第227回 モーツァルティアン・フェライン例会 2004年5月9日
事務局レター【第102号】/2004年5月
【編集者】石津勝男/塙雅夫/山本廣資/古田 佳子 bxp00423*yahoo.co.jp(スパムメールが増えてきましたのでリンクを外しました。お手数ですが*を@に替えて送信願います)
●5月例会(第227回)のお知らせ
「私のビデオコレクションから・・・その3」 お話・・・倉島 収氏(本会副会長)
日時:5月9日(日)午後2時
会場:原宿カーサ・モーツァルト(原宿医院)3Fホール(JR「原宿」下車・徒歩5分/地下鉄「明治神宮前」下車・徒歩3分)
例会費:¥1500(会員・一般共)
例会会場;原宿【カーサ・モーツァルト案内図】
大好評を博している年に一度の倉島コレクションの登場です。今回も厳選された見逃せないプログラムばかりです。倉島副会長からのコメントをご紹介します。
フェラインの例会の講師の都合による急な変更に備えて、その穴埋め用にいつも準備をしているが、最近は私のエアチェックビデオのコレクションから、「最新の素晴らしいビデオ」、「懐かしいビデオ」、「珍しいビデオ」、などに整理してご報告している。今回もそれにならってここ一年くらいの間に収録したビデオのうち、毎月ソフト紹介としてホームページで紹介しているものの中から、面白そうなものを拾い出してみた。いわば、私の一年間のコレクションの中のベストナンバーとお考え頂きたい。用意したプログラムは、以下の通りである。
第一曲目は、ごく最近の素晴らしい映像として、 キーシンとアルゲリッチの4手のピアノソナタハ長調K.521であり、2人の名人が4手でむつまじく、時には競い合って弾く緊張感あふれるライブの魅力をタップリ聴かせる演奏である。03年7月のスイス・ヴェルビエ音楽祭の大コンサートの第一曲目に弾かれている。このコンサート自体が10人の世界的ピアニストが集まったまさに絵になる凄いものであった。
第二曲目は、懐かしい映像として度々取り上げられるワルター・クリーンのピアノによるモーツアルト最後のピアノ協奏曲第27番変ロ長調、K.595である。クリーン氏はこの演奏の翌年に残念ながら亡くなっているが、この演奏ほどピアノが歌う演奏は珍しく、フィナーレではカデンツアに歌曲「春へのあこがれ」K.596の一節を取り入れたユニークな演奏で、歴史的な名演とされている。
第三曲目は、珍しい映像として二つのオーケストラと行進曲・メヌエット・ロンドと言う変った構成の面白い曲「セレナータ・ノットウルナ」K.239であり、クレーメルと彼の育てた優れたクレメラータ・バルテイカの演奏である。1群と2群のオ-ケストラの使い分け、賑やかな装飾音、コントラバスやテインパニーのカデンツアなどが珍しく、映像でないと見逃してしまう曲である。
第四曲目は、最近チューリッヒ歌劇場でパミーナ、コンスタンツエ役などで売れっ子になっているマリン・ハルテリウスの歌う初期のオペラアリア二曲で、2001年のモーツアルト週間へのデビューで成功した珍しい映像である。ブリュッヒェン指揮のモーツアルテウム管弦楽団の演奏で、羊飼いの王様からのアリンタのアリアが珍しく、オブリガート・ヴァイオリンをコンマスのお馴染みのマーカス・トマージが弾いている。
最後は、最近の新しい音楽ドキュメンタリとして、カナダ制作の一時間番組「音楽の申し子」である。モーツアルトの生涯を四楽章に分けて解説、弦楽四重奏曲第15番ニ短調K.421の各楽章を伴奏音楽としてバレエでも表現する、意表をついた構成と演出には驚かされる一見に値する素晴らしい作品になっている。
今回もピアノあり、声楽あり、室内楽ありの楽しみなプログラムです。大勢のお運びをお待ち申し上げております。例会後恒例の懇親会にもぜひご参加ください。(F)
会場:ステージY2(渋谷区神宮前1-13-12 TEL:3478-1031)
●今後の例会のご案内
6月13日 片野 耕喜氏(テノール歌手・山梨大助教授)
7月25日 安田 和信氏(杏林大学講師)
8月(夏休み)
9月12日 小高根真理子(Vn)/江端津也子(P)デュオコンサート
以後、10月17日、11月14日、12月12日の予定です。
●4月例会の報告(第226回/2004年4月11日)
モーツァルトとバッハ父子 ~カール・フィリップ・エマニュエル・バッハを中心に~
ピアノとお話・・・久元 祐子氏(ピアニスト)/小林 幸恵氏(ソプラノ)
新緑の井の頭公園に面した「ラ・フォルテ・カフェ」のスタジオで、久元祐子さんのレュア・コンサートが開かれるのは、今年で3回目。コンサートは、J・S・バッハ作曲「フランス組曲 第5番」のアルマンドから、静かに始まりました。
モーツァルトのクラヴィーア曲と同時代の作曲家を取り上げるシリーズで、今回は、J・S・バッハの第5子、カール・フィリップ・エマヌエル・バッハ(1714~88)です。
彼のキャリアは、プロイセン王国の王子、フリードリヒの音楽教師から始まり、1740年、フリードリヒが国王に即位すると、さらにその音楽教師兼チェンバリストとなり、28年間その地位にありました。大王は国力の増強に努める一方で、音楽を愛好し、エマヌエルはフルートを吹く彼の伴奏をすることもありました。1767年、ハンブルクの音楽監督であるテレマンが亡くなると、エマヌエルはその後任に応募し、ハンブルクに移り住みます。クラヴィーアを中心とする彼の作品は、出版されるとたちまちヨーロッパ中で演奏されました。また彼はクラヴィーア演奏の理論家でもあり、出版された<クラヴィーアの正しい演奏技術についての試論>は邦訳もされています。
久元祐子さんは、エマヌエルの作風について、実際にピアノを弾きながらお話を進めてくださいました。「変奏反復付きソナタ ニ短調(Wq52-2)」の第1楽章における変奏反復の仕方を見ると、かなり強引な印象を受けます。モーツァルトなら、例えば、K332の第2楽章の変奏を見ても、同じような材料を使いながらごく自然に変奏が行われています。
また「通と愛好家のためのクラヴィーア曲集・第4集」から、ロンド イ長調(Wq58-1)は、モーツァルトのK331の第1楽章の冒頭と同じ音型で、イ長調で始まりますが、やがてかなり遠い調へ進んでいくといった過激な動きが感じられます。さらに同じ曲集の第5集からソナタ ホ長調では、第2楽章から第3楽章をみても、最後で拍子を失って、カデンツァのように終わるといった普段聴いているモーツァルトからは予想不能な展開を見せます。
ここで、エマヌエル・バッハの歌曲が、ソプラノの小林幸恵さんの美しい声によって披露されました。「受難の歌」、「イエスの死の前における束の間の暗闇」、いずれの歌曲のピアノの和音も曲想も、彼のクラヴィーア曲と比べると、それほど過激ではなく、自然で詩の内容に沿っているという印象を受けました。続けて、モーツァルトの歌曲「すみれ」K476が歌われましたが、モーツァルトでは、<語り>や<演劇的要素>がみられ、オペラ作家としての心意気が感じられるとのことでした。今回のコンサートのために、久元さんはエマヌエルの曲をかなり研究して弾かれたということですが、モーツァルトとの比較については、確かに、使われる部分や装飾は似ているが、精神構造はまるで違い、まさに両者は対極にある、という感想を述べられました。モーツァルトの美学を象徴する例として、最後に「ロンド イ短調 K511」を演奏してくださいました。美しく調和のとれた中で、移ろいゆく別世界へ私たちは誘われます。さらにアンコールとして「幻想曲 ニ短調 K397」が演奏され、<自由なファンタジー>に、一同は恍惚感を味わいつつ閉会となりました。
“モーツァルトは、ウィーンのスヴィーテン男爵のもとで、J・S・バッハだけでなく、C・P・Eバッハの作品にも接しました。その<自由なファンタジー>は、ウィーン時代のモーツァルトの作風に影響を与え、K397の幻想曲にも反映されているのではないでしょうか・・・。”
和やかにワインを酌み交わすパーティーの席上で、久元さんが周囲の方々にそっとお話をされている姿が大変印象的でした。(I)
●情報コーナー
コンサート情報 (5/10~6/6)
★5/12(水)19:00/浜離宮朝日H/M:交響曲K128、K124、L・モーツァルト:トランペット協奏曲ニ長調諸岡範澄指揮、tp島田俊雄¥4000、学\3000/オフィスアルシュ03-3952-8788
★5/14(金)18:30、15(土)14:00/めぐろパーシモンH/東京室内歌劇場公演/「フィガロの結婚」/若杉弘指揮、栗山昌良演出、佐々木典子、勝部太、池田直樹、東響、東京室内歌劇場合唱団\10000~3000、学\1500/東京室内歌劇場03-5642-2267
★5/19(水)18:45、/日本モーツァルト協会例会/M:K351、K472、K519他/Ms波多野睦美、¥4500学¥2000/日本モーツァルト協会03-5467-0626
★5/28(金)19:00、29(土)18:00/紀尾井H/M:交響曲25番、40番、ピアノ協奏曲21番/井上道義指揮、P児玉桃\5500~3500、学\2000~1500/紀尾井H03-3237-0061
★5/30(日)18::00/ドン・ジョヴァンニな色男の艶歌/Bs-Br・進行、池田直樹、Br黒田博、勝部太、多田羅迪夫他¥4000/二期会チケットセンター03-3796-1831
★6/4(金)19:00、トッパンH/6/5(土)17:00、都築公会堂(横浜市)/6/6(日)15:00、狛江エコルマH/M:フルート四重奏曲1番、3番、4番、「魔笛」「ドン・ジョヴァンニ」(フルート四重奏版より/W・シュルツ(フルート)ヴィーン・フィル弦楽三重奏団¥6000/カメラータ・トウキョウ03-5790-5560(6/4)、都築の森芸術劇場045-942-3989(6/5)、エコルマホール03-3430-4106(6/6)
★6/6(日)14:00/第1生命H/モーツァルト・アンサンブル・オーケストラ 第20回定期演奏会/M:交響曲25番、「踊れ、喜べ」K165、「大いなる魂と高貴なる心」K578、歌劇「フィガロの結婚」よりアリア他/藤原義章指揮、SOP増田のりこ \2000 チケットぴあ0570-02-9990(H)
CD情報※外盤単価は新宿タワー価格
★M:交響曲第35、36、38、39、40、41番/カラヤン:ベルリンpho EMI 7243 5 75377 2 8 \990!(2枚組)
★ショスタコーヴィッチ:交響曲第10番、M:交響曲第40番、P協奏曲第9番/(P)リヒテル、スヴェトラノフ:USSRso.(1963,66LIVE) SCORA CLASSICS SCORACD 010 \1980
★ハイドン:チェロ協奏曲ハ長調、ニ長調、M:チェロ協奏曲ニ長調K.285d!/(Vcl)M.ハイモヴィッツ、シュテファン・ザンデルリンク:バロックオーケストラ TRANSART TR121 \2510
★M:Cl、Vn、Va、Vcl四重奏曲K.317D、K.374、K.496(1799年ヨハン・アンドレ編曲!)/(Cl)エリック・ヘプリッヒ、アンサンブル・レザデュー、NCA RADIO BREMEN 98 11 840-215 \1460
★「ヘルマン・プライ:モーツァルトアリア集」/スイトナー:ドレスデンso.、 Berlin Classics 0013182BC ¥1290
★「Christian Oelzo:モーツァルトコンサートアリア集」/ヘンヒェン:CPEバッハcho.Berlin Classics 0013252BC ¥1290
★M:ピアノソナタK.545、333、331/ブルーノ・フォンテーヌ TRANSART TR124 \1460
※先月お知らせしたルチア・ポップ・オペラ名場面集のレーベルはオルフェオでした。ご迷惑をかけたファンの方がおられたのでお詫びします。(Y)
●あとがき
◇毎月のCD情報は、主としてタワーレコード新宿店で新しく見つけたCDのメモによっている。もっと簡単な方法がないものかと、先日店員に情報を送ってもらえないか訊ねた。CD情報をズラズラ並べたようなものがあれば、ピックアップしてコピーすればいいと思ったのである。ホームページを見て欲しいとのことであったが、色々ある中でモーツァルトの新しい盤だけを捜すのは面倒である。又、画面から情報をピックアップしてここに記入するためには何かにメモしなければいけない。
ともあれこのレター用の情報蒐集には実物を見るのがいちばん簡単であることが分かった(メモをとるのは手間であるが)。最近はネット・ショッピングがはやっているそうだが、特定の何かの品物の場合はいいだろうが、このようなケースには不向きなようだ。
この際「タワーレコード」で検索したら、アメリカの本社が業績不振で倒産とあって吃驚した。こちらは別会社で「ウエイブ」を買収するほど元気なのは結構な事である。(Y)
◇フェラインの公式ホームページが開設されて、この5月17日で5周年を迎えます。訪れてくださった方もまもなく25000人。おかげさまで、HPを見て入会してくださった方も増え、手探りながらも何とかやってきた甲斐があったと喜んでいます。
この5年、担当責任者として大活躍の倉島副会長が、5周年記念として何か出来ないかと思案中(おそらく5/17当日のカウンター当て)ですので、HPでの告知をお楽しみに。(F)
直ぐにゲストブックをお開き下さい。5/14日が受付期間ですので、まだ時間は残されています。(K)
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第226回 モーツァルティアン・フェライン例会 2004年4月11日
事務局レター【第101号】/2004年4月
【編集者】倉島収/塙雅夫/山本廣資/古田 佳子 bxp00423*yahoo.co.jp(スパムメールが増えてきましたのでリンクを外しました。お手数ですが*を@に替えて送信願います)
●4月例会(第226回)のお知らせ
モーツァルトとバッハ父子 ~カール・フィリップ・エマニュエル・バッハを中心に~
お話・・・久元 祐子氏(ピアニスト)/小林 幸恵氏(ソプラノ)
日時:4月11日(日)午後2時
会場:コンサートスタジオ「ラ・フォルテ・カフェ」(JR吉祥寺公園口下車・徒歩10分)
例会費:全席自由/¥3000(会員・一般共)※ 席にゆとりあり。一般の方大歓迎です。
吉祥寺【「ラ・フォルテ・カフェ」案内図】(もし文字化けしましたら、表示→エンコード→日本語(自動選択)をクリックしてください。)
毎年4月は吉祥寺のカフェ・スタジオ「ラ・フォルテ」に、久元祐子先生をお迎えしてのレクチャー・コンサートです。先生からのメッセージをご紹介します。
モーツァルトのクラヴィーア曲と同時代の作曲家たちを取り上げるシリーズの3回目です。ヨハン・クリスティアン・バッハ、ヨーゼフ・ハイドンに続いて今回は、大バッハの長男、カール・フィリップ・エマヌエル・バッハをとりあげます。
ヨハン・クリスティアン・バッハに関しては、心地よいテンポ感、優雅な雰囲気、歌えるメロディラインなど、モーツァルトの音楽にも影響を与えたことが楽譜からも伺えますが、カール・フィリップ・エマヌエル・バッハの場合は、なかなか一筋縄ではいかないようです。モーツァルトは彼についてはほとんど書き残しておらず、作品を十分に弾きこんでみて、その影響を考えてみるよりほかに方法がありません。
また、今回は、歌われる機会の少ないカール・フィリップ・エマヌエル・バッハの歌曲も、小林幸恵さんのソプラノで披露していただく予定です。
プログラム
* J・S・バッハ :フランス組曲 第5番 ト長調 BWV 816 から アルマンド
* C.P.E.バッハ:J.S.バッハ編の「アンナ・マグダレーナのための音楽帳」より チェンバロ独奏曲 変ホ長調 BWV.Anh.129
* C.P.E.バッハ:変奏反復付きソナタ ニ短調 Wq.52-2 第1楽章
* C.P.E.バッハ:「通と愛好家のためのロンド付クラヴィーア・ソナタ」第5集から ソナタ ホ短調 Wq.59-1
* C.P.E.バッハ:"Wider den Ubermut" "Passionslied" "Uber die Finsternis kurz vor dem Tode Jesu"(ソプラノ:小林幸恵)
* C.P.E.バッハ:「通と愛好家のためのロンド付クラヴィーア・ソナタ」第4集から ロンド イ長調 Wq.58-1
* モーツァルト :ロンド イ短調 K511 ほか
今回は初めての試みとして、歌曲のプログラムも組んでいただきました。春真っ盛りの井の頭公園の緑も合わせてお楽しみください。例会後恒例の懇親会は同じく「ラ・フォルテ」で行います。大勢のご参加をお待ちしております。(F)
●今後の例会のご案内
5月 9日 倉島 収氏(本会副会長)「最近のエアチェックビデオから~その3~」
6月13日 片野 耕喜氏(テノール歌手・山梨大助教授)
7月25日 安田 和信氏(杏林大学講師)
8月(夏休み)
9月12日 江端津也子(P)/小高根真理子(V)ジョイント・コンサート
以後、10月17日、11月14日、12月12日の予定です。
●3月例会の報告(第225回/2004年3月14日)
「フィガロの結婚」の魅力 お話・・・田辺 秀樹氏(一橋大学教授)
「フィガロ」については、あらゆる面から語られ尽くされてきており、今さらオリジナルなことをお話しするのは大変である。しかし、見るたびに面白いことに気づくオペラでもあるので、そのいくつかについてお話ししたい。
1、最近の「フィガロ」の舞台の動向
昨年の新国立の新体制によるホモキ演出では、簡素で抽象的な舞台で演劇的に注目されたが音楽面で魅力に乏しく男役が面白くなかった。こんにゃく座の創作オペラは型破りなフィガロであろうが、独自の演劇的な魅力がある。二期会の宮本亜門のものは、スピード感のある演出で音楽的にも良かったと思う。文化村のエクサンプロヴァンスのミンコフスキーのものは、芝居として練り上げられたものがありオペラの次元を超える面白さがあった。ミンコフスキーの指揮は、概してテンポが速いが、許される限界的な速さであった。
2、「フィガロ」から新しいバリトンという声種の登場
モーツアルトの「フィガロ」から、テノールとバスしかなかった男性の声種として、アルマヴィヴァ伯爵がバリトンとして登場した。「フィガロ」が始まった4年前の1782年に初演されたパイジェッロの「セヴィリアの理髪師」では、伯爵役はロッシーニ同様テノールであった。「フィガロ」でバリトンのオペラブッファの初登場のあと、ドンジョバンニに引き継がれた。リアルな男役としてのバリトンは、その後の19世紀のオペラに重要な影響を与えたと言える。なお、「フィガロ」は、当時大ヒットであったパイジェッロの「セヴィリアの理髪師」からの「いただき」が多いので、このオペラを是非見て欲しい。
3、「フィガロ」の登場人物たちのキャラクター
「フィガロ」が複雑で一筋縄でいかないのは、登場人物が多くかつ多彩なキャラクターを持った人が多いからである。全体的には、女性陣が優位で男性陣をリードしているが、これは当時のブッファの第一作ペルゴレージの「奥様女中」(1733)の影響であろう。ブッファの笑いが、階級差を超える話にあることが多く、これは間抜けな男と賢い女性の遊びにあろう。といったお話しからその後、伯爵、伯爵夫人、フィガロ、スザンナ、バルトロなどと順に、それぞれの役の重要なキャラクターの解説があった。
4、省略されるマルチェリーナとバジリオのアリアなど
第四幕には、いつも省略されるマルチェリーナの24番のアリア「雄山羊と牝山羊は」とバジリオの25番のアリア「あの年頃には」がある。なかなか良い曲なのに、省略されるので、改めてここで聴いてみたい。二曲とも、哲学的・思想的な内容のメッセージを持つアリアで、その内容を考えると難しいことを言っている。二人の唯一のアリアなので、恐らく二人の出番が少ないため、ここに詰め込んだものではないかと思われる。しかし、劇の進行上必ずしも重要でないので、省略されるのはやむを得ないと思われる。
5、酒席ピアニストとしての演奏
お話を終えてから、今回で三回目になるが、先生お得意のピアノを聴かせて頂いた。ウイーンもののオペレッタからの洒落たアリアやウイーナーリーダーと呼ばれる古き良き歌を沢山ご存じで、全部で10曲ほどもあった。毎年、上手になっているようで驚きである。楽譜が無くても弾いてしまうところが、自称サロンピアニストの本領なのであろう。サロン的な酒席で、改めてお聞かせ願いたいと思った。(K)
●情報コーナー
コンサート情報
★4/16(金)18:30/文京シビックH(小)/バロック・古典派オペラアリアの夕べ/パーセル「アーサー王」、「ドン・ジョヴァンニ」「フィガロの結婚」より/阿部雅子、伊藤淳子他 \1500 フェリーチェ03-5454-1346(井上)
★4/20(火)19:00/東京文化会館(小)/ヴィーンフォルクハルト・シュトイデ弦楽四重奏団/M:クラリネット五重奏曲、ベートーヴェン:ピアノ三重奏曲第4番他/cl:E・オッテンザマー \4500~3000 ムジークレーベン 03-5458-7777
★4/23(金)18:45/東京文化会館(小)/日本モーツァルト協会例会/K370、K563他/ob:古部賢一、vn:小森谷巧、va:川本嘉子、vc:木越洋 \4500 学\2000 日本モーツァルト協会 03-5467-0626
★4/24(土)18:00/第一生命H/小倉喜久子フォルテピアノ〔室内楽〕モーツァルトの世界②/クラヴィーア三重奏曲K496、四重奏曲K493他/va:桐山建志、va:長岡聡季、vc:花崎薫 \5000、65才以上・学生\2000/メセナス03-3588-8383
★4/24(土)18:00/津田H/平野実貴モーツァルト・ソナタ全曲演奏シリーズⅢ/K330、K547他/\3500 ミリオンコンサート協会03-3501-5638
★4/24(土)17:00/東京文化会館(小)/今井顕ピアノリサイタル/アダージョK540、グラスハーモニカのためのアダージョK617、ベートーヴェン:ソナタop111他/\5000 日本アーティスト 03-3944-9999
★4/27(火)19:00/サントリーH/ヘンデル:組曲「水上の音楽」(金管五重奏版)、13管楽器のためのセレナードK361 \5000~2000 日本演奏連盟 03-3437-6837
★5/1(土)14:00/津田H/二期会『モーツァルトうた三昧』/M:歌曲とアリア/S:半田美和子、Ms:加納悦子、T:小貫岩夫、Br:太田直樹 \4000 学\3000 二期会チケットセンター03-3796-1831
★5/5(水・祝)14::00、5/7(金)18::30/グリーンH相模大野/オペラ実験工房「ドン・ジョヴァンニ」/レクチャー:芦川紀子、指揮:高橋大海、P:服部容子、Br:青戸知ほか \3500 グリーンH相模大野 042-749-2200
★5/12(水)19:00/浜離宮朝日H/M:交響曲ハ長調K128、ト長調K124、L・モーツァルト:トランペット協奏曲イ長調他/オーケストラ・シンポシオン、指揮とva諸岡範澄、tr嶌田敏雄\4000学3000オフィスアルシュ03-3952-8788(H)
CD情報※外盤単価は新宿タワー価格
★M:ヴァイオリン協奏曲第1,2,4番/(Vn)ムター、マリナー、ムーティ:アカデミー合奏団、フィルハーモニアo. EMI 7243 5 6 2826 2 \1390
★M:ピアノ協奏曲No.20,23,24,25/(P)M.タン、ノリントン:ロンドンクラシカルプレイヤーズ Virgin 7243 5 62343 2 \1460(2枚組)!
★クラリネット協奏曲K.622、オーボエ協奏曲K.314(クラリネット版)/(Cl)赤坂達三、ウィーン室内管 Son.SICC 182 \2940
★M:4手のためのピアノソナタ/(P)井上直幸、竹内啓子 Camerata CMCD-20018 \2100
★ウィーン室内合奏団モーツアルト曲集/K.525、弦楽五重奏曲K.515、ディヴェルティメントK.136、クラリネット五重奏曲K.581、フルート四重奏曲第1番K.285、第4番K.298、弦楽四重奏曲第14番K.387、第19番K.465/(Vn)ウェラー、ヘッツェル、(Va)ヒュブナー、シュトレンク、(Vcl)シュヴァイン、(DB)クロイトラー、(Cl)プリンツ他 ARND 2023~2025 \4000(3枚組)
★「フィガロの結婚」/ルネ・ヤーコブス!:コンチェルトケルン他 HM HMC-901818 \4820(3枚組)
★ルチア・ポップ オペラ名場面集/スザンナ(フィガロ)、ツェルリーナ(ドン・ジョヴァンニ)、ゾフィー(薔薇の騎士)、ラウレッタ(ジャンニ・スキッキ)、他/クライバー、サバリッシュ、ベーム:バイエルン国立歌劇場o. C-600 031B \1890
★「魔笛」/カラヤン:ウィーンpho.他 The 50-08 \890!(2枚組)
★「フィガロの結婚」/カラヤン:ウィーンpho.他 The 50-25 \890!(2枚組)(いずれもLP初期盤の復刻)(Y)
●お詫びとお願い
先月お送りした「季刊モーツアルティアン」誌の号数が違っておりました。訂正用のシールを同封しましたので、上に添付してください。
あとがきにもいろいろ間違いがありました。真部さんの坊やは9歳です。編集人の拙さをお詫び申し上げます。(Y)
●あとがき
◇この4月からNHKラジオ「ドイツ語講座」で田辺秀樹先生の「歌で楽しむドイツ語」シリーズが始まりました。実はこの講座は2002年に放送されたものの再放送なのですが、「大好評により再放送(NHKホームページより)」ということでうれしい限りです。毎週1回1年間でおよそ50曲のドイツの歌を覚えることが出来ます。モーツァルトやシューベルトはもちろん、先生がいつも例会で弾いて下さるウィーナーリーダーもたくさんあります。使用曲はほとんどが既存のCDですが、田辺先生ご自身でピアノ伴奏をされることもあり、例会で先生のピアノをお聴きになれない方は必聴です。放送はNHKラジオ第2、毎週金曜 午前6:45~午前7:05(再放送 午後12:40~午後1:00)
◇先月のコンサート情報で記載ミスがあり、出演者の方からご指摘を頂きました。★3月13日(土)同仁キリスト教会/ヘンデル「メサイア(モーツァルト編曲)」ですが、【S:大森敏江、A:笹子きさえ】は【S:大森寿枝、A:笹子まさえ、指揮:佐藤宏充】となります。関係者の皆様にはご迷惑をおかけいたしました。改めてお詫び申し上げます。(F)
第225回 モーツァルティアン・フェライン例会 2004年3月14日
事務局レター【第100号】/2004年3月
【編集者】石津勝男/塙雅夫/山本廣資/古田佳子 bxp00423*yahoo.co.jp(スパムメールが増えてきましたのでリンクを外しました。お手数ですが*を@に替えて送信願います)
●3月例会(第225回)のお知らせ
「フィガロの結婚」の魅力
お話・・・田辺 秀樹氏(一橋大学教授)
日時:3月14日(日)午後2時
会場:原宿カーサ・モーツァルト(原宿医院)3Fホール(JR「原宿」下車・徒歩5分/地下鉄「明治神宮前」下車・徒歩3分)
例会費:¥2500(会員・一般共)
例会会場;原宿【カーサ・モーツァルト案内図】
今月の田辺先生のオペラシリーズも回を重ねて4回目。いよいよ「フィガロ」の登場です。先生からは以下のようなコメントを頂戴しています。
昨年はモーツァルトの名作オペラの(3)として『劇場支配人』を取り上げました。
4回目の今年は、順番で『フィガロの結婚』ということにしたいと思います。このモーツァルト最高の人気オペラについては、もうすでにあらゆることが言われ尽くしているという観がありますが、何度見ても聴いても、その都度新たな魅力を発見することのできる、じつに奥深い名作です。
私は今のところ、『フィガロの結婚』についてとりたてて新たな見解とか新解釈といったものを持っているわけではありませんが、近年いろいろな『フィガロの結婚』を舞台やヴィデオで見て、思ったこと、感じたことなどを、ヴィデオ等でご紹介しながらお話ししてみたいと思います。
後半では、また例によって、顰蹙をかえりみず、「酒席ピアニスト」としての怪しい活動の一端を披露させていただこうかとも考えております。
映像を多用した楽しいお話になりそうですね。また先生のピアノも楽しみです。例会後恒例の懇親会にもぜひご参加ください。(F)
会場:ステージY2(渋谷区神宮前1-13-12 TEL:3478-1031)
●今後の例会のご案内
4月11日 久元 祐子氏(ピアニスト/会場:吉祥寺「ラ・フォルテ・カフェ」)「モーツァルトとバッハ父子」
5月 9日 倉島 収氏(本会副会長)
6月13日 片野 耕喜氏(テノール歌手・山梨大助教授)
7月25日 安田 和信氏(杏林大学講師)
8月(夏休み)
以後、9月12日、10月17日、11月14日、12月12日の予定です。
●2月例会の報告(第224回/2004年2月8日)
モーツァルトと「ソナタ形式」(その1)お話…三澤 寿喜氏(北海道教育大学教授)
先生の演題の中、今回は「その1」として「幼少期の作品におけるソナタ形式」についてのお話でしたが、紙面に限りがありますので要旨のみをお伝えします。
「ソナタ形式」(提示部、展開部、再現部からなる)は古典派の時代に成立され、モーツァルトの活動時期と重なるが、モーツァルトによって「ソナタ形式」が実際的に確立されていったのではないか。
分析対象として1767年までのクラヴィア曲、ヴァイオリン・ソナタ、交響曲を扱い、6つの型に分類する。
A:ソナタ形式の基本的枠組みを持たないもの。
①型(単一主題型)=バロック舞曲の2部形式。
②型(複主題型)=展開部のないソナタ形式とも解釈可能。
③型(多主題型)=同上。
B:ソナタ形式の基本的枠組みを持つもの=一応、ソナタ形式と認められるもの。
④型(単一主題型)=バロック舞曲からソナタ形式への移行過程に位置するもの。萌芽的ソナタ形式。
⑤型(複主題型)=基本的にソナタ形式の枠組みをもつ。
⑥型(多主題型)=同上。
先生はさらに、「モーツァルトの幼少期の作品における2部形式楽曲の型別分類」として、クラヴィアのための小品(K1~5)、クラヴィアまたはクラヴィアとヴァイオリンのためのソナタ(K6~9、10~15)を上記の6つの分類に当てはめて、実際に譜面を見ながら、ピアノ演奏も交えて具体的に指摘して下さり、大変勉強になった。
例えばK1~5では④型が多くまだ萌芽的であり、K6~9のパリ・ソナタでもまだ個性化が出てきていないが、K8の第2楽章の展開部では、情感も豊かでこの年齢としては良い例だということである。しかし、K26~31(デンハーグ・ソナタ)のK29の第1楽章では、ただ主題を並べているだけで平面的で進歩がないところもある。ところが、前年1765年にロンドンで作曲された交響曲へ長調K19aの第1楽章には、後の時代を予知するような性格、すなわち主題の個性化が見てとれる。展開部における3つの主題に明らかな個性があり、重層的になっているという。
私たちもホグウッドの演奏によるCDを聴かせていただいたが、とても9歳の作品とは思えないような天才的な閃きを感じ、今後の三澤先生による「ソナタ形式」の続きが楽しみでなりません。(I)
●情報コーナー
コンサート情報
★3/13(土)14:00/紀尾井H/ベートーヴェン交響曲3番「英雄」、M:ヴァイオリンとヴィオラの為の協奏曲、「コシ・ファン・トゥッテ」序曲/中田延亮指揮、メロスフィル V三浦章弘 Va藤村正芳\2000/鮫島正芳090-5354-2866
★3/13(土)17:00/同仁キリスト教会/ヘンデル(モーツァルト編曲)メサイヤ(抜粋)佐藤宏充指揮、S大森寿枝A笹子まさえT辻端幹彦Br富塚研二P大熊敏子\2000/モーツァルト連044-988-8384
★ロンドン交響楽団、P内田光子/サントリーH/3/16(火)19:00/M:ピアノ協奏曲第22番、ベートーヴェン交響曲第8番、3/17(水)19:00/M:ピアノ協奏曲第26番「戴冠式」、シベリウス交響曲第5番\22000~6000/梶本音楽事務所03-5749-9960
★3/17(水)18:45/東京文化会館(小)/日本モーツァルト協会例会/M:ピアノ三重奏曲K254、K442、K502、K542他/V若林暢Vcヤンチャン・チョウPアルバート・ロト/\4500、学2000/日本モーツァルト協会03-5467-0626
★4/3(土)13:00/「黄昏のモーツァルト」①/Pとお話、久元祐子/プログラム未定/NHK文化センター045-224-1110
★4/10(土)18:00/フィリアH/M:VとPのためのソナタ第36番、27番、28番、35番、42番/V堀米ゆず子P児玉桃\5000、4000/フィリアH 045-982-9999(H)
CD情報※外盤単価は新宿タワー価格
★M:交響曲第35番、マーラー:交響曲第4番/(S)ゼーフリート、B・ワルター:ニューヨークso.(1953.1.5Live)TAHRA TAH-524 \2090
★M:ピアノ協奏曲第19番、2台のピアノのための協奏曲K.365/(P)ハスキル、アンダ、フリッチャイ:ケルン放送so.、パウル・ブルクハルト:ベロミュンスター・スタジオo. TAHRA TAH-523 \2090
★M:交響曲第41番、ピアノ協奏曲第17番/(P)市野あゆみ、安永徹(リーダー)オーケストラ・アンサンブル金沢、WARNER WPCS-11725 \1000
★M:ピアノ協奏曲第20,23,24,25番/(P)M.タン、ノリントン:ロンドン・クラシカル・プレーヤーズ Virgin 7243 5 62343 2 \1390!
★M:弦楽四重奏曲第8~23番/ズスケ弦楽四重奏団 ede clasiccs 0002732ccc \4490(6枚組)
★ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第1番、M:同K.499、スメタナ:同第1番/スメタナ弦楽四重奏団(1965.12LIVE)BBC BBCL4137-2 \1990
★M:ピアノ四重奏曲第1、2番他/(P)E.アックス、(Vn)スターン、(Va)ラレド、(Vcl)ヨーヨーマ Sony SK93071 \1390
★M:ピアノソナタ全集/(P)リリー・クラウス Sony SM4K 8799-2 \4690(4枚組)(Y)
●新年度会費納入について
来月より新年度となりますので、同封の振込用紙による会費納入をよろしくお願い致します。同時に、ご自分のK番号(会員番号)を変更したい方、また、昨年4月以降に会員になられた方で、まだK番号の登録を済ませていない方の希望を受け付けます。
新年度の会費を振り込まれる際に、同封の振込用紙の『通信欄』に希望曲名とK番号を記入してください。変更を希望される方は「旧:K492から、新:K620へ変更」のようにお書きくださると助かります。振込みの締切りは5月末日としますが、変更希望の方はなるべく早めの手続きをお願いします。
会員のK番号は決して強制ではありませんので、必要のない方は通信欄に「K番号不要」とお書きください。また、どちらとも意思表示のない方は、事務局が適宜ほかの人と重複しない曲目(K番号)を選定させていただきます。もちろん従来通りでよい方は記入の必要はありません。2004年度の『K番号付会員名簿』は夏休み明けの9月に配布いたします。
また来る2006年のモーツァルト生誕250周年に向けて、フェラインとしての企画案も合わせて募集いたします。あまり難しいことは出来ませんが、記念例会、記念出版、全会員アンケートなど、やってみたいことのアイデアをどうぞお寄せください。こちらも振込用紙の通信欄にお書きください。よろしくお願いいたします。(F)
●あとがき
◇昨年から例会に出席しておられるピアニストの岩島富士江さんが、「オードヴル演奏」をしてくださることになりました。講演前15分ほどの時間を使ってのプレコンサートです。K1を皮切りに、すでに2月の例会から演奏は始まっていますが、特別な事情のない限り毎月弾いて下さるそうですので、毎回例会に出席なさると、K1から順に、モーツァルトのピアノ曲を全曲生演奏で聴けることになります。どうぞお楽しみに。
◇フェラインのホームページでは昨年5月より新しい企画が始まっています。名付けて「会員のメッセージ集」。会員の自由な発信コーナーです。すでに4人の会員の方が参加されており、デジカメの写真を公開している方、毎月欠かさずエッセイを書いている方など発信方法は様々です。倉島副会長の全面的なサポートがありますので、HP作成の知識がない方でも安心です。ご自身のHP立ち上げに躊躇している方、まずフェラインのHPから始めてはいかがでしょうか。
◇いささか旧聞に属するのですが、今年の大学入試センター試験の国語(Ⅱ)の問題に、渡辺裕「聴衆のポストモダン」が引用されました。モーツァルトやバッハが引き合いに出され、ウォークマンやLDの出現による鑑賞方法の劇的な変化などが論じられていて、なかなか興味を引くので、試しに読解問題に挑戦してみたところ、ことごとく玉砕でかなり意気消沈しました。今の受験生はこんな難解な文章に取り組んでいるんですね。現在の受験戦争を垣間見た気がしました。ちなみに問題文は1月19日の新聞に掲載されています。各新聞社のホームページでも見ることが出来ます。(F) 【朝日新聞ホームページ(問題文掲載)へ】
◇先にお届けしました季刊モーツァルティアン48号ですが、表紙にミスプリントがありました。「2003.12」は「2004.3」の誤りです。お詫びして訂正申し上げます。(Y)
第224回 モーツァルティアン・フェライン例会 2004年2月8日
事務局レター【第99号】/2004年2月
【編集者】塙雅夫/山本廣資/古田佳子 bxp00423*yahoo.co.jp(スパムメールが増えてきましたのでリンクを外しました。お手数ですが*を@に替えて送信願います)
●2月例会(第224回)のお知らせ
モーツァルトと「ソナタ形式」お話…三澤 寿喜氏(北海道教育大学教授)
日時:2月8日(日)午後2時
会場:原宿カーサ・モーツァルト(原宿医院)3Fホール(JR「原宿」下車・徒歩5分/地下鉄「明治神宮前」下車・徒歩3分)
例会費:¥2500(会員・一般共)
例会会場;原宿【カーサ・モーツァルト案内図】
おなじみの三澤先生に今年も興味深いテーマでお話していただきます。先生からのコメントをご紹介します。
古典派の時代に確立された「ソナタ形式」(提示部、展開部、再現部から成る)は西洋音楽の中で最も重要な形式であることはご承知のとおりである。モーツァルトはこの形式の確立時期とその活動時期を一にしており、そのほとんどの交響曲、室内楽(弦楽四重奏曲など)、ソナタ(ピアノ・ソナタ、ヴァイオリン・ソナタなど)、協奏曲の急速な第1楽章においてこの形式を使用している。時には、急速な終楽章や、さらには第2楽章のような緩徐楽章においてさえ、この形式を使用するとすらある。また、極めて稀ではあるが、声楽曲において使用する例も確認することができる。
今回は、モーツァルト作品を理解するには決して切り離すことのできない「ソナタ形 式」の起源、基本構造、種々の異形などについて、様々な具体例を呈示しながら、考 察してみたい。
主な内容は以下のとおりである。
1 ソナタ形式の起源
2 ソナタ形式の基本構造
3 変形ソナタ形式
(1) 協奏曲におけるソナタ形式
(2) ソナタ・ロンド
(3) 展開部をもたないソナタ形式
例会後の講師を交えた懇親会にもぜひご参加ください。(F)
会場:ステージY2(渋谷区神宮前1-13-12 TEL:3478-1031)
●今後の例会のご案内
3月14日 田辺 秀樹氏(一橋大学教授)
4月11日 久元 祐子氏(ピアニスト/会場:吉祥寺「ラ・フォルテ・カフェ」)
5月 9日 倉島 収氏(本会副会長)
6月13日 片野 耕喜氏(テノール歌手・山梨大助教授)
7月25日 安田 和信氏(杏林大学講師)
●1月例会の報告(第223回/2004年1月18日)
第3回 会員有志による参加型例会
新年最初の会員参加例会も3回を迎え、好評のうちに定着しつつあるのではないでしょうか。今年の参加者は11人。石津、倉島両副会長の司会で進みました。
①真部淳・洋さん親子で、K304のソナタ。ヴァイオリンを始めて4年という洋さんは小3とは思えないしっかりした演奏で、子供用の楽器で時折ビブラートをきかせて弾く姿はなかなかのものでした。ピアノのお父さんは後ろから聴こえてくる息子さんとご自分の両方の演奏に集中しなければならず大変だったと思います。
②「モーツァルトを聴くと元気になるのは『ビタミンM』が含まれているから」という自説を論じてくださった土屋二彦さん。モーツァルトが自分自身につけた「プンキティティティ」というあだ名から、ビタミンMの含有量の多い薬「奮気丸(ふんきがん)」について解説。その不思議な薬の成分はもちろんモーツァルトの音楽で、特に効果のある曲としてK136、K450、K448の3曲を聴かせてくださいました。
③建築関係の中村逸郎さんは19年前に行ったヨーロッパのコンサートホール視察旅行のお話をされました。視察ということで特別にウィーンのムジークフェラインの天井裏へ上らせてもらった話や、アムステルダム・コンセルトヘボウの会場内へ温度計を持って入場したという話など、ちょっとびっくりする逸話が聞けました。ちなみにコンセルトヘボウの温度は入場直後が10℃、開演前17℃、幕間の休憩時27℃と変化し、観客の熱気を数字で確認できたということです。
④入会して1年半になる船矢久樹さんは、船矢という苗字の由来から、音楽を志して果たせなかったお父さんのエピソードを中心にお話しされました。船矢さんがピアノを習わせられたのも本当はお父さん自身が弾きたかったからといいつつ、K330の2楽章を演奏されましたが、朴訥とした語り口そのままの心のこもった演奏でした。
⑤前半の最後は小滝博さんのアリアです。第1回はフィガロ、昨年はパパゲーノで、今年はレポレッロに挑戦。真部淳さんの伴奏でアリアにしては長めの「カタログの歌」を原語で見事に歌い上げました。来年が楽しみです。
⑥田中裕子さんは河原奈美さんのお弟子さんで、お仕事をリタイアされてから念願のピアノを始められたそうです。今回の出演を決めてから河原さんと演奏曲目を相談されて、6ヶ月前から練習を重ねて臨んだのがK617aのグラスハーモニカのためのアダージョ。ずいぶん緊張していらっしゃったようですが、気持ちのこもった優しい演奏でした。
⑦近藤光宏さんのお話は中学生当時、フルトヴェングラーの演奏の映像が見られるというので出かけた上映会で冒頭に流れたワルターのK550にショックを受けたというエピソードから始まりました。ベルリンフィルの歴代の指揮者の演奏風景を撮影したドイツ映画「音楽の大使」はその後DVD化され(邦題「フルトヴェングラーと独墺マエストロの黄金時代」)その思い出の映像を観ながらのお話でした。
⑧広部知久さんは「モーツァルトの数多いピアノ協奏曲に比べてヴァイオリン協奏曲は評価が低いのではないか、こんな美しい曲もあります」とヴァイオリンと管弦楽のためのアダージョ・K261を聴かせてくださいました。何種類かのCDの中からお薦めはズーカーマン(Vと指揮)、セントポール室内管弦楽団(1984/ソニー)のものでした。
⑨田中進さんは昨年10月の東独ツアーでの思いがけないエピソードのお話。ドレスデンのゼンパーオパーの館内見学の際、残響を聞きたくて手を叩いていたらドイツ人のガイドさんに「手を叩くより歌ったほうがよく分かります」といわれ、なるべく舞台に近い2階の端から客席中央に向かって、昨年の会員参加例会で歌ったパパゲーノのアリアを披露し、ツアーのメンバーや舞台でその夜の演目の準備をしていた裏方さんから拍手を受けたそうです。そのあと今年の新曲(?)としてドン・ジョヴァンニからオッタービオのアリアを歌われました。
⑩1996年の4月にNHKでレヴァインのメトロポリタンオペラデビュー25周年記念コンサートの放送があったのを覚えている方はいらっしゃるでしょうか。青柳省三さんは7時間(!)に渡るガラコンサートの中から、モーツァルトのものだけを3曲(シュターデのケルビーノ、D・アップショーのスザンナ、C・ヴァネスとS・メンツァーのコシ)ピックアップ。1度だけの放映で商品としても発売されていない映像ということで、とても珍しいものを紹介してくださいました。
⑪例会の最後は江端津也子さんのピアノ演奏。ディヴェルティメント・K439bというのは3本のバセットホルンのための曲ですが、ピアノ用に編曲されて「ウィーン・ソナチネ」としてピアノ愛好者には知られているそうです。この曲の原譜はハ長調ですが、バセットホルンはF管を使用というモーツァルトの指定があるので、聴こえてくるのはヘ長調になります。今回はピアノでハ長調の楽譜をモーツァルトの指定どおりヘ長調で弾こうという本邦初の試み。どうすればハ長調の楽譜を見ながらヘ長調で弾くなどということができるのでしょう。そこが素人には考えられないプロの技の見せ所です。見事な演奏で例会を締めくくってくださいました。(F)
●情報コーナー
コンサート情報
★2/14(土)19::00/ピアノリサイタル/武蔵野市民文化会館(小)/M:ピアノソナタ第14番、幻想曲K397、K475、ロンドK485、ムソルグスキー「展覧会の絵」/Pエフゲニー・ブラックマン\1000武蔵野文化会館0422-54-2011
★2/14(土)15:00/バレンタイン・コンサート/かん芸館(杉並区荻窪)/M:ピアノとヴァイオリンのためソナタK304、K378/Pとお話、久元祐子、V相原千興 \3000(飲物つき)かん芸館03-5347-2668
★2/15(日)14::00/モーツァルトでリラックス/鎌倉芸術館(小)/M:ヴァイオリン協奏曲第4番、フルート協奏曲第1番、日本のなつかしい歌/七沢清貴バナケイア室内オーケストラFL一戸敦、V小林美樹\3000、学生\1500鎌倉芸術館0467-48-5500
★2/19(木)18::45/日本モーツァルト協会例会/東京文化会館(小)/M:K7、K9、K27、K29、K31、K360、K454/V桐山建志FP小倉貴久子\4500、学生2000/日本モーツァルト協会03-5467-0626
★2/20(金)19:00/浜離宮朝日H/M:ヴァイオリン協奏曲第3番、ハイドン交響曲第30番、第52番/オーケストラ・リベラ・クラシカ、鈴木秀美指揮、V若松夏美\5500~4500、学生\1500/浜離宮朝日H03-3267-9990
★3/7(日)15:00/大田区民Hアプリコ/M:交響曲第40番、歌劇「ドン・ジャヴァンニ」より他/新日本フィル、ヴォルフ・ディーター・ハウシルト指揮、幸田浩子S、泉良平Br\3500~1500、/太田区民Hアプリコ03-5744-1600
★3/7(日)/(財)日本オペラ振興会オペラ歌手育成部23期研修生終了公演/昭和音楽芸術院第1スタジオ/M:歌劇「偽りの女庭師」/日本オペラ振興会03-5466-3181(H)
CD情報
★M(ペーター・リヒテンタール編曲):レクイエム(弦楽4重奏版)/クイケン・カルテット チャンネル・クラシックス CC72121 \2590
★M:M:アダージョK.546、ジーグK.574、ファンタジーK.594、K.608、ピアノソナタK.333、アダージョK. 617/(Org.)ジャン・グイロー\2090
★M:オーボエ協奏曲K.314、クラリネット協奏曲K.622/(Ob)フランソワ・ラリュー、(Cl)パスカル・マルゲス、ステファン・サンデルリング:ブリターニュ・ステファン・サンデルリングo. disque de Pierre Verany PV-70028 \2390
★M:弦楽五重奏曲全集/クイケン弦楽四重奏団、寺神戸亮 Den.COCO83694~96 \3990(3枚組み)
★M:後期交響曲全集、交響曲40,41/38,39/32,35,36/31,33,34/P・マーク!:Orch. Di Padova e del Vento Arts 47650-2 \3590(4枚組み)
★M:ピアノ協奏曲第23番、17番/(P)シプリアン・カツァリス、ヤン・キム・リー:ザルツブルグ・カンマーpho. Piano21 P21 010 ND211 \2790
★モーツアルト(フンメル編曲):ピアノ協奏曲第20番、25番(室内楽編曲版)/(P)フミコ・シラガ、(Fl)ヘンリク・ヴァイゼ、(Vn)ペーター・クレメンテ、(Vcl)チボール・ベニーイBIS CD-1147
★モーツアルト:ホルン協奏曲第2番K.417(Hr.L・テヴェ),第3番K.447(Hr.P.D.ヴェスコボ)、クラリネット協奏曲(Cl.ウリッセ・ドルクルーズ!!)、グレトリー:フルート協奏曲(Fl.ランパル)ストラヴィンスキー:兵士の物語/フェルナン・ウーブラド指揮ウーブラド器楽アンサンブル他 (仏)EMI7243 5 85234 2 3(2枚組み)(Y)