季刊「モーツァルテイアン」第89号
2014.06.01. モーツァルテイアン・フェライン発行
季刊「モーツァルテイアン」(第89号)
………も く じ………
1,モーツァルトへの接近一高橋英郎会長に聞く・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・若松茂生
2,高橋英郎先生のご逝去を悼む・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・石津勝男
3,モーツァルトの「日常と遊び」をめぐって・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・石津勝男
4,オペラ・セリア「イドメネオ」-8組の映像の総括とウィーン版への奨めー・・・・倉島 収
5,オーケストラの楽器配置について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・真部 淳
6,パリのモーツァルトーその光と影(最終回)・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・澤田義博
表紙:マカルト小橋からホーエンザルツブルク城を望む(倉島 収氏撮影)
エデイターより(89号編集後記)
■ことしも早くも半ば、アジサイの季節が近づいてきました。まぶしい陽光に心躍る気分ですが、悲報が続きます。モーツァルト研究の第一人者で、本会の初代会長を務められた高橋英郎先生が3月にお亡くなりになりました。私はNHK文化センターの連続講座や 先生主宰のモ-ツァルト劇場でたくさんのことを教えていただきました。「見てくれの馬鹿娘」を「愚か娘になりすまし」と訳された抱腹絶倒の舞台も忘れられません。先生のご冥 福を心よりお祈りいたします。
■本号は高橋先生を偲び、巻頭に1991年発行のモーツァルティアン「モーツァルト没後200年記念号」の記事を再録しました。先生の膨大な著作、訳書には若松名誉会長との編著「モーツァルト『全作品』ディスコグラフィ」(1992年、小学館)があります。世界初の画期的労作に取り組んだお二人の対談で先生の“肉声”に触れることができます。ハスキル、オカール…と縦横無尽に語り尽くしたモーツァルトへの接近法は、今なお手引きとしての価値を失っていないように思えます。草創期を知る石津副会長に追悼の言葉を寄せていただきました。
■石津さんのエッセーは自筆譜の書き込みを手掛かりに作曲家の「日常と遊び」について考察されています。ドン・ジョヴァンニ作曲のときも「ケーゲルをしながら」という証言を見ても、作曲家は創作と一体化した遊びの達人だったことがうなずけます。作品に「遊戯する精神」を感じ取ることも理解を深める道と教えられました。
■日本有数の映像ライブラリーを誇る倉島副会長には「イドメネオ」を取り上げていただきました。8種類もの映像を比較した上で望ましいイドメネオ像に迫る論考に圧倒されます。5月例会でもこのテーマで講演していただきましたが、ウィーン版を基調としてイリアとイダマンテとの愛の物語を中心に据えるという新演出がいつの日か実現するように願わずにはいられません。作曲家本人もきっと心待ちにしているはずです。
■真部先生の連載は学生時代の最後を飾る欧州音楽紀行です。年末年始のシーズンだったこともあるのでしょうか、たいへん充実の旅だったことが分かります。貴重な発見にも恵まれた若き日の体験記を見ると、旅に関するモーツァルトの言葉が思い出されます。
■最後は澤田会長の「パリのモーツァルトーその光と影」の最終回です。従来にない旅案内ともなっており、3月末、同名のタイトルでアカデミア・ミュージック社から出版されました。樋口隆一先生(明治学院大学教授)は「類のないモーツァルトを軸としたすてきな『パリ音楽案内』であり、パリを軸としたモーツァルト論である」と賞賛の言葉を寄せています。本号では澤田会長のご好意で最後の部分を掲載させていただきました。巻頭の対談に登場するハスキルについてもエピソード満載で、モンパルナスの墓地を訪ねてみたくなりました。
■表紙の写真は倉島副会長の写真ファイルから選んでいただきました。最後に3月発行の第88号こついてお詫びと訂正があり、また巻頭記事の標題にある「モーツァル の耳」は正しくは「モー-ツァルトの耳」でした。誤植を見落としたためです。今後心して校正に念を入れます。 (2014 5 23 浦安市 山崎博康)
モ-ツァルテイアン・フェライン会報 第89号(季刊)
2014.06.01発行禁転載
1、「発行人」:若松茂生、「編集人」:山崎博康
2、「編集部」:〒279-0014浦安市明海4-2-5-608 山崎博康方
3、特別会費 ¥500円
4、本書掲載記事の、他の著作物やメデイア等への転載を禁じます。
季刊「モーツァルティアン」第90号原稿募集
モーツァルト関係の音楽論、音楽随想、音楽評論など自由
締切目:2014年7月20日 発行予定:2014年9月1日
*原稿は原則ワードファイル(標準設定フォーム)をEメールにてお送り下さい。
*送り先は山崎hyrynx@gmail.comまたは木村:flkimura@jcom.home.ne.jp
*郵送の場合は編集部まで:〒279-0014浦安市明海4-2-5-608 山崎博康方
モーツァルティアン・フェライン新会員募集中
名誉会長:若松茂生、会長:澤田義博、副会長:石津勝男、倉島収、川口ひろ子、
顧問:久元祐子(国立音楽大学准教授)、田辺秀樹(一橋大学名誉教授)、森治夫(会員)
主な活動:季刊「モーツァルティアン」と月報「事務局レター」の発行、月例会の開催、
年会費(入会金なし):正会員5,000円、学生会員2,500円、*例会費は別途実費が必要、
お問い合わせ:倉島収:04-7191-0500(TEL&FAX)
季刊「モーツァルテイアン」第88号
2014.03.01. モーツァルテイアン・フェライン発行
季刊「モーツァルテイアン」(第88号)
………も く じ………
1、俳画集「モーツァルトの耳」(全16回)金森三猪作・・・・・・・・青柳省三
2、モーツァルティアン・フェラインと「憂陀」・・・・・・・・・・・若松茂生
3、虚空するモーツァルト・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・金森比呂尾
4、モーツァルトとクラリネット<自作CD解説書>・・・・・・・・・・金森一咳
5、「ヴェルデイとモーツァルト」・・・・・・・・・・・・・・お話 加藤浩子
6、モーツァルト弦楽四重奏曲の楽しみ
(ハイドン四重奏曲の成立事情を中心に)・・・・・・・・・・・・・・石津勝男
7、小林秀雄著「モオツァルト」を廻って・・・・・・・・・・・・・・篠田 滋
8、オーケストラの楽器配置について(第8回)・・・・・・・・・・・真部 淳
9、フォルトゥーナの音楽日記(第5回)「フィガロの結婚」3つの公演・川口ひろ子
表紙:「モーツァルト像」
エデイターより(88号編集後記)
■指揮者クラウディオ・アバドが1月、亡くなり、クラシック界に大きな衝撃が走りました。2012年ルツェルン音楽祭での「レクイエム」をあらためて観ると、演奏後の長い沈黙がとりわけ胸に迫ります。フェラインー行が同年秋、イタリア・モーツァルト協会を訪れた際にお目にかかった協会顧問の作曲家マルチェロ・アバド氏は指揮者のお兄様でした。心からご冥福をお祈りいたします。
■フェラインでは創立以来のメンバーであり、会員が集いの場としてきた「憂陀」のご主人でもあった金森比呂尾氏が昨年暮れ、急逝されました。謹んでお悔やみ申し上げます。本号では大きな足跡を残された金森氏を偲び、追悼の記事をそろえることにしました。
■巻頭の追悼文は季刊誌編集長として金森氏と長いお付き合いのあった青柳さんにお書きいただきました。「奇才の人」ならでは連載内容をテーマごとに再構成していただいたことで、「本物のモーツァルティアン」による「遺産」をじっくりたどることができます。見事な原画をご鑑賞いただくため、俳画集から青柳さんにお選びいただいた2枚をカラー刷りにしました。
■その遺産は季刊誌にも刻まれています。知る人ぞ知る『憂陀』とはいかなる存在だったのか、若松名誉会長がそのことを教えてくれます。もうひとつは、金森氏が創刊号に寄せた「虚空するモーツァルト」。一連の思索は戯言を織り交ぜた「定義集」でもあるように思えます。「モーツァルト体験」も定義されています。
■金森氏の自家版CD集「音楽の詞華集」の解説も再録しました。資料を提供していただいた倉島さんは「諦念の響き」と題した最後の章を「遺言」のように思われると述べています。
■詳報版は昨年l2月例会講演です。加藤浩子氏の「ヴェルディとモーツァルト」は両者の意外な接点を知るうえで貴重な記録になるのではないかと思います。詳報版をまとめていただいた高橋さん、ありがとうございました。 ■石津さんのエッセーは弦楽四重奏曲の魅力に迫った内容で、自筆譜の解明に関心を寄せています。傑作に接しても見過ごされがちな「苦労の跡」を探ることで、聴く楽しみはさらに広がっていくのかもしれません。
■篠田さんからは小林秀雄の「モオツァルト」に真摯に向き合った論考が届きました。様々な思想家、研究者の言葉を渉猟した上で、到達した結論はどうでしょうか。若松名誉会長の言葉に要約されているようです。
■真部先生の連載は第8回。ピアノの名演奏を聴かせてくださる先生はクラリネットも究めていらっしやることを知りました。究極の目標とするクラリネット五重奏曲K581については、金森氏の詞華集も取り上げています。
■最後は川ロさんのオペラ観劇記で締めていただきます。今回は「フィガロの結婚」の3公演を紹介していただいていますので、それぞれの演奏、演出を比較することができます。鋭い批評と併せて、注目の新人に触れたコメントも良きガイドとして役立てたいと思いました。
■表紙の絵は金森氏の画文集「虚空するモーツァルト」から採らせていただきました。金森氏の作品再録については奥様よりご了解をいただきました。ここに記して心から御礼申し上げます。 (2014 2 25 浦安市 山崎博康)
モ-ツァルテイアン・フェライン会報 第88号(季刊)
2014.03.01発行禁転載
1、「発行人」:若松茂生、「編集人」:山崎博康
2、「編集部」:〒279-0014浦安市明海4-2-5-608 山崎博康方
3、特別会費 \500円
4、本書掲載記事の、他の著作物やメデイア等への転載を禁じます。
季刊「モーツァルティアン」第89号原稿募集
モーツァルト関係の音楽論、音楽随想、音楽評論など自由
締切目:2014年4月20日・発行予定:2014年6月1日
*原稿は原則ワードファイル(標準設定フォーム)をEメールにてお送り下さい。
*送り先は山崎hyrynx@gmail.comまたは木村:flkimura@jcom.home.ne.jp
*郵送の場合は編集部まで:〒279-0014浦安市明海4-2-5-608 山崎博康方
モーツァルティアン・フェライン新会員募集中
名誉会長:若松茂生、会長:澤田義博、副会長:石津勝男、倉島収、川口ひろ子、
顧問:久元祐子(国立音楽大学准教授)、田辺秀樹(一橋大学名誉教授)、森治夫(会員)
主な活動:季刊「モーツァルティアン」と月報「事務局レター」の発行、月例会の開催、
年会費(入会金なし):正会員5,000円、学生会員2,500円、*例会費は別途実費が必要、
お問い合わせ:倉島収:04-7191-0500(TEL&FAX)
季刊「モーツァルテイアン」第87号
2013.12.01. モーツァルテイアン・フェライン発行
季刊「モーツァルテイアン」(第87号)
………も く じ………
1、コンスタンツエ悪妻説とレクイエム伝説の真相に迫る(9月例会報告)・・澤田義博
2、フルトヴェングラーのモーツァルトに想う・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・石津勝男
3、フォルトゥーナの音楽日誌(第4回)イタリア・モーツァルト紀行・・・・川口ひろ子
4、ロンドンのモーツァルト・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・篠田 滋
5、オーケストラの楽器配置について(第7回)・・・・・・・・・・・・・・・・・真部 淳
6、映像によるモーツァルトの諸演奏の紹介(第3回)・・・・・・・・・・・・倉島 収
表紙:モーツァルトの胸像。臨終の地となったウイーン中心部ラウヘンシュタインガッセの住居は存在しないが、同じ場所に建つデパート「シュテッフル」6階のモーツァルト記念コーナーに飾られている。(2010年冬撮影)
エデイターより(87号編集後記)
■ 「文芸別冊」が今年秋、モーツァルト特集号を出しました。その中で、片山杜秀氏(慶応大教授)が「モーツァルトは20世紀に新たに発見しなおされた作曲家」と述べています、「物事が‥・不条理に運ぶのも当たり前」の時代となり、「生々しく常に揺れ動く思い」が実感されてくると、「モーツァルトがこの世ならぬ人から日常の友へと近づいてくる」。そうして生まれたモーツァルト像は「神童や天使ではなくて、激動の時代を生きる普通の現代人に適合する」と。なるほどと思いました。
■ 巻頭に載せた澤田会長の9月例会詳報版は標題の通り、コンスタンツェ悪妻説とレクイエム伝説という、最大の謎とも言えるふたつのテーマを一度に取り上げた大変重厚な論考です。従来の定説を覆す最新の研究に基づき、謎解明の手掛かりを細大漏らさず網羅した上で実像に迫っていく内容は圧巻です。長年の蓄積に裏付けられた明快な論旨展開には敬服するばかりです。こうした考察もまさに「日常の友」へと近づく試みに違いありません。ユニークな一覧表も添えられています。会長の総合判定はお読みになっていかがでしょうか。
■ 石津副会長のエッセーはフルトヴェングラー再発見をめぐる考察です。昔親しんだレコードの時代から最新の復刻版CDに至る長い時間を経て聴きなおした時の感動が生々しく伝わってきます。再生技術の向上だけでなく、聴き手の年輪がそうさせているのでしょうか。ピアノ協奏曲第20番の演奏について宇野功芳氏が述べた、指揮者自身への「レクイエムに他ならない」というコメントを読むとぜひとも聴いてみたくなります。
■ 川口さんの「フォルトゥーナの音楽日記」は田辺秀樹先生の企画に参加されたイタリア紀行のオペラ鑑賞記です。現地の公演には期待を裏切られる場面もあったようです。円満解決型ではなく破滅型の演出にはユ一口危機以後の混迷が映し出されているのかもしれません。そんな中で、場を盛り上げるのに一役買う観客席の田辺先生が登場してきてほほえましく思いました。
■ 続いて篠田さんのロンドン紀行です。モーツァルトの足跡を丹訓にたどった後のオペラ鑑賞。作曲家探求の旅人に待ち受けていた「フィガロ」公演の様子が手に取るように描かれています。「観客と一体化したオペラ」を満喫できてよかったですね。
■ 真部先生の連載を読んで先生が学生時代に指揮台に立った経験がおありであることを初めて知りました。そして、大御所の手になる教則本をあえて無視して斬新な指揮に挑んだことも。伝統にとらわれない若き日の姿に、モーツァルトの生き方を重ね合わせてしまいました。
■ 倉島副会長の連載は3回目。 2012年ルツェルン音楽祭でのアバド指揮「レクイエム」についても取り上げています。澤田会長が9月例会で紹介したのもこの演奏でしたので、偶然の一致です。「明日に向けた希望の曲」というとらえ方も従来の定説を覆す斬新な解釈。作曲家の不滅の価値を再認識させてくれる気がします。
■ 表紙の写真は「レクイエム」に取り組んだ作曲家の住居跡に建つデパートにある胸像を選びました。12月5日の永眠の日を前に作曲家の偉業をしのんで。(2013 11 15浦安市 山崎博康)
モ-ツァルテイアン・フェライン会報 第87号(季刊)
2013.12.01発行禁転載
1、「発行人」:若松茂生、「編集人」:山崎博康
2、「編集部」:〒279-0014浦安市明海4-2-5-608 山崎博康方
3、特別会費 \500円
季刊「モーツァルティアン」第88号原稿募集
モーツアルト関係の音楽論、音楽随想、音楽評論など自由
締切目:2014年1月20日・発行予定:2014年3月1日
*原稿は原則ワードファイル(標準設定フォーム)をEメールにてお送り下さい。
*送り先は山崎hyrynx@gmail.comまたは木村:flkimura@jcom.home.ne.jp
*郵送の場合は編集部まで:〒279-0014浦安市明海4-2-5-608 山崎博康方
モーツァルティアン・フェライン新会員募集中
名誉会長:若松茂生、会長:澤田義博、副会長:石津勝男、倉島収、川口ひろ子、
顧問:久元祐子(国立音楽大学准教授)、田辺秀樹(一橋大学名誉教授)、森治夫(会員)
主な活動:季刊「モーツァルティアン」と月報「事務局レター」の発行、月例会の開催、
年会費(入会金なし):正会員5,000円、学生会員2,500円、*例会費は別途実費が必要、
お問い合わせ:倉島収:04-7191-0500(TEL&FAX)
季刊「モーツァルテイアン」第86号
2013.09.01. モーツァルテイアン・フェライン発行
季刊「モーツァルテイアン」(第86号)
………も く じ………
1、モーツァルトの諷刺家精神・・・・・・・・・・・・・・・・・・田辺秀樹
2、モーツァルトのピアノ三重奏曲の楽しみ・・・・・・・・・・・・石津勝男
3、オーケストラの楽器配置について(第5回)・・・・・・・・・・真部 淳
4、パリのモーツァルトーその光と影(第2回)・・・・・・・・・・澤田義博
5、映像によるモーツァルトの諸演奏の紹介(第2回)・・・・・・・倉島 収
表紙:ウイーンしないのレストラン「グリーヒェンバイスル」の天井。真ん中あたりに、モーツァルト自身の署名が見える。
エデイターより(86号編集後記)
■ 最近、NHK・FMの番組を聴いていて、思わず立ち上がってしまいました。いままで耳にしたことのないカデンツァにびっくり仰天。流れていたのはモーツァルトのピアノ協奏曲第20番二短調IK466の第3楽章。そこで、第2楽章ロマンツエの主題が軽やかに登場し てきたのです。若手ピアニスト小菅優さんとの出逢いでした。なんと自作のカデンツァだとのこと。意表を突く曲想に感性豊かな弾き手の遊び心が伝わってきます。あとで著作「情熱のカデンツァ」(NHK出版)を見ると、「時々コンサート中にアイディアが浮かんで、事前に書いたものとは全然違うフレーズを弾くこともあります」と書いています。まさに「即興」の妙。作曲家の神髄をとらえているからこそ繰り出すことのできる技なのだと拍手を送りたくなりました。
■ 第86号の巻頭は「モーツァルトの風刺家精神」と題した田辺秀樹先生による4月例会の詳報版です。先生は毎年、ユーモアあふれるお話をしてくださいます。今回は参加できなかった会員の方々にも当日の雰囲気もお楽しみいただけるよう先生の語り口そのままに収録しました。道化的な風刺芸人としての「カバレッティスト」。これがお話の切り口です。それを通して辛辣な批評家でもあったモーツァルトの素顔と魅力をご紹介いただきました。豊富なエピソードもさることながら、七五調を駆使した先生の独自訳は作曲家の遊戯的精神を見事に日本語に置き換えたリズムがあって楽しめます。まるで作曲家自身が立ち現れてくるようで、会場は何度も笑いに包まれました。
■ 石津副会長の「モーツァルトのピアノ三重奏曲の楽しみ」は、「地味な存在であるピアノ三重奏曲」の魅力を再発見した貴重な論考です。作曲の背景や成立事情を詳しく解説した文章の結びに「ピアノ三重奏曲の中から晩年のモーツァルトの親しい友人だちとの親 密さや友愛の気持ちが伝わってくるように思えてならない」と述べているのが印象的です。
■ 真部先生の連載「オーケストラの楽器配置について」は第6回。海外の演奏会にも精力的に足を運んでいらっしやる先生は今回、イタリアの会場を取り上げ、「野外オペラ体験は、生きていてよかったと感じさせてくれます」と述べています。
■ 澤田会長の連載「パリのモーツァルトーその光と影」は第2回。作曲家の足跡ガイドにとどまらない深い内容が凝縮されており、今回はモーツァルトがパリで受け入れられなかった背景やバリ滞在が作曲自身に与えた影響についても考察しています。その中で、作 曲家の「遊び」の源泉はパリで体得した「人生を楽しむ術」にあったとの指摘が、ド・スタール夫人の言葉とともに的を射ているように思えました。
■ 倉島副会長の「映像によるモーツァルトの諸演奏」も連載第2回。映像資料を実況解説で観ているような丁寧な説明で、楽しめます。クラリネット五重奏曲の解説番組の中で「ピエロ」がキーワードとして登場、これを介してモーツァルトの人間への純粋で深い「愛」を感じるというセリフが紹介されています。こうして見ると、今回は期せずして「道化」や「遊び」を共通のテーマにした読み物が揃った感じがいたします。
■ お気づきのように、今回は表紙の装いが変わりました。若松名誉会長が編集されていた時代から、自筆譜を表紙にするスタイルが定着していました。これを踏襲すべく、英国図書館所蔵ツヴァイク・コレクションの自筆譜を使うことも考えましたが、一定の使用料が必要なだめ、今後の対応はいちど理事会にお諮りしてから考えることとし、今回は山崎が2008年にウィーンで撮影した写真を使うごとにしました。
(2013年8月13日浦安市、山崎博康)
モ-ツァルテイアン・フェライン会報 第86号(季刊)
2013.09.01発行禁転載
1、「発行人」:若松茂生、「編集人」:山崎博康
2、「編集部」:〒279-0014浦安市明海4-2-5-608 山崎博康方
3、特別会費 \500円
季刊「モーツァルティアン」第87号原稿募集
モーツアルト関係の音楽論、音楽随想、音楽評論など自由
締切目:2013年10月20日・発行予定:2013年12月1日
*原稿は原則ワードファイル(標準設定フォーム)をEメールにてお送り下さい。
*送り先は山崎hyrynx@gmail.comまたは木村:flkimura@jcom.home.ne.jp
*郵送の場合は編集部まで:〒279-0014浦安市明海4-2-5-608 山崎博康方
モーツァルティアン・フェライン新会員募集中
名誉会長:若松茂生、会長:澤田義博、副会長:石津勝男、倉島収、川口ひろ子、
顧問:久元祐子(国立音楽大学准教授)、田辺秀樹(一橋大学名誉教授)、森治夫(会員)
主な活動:季刊「モーツァルティアン」と月報「事務局レター」の発行、月例会の開催、
年会費(入会金なし):正会員5,000円、学生会員2,500円、*例会費は別途実費が必要、
お問い合わせ:倉島収:04-7191-0500(TEL&FAX)