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10月例会(第396回)のお知らせ 
日時: 2019年10月26日(土)
午後2時開演 (午後1時半開場)
会場: お茶の水クリスチャンセンター416号室
(JR御茶ノ水駅下車・徒歩3分) 
例会費: 2,500円(会員・一般共)一般の方で聴講ご希望の方は、当日直接お越しください。
お話: 加藤浩子氏

「テオドール・クルレンツィス ダ=ポンテ三部作一挙上演への道」
ギリシャ生まれのテオドール・クルレンツィス(1972―)は、現在のクラシック音楽界の風雲児として話題を呼んでいる指揮者です。とりわけ、モーツァルトのオペラの演奏では、彼が創設したピリオド楽器のオーケストラ「ムジカエテルナ」と、ダ=ポンテ三部作を録音し、大胆で新鮮、創意工夫に満ちた音楽づくりでセンセーションを呼びました。
 フェラインでも、彼のモーツァルト・オペラの演奏について、ご紹介させていただいてきましたが、この9月に、ルツェルン音楽祭でダ=ポンテ三部作の一挙上演に接することができたのは、人生最大級の音楽体験になりました。「演奏会形式」と銘打たれた枠組みをはるかに超えた、これからのオペラの一つの形態を示してくれた公演だったからです。
 今回は、そのご報告を交えつつ、これまで私が体験したクルレンツィスのオペラの公演を振り返り、ここへ至る道、そしてモーツァルト・オペラの上演史において彼らが果たした役割について、改めて考えてみたいと思います。

 

 

今後の例会予定 (OCC:お茶の水クリスチャンセンター)
●11月30日(土)西川 尚生氏 OCC415号室
●12月14日(土)15時開演:永峰 高志氏&久元 祐子氏コンサート・会場はベーゼンドルファー・ジャパンに変更されました!
★2020年1月のフェライン例会400回記念パーティ及び新年会のお知らせ           (澤田名誉会長より)
ついこの間300回記念をお祝いしたかと思ったら、もう400回記念となりました。その間フェラインは格段に進化し、今や、ザルツブルクのモーツァルテウムからも、その活動内容につき称賛されています。パーティの概要は次の通りです。約10年に一度の機会ですから、会員の皆様は奮ってご参加下さい。
日時:2020年1月19日(日)12:00-14:00(20分程度延長は
可)
場所:グランド・パレス・ホテル 九段
招待者:ジェラール・プーレ+川島余里、久元祐子、田辺秀樹(計4名の先生方には勿論、後半の部で演奏をお願いしておりますなお、今回初めて、プーレさんと久元さんの共演が実現します。勿論本邦初演です。」)
参加費:9,000円(一人当たり)
●2月22日(土)    森垣 桂一氏      (OCC416号室)
●3月14日(土)    山崎博康副会長(OCC415号室)
●4月・日未定        田辺 秀樹氏     (場所未定)
●5月16日(土) コンサート(会場:代官山教会ホール)
     プーレ氏・川島氏


第395回例会報告 (2019.9.21) 

2019年9月例会記録

今月の例会は代官山教会における宮谷理香さんのピアノリサイタルだった。フェラインの歴史に残る名演だったと思う。プログラムはとても知的に考えられており、モーツァルトとショパンだけでなく、モーツァルトの次男(実際は4男)であるフランツ・クサーヴァー・モーツァルトのポロネーズも1曲組み込まれていた。なぜなら、モーツァルトとショパンをつなぐ鍵はF.X.モーツァルトだからである。F.X.モーツァルトがワルシャワでリサイタルを行った時、若きショパンは聴きに行ったと言わ
れている。そこでモーツァルトとショパンはつながるのである。モーツァルトとショパンは年齢差もあり(50歳以上異なる)、勿論会う機会はなかったが、ショパンがモーツァルトを尊敬していたことは有名な話である。以下主な演目について振り返ってみたい。前半の3曲はモーツァルトだった。

1.    デュポールのメヌエットによる9つの変奏曲 二長調 
K.573デュポールは今では殆ど忘れられた存在だが(但し、パリの音楽博物館には彼の立派な肖像画が展示されている)、モーツァルトのこの曲により、依然その名前は知られている。作曲家であり、チェロの名手だった。モーツァルトはプロイセンのポツダムの宮殿を訪れ、フリードリッヒ・ヴィルヘルムⅡ世に謁見している。その時、モーツァルトはプロイセンの宮廷学長だったデュポールのメヌエットを主題にした変奏曲を即興演奏した。その演奏を楽譜に落としたと思われるものがこの曲である。私は第6変奏二短調が一番美しいと思う。実際この辺から、デュポール色はだんだん薄くなり、モーツァルトに近くなっている。その辺りを宮谷さんは見事に表現していた。

2.    幻想曲 二短調 K.397

この曲はよくコンサートで演奏されるお馴染みの名曲である。最後
の10小節が欠落しているため、ブライトコップフ社がミューラーに補
筆を依頼して刊行した。我々が聴いても
その部分は違和感がある。モーツァルトだったら、こんな終わり方は
しなかったと思う。

3.    ピアノ・ソナタ 変ロ長調 K.333

この曲はK.332と並び、モーツァルトのピアノ・ソナタの中で、最高傑作と言われている。第1楽章は流麗という言葉がぴったりする旋律で、途中とても美しいパッサージュがある。第2楽章はアンダンテ・カンタービレであり、その指示通り、オペラのアリアを思わせるパッサージュにあふれたとても美しい楽章である。 第3楽章はロンドだが、末尾近くにカデンツァが置かれており、モーツァルトの力の入れようがよく分かる。このソナタには、第2楽章のみならず、全ての楽章に美しいフレーズ
が埋め込まれており、ザルツブルクにコンスタンツェを連れて行ったその帰りにリンツに寄り、そこで交響曲リンツとこのソナタを作曲している。従ってこのソナタの愛称はリンツである。モーツァルトの精神的な高揚感が良くわかる曲である。それを見事に料理したのが宮谷さんで、とても繊細にこの曲の美しさを浮き出させていたと感じた。聴衆にその曲の美を再認識させたり、新たな美を感じ取らせるのが演奏家の腕前なのだが、この演奏は正にそのように感じさせるものだった。後半はまずポロネーズの聴き比べから始まった。当初の予定を少し拡張して、当時流行したオギンスキー、ショパン(7歳の時
に作曲)、そしてF.X.モーツァルトのポロネーズ(感傷的なポロネーズ ロ短調 作品17-1)を聴き比べた、どの曲も作曲の出来栄えはまあまあという感じ。その後、映画「戦場のピアニスト」ですっかり有名になった「アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ」 変ホ長調 作品22 が演奏された。この映画はシュピルマンというポーランドのユダヤ人ピアニストの第二次大戦中に起きた出来事の実話をもとにして、ロマン・ポランスキー監督が映画化したものであるが、主役のシュピルマンはこの曲が大好きで、ナチからの逃亡中、絶望的になりながらもとにかくこの曲をもう一度弾きたいという執念で、終
戦まで逃亡を続けたのである。つまりショパンのこのポロネーズが彼の命を救ったと言っても過言ではないと思う。そうした、背景もあり、宮谷さんの演奏は熱と力のこもった文字通りの名演となった。私もこの曲の最高の演奏であったと感じた。少なくとも私が今までに聴いた演奏の中で、最高の出来栄えだった。いわば、シュピルマンの魂が宮谷さんに乗り移ったのではないかとさえ感じた。フォルティッシモの烈しさ、巧みなデュナーミク、テンポ、タッチ、全て完璧だったと思う。そのあと、更にショパンを2曲、ノクターンの7番 嬰ハ短調、スケルツォの第3番嬰ハ短調。いずれもショパンの超有名な曲では
ないが、名曲ばかりで、出来栄えは素晴らしかった。アンコールは3曲、最初はモーツァルトに敬意を表して頂き、K.331ピアノ・ソナタ第3楽章のトルコ行進曲。やや月並みなアンコールと思われたが、続けて最近脚光を浴びているトルコ人ピアニスト、ファジル・サイのアレンジによるジャズ的なトルコ行進曲を聴いて、宮谷さんはノリノリで、
こちらを弾くためにこの曲を選んだのだと合点が行った。最後に極めてショパンらしい、遺作のノクターン嬰ハ短調。この曲も「戦場のピアニスト」で使われ、急にポピュラーになった曲である。宮谷さんはこの曲を実にしっとりと聴かせてくれた。この素晴らしいコンサートのフィナーレに相応しいアンコール曲だと思った。(文責:澤田義博)

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