツァルティアン」編集部による例会300回記念企画 お話:若松 茂生氏(本会名誉会長)
第1部は、若松による「フェライン草創期の思い出」
話の内容は12月1日発行の季刊第75号の巻頭で「300回を迎えるモーツァルティアン・フェライン例会」と題する文章に書きました。川口さんから「お話の中で、私にとってはオカールの件が特に印象深いものでした。ちょうどその頃フェラインに入会し、分厚い楽譜を配布されて『凄い会に入ってしまった!』と驚き、困惑した25年前のことを思い出しました」というメールをいただき、草創期の意欲的な手作りプログラムは新会員の方々に強い印象を与えたようです。
第2部は、フルートとピアノの演奏会
季刊共同編集者の木村好伸さんが「フルート協奏曲」第2番ニ長調K314全曲(!)を演奏、霊感とエネルギーに満ちた演奏に会員はすっかり感動、第1楽章で拍手が起こるくらいでした。特にカデンツァが素晴らしかった。とてもアマチュアとは思えない力量でアンコールにもこたえてくれました。
次に、フルート協奏曲でピアノの伴奏をいただいた石黒裕丈さんが「ピアノのための幻想曲」ニ短調K397と「ロンド」ニ長調K485を演奏してくれました。石黒さんはプロですが、日頃は演奏にうるさい会員たちが素晴らしいとすっかり感動、手が大きいということでしょうか、打鍵が深く、「幻想曲」ファンタジーの左手がダイナミックに響き、この曲はこれほどスケールが大きなものだったのかと驚きました。石黒さんが練習の時に弾いていたシューベルトも見事で、辛口の会長の澤田さんも驚いていました。
第3部は若松による「面白モーツァルト珍盤紹介」
フィガロ弦楽四重奏曲(ダンツィ)やK331フルート四重奏曲(ホフマイスター)、ワルツ「モーツァルティアン」(ランナー)などを紹介し、最後にモダン・ジャズのモーツァルトをお聞かせしました。そしてアンコールは現代のモーツァルトともいえるグルダのモーツァルト風「アリア」。会員の皆さまに喜んでいただけたようです。
とても賑やかな例会になったので、これに気をよくして来年11月も季刊編集部企画例会にして木村さんにはフルート協奏曲第1番、石黒さんにはピアノ・ソナタをお願いしようと思っています。僕の方は、モーツァルトをめぐる女性たちシリーズ第5回「女弟子」について話す予定です。それに時間があれば「面白モーツァルト」続編。ご期待ください。(若松記)
●情報コーナー
コンサート情報 ★こちらからどうぞ(K・M)
CD情報(外盤価格はHMVの一般価格) ★こちらからどうぞ(T)
●11月例会の例会風景と、その後の楽しい賑やかな懇談会の様子の写真が出来ました。
第298回 モーツァルティアン・フェライン例会 2010年11月13日
事務局レター【第173号】/2010年11月
【編集者】山崎 博康/澤田 義博/近藤 光宏/富田 昌孝/古田 佳子 bxp00423*yahoo.co.jp (スパムメールが増えてきましたのでリンクを外しました。お手数ですが*を@に替えて送信願います)
●11月例会(第298回)のお知らせ
季刊編集部による例会300回記念企画 【1】草創期の例会の思い出【2】フルート・コンサート【3】面白モーツァルト珍盤紹介 お話:若松 茂生氏(本会名誉会長)
日時:2010年11月13日(土)午後2時
会場: お茶の水「クリスチャンセンター」(JR「お茶の水」下車・徒歩3分)
例会費:¥1500(会員・一般共)
――――― 講師の若松名誉会長からのメッセージ
第298回例会は季刊「モーツァルティアン」編集部が例会300回を記念して企画しました。例会は3部に分かれ、第1部では編集長の若松茂生がフェライン草創期の例会の思い出について話します。
1982年10月に設立されたフェラインの第1回例会は翌年1983年2月6日に開かれました。原宿のカーサ・モーツァルトで開かれた草創期の例会、今は亡き廣政豊氏、こたきひろし氏の主宰で飯田橋「憂陀」で賑やかに開かれていた「夜の例会」などについてお話します。
第2部は、共同編集者木村好伸によるミニ・コンサートです。何と「フルート協奏曲」第2番ニ長調K314全曲(!)を演奏します。次に、フルート協奏曲でピアノの伴奏をいただく石黒裕丈氏が「ピアノのための幻想曲」ニ短調K397と「ロンド」ニ長調K485を演奏してくれます。
石黒氏は、国立音楽大学器楽学科ピアノ科を卒業され、柳川守氏 小林道夫氏に師事、現在青柳いづみこ氏にフランス近代音楽を学んでおいでです。木村はアマチュア・フルーティストですが、東京芸術大学を2回受験するも惜しくも入れず仕方なくサラリーマンになって日本生命に勤務したという異例の人材で、サラリーマンをしながらフルートの腕を磨きコンサートで演奏、最近小林道夫氏との共演を実現しました。
第3部は若松による「面白モーツァルト珍盤紹介」と肩の凝らないプログラムにしました。フィガロ弦楽四重奏曲(ダンツィ)やK331フルート四重奏曲(ホフマイスター)、ワルツ「モーツァルティアン」(ランナー)などを紹介し、最後にモダン・ジャズのモーツァルトをお聞かせします。そしてアンコールは現代のモーツァルトともいえるグルダのモーツァルト風「アリア」です。どうぞご期待ください。
例会後は若松名誉会長を囲む懇親会への参加をお待ちしております。会場:「デリ・フランス」お茶の水店/TEL:03(5283)3051
●今後の例会のご案内(会場記載のないものはお茶の水クリスチャンセンターです)
12月5日(日) 江端津也子サロンコンサート(解説:江端伸昭氏) ※会場:代々木アトリエ・ムジカ
1月15日(土) 300回例会・新年会10回記念パーティー ※会場:ホテル・グランドパレス(九段下)
2月19日(土) 幸松 肇氏
3月12日(土) 山田 高誌氏
4月 田辺 秀樹氏
5月 ジェラール・プーレ氏
●会員の皆様へのお知らせ
◇例会300回記念新年会パーティーのお知らせ
・日時: 2011年1月15日(土) 午後12:00-14:00 (通常の例会と時間が異なりますのでお気をつけ下さい)
・場所: グランド・パレス・ホテル(九段下)
・形式: ビュッフェ形式の昼食会
・ゲスト: 田辺秀樹顧問、久元祐子顧問、なお森治夫顧問は未定です。またフェラインが大変お世話になった中村ご夫妻もお招きしていますが、ご出席は未定です。当日は、田辺先生と久元先生の連弾など、たくさんのサプライズがあると思います。
・会費: 7,000円
・参加方法: 11月、12月例会で前売券を発売致します。いずれの例会にも参加できない方は澤田会長、石津副会長、または川口副会長までメールまたは電話にてお申し込み下さい。(ホテル側に確定した人数を事前に知らせる必要がある為、前売券形式とします)フェラインの記念すべきパーティーです。奮ってご参加下さい。当日は年刊、季刊『モーツァルティアン』のバックナンバーを発売致します。
なお、若松名誉会長の紹介文にもあるとおり、今回のご講演は300回記念講演で、特別なものとなります。これが例会300回記念のイベント第1弾です。第2弾はモーツァルトの命日の12月5日に江端津也子さんのサロン・コンサート(解説:江端伸昭氏)。そして第3弾が上述の新年会となります。
◇第3回会員総会のお知らせ
・日時: 11月13日(土) 13:00-14:00
・場所: クリスチャン・センター(例会と同じ部屋)
・議題: 会計報告、活動報告、来年度の予定、アンケートの結果、会員数推移、その他。 多数の会員の皆様のご出席をお願い致します。(S)
●10月例会の報告(第297回/10月16日)
「モーツァルト全集から始まる20年」~バッハ、武満徹、林光の全集まで お話:大原 哲夫氏(小学館版モーツァルト全集編集長)
今回はモーツァルト没後200年に合わせて1990年11月から93年6月までほぼ2年半をかけて出版されたモーツァルト全集(全15巻、別巻1)の編集長大原哲夫氏のお話を聞きしました。190枚ものCD付きというだけでも画期的ですが、綱渡りのようなスリルに富んだ編集上の苦労話や著名な作家たちの執筆にまつわる秘話などを聞くにつけ、この全集がモーツァルト関係の出版物の金字塔であり、内外の最高峰の執筆陣をそろえてまとめ上げた一大文化事業でもあったことが分かり、その不滅の価値をあらためて教えられる思いでした。
概要は以下の通りです。大原さんは37年間勤務した小学館を2007年に卒業されましたが、30代の終わりごろにこの全集のアイデアを固め、社内で話して回ったそうです。しかし、音楽部門の編集部局もないため、奇想天外な構想に冷たい反応でした。それでも会社トップを説得して実現にこぎ着けたのは、やはりモーツァルトへの情熱だったと言えるでしょう。
宣伝も編集部自らが手掛ける異例の態勢を組み、製作コストを削減する一方、単行本としても通用しそうな立派なカタログを作り、初の録音は赤印、初のCD化は緑印を付けて「世界初」をアピール。ファンには「これを買わないと、モーツァルトに叱られるという思いにさせる工夫をした」。また、全集はCDに付ける本の編集が勝負。そのコンセプトを明確に打ち出したそうです。
当時のカタログには「18世紀を知ることは現代を理解し、来るべき21世紀への指針となるばずです」という言葉もあります。そうした努力が見事に実った結果でしょう、3万円近い価格にもかかわらずたちまち10刷に達し、全集は1万セットも出る記録を達成。単純計算でも45億円くらいの売り上げになりますが、全集が終わった後に会社からは「万年筆1本をもらった」だけだったとか。
この種の全集は通常1巻に3カ月を要するそうですが、モーツァルトの場合は2月に1巻のペース。監修役を務めた海老沢敏先生の原稿がどうしても間に合わない時があり、その部分だけ空けて印刷を開始。先生には出張先のリスボンに飛ぶ間に機内での執筆を依頼、到着後に空港からファックスを借りて編集部に原稿を送ってもらい、独特の手書き文字を「解読」できる人を脇に従え、ぎりぎり印刷所に回したこともあったというお話でした。
この偉業達成の後に襲った「虚脱感」を克服して、「バッハ全集」「武満徹全集」「林光の音楽」などの編集長も務めたわけですが、大原氏のお仕事は音楽を通して現代世界を映し出す作業にも見えました。
小学館ご卒業後も、「去りがたい」神保町に事務所を構えて仕事を続け、例会直前に最新作品「95歳のチェリスト」(仮題)を脱稿したばかり。95歳の今も年齢を感じさせない驚異的な演奏活動を展開する科学者出身のチェリスト青木十良を取り上げたそうです。例会では最新録音のバッハ無伴奏チェロ組曲第6番と、青木氏とかかわりのある指揮者近衛秀麿がベルリンフィルを指揮したモーツァルトの協奏交響曲(K297b)を聴いて閉会しました。
最後の演奏についての大原氏のコメント。「カラヤンと比べると、大学教授と幼稚園児の違いですね」。例会の詳報版は季刊誌でお伝えする予定です。(文責・山崎)
●情報コーナー
コンサート情報 ★こちらからどうぞ(K・M)
CD情報(外盤価格はHMVの一般価格) ★こちらからどうぞ(T)
●10月例会の例会風景と、その後の楽しい賑やかな懇談会の様子の写真が出来ました。
第297回 モーツァルティアン・フェライン例会 2010年10月16日
事務局レター【第172号】/2010年10月
【編集者】宮崎 宇史/近藤 光宏/富田 昌孝/古田 佳子 bxp00423*yahoo.co.jp (スパムメールが増えてきましたのでリンクを外しました。お手数ですが*を@に替えて送信願います)
●10月例会(第297回)のお知らせ
「モーツァルト全集から始まる20年 ~バッハ、武満徹、林光の全集まで」 お話:大原 哲夫氏(小学館版モーツァルト全集編集長)
日時:2010年10月16日(土)午後2時
会場: お茶の水「クリスチャンセンター」(JR「お茶の水」下車・徒歩3分)
例会費:¥2500(会員・一般共)
――――― 講師の大原さんからのメッセージ
「モーツァルト全集」全15巻+別巻1が刊行されたのは今から20年ほど前、CD190枚、書籍全15巻+1巻、総4500ページという内容のもので、執筆者はザルツブルク・モーツァルテウムの研究者をはじめ、内外合わせ数百人にのぼる規模でした。
その中には音楽関係者だけでなく、作家、哲学者、歴史家、詩人...と多岐にわたる分野の方々がいらっしゃいました。今振り返ってみると、日本の知性を代表する方々が、みなさんモーツァルトを熱く語っていたのです。
この全集はなにを目指したのか。そして、どのように作ったのか?その結果は? 音楽を狭い意味の音楽学から解放し、文学、哲学、社会学、絵画、建築、服飾...など様々な方面から読み解くと何が見えてきたのか?
さらに、そのあとに創った「バッハ全集」全15巻(1995-1999年完結)、「武満徹全集」全5巻(2002-2004完結)、「林光の音楽」全1巻(2008刊)と続く音楽全集をめぐる考察、とっておきのエピソードなど、モーツァルトから現代音楽まで、音楽と美術、目と耳、見ることと聴くこととは?そんなことを少しお話できたらと思います。
大原哲夫氏経歴
1947年生まれ。エディター・造形作家。小学館版『モーツァルト全集』『バッハ全集』『武満徹全集』『林光の音楽』等の音楽全集を企画、編集長を務める。その他企画・編集した美術書・写真集・単行本に『100年前の日本』『賢治の音楽室』『トランクの中の日本』『グレイト・ウェイヴ』など多数。
2008年大原哲夫編集室を開設。企画・編集・執筆活動のほかコンサートプロデュース、その一方で造形作品・絵画を発表。2009年初の造形作品展「眼と耳の距離は近い ―― 音額展」が話題となる。音楽と美術に差はないがモットー。著書に「武満徹を語る15の証言」(小学館)ほか。
例会後は講師の大原さんを囲む懇親会への参加をお待ちしております。会場:「デリ・フランス」お茶の水店/TEL:03(5283)3051
●今後の例会のご案内(会場記載のないものはお茶の水クリスチャンセンターです)
11月13日(土) 若松茂生氏(本会名誉会長)季刊編集部による例会300回記念企画
「草創期の例会の思い出」(若松茂生)+「フルート・コンサート」(木村好伸)+「面白モーツァルト珍盤紹介」(若松)
12月5日(日) 江端津也子サロンコンサート(解説:江端伸昭氏) ※会場:代々木アトリエ・ムジカ
1月15日(土) 300回例会・新年会10回記念パーティー ※会場:ホテル・グランドパレス(九段下)
2月19日(土) 幸松 肇氏
3月12日(土) 山田 高誌氏
4月 田辺 秀樹氏
5月 ジェラール・プーレ氏
●会員の皆様へのお知らせ
◇例会300回記念新年会パーティーのお知らせ
・日時:2011年1月15日(土) 午後12:00-14:00 (通常の例会と時間が異なりますのでお気をつけ下さい)
・場所: グランド・パレス・ホテル
・形式: ビュッフェ形式の昼食会
・ゲスト: 田辺秀樹顧問、久元祐子顧問、森治夫顧問(未定)及びカーサ・モーツァルト 中村ご夫妻(未定)
・会費: 7,000円
・参加方法:10月、11月、12月例会で前売券を発売致します。 いずれの例会にも参加できない方は澤田会長、石津副会長、または川口副会長までメールまたは電話にてお申し込み下さい。ホテル側に確定した人数を事前に知らせる必要がある為、前売券形式とします。フェラインの記念すべきパーティーです。 奮ってご参加下さい。
◇第3回会員総会のお知らせ
・日時: 11月13日(土) 13:00-14:00
・場所: クリスチャン・センター
・議題: 会計報告、活動報告、来年度の予定、アンケートの結果、会員数推移、その他。 多数の会員の皆様のご出席をお願い致します。(S)
●9月例会の報告(第296回/9月11日)
モーツァルト教会音楽の背景 ――― モーツァルトの『失われた10年』をめぐって お話:福地 勝美氏(本会会員)
9月11日(土)に東京・御茶ノ水のクリスチャンセンターで行なわれた第296回例会は、会員の福地勝美氏による「モーツァルト教会音楽の背景~モーツァルトの『失われた十年』をめぐって」という題目で行なわれました。
福地さんとお会いするのは久しぶりですが、その間に銀行勤務から大学院へ進まれ、現在美学・美術史専攻の博士課程の2年目ということで、学問に没頭できるのはうらやましい限りです。
さて、内容を要約いたしますと、モーツァルトの教会音楽が比較的低い評価(キリスト教圏の欧米においてさえも)であることと、最近の見直し。モーツァルトの教会音楽の背景となった三つのキーである、1.回勅、2.コロレドの改革、3.皇帝ヨゼフの改革について。近年のシュネーペルの研究によるミサ・ブレヴィスとミサ・ソレムニスの混合である「ハイブリッド・ミサ」という第三の分類について。「失われた十年」というべきウィーンへ出てからの教会音楽の欠落について。そして、9.11追悼や戦時下のサラエボで演奏されたことを例に、モーツァルトの教会音楽の持つ世界教会(エキュメニカル)性についての仮説、というものでした。
回勅 Annus qui は、1749年に教皇から公布されたもので、劇場的で世俗的な歌を教会で使用しないこと、楽器のうちチューバ、フルート等はオルガンと一緒に歌の伴奏に使うのであれば使用してよいが、ティンパニやホルン、トランペットなどは(たとえオルガンと一緒でも)使用してはならない、などの内容をもったものです。
しかし、必ずしも守られたとは言えず、ザルツブルクでは「トランペット、ティンパニを伴ったミサ」が要求されていたことは、有名なモーツァルトのマルティーニ神父あての手紙で言及されている通りです。
コロレドは啓蒙主義にのっとった音楽改革を行ないました。先の手紙にある45分の制限」などは、従来コロレドの個人的事情と見られていましたが、コロレドが指示したという文書記録は残っておらず、ザルツブルクの音楽事情についてコロレド以前を検証する必要ありというお話でした。
また皇帝ヨゼフが1783年に改革の勅令を発布し、多くの教会・修道院が閉鎖・廃止されて、楽師を雇う余裕がなくなったこと、また教会でのミサを含む典礼を簡素化・縮小するようにとの勅令の結果、ウィーンで器楽を伴う教会音楽が衰退し、これが「失われた十年」につながったというお話でした。
モーツァルト自身は、若い頃から教会音楽を得意とし、また就職の足がかりとして積極的にそれをアピールしています。シュネーペルのミサの「三分類」説も面白い視点ですが、講師の福地さんもおっしゃっていたように若干の疑問もあります。
これらのお話の後、「レクイエム」のアーメン・フーガの補筆版(レヴィン版)を聴きました。「失われた十年」のお陰でモーツァルトやハイドンは他の器楽曲に集中して作曲できたという音楽学者の評価も紹介されました。私は個人的には、若干の器楽曲が失われてもそれに比肩する大ミサ曲等の教会音楽がウィーンで作曲されていればと思うのですが…。
お話の後のパーティーで、さらに福地さんや他の皆さんと懇親と知識を深めました。(文責:宮崎)
●情報コーナー
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第296回 モーツァルティアン・フェライン例会 2010年9月11日
事務局レター【第171号】/2010年9月
【編集者】澤田 義博/近藤 光宏/富田 昌孝/古田 佳子 bxp00423*yahoo.co.jp (スパムメールが増えてきましたのでリンクを外しました。お手数ですが*を@に替えて送信願います)
●9月例会(第296回)のお知らせ
「モーツァルト教会音楽の背景 ――― モーツァルトの『失われた10年』をめぐって」 お話:福地 勝美氏(本会会員)
日時:2010年9月11日(土)午後2時
会場: お茶の水「クリスチャンセンター」(JR「お茶の水」下車・徒歩3分)
例会費:¥1500(会員・一般共)
――――― 講師の福地さんからのメッセージ
モーツァルトの全作品中、教会音楽は彼自身好んだジャンルにもかかわらず、不当に貶められている感がある。このことは、キリスト教の風土にないわが国のみならず、欧米でも同様である。碩学として知られるチャールズ・ローゼンでさえ、「モーツァルトの作品ジャンル中、教会音楽は劣っている(lesser)」と評価しているのだ。この理由の1つは、モーツァルトの真価はウィーン時代の作品にあるという19世紀にはびこった「判断」にあるといえよう。
教会音楽は主に、ザルツブルク時代の作だから後年の円熟時代の作品に比して優れているわけがないという思い込みである。さらに、19世紀に繰り広げられたセシリア運動により、オペラ的な教会音楽とのレッテルを貼られ、教会のミサから排除されたという点が大きい。モーツァルトの教会音楽の再評価が叫ばれたのは、ようやく近年になってである。
「教会音楽はモーツァルトの創作の中心的な場所をしめている。モーツァルトにおいてその教会音楽を熟知しない者は、モーツァルトを熟知しない者といってよい。」とするオットー・ビーバの言葉に賛同する向きも多いと思う。
今回の例会では、モーツァルト教会音楽の背景であるカトリック教会(教皇庁)、ザルツブルク宮廷、ウィーン宮廷の3つの舞台における当時の思潮について考えてみたい。特に、コロレド大司教のくびきを離れ、ウィーンで新たな教会音楽の制作を目指したモーツァルトが、ヨーゼフ改革という盾に阻まれ、断念せざるを得なかった事情を、多少詳しく見てみたい。改革の開始を、1780年末の親政開始とし、終了を1790年1月の皇帝の死と考えれば、その期間は、ほぼ10年に亘る。この期間こそ、教会音楽家モーツァルトにとって、少数の例外を除いて、雌伏を余儀なくされた「失われた10年」といってよいであろう。
もちろん、我々は、教会音楽家モーツァルトを「失った」代償として、三大交響曲や四大オペラ、さらにその他の器楽作品を享受することになったわけだが、それでもなお、《ハ短調ミサ曲》や《レクイエム》と共に、構想にあったであろう幻の《ミサ・ソレムニス ニ短調》の完成した姿を見られなかった無念さは残る。
なお、当日は奇しくも「9・11」にあたる。惨事の後に行われたローリング・レクイエムと、モーツァルトの教会音楽のエキュニメカル性についても、触れてみたい。
例会後は講師の福地さんを囲む懇親会への参加をお待ちしております。会場:「デリ・フランス」お茶の水店/TEL:03(5283)3051
●今月のインテルメッツォ(ピアノ演奏:岩島富士江)
【ピアノ音楽の歴史連続演奏 第34回】8つのメヌエットとトリオ K315g(1779~80 ザルツブルク・23歳)
●今後の例会のご案内(会場記載のないものはお茶の水クリスチャンセンターです)
10月16日(土) 大原 哲夫氏(小学館版モーツァルト全集編集長)「モーツァルト全集から始まる20年」~バッハ、武満徹、林光の全集まで
11月13日(土) 若松 茂生氏(当会名誉会長)例会300回記念講演
12月5日(日) 江端津也子コンサート(江端伸昭氏トーク予定)※会場:代々木アトリエ・ムジカ
2011年1月 300回例会・新年会10回記念パーティー
2月19日 幸松 肇氏
3月12日 山田 高誌氏
4月 田辺 秀樹氏
5月 ジェラール・プーレ氏
●会員の皆様へのお知らせ
2011年1月例会は第300回例会となります。これを記念して、来年の1月例会は新年会兼記念パーティーとする予定です。日時、場所等詳細については追ってご連絡致します。
●7月例会の報告(第295回/7月24日)
もう一人のモーツァルト? ――― ナンネルの光と影 お話:澤田 義博氏(本会会長)
日本ではとかくナンネルの才能を過小評価する傾向がありますが、彼女の豊かな才能については、第一次資料から実証的に明らかにできます。
今回の講演では、ナンネルの視点からモーツァルト及びモーツァルト一家を見ると同時に、何故神童と言われたナンネルがその才能を十分に発揮できず、音楽家として歴史から消え去ることになってしまったかを考察してみました。ナンネルの一生を可能な限り正確に辿って見ると、その主な理由が二つあることが明らかとなります。
1.当時の時代背景:当時は女性の作曲、ヴァイオリンなどの演奏は認められていませんでした(ピアノや歌唱は許されていました)。この傾向はしばらく続き、約50年後のファニー・メンデルスゾーンも、結婚するまでは弟の名前で楽譜を出版していました。結婚後は父親に逆らい自分の名前で出版しています。
2.レオポルトの利己的な態度:ナンネルにとって、決定的な悲劇は彼女が18歳の時1769年からの第1回イタリア旅行に経済的理由を口実に、同行させてもらえなかった事です。当時は音楽家として名を成すにはイタリア留学が必須でした。レオポルトはモーツァルトを大成させることに夢中で、ナンネルの才能を同時に育てる意思がなく、「お金がない」と言い続け、ナンネルは常に後回しにされるか、無視されました。この為、彼女は心に深い傷を負うことになります。それでもミュンヘン、アウグスブルク、ザルツブルクなどでは彼女はモーツァルトと公のコンサートで共演し、聴衆を感動させます。
作曲も密かに続けていました。モーツァルトは彼女の作曲及びピアノ演奏の実力、才能を十分に認めていました。事実、彼は手紙の中でも実際にナンネルの作品を褒めています。彼女の曲の殆どは彼女が処分してしまったようですが、1986年にプラートがピアノ変奏曲のフラグメントをナンネルの作品と結論づけました。他にもナンネルの筆跡の楽譜が最近見つかっています。これからも彼女の作品が発見されるかもしれません。モーツァルトはナンネルにウィーンに引越す様に執拗に勧めます。彼女はウィーンで音楽家として十分生活できたはずなのです。しかし彼女には父親に逆らってウィーンに行く勇気がありませんでした。
彼女は私生活でもレオポルトの利己主義の犠牲になります。先ず相思相愛だったアルマン・ディッポルトとの結婚をあきらめさせられ、その上ザンクト・ギルゲンの管理官である、ベルヒトルト・ツー・ゾネンブルク(すでに5人の子持ち)と結婚させられることになります。結婚生活はミゼラブルでした。この時点で、もうナンネルは公に演奏することを諦めていました。父親に従順な娘が最も不幸な境遇に陥ることになってしまったのです。ベルヒトルトはその後男爵となりますが、彼が亡くなるとナンネルは実子の長男レオポルト一人を連れてさっさとザルツブルクに帰ってしまいます。モーツァルトは父親に反抗し、自分自身の進むべき道を切り開いて行きます。
その後、彼とレオポルトやナンネルとの関係は徐々に疎遠になって行きました。父親の死でさえ、ナンネルの元の恋人アルマンからの連絡により知る事になります。ナンネルは主として父親のエゴイスム或いは判断ミスの犠牲になり、一時は西欧の王室や貴族達を席巻しておきながら、その才能を更に発揮する機会を与えられずに78歳で亡くなります。音楽を愛する人々は貴重な資産を失うことになってしまいました。
彼女はコンスタンツェに事実上乗っ取られてしまったモーツァルト家の墓地ではなく、彼女の遺言どおり、アルマンの墓がある聖ペーター寺院に葬られました。こうして二人はやっと結ばれたのです。
最後に一言。「ナンネルの楽譜帳」については、以前は大部分レオポルトの作曲と考えられてきましたが、最近の研究では、大半の曲は当時ザルツブルク周辺でピアノ練習曲として使われていた曲であることが分かって来ました。レオポルトの作品は数曲しかありません。なお文末になって恐縮ですが、わざわざご自宅の「モーツァルト」と言う種類のミニバラをお持ち頂き、かつナンネルの楽譜帳を演奏して下さったフェライン事務局委員の笠島さんに厚くお礼申し上げます。(文責:澤田)
●情報コーナー
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CD情報(外盤価格はHMVの一般価格) ★こちらからどうぞ(T)
第295回 モーツァルティアン・フェライン例会 2010年7月24日
事務局レター【第170号】/2010年7月
【編集者】石津 勝男/近藤 光宏/富田 昌孝/古田 佳子 bxp00423*yahoo.co.jp (スパムメールが増えてきましたのでリンクを外しました。お手数ですが*を@に替えて送信願います)
●7月例会(第295回)のお知らせ
「もう一人のモーツァルト?―― ナンネルの光と影」 お話:澤田 義博氏(本会会長)
日時:2010年7月24日(土)午後2時
会場: お茶の水「クリスチャンセンター」(JR「お茶の水」下車・徒歩3分)
例会費:¥1500(会員・一般共)
――――― 講師の澤田会長からのメッセージ
ナンネルについて調べてみようと思ったのは、Rita Charbonnier 著“La Soeur de Mozart”(「モーツァルトの姉」)を読んだ事がきっかけでした。この本はイタリア語の小説で、なかなか良く書けています。フランス語訳、英訳も出ていますが、和訳はありません。
その後ファニー・メンデルスゾーン(1805-1847)の話を興味深く読みました。フェリックス・メンデルスゾーンは姉ファニーの曲の中で何曲かを自分の作曲だとして出版していました。同じことは彫刻の世界でもあります。ロダンとその愛人カミーユ・クローデルの関係もおそらくメンデルスゾーン姉弟と似たような関係だったと思います。それでは、モーツァルトとナンネルの関係はどうだったのでしょうか? それが今回のテーマです。
モーツァルトについてはナンネルとの関連でのみお話致します。日本では、ナンネルの伝記は出版されていませんが。そのせいか、日本でのナンネル観は不正確で、ナンネルは過小評価されていると思います。欧米では、ナンネルの伝記やナンネルを主人公にした小説が数多く出版されています。実はナンネルも作曲していましたが、父親の態度が原因で、現在ではフラグメント1曲(或いは現状2曲?)を除き、残っていないようです。今回は波乱に富んだナンネルの生涯を正確に辿ってみたいと考えております。通常の伝記では書かれない様な事もお話するつもりです。
例会後は講師の先生を囲む懇親会への参加をお待ちしております。会場:「デリ・フランス」お茶の水店/TEL:03(5283)3051
●今後の例会のご案内(会場記載のないものはお茶の水クリスチャンセンターです)
――――― 8月は夏休みです ―――――
9月11日(土) 福地 勝美氏(当会会員)「教会音楽家モーツァルトの『失われた10年』をめぐって」
10月16日(土) 大原 哲夫氏(小学館版モーツァルト全集編集長)「モーツァルト全集から始まる20年」~バッハ、武満徹、林光の全集まで
11月(日にち未定) 若松 茂生氏(当会名誉会長)例会300回記念講演
12月5日(日)江端津也子コンサート(江端伸昭氏トーク予定)※会場:アトリエ・ムジカ(代々木)
2011年1月 300回例会・新年会10回記念パーティー
2月19日 幸松 肇氏
3月12日 山田 高誌氏
4月 田辺 秀樹氏
5月 ジェラール・プーレ氏
●新入会員のご案内
今月より適宜で新入会されました方々のお名前をお知らせしていきたいと思います。今回は今年4月以降現在までの新入会員の皆さんです。(F)
大谷幸男さん、岡田斎さん、小川恒雄さん、木村好伸さん、桑原隆之さん、後藤芳行さん、後藤由美子さん、重田秀範さん、丸橋英夫さん、山本博幸さん、山本幹男さん(五十音順)
●6月例会の報告(第294回/6月27日)
モーツァルトにおけるディナーミク ピアノとお話:久元 祐子氏
モーツァルトの楽譜は、残された自筆譜、初版譜などをもとに原典版が編集されているが、モーツァルトはフォルテやピアノなどのディナーミクを控えめにしか記していない。当時誰もが知っているような演奏慣行は書き込まれなかった。
例えば同じ音型が繰り返されるとき、これにディナーミク上の変化をつけたり、装飾をつけたりすることは幅広く行われていたが、そのような変化や装飾は、演奏者の判断に任されていたからである。
【ヨハン・クリスチャン・バッハの影響~モーツァルトのソナタ第5番K283とJ・C・バッハのソナタOP5-3】
1768年に出版された作品5の曲集はピアノフォルテで演奏されることが明記されておりこの楽器を想定して作曲された最も早い時期の作品であることでも知られている。
この曲を聴くと音が多い様にみえるが装飾を取り除くと施律の形がK283第一楽章とよく似ていることがわかる。J・C・バッハのOP5-3は優雅で装飾が多くなめらかであるが、モーツァルトの音楽も聴いていてとても流れが自然で、違和感なくすっと心の中に入っていくようなところがある。いわば自然な場面転換の仕掛けを、モーツァルトはJ・Cバッハから学んだのではないだろうか。
【モーツァルトのピアノソナタK284とJ・C・バッハOP5-2】
K284のソナタは、ミュンヘンのデュルニッツ男爵のために作曲されたため、〈デュルニッツ・ソナタ〉の愛称がついている。
それぞれの第一楽章を比べてみると、まず冒頭が、K284ではニ長調の主和音がやや長く鳴らされ、ユニゾンで力強いテーマに入っていく。J・C・バッハではやはり主和音が三回続いて鳴らされ、いかにもバッハらしい典雅で穏やかな旋律が後に続く。
第一主題から推移部に入ると、どちらもまったく同じトレモロの伴奏が左手に現われ、ひじょうに似た雰囲気で音楽は流れていく。第二主題は一見すると似てはいないが、その歌うような性格は共通しているのと、第二主題に入る直前の音型はまったく同じである。
このようにそれぞれの部品の調、リズム、雰囲気、音型が共通していて、部品をつなぐ接続部が同じであれば、部品を取り替えても全体の構成は崩れない。お遊びなのだが、OP5-2を最初から弾き始めて推移部までを弾き、第2主題はモーツァルトのK284を使った後、またバッハに戻って提示部を弾いてみたところ違和感なくつながっていく。
この様にとても似ているこの2曲だが、弾いていても聴いていても何かが違っている。明らかにモーツァルトの曲の方が力強く、ダイナミックである。J・C・バッハの音楽は優雅で上品だ。ロココ調の調度品に飾られ、香水がほのかに漂う部屋の中で、音楽はひたすら美しく流れていく。一方モーツァルトは似た香りに満たされた空間の内部にとどまっていない。モーツァルトの音楽は、空間的制約から離れて自由に飛翔するのである。
K284のフィナーレは、テーマと12の変奏からなる大規模な変奏曲で書かれている。第11変奏は33小節に及ぶアダージョ・カンタービレで、細かなパッセージが即興的な雰囲気を持って何回も繰り返される。
以上、久元祐子先生のレクチュア・コンサートの内容を記録させて頂いたが、先生の永年の経験や豊富な知識による魅力的なお話とすばらしいピアノ演奏の様子を私の聴き取り方では十分にお伝えし切れなかったのではないかと思う。
印象的だったのはK284の終楽章の12の変奏曲、特に第11変奏ではディナーミクの遊びがあり装飾が細かくつけられ、転調して暗くなり再び夢みるような明るさへと弧を描くように転回していく美しい曲の流れに会員一同、深く感銘を受けました。これからもまた楽しく勉強させて頂きたいと心よりお願い申し上げます。(文責:石津)
●情報コーナー
コンサート情報 ★こちらからどうぞ(K・M)
CD情報(外盤価格はHMVの一般価格) ★こちらからどうぞ(T)
●6月例会の例会風景と、その後の楽しい賑やかな懇談会の様子の写真が出来ました。
今回の久元先生のコンサート会場は、京王井の頭線「神泉駅」徒歩2分の松濤サロンという初めての会場でした。会場の印象はどうだったでしょうか。
また、コンサート後の二次会場は、川口さんご推薦の「Cafe Coral」でした。貸し切り同様で、4~5人のテーブルに別れ、飲み放題で楽しく盛り上がっていたようですが、会場の照明に微妙に光と陰があって、光の方は良いのですが、陰の方の写真写りが悪く、今回は光の方だけ写真の焼き増しをすることにしました。しかし、 写真は担当の倉島のカメラで撮影しておりますので、焼き増しを希望する方は、後日、倉島までお申し出、お願いします。 (O.K.)
第294回 モーツァルティアン・フェライン例会 2010年6月27日
事務局レター【第169号】/2010年6月
【編集者】岩島 富士江/近藤 光宏/富田 昌孝/古田 佳子 bxp00423*yahoo.co.jp (スパムメールが増えてきましたのでリンクを外しました。お手数ですが*を@に替えて送信願います)
●6月例会(第294回)のお知らせ
久元祐子レクチュアー・コンサート「モーツァルトにおけるディナーミク」 ピアノとお話:久元 祐子氏
日時:2010年6月27日(日)午後2時
←日曜日です!!
会場: 渋谷・松濤サロン (渋谷区松濤1-26-4 03-3770-9611)JR山の手線・東横線・地下鉄「渋谷駅 」徒歩10分/京王井の頭線「神泉駅」徒歩2分
例会費:¥3000(会員・一般共)
当日券あり 会員以外の方大歓迎です
――― プログラム ―――
モーツァルト/ピアノ・ソナタ ト長調 KV283(189h)
ヨハン・クリスティアン・バッハ/ピアノ・ソナタ ト長調 作品5の3
モーツァルト/ピアノ・ソナタ 変ホ長調KV282(189g)
ヨハン・クリスティアン・バッハ/ピアノ・ソナタ ニ長調 作品5の2
モーツァルト/ピアノ・ソナタ ニ長調KV284「デュルニッツ」より
(※プログラムは変更になることがあります)
モーツァルトの楽譜は、残された自筆譜、初版譜などをもとに原典版が編集されていますが、モーツァルトは、フォルテ、ピアノなどのディナーミクを控えめにしか記していません。モーツァルトが残したディナーミク指示はどのようなものか、それを手がかりにどう演奏するのかについて、考えてみたいと思います。(久元)
例会後の二次会場:「Cafe Coral」(03-5728-3207 会場より徒歩2分)
●今後の例会のご案内(会場記載のないものはお茶の水クリスチャンセンターです)
7月24日(土) 澤田 義博氏(当会会長)「もう一人のモーツァルト?ーナンネルの光と影」
――――― 8月は夏休みです ―――――
9月11日(土) 福地 勝美氏(当会会員)「教会音楽家モーツァルトの『失われた10年』をめぐって」
10月16日(土) 大原 哲夫氏(小学館編集部)
11月(日にち未定) 若松 茂生氏(当会名誉会長)例会300回記念講演
12月5日(日)江端津也子コンサート(江端伸昭氏トーク予定)※会場未定
●5月例会の報告(第293回/5月15日)
モーツァルト・オペラと私 お話:杉 理一氏(ニューオペラプロダクション代表、元NHKTVオペラ番組デイレクター)
【1部】NHKでオペラ番組デイレクターとして30年、戦後の日本オペラ史と共に歩まれた杉さんの興味深いお話と映像。
(1)昭和9年発足した藤原歌劇団は敗戦の翌年1月、旧帝国劇場で「椿姫」を上演、以来、イタリア歌劇を中心に活発な活動を再開した。しかし、モーツアルトの作品は「ドン・ジョヴァンニ」のみ。昭和27年創立の二期会はアンサンブルを重んじ、モーツアルト作品を積極的に頻繁に上演した。
(2)映像から
♪1980年、NHK収録の86歳カール・ベーム「フイガロ」の指揮ぶり。
♪56年、第1回NHKイタリア歌劇公演は日本歌劇界に大きな衝撃を与えた。その時の「フイガロ」から、タッデイの歌う「もう飛ぶまいぞ」(フランス国旗を打ち振るノニのスザンナ,シミオナートのケルビーノ。)
♪英国ロイヤルオペラの「もう飛ぶまいぞ」シャーフの演出。(伯爵に歌いかけるフィガロ)
♪「恋の悩み」を歌うケルビーノ、演出の変遷。(1)第1回NHKイタリア歌劇公演、シミオナートのケルビーノ。(2)80年来日のウィーン国立歌劇場バルツァのケルビーノ。(3)ベルリン・.コーミッシェ・.オパーの突進型。(4)ピーター・セラーズのアイスホッケー選手ケルビーノ。
♪「ドン・ジョヴァンニ」の「手を取り合って」シーン比較。(1)54年フルトヴェングラー、チェーザレ・シェピ、エルナ・ベルガー。(2)95年ザルツブルク・マリオネットオペラ。(3)二期会公演、勝部太、鮫島有美子。
♪来日したゲルハルト・ヒュッツがドン・ジョヴァンニを演じた時の、あっと驚くような幕切れの演出(映像無し)、マンフレット・グルリット指揮。
♪「後宮からの誘拐」91年ミヒャエル・ハンペ演出「俺は行くが気をつけろ」の2重唱と「深い悲しみに」のアリア。などなど懐かしいお話と珍しい映像の数々。
【2部】定年後プロダクションを設立されて、オペラ、コンサートを制作演出、字幕監修など、ひたすら純粋な情熱を持って進まれた20年。その間、自主公演以外に市民オペラの助っ人としても厳しい経済的、時間的制約の中で活躍,その中から神戸での市民オペラ「魔笛」公演時の映像付きでの演出苦心談。疑問と解決策。
♪「魔笛」はお伽話なので、自由な発想が可能で演出するにも工夫の余地が大きい。
Q:なぜ女王に都合よく、この山奥にタミーノ王子は現れたのか? A:女王が侍女達に命じ大蛇を操り王子を追い立てたからである。
Q:初演舞台の版画で殺された大蛇が3切れなのはなぜか? A:3人の侍女、それぞれが操り棒で引きちぎったから。
Q:タミーノは東洋の王子? 或いは日本の王子? A:日本の王子とすると、みずら姿かチョンマゲ姿でなくてはならない。
Q:パパゲーノは自然児で教育も受けていないなら、話す言葉は? A:土地の言葉、つまり、神戸弁でなくてはならない。(訳詞上演だった)
Q:3人の童子は女王側か?ザラストロ側か? A:童子達は「国境なき救助隊」で、困っている人に分け隔てなく助けの手を差し伸べる。 従って乗り物には万国旗、服装も着物、中国・ベトナム風の服、チロリアン服と国際的。遊び道具もけん玉やテレビ・ゲーム機。
Q:童子の乗り物は何が相応しいか? A:1786年、悪天候のため失敗し大損害を受けた興行師シカネーダが夢見ていたのは、やはり熱気球であったろう
Q:「魔笛」に示されたフリーメイソンの象徴は? A:石工組合のルーツ説を暗示するピラミッド型のランタンを始め、3の数字を重視、合唱の配列も三角で、ザラストロはその頂点に立つ。合唱の胸にはフリーメーソンのシンボルマークのコンパスと定規。
Q:見せ場の火と水の試練の舞台作りは? A:奥行きのある劇場だったので、スクリーンにマグマ噴出と大瀑布の映像を投影、迫力を出した。
Q: パパゲーノとパパゲーナの子供は何人? A:子供の出演は人集めに大変有効でプロデューサーは沢山使いたがる。この時は2回公演でそれぞれ30人、計60人を使い。満員の客席は沸きに沸いた。
Q:友愛精神を説きながら、ザラストロの言動には人種差別、女性蔑視が感じられ、結末も、酷すぎるのでは? A:幕切れ直前、タミーノとパミーナはフリーメーソンシンボルの首飾りをかけて貰い奥の祭壇へ。3人の童子は侍女,夜の女王、モノスタトスを助け起こし中央舞台へ導き、女王は結ばれたタミーノとパミーナに祝福を与える。タミーノはパミーナの絵姿を女王に返す。パパゲーノとパパゲーナは30羽のひよこと登場,全員で愛の賛歌を歌う内に幕が下りる。
会員は思わず熱気ある公演の映像拍手。それは、今はやりの奇をてらうのではない、深い洞察から来る杉さんの演出とオペラへの純粋な情熱への感動の拍手だった。 多くの音楽現場を経験された珍しい講師として大変興味深く、熱い思いの残る例会となった。(F.I)
●情報コーナー
コンサート情報 ★こちらからどうぞ(K・M)
CD情報(外盤価格はHMVの一般価格) ★こちらからどうぞ(T)
●写真コーナー
モーツアルトと言う名の美しい薔薇の花の写真が届きました。送って下さった優しい方から次のようなメッセージが届いておりますので、ご報告します。
「例会で一度しかお会い出来ませんでしたが、その時にお隣の席に座った小滝さんが、
”モーツアルトが好きなのに、モーツアルトという薔薇も知らないのか、庭に必ずモーツアルトを植えなさい”とおっしゃいました。
その後、小滝さんから芳純という薔薇をプレゼントしていただき、お礼にワインと 信玄餅を送りました。その時にお電話をいただき、モーツアルトを植えましたとお話したらとても喜んで下さいました。体調が悪くて、フェラインにはもう行けないとおっしゃっていました。
薔薇の会の会長さんだった小滝さんとの想い出で、一月例会で夕べの想いを 小滝さんを偲んで歌わせていただきました。
昨年は、まだ小さかったのですが、今年は、大きくなり沢山の花を咲かせてくれました。これが薔薇なの?と思われるかもしれませんが、我が家の前は、この薔薇を見る方が多く、足を止めて行かれます。」
小滝さんがいつも目を細めてお話ししていた薔薇の花です。私も初めて拝見しましたが、薔薇が今日のように品種改良される以前の花だと熱心に講釈して下さった小滝さんを、懐かしく思い出します。( O.K.)