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2016.12

第365回 モーツァルティアン・フェライン例会 2016年12月10日
 
 

 事務局レター【第239号】/2016年12月

 【編集者】澤田義博/石津勝男/川口ひろ子/山崎博康/笠島三枝子/大野康夫/倉島 収 mozartian_449.k*tbz.t-com.ne.jp  (スパムメールが増えてきましたのでリンクを外しました。お手数ですが*を@に替えて送信願います) 

 

●12月例会(第365回)のお知らせ 

演題:「1788年-頂点の年を追う」  お話し:礒山雅氏

 日時:2016年12月10日(土)午後2時(午後1時30分開場)

 会場:お茶の水「クリスチャンセンター」(JR「お茶の水」下車・徒歩3分) (地下アイリーンホール) 

 例会費:¥2500(会員・一般共)


――― お話し:礒山雅氏

  モーツァルトの作曲家としての頂点をどこに置くか。いろいろな考え方があると思いますが、1788年は、その有力な候補の1つです。なぜならこの年に、モーツァルトは目録記入30という、最大の作品数を達成しているからです。
その中心に、三大交響曲があります。しかしその1788年は、借金申し込みの手紙が書き始められた年でもあります。この不思議な年に焦点を絞り、モーツァルトがどんな生活の中で、どんな音楽を作曲したかを追跡します。クリストフ・ヴォルフの研究を踏まえて見直しますと、この時期には興味深い作品がいろいろあり、ジャンルによって、異なった特徴が示されています。ヘ長調のピアノ・ソナタK.533は、その筆頭です。 

 


 例会後は恒例の懇親会へのご参加をお待ちしております。 会場:「デリ・フランス」お茶の水店/03(5283)3051

 

 

●今後の例会のご案内(会場記載のないものはお茶の水クリスチャンセンターです)

  1月21日(土)  新年会
  2月11日(土)  ジェラール・プーレ氏 ヴァイオリン・リサイタル(代官山教会ホール) 

 

 

 
●11月例会の報告(第364回/11月5日)

 演題:「『魔笛』とフリーメイソンリー」
お話:澤田義博会長

 4つのセクションに分けて説明がなされた。特に4つ目が一番大事なところで、DVD「魔笛」(1983年、ミュンヘンの国立オペラ・ライブ 指揮:サヴァリッシュ)を観ながら、どの場面がフリーメイソンにとって、フリーメイソン・オペラと言える根拠となっているかについて説明があった。 

 1、フリーメイソンリーとは?については大半は省略するが、親方(マスター)にならないと一人前とはみなされないという事及び特に夜の女王、パミーナ等が登場するため、所謂「養子ロッジ」について説明があった。「養子」ロッジ:1784年頃設立。
その後皇妃ジョゼフィーヌの支援を得て再興。20世紀になると独立し、女性フリーメイソン結社が復活した。しかしこれらのロッジはあくまで疑似ロッジであり、正規のロッジとしては認められていない。確実なことはこのような「養子ロッジ」の歴史から推察される通り、「正規のロッジ」と「養子ロッジ」にはしばしば緊張関係が存在していた。これは、夜の女王とザラストロとの対立関係を示唆する。

 2、モーツァルトとフリーメイソンリー
(1)1784年12月にロッジ「慈善」に入会―モーツァルトの入会はおそらくモーツァルトの大家であった貴族、フォン・トラットナーの勧めによるものであったろう(アンガ―ミューラー)
 (2)モーツァルトがフリーメイソンリーについて残した言葉:
 「死は(厳密にいえば)僕らの人生の最終目標ですから、僕はこの数年来、この人間の最上の友とすっかり慣れ親しんでしまいました。その結果、死の姿はいつの間にか僕には少しも恐ろしくなくなったばかりか、大いに心を安め、慰めてくれるものとなりました! そして死こそ僕らの真の幸福の鍵だと知る機会を与えてくれたことを(僕のいう意味はお分かりですね―当時の手紙は検閲を受けるというのが常識だったので、モーツァルトは敢えて、フリーメイソンという言葉は使っていないが、文脈からその意味は明らか)神に感謝しています。
―僕は(まだ若いとはいえ)ひょっとしたら、明日はもうこの世にはいないかもしれないと考えずに床につくことはありません。」(1787.4.4付父レオポルトへの手紙)―このモーツァルトの手紙は、フリーメイソンリーの本質の一つを鋭く指摘している。なお、この手紙以外のフリーメーソン関連書簡は残っていない。おそらくコンスタンツェが全て処分してしまったものと考えられる。 

 

 

 3、「魔笛」の作品分析
  ・主たる調性:変ホ長調(フラット3つ)、フリーメイソンでは3という数字が重視されている。――>3人の童子、3人の侍女、3つの神殿、3人の奴隷・出典「エジプト王セトスの物語」、「ルル、あるいは魔笛」(リーベスキント作)、「エジプト人の秘儀」フォン・ボルン(ザラストロのモデルと言われている)。これらの出典のため、「魔笛」はエジプトの秘儀と関係があると考える人が多いが、フリーメイソンリーとエジプトの秘儀との関係はほとんどない。  以下省略。

 4、 なぜ『魔笛』はフリーメイソン・オペラと言えるのか? ・『魔笛』全体として、フリーメイソンリーを暗示するものが多く含まれている。
 1.調性がフラット3つの変ホ長調であること。2.序曲が3つの和音で開始される。3打音が駆使されている。3.3つの神殿、3人の侍女、3人の童子、3人の奴隷など数字の3が多用されている。4.台本作者の4人が全てフリーメイソンであること(特にモーツァルトはフリーメイソンリーのオペラを書くことに多大な興味を抱いており、極めて真摯にフリーメイソン活動を行っていた)。

・第1幕:この幕の目的はイニシエーションに先立つ、各人の準備を描くことにある。
 1.タミーノの準備 ・気絶(死の象徴)―>最初の変容 2.パミーナの準備 ・気絶(同左) 3.月――夜の世界を支配 4.タミーノ――弓は持っているが矢は持っていない。つまり経験が浅く、弱いということ。まだイニシエーションを受けていないことを示す。彼の「肖像のアリア」はイニシエーションの調性である変ホ長調になっている。また、台詞の部分で、タミーノは父から、夜の女王の存在を聞いていたことが分かる。5.鳥刺しパパゲーノ――「女性ロッジ」では女性の好奇心に対する見張り番として、生きた鳥が使われる。パパゲーノは捕まえた鳥を夜の女王に売ることにより生計を立てていた。
 6.沈黙の試練:フリーメイソンリーでは、その教えを非会員に話してはいけないという義務があることを象徴的に示している。7.3つの神殿:「叡智」「自然」「理性」を示すことになっているが、フリーメイソンリーのキーワードとは異なる。またロッジには神殿などない。8.3人の童子が案内役となる。フリーメイソンリーでも似た役割の人がいる。9.タミーノの二つの神殿入場拒絶―タミーノはイニシエーションをまだ受けていない。10.叡智の神殿での老僧との対話――「愛と徳」を求めに来たとタミーノは答えるが、これは不完全だがほぼ正しい回答である。11.ザラストロの登場―6頭(3x2)のライオンに引かれた車、ライオンはフリーメーソンリーでは重要な意味を持つ。

 第2幕:全体がイニシエーションの試練で占められている。但し、ここで、演じられている試練は、フリーメイソンリーの本当の試練ではない。火や水の試練などは存在しない。 また4元素―空気、大地、火、水などはフリーメイソンリーとは関係ない。1.僧侶達の行進。―管楽器のオーケストレーション。この場面でのザラストロと僧侶たちの対話に は、フリーメイソンリーの重要な教えが表現されている。 2.神殿の内部―ロッジの内部を連想させる。3.死を象徴する部屋――フリーメイソンリーを思わせる。この辺でフリーメイソンならこのオペラがフリーメイソンリーを描いた ものであることを確信すると思う。4.ザラストロのアリア ――フリーメイソンの儀式開始
 5.僧侶たちの二重唱―ここでもフリーメイソンリーの重要な教えが二人の僧侶によ り語られる。6.鎧を着た二人の男のコラール―ロッジ内の別の役割を想起させる。7.太陽―光の象徴。昼の世界を支配 8.フィナーレ:実は、ここからイニシエーションの本当の儀式が始まるか、まだその過程であるように考えられる。二人は闇から、光の中に入って行くのであるが、少なくともイニシエーションの終了ではないと思われる。  以上 

       文責 澤田義博 

 

 

 

 

 

●例会・懇親会 写真コーナー

 今回の懇親会場は、いつもの「デリ・フランス」お茶の水店に戻り、趣旨に賛同する有志一同で、講師の澤田会長を中心に飲み会に早変わり。ビールで乾杯後、楽しく質疑・応答、懇親が行われた。 懇親会においては、皆さん元気いっぱい、話題も豊富で、楽しい賑やかなひとときを過ごすことが出来た。

     なお、写真を削除して欲しい方がおられたら、直ぐに担当宛てメールして頂くか、電話でもよいので、いつでも連絡して欲しいと思います。削除するのは実に簡単なので、作業は直ぐ実施します。 

  なお、写真が欲しい方は、原版はHP担当の倉島が全て保管していますので、例えば、懇親会4列の右側の写真の場合は、例えば、 懇上から4・右と言うように写真を特定して、 下記にメールしていただければ、次回例会までにお届けするようにしたします。ただし、恐縮ですが、 Lサイズで30円/枚のご負担をお願い致します。

 容量不足のため、09年の3年前の写真から、順番に削除しています。

お問い合わせ:ホームページ担当;倉島 収: メールはここから

 

●10月例会の報告(第363回/10月29日)

♪平野 玲音 リサイタル♪  チェロで奏でるモーツァルト  ピアノ 村本麻里子

 10月29日(土)にモーツァルティアン・フェライン会員でウィーン在住のチェロ奏者、平野玲音さんによるリサイタルが「カーサ・モーツァルト」(原宿)を会場に開催された。
 例会案内で平野さんが書いているように「モーツァルトはチェロとピアノのための作品をほとんど遺していない」ため、「彼と深いかかわりを持つプログラム」が組まれた。チェロを主役とした企画は当会の例会では初めて。その意味では極めて意義深い機会となった。演奏曲目は次の通り。
▽ベートーヴェン(1770-1827):「魔笛」の主題による12の変奏曲
▽フランツ・クサーヴァー・モーツァルト(1791-1844):チェロ・ソナタ
▽ベートーヴェン:チェロ・ソナタ 第2番

 

 

モーツァルトが生きた時代の音楽環境が今も息づくウィーンで活躍する平野さんのチェロは洗練された響きを奏で深遠な世界にいざなう。嬉遊性に富んだ遊びの精神も時に発揮される。そのチェロがこれまた研ぎ澄まされた村本さんの小気味よいピアノと絶妙な掛け合いを演じ、会場から盛大な拍手が送られた。至近距離で聴くチェロの醍醐味を初めて堪能した方から感動の声が聞かれ、第3曲の逸話になぞらえて「サロンで聴くチェロはプロシャ王になった気分」という感想もあった。使用ピアノはベヒシュタイン。

 *「魔笛」の主題による12の変奏曲
 「魔笛」の第2幕に登場する鳥刺しパパゲーノのアリア「恋人か女房があれば」を主題とした1798年の作品。当時もこのアリアなどが市民の間で流行っていたという。ベートーヴェン自身もお気に入りだったようだ。3年後には、パミーナとパパゲーノの二重唱「愛を感ずる男たちには」を主題にした別の変奏曲も作っている。モーツァルトへの敬愛ぶりを裏付けている。
 村本さんがこのアリアの冒頭をピアノで紹介、続いて演奏に入った。会場で配布された平野さん作成のプログラムにあるミニ解説は「“即興の天才”ベートーヴェンによって自在に形を変えます」と説明している。まさにその通り、心を躍らせるパパゲーノの鼓動を伝えたり、悲しげに物思いに沈むパパゲーノに寄り添ったりと、回り舞台のように変奏を繰り出す。チェロは低音域からの重厚な奏法が立ち現れるかと思えば、スタッカートをはじめ躍動感あふれるさまざまな妙技も駆使、大団円へと導く。チェロの魅力全開の演奏が楽しめた。

 *フランツ・クサーヴァー・モーツァルト:チェロ・ソナタ ホ長調 作品19
今回の演奏会では最大のハイライト。フランツ・クサーヴァーはモーツァルトの四男。次男カール・トーマスとともに生き残った末息子で、ピアニスト、作曲家として活躍。「ウォルフガング・アマデウス2世」を名乗った。彼の作品が取り上げられることは滅多にない。サロン風の会場でこのチェロ・ソナタが紹介された例は知らない。今回の例会が本邦初演ではないかと思われる。
 平野さんのミニ解説を引用すると「偉大な父を追い続けた初期のスタイルに反し、1820年出版の《チェロ・ソナタ》には、ベートーヴェンの影響も大きいと言われています。いずれにせよ、父がほとんど書かなかった『チェロ曲』を手がけてくれた彼に、感謝しなくてはなりませんね」とある。まことに、感謝の念をなくしては聴けない素晴らしい作品であった。この息子が生後4ヶ月の時に亡くなった父モーツァルトも絶賛するに違いない。作品は3楽章から成る。
第1楽章 アレグロ ホ長調 ピアノが主題を提示したのを受けてチェロがふくよかな温かみのある響きをつむぎ出す。次第に力強く劇的な展開に至る旋律はとうとうと流れる大河のようでもある。
 第2楽章 アンダンティーノ・エスプレッシーヴォ ロ短調 哀愁を帯びた曲想。悲しげな思いが綴られるパートでは、ロマン派の響きか、ショパンにも似た調べが現れる。
 第3楽章 アレグロ・ヴィーヴォ ホ長調 一転して軽快で楽しげなリズムが主題を告げ、ピアノと心弾む対話を繰り広げる。 

 


 *ベートーヴェン:チェロ・ソナタ 第2番 ト短調 作品5の2
作曲家が1796年、チェロの名手として知られたプロイセン(プロシャ)国王フリードリヒ・ヴィルヘルム2世の宮廷を訪れ、チェロ・ソナタ2曲を献呈、デュポールと御前演奏した。その2曲目の作品。モーツァルトも1789年、この宮廷で演奏している。彼は弦楽四重奏曲を国王のために書いた。
 平野さんは演奏の前に、モーツァルトの訪問から7年後になることを指摘した上で、ベートーヴェンの演奏に接した国王は「びっくりしたのでは。まったく異なる個性が感じられます」と解説した。この作品は彼のチェロ・ソナタで唯一の短調で、2楽章の構成。
 第1楽章 アダージョ・ソステヌート・エ・エスプレッシーヴォ ト短調 ― アレグロ・モルト・ピウ・トスト・プレスト ト短調
 第2楽章 ロンド アレグロ ト長調

 紙幅の関係から、一言で印象を記せば、深みを増す表現と緻密な構成美に圧倒される。新時代の到来を強く印象付ける。これを聴くと、18年後の1814年に作曲されたフランツ・クサーヴァーのソナタとの違いが歴然とする。
 平野さんが解説したように後者は「モーツァルトのまねではない」作品であり、モーツァルト2世独自の世界がある。とはいえ、新しい潮流の最先端とは異なる。ただ、これをもってフランツ・クサーヴァーが時代に背を向けたとは言えないだろう。あえてウィーンから遠く離れ、ハプスブルク帝国の辺境に位置するレンベルク(現在のウクライナ西部の中心都市リヴィウ)とその周辺で長く暮らしたこととも無縁ではない。ソナタ自体は彼が生涯を通して親密な関係にあった貴婦人に献呈されており、特別な思いが込められていたようだ。
 作品出版の前年に当たる1819年にはコペンハーゲンに暮らす母コンスタンツェを訪ねて、父モーツァルトのことを聞いたという。ことしはフランツ・クサーヴァーの生誕から225年。これを記念にしてモーツァルテウム財団(ザルツブルク)の企画で彼の生涯をたどる特別展が9月まで開かれた(その一端はネット上でも紹介されている)。これと呼応するような今回の例会はモーツァルト2世の音楽を知る上で非常に有益であった。

プログラムのあとのアンコール曲はモーツァルトの「アヴェ・ヴェルム・コルプス」。ピアノ伴奏付きのチェロ版は格別に心に染みた。終演後は同じ会場で懇親会に移り、平野さんの大学時代の恩師でもある当会顧問、田辺秀樹先生に乾杯の音頭をとっていただき、参加者一同、余韻を楽しんだ。当初の帰国予定を早めて10月例会への出演を快諾していただいた平野さん、ぴたりと息のあったピアノの村本さんにあらためて感謝し、報告とする。

        (文責 山崎博康) 

2016.11

第364回 モーツァルティアン・フェライン例会 2016年11月5日
 

 

 事務局レター【第 238号】/2016年10月

 【編集者】澤田義博/石津勝男/川口ひろ子/高橋徹/笠島三枝子/大野康夫/ 倉島 収 mozartian_449*yahoo.co.jp  (スパムメールが増えてきましたのでリンクを外しました。お手数ですが*を@に替えて送信願います) 

 

●11月例会(第364回)のお知らせ 

演題:「『魔笛』とフリーメイソンリー」  お話し:澤田義博氏(当会会長)

 日時:日時 11月 5日(土)  午後2時開演(午後1時半受付)   

 会場:お茶の水「クリスチャンセンター」(JR「お茶の水」下車・徒歩3分) 

 例会費:¥1500(会員・一般共)


 講演概要

  「魔笛」はモーツァルトのオペラの中で、最高傑作であり、一番奥深いオペラであると 私は考えています。音楽が美しいのは当然ですが、子供はおとぎ話として楽しめますし、大人も美しいだけではなく、人生について考えさせられる深いオペラであると感じると思います。そして、フリーメイソンにとっては、その仲間であるモーツァルトが作曲した、誰もが知っている自慢のオペラです。
 今回の講演では、なぜこのオペラ「魔笛」がフリーメイソンリーと密接にかかわっており、そして、なぜこのオペラが「フリーメイソンのオペラ」であると考えられているかという点についてDVDを観ながら、可能な限り、具体的に例証しようと考えています。この講演により、このオペラに隠された仕掛けを明らかにし、皆様のこのオペラについての理解がよりクリアになることを願っております。 

 


 例会後は恒例の懇親会へのご参加をお待ちしております。 会場:「デリ・フランス」お茶の水店/03(5283)3051

 


 
●今後の例会のご案内(会場記載のないものはお茶の水クリスチャンセンターです) 11月と12月の予定が入れ替わりました。お気を付けください。

  12月10日(土) 礒山 雅氏(国立音楽大学名誉教授、芸術学 関連学会連合会長等)

   1月21日(土)  新年会

   2月11日(土) ジェラール・プーレ氏 ヴァイオリン・リサイタル(代官山教会ホール) 

 

 


 ◇モーツァルティアン・フェライン新年会出演者募集

  ◎日時   2017年1月21日(土)

  ◎募集内容
   お話の部・・・ 20分程度  (例)CDを聴きながら想いを語る
  演奏の部・・・ 5分~8分

  ◎条件  モーツァルトに限る  新人の方大歓迎! 例会出席率良好の方優先です

 ◎申込の締切日  2016年11月12日(土)

  ◎お問合せは
  川口 ひろ子  fortuna-h*kuf.biglobe.ne.jp(スパムメール対策です。*を@にかえてください)03(3485)4680

 

 


―事務局からお知らせー
訃報
モーツァルティアン・フェライン会員の小林 敬様
 肺炎のため7月19日86歳でご逝去されました。謹んでお悔やみ申し上げます。 

 

10月例会報告(第363回/10月29日)
♪平野 玲音 リサイタル♪  チェロで奏でるモーツァルト  ピアノ 村本麻里子 

10月29日(土)にモーツァルティアン・フェライン会員でウィーン在住のチェロ奏者、平野玲音さんによるリサイタルが「カーサ・モーツァルト」(原宿)を会場に開催された。例会案内で平野さんが書いているように「モーツァルトはチェロとピアノのための作品をほとんど遺していない」ため、「彼と深いかかわりを持つプログラム」が組まれた。チェロを主役とした企画は当会の例会では初めて。その意味では非常に意義深い機会となった。演奏曲目は次の通り。
▽ベートーヴェン(1770-1827):「魔笛」の主題による12の変奏曲
▽フランツ・クサーヴァー・モーツァルト(1791-1844):チェロ・ソナタ
▽ベートーヴェン:チェロ・ソナタ 第2番

モーツァルトが生きた時代の音楽環境が今も息づくウィーンで活躍する平野さんのチェロは洗練された響きを奏で深遠な世界にいざなう。嬉遊性に富んだ遊びの精神も時に発揮される。そのチェロがこれまた研ぎ澄まされた村本さんの小気味よいピアノと絶妙な掛け合いを演じ、会場から盛大な拍手が送られた。至近距離で聴くチェロの醍醐味を初めて堪能した方から感動の声が聞かれ、第3曲の逸話になぞらえて「サロンで聴くチェロはプロシャ王になった気分」という感想もあった。使用ピアノはベヒシュタイン。

*魔笛」の主題による12の変奏曲
「魔笛」の第2幕に登場する鳥刺しパパゲーノのアリア「恋人か女房があれば」を主題とした1798年の作品。当時もこのアリアなどが市民の間で流行っていたという。ベートーヴェン自身もお気に入りの曲だったに違いない。3年後には、パミーナとパパゲーノの二重唱「愛を感ずる男たちには」を主題にした別の変奏曲も作っている。モーツァルトへの敬愛ぶりを裏付けている。
村本さんがまずこのアリアの冒頭をピアノで紹介、続いて演奏に入った。会場で配布された平野さん作成のプログラムにあるミニ解説は「“即興の天才”ベートーヴェンによって自在に形を変えます」と説明している。まさにその通り、心を躍らせるパパゲーノの鼓動を伝えたり、悲しげに物思いに沈むパパゲーノに寄り添ったりと、回り舞台のように変奏を繰り出す。チェロは低音域からの重厚な奏法が立ち現れるかと思えば、ピツィカートをはじめ躍動感あふれるさまざまな妙技も駆使、大団円へと導く。チェロの魅力全開の演奏が楽しめた。

*フランツ・クサーヴァー・モーツァルト:チェロ・ソナタ ホ長調 作品19
今回の演奏会では最大のハイライト。モーツァルトの四男。次男カール・トーマスとともに生き残った末息子で、ピアニスト、作曲家として活躍。「ウォルフガング・アマデウス2世」と名乗ったフランツ・クサーヴァーの作品が取り上げられることは滅多にない。サロン風の会場でこのチェロ・ソナタが紹介された例は知らない。今回の例会が本邦初演ではないかと思われる。平野さんのミニ解説を引用すると「偉大な父を追い続けた初期のスタイルに反し、1820年出版の《チェロ・ソナタ》には、ベートーヴェンの影響も大きいといわれています。いずれにせよ、父がほとんど書かなかった『チェロ曲』を手がけてくれた彼に、感謝しなくてはなりませんね」とある。まことに、感謝の念をなくしては聴けない素晴らしい作品であった。この息子が生後4ヶ月のときに亡くなった父モーツァルトも絶賛するに違いない。
作品は3楽章から成る。第1楽章 アレグロ ホ長調 ピアノが主題を提示したのを受けてチェロがふくよかな温かみのある響きをつむぎ出す。次第に力強く劇的な展開に至る旋律はとうとうと流れる大河のようでもある。第2楽章 アンダンテ・エスプレッシーヴォ ロ短調 哀愁を帯びた曲想。悲しげな思いが綴られるパートでは、ロマン派の響きか、ショパンにも似た調べが現れる。 第3楽章 アレグロ・ヴィヴォ ホ長調 一転して軽快で楽しげなリズムが主題を告げ、ピアノと心弾む楽しい対話を繰り広げる。

*ベートーヴェン:チェロ・ソナタ 第2番 ト短調 作品5の2
作曲家が1796年、チェロの名手として知られたプロイセン(プロシャ)国王フリードリヒ・ヴィルヘルム2世の宮廷を訪れ、チェロ・ソナタ2曲を献呈、デュポールと御前演奏した。その2曲目の作品。モーツァルトも1789年、この宮廷で演奏している。彼は弦楽四重奏曲を国王のために書いた。平野さんは演奏の前に、モーツァルトの訪問から7年後になることを指摘した上で、ベートーヴェンの演奏に接した国王は「びっくりしたのでは。まったく異なる個性が感じられます」と解説した。
この作品は彼のチェロ・ソナタで唯一の短調で、2楽章の構成。第1楽章 アダージョ・ソステヌート・エ・エスプレッシーヴォ ト短調 ― アレグロ・モルト・ピウ・トスト・プレスト ト短調 第2楽章 ロンド アレグロ ト長調 紙幅の関係から、一言で印象を記せば、深みを増す表現と緻密な構成美に圧倒される。新時代の到来を強く印象付ける。これを聴くと、18年後の1814年に作曲されたフランツ・クサーヴァーのソナタとの違いが歴然とする。平野さんが解説したように後者は「モーツァルトのまねではない」作品であり、モーツァルト2世独自の世界がある。とはいえ、新しい潮流の最先端とは異なる。

ただ、これをもってフランツ・クサーヴァーが時代に背を向けたとは言えないだろう。あえてウィーンから遠く離れ、ハプスブルク帝国の辺境に位置するレンベルク(現在のウクライナ西部の中心都市リビウ)とその周辺で長く暮らしたこととも無縁ではない。ソナタ自体は彼が生涯を通して親密な関係にあった貴婦人に献呈されており、特別な思いが込められていたようだ。作品出版の前年に当たる1819年にはコペンハーゲンに暮らす母コンスタンツェを訪ねて、父モーツァルトのことを聞いたという。ことしはフランツ・クサーヴァーの生誕から225年。これを記念にしてモーツァルテウム財団(ザルツブルク)の企画で彼の生涯をたどる特別展が9月まで開かれた(その一端はネット上でも紹介されている)。これと呼応するような今回の例会はモーツァルト2世の音楽を知る上で非常に有益であった。

プログラムのあとのアンコール曲はモーツァルトの「アヴェ・ヴェルム・コルプス」。ピアノ伴奏付きのチェロ版は格別に心に染みた。終演後は同じ会場で懇親会に移り、平野さんの大学時代の恩師でもある当会顧問、田辺秀樹先生に乾杯の音頭をとっていただき、参加者一同、余韻を楽しんだ。当初の帰国予定を早めて10月例会への出演を快諾していただいた平野さん、ぴたりと息のあったピアノの村本さんにあらためて感謝し、報告とする。(文責 山崎博康)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 


 

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2016.9

362回 モーツァルティアン・フェライン例会 2016年9月24日
 
 

 事務局レター【第 237号】/2016年9月

 【編集者】澤田義博/石津勝男/川口ひろ子/高橋徹/笠島三枝子/大野康夫/ 倉島 収 mozartian_449*yahoo.co.jp  (スパムメールが増えてきましたのでリンクを外しました。お手数ですが*を@に替えて送信願います) 

 

●9月例会(第362回)のお知らせ 

♪上野 優子 ピアノリサイタル♪

日時:2016年9月24日(土) 15:00 開演 (14:30 開場)  
←土曜日です! 開始時間に注意! 


会場: 原宿 カーサ・モーツァルト (JR山手線「原宿」徒歩5分、東京メトロ千代田線「明治神宮前」徒歩2分
ラフォーレ原宿裏東京中央教会前 電話03-3402-1756   

 例会費:¥3500(会員・一般共)「全席自由席」 

 主催 モーツァルティアン・フェライン
 お問い合わせ  090-2223-8101(澤田)  090-5191-3404(石津) 

チラシ:その1 チラシ:その2


 「ヨーロッパから広がるピアノ音楽」
 再びモーツァルティアン.フェラインの例会にて演奏させていただけますこと、大変光栄に思っております。今年生誕260年を迎えたモーツァルトの、旋律の美しさと憂いが印象的なイ短調のロンドと初期の傑作ソナタ、ショパンの名曲、そして今年生誕100年を迎えたアルゼンチンの作曲家ヒナステラの作曲を、心をこめて演奏いたします。

《プログラム》

モーツァルト:ロンドイ短調 K511 ピアノソナタ第6番「ディルニッツ」 ニ長調 K、284

ショパン  :バラード第一番ト短調 Op.23

       スケルツォ第2番 変ニ長調 Op.31

ヒナステラ :ピアノソナタ 第1番 Op.22 


「プロフィール」

 桐朋女子高校音楽科を経て同大学2年次に渡欧、イモラ国際ピアノアカデミー(伊)ピアノ科ディプロマ取得、パリ・エコールノルマル音楽院ピアノ科コンサーティスト課程ディプロムをアルゲリッチ、エル=バシャ、カツァリス各氏に認められ取得。’09年同音楽院室内楽科コンサーティスト課程ディプロムを首席・審査員満場一致で取得。
 全日本学生音楽コンクール、浜松国際ピアノアカデミーコンクール、フンメル国際ピアノコンクール他入賞多数。これまでストレーザマッジョーレ湖音楽祭、パリ・サルコルトー、ブールジュ・サンボネ劇場、都民芸術フェスティバル、ラフォルジュルネ「熱狂の日」エリアコンサートなどでソリスト・室内楽奏者として出演する他、モルドヴァ共和国ナショナルオーケストラ、スロヴァキアフィルハーモニー管弦楽団、日本フィルハーモニー交響楽団と共演。国内外での積極的な活動が音楽専門誌、新聞など各メディアで高く評価される。また、音楽雑誌などの執筆、コンクール審査や講座、昭和音楽大学にて後進の指導も行っている。イタリア国営テレビRAI3、スロヴァキアFMに出演。’08年デビューCDが「レコード芸術」誌準推薦盤に、’15年セカンドCDが準特選盤に、それぞれ選出。

 

 

例会後は恒例の懇親会へのご参加をお待ちしております。

 

 


 
●今後の例会のご案内(会場記載のないものはお茶の水クリスチャンセンターです) 11月と12月の予定が入れ替わりました。お気を付けください。

  10月29日(土) 平野玲音氏(チェリスト)原宿カーサモーツァルト
   チラシ:その1 チラシ:その2

  11月 5日(土) 澤田義博氏(モーツァルティアン・フェライン会長)「『魔笛』とフリーメイソンリー」

  12月10日(土) 礒山 雅氏(国立音楽大学名誉教授、芸術学 関連学会連合会長等)

   1月21日(土)  新年会

   2月11日(土) ジェラール・プーレ氏 ヴァイオリン・リサイタル(会場未定) 

 

 


●7月例会の報告(第361回)

 演題:「コジ・ファン・トウッテ」の過去と現在
お話:加藤浩子氏

 「コジ・ファン・トウッテ」は、ダ・ポンテ三部作の最後を飾る作品で、究極のアンサンブル・オペラと言われているが、一方で物語の結末がすっきりしない作品とも、演奏解釈がさまざまに行われる余地がある作品とも言われている。以前にフェラインで取り上げた「ドン・ジョヴァンニ」と「フィガロの結婚」に続き、今回はこの論議を呼ぶオペラをとりあげ、いくつかのCDとDVDを聴き比べ、見比べながら、時代を追っての演奏の変遷と、なぜそのような解釈が出てきたか、その背景を考えて見ようということであった。

 

はじめに、ベームの「フィガロの結婚」のDVD(1975)から、第1幕の第7番の三重唱を見ながら、隠れていたケルビーノが発見されて、バジリオの歌うせりふ「女はみんなこうしたもの(コジ・ファン・トウッテ)」を確認し、これが正式なタイトルになった由来を確かめた。続いてこのDVDから第4幕の最終場面の伯爵夫人が伯爵を「許す」シーンを見て、この場面がこの作品の真骨頂であり、「ドン・ジョヴァンニ」では「地獄落ち」のシーンが真骨頂であるとすれば、「コジ・ファン・トウッテ」の最終場面の6人の合唱による恋の結末は、極めて曖昧であるとされた。先生は、このオペラ「コジ」の真骨頂は、生真面目なフィオルディリージの陥落の瞬間(第29番の二重唱)、「愛」が全てを吹き飛ばす場面であり、ただそれが裏切りといえば裏切りのシーンでもあるので、他の二作のように決定的な解決だと感じられない、なので他の2作に比べて結末がすっきりしないオペラであり、その結果演奏解釈がさまざまに行われる余地を残していると強調なさっていた。そしてこれが「コジ」がふところの深い作品とか味のある作品と解釈される所以であるとお話しされた。

この第29番の二重唱をアーノンクール・ポネルの映像(1988)を見ながら、音楽がアダージョで始まり、アレグロの二重唱になり、ラルゲットからアンダンテに至る愛が細かく進行するプロセスやオーボエの悲しい音色を確かめたが、シンプルな音楽でこれだけ劇的に愛を語ることの出来た作曲家はモーツァルトしかいないと話されていた。このDVDでドラベラが陥落するグリエルモとの第23番の二重唱を見たが、ここでは初めからグリエルモがプレゼントを手にしていて、ドラベッラが陥落することが最初からわかっており、フェッランドとフィオルディリージの二重唱に比べて劇的な起伏は少なく、対照的に出来ていると話された。 

 

  続いてベームの「コジ」のCD(1963)で、実にゆっくりした優雅な序曲と、シュワルツコップの歌う第25番のロンドを聴いたが、彼女の歌い方は真面目なプリマドンナ的な格調高いフィオルディリージであった。この1960年代の古い演奏法に対して、およそ60年後のクルレンツイスの最新のCD(2014)で、序曲とこのロンドを聴き比べた。序曲は古楽器による色彩感・リズム感に富んだフレッシュな序曲であり、ケルメスの歌う第25番はノン・ビブラートのバロック奏法で歌われ、清楚な澄んだ歌い方で装飾が自由に付けられていた。このCDでは、楽譜にない装飾や楽器まで使われ、思いがけぬフォルテピアノの響きがアリアなどにもあって驚かさせられるが、クルレンツィスは当時、このような自由さがあったと考えて解釈しているようだった。先生はベームの演奏を、「崇められるべき美しきモーツァルト」、一方のクルレンツイスの奏法を「愛の革命家としてのモーツァルト」と称しておられたが、このおよそ半世紀の間にモーツァルトの音楽に対する一般的な考え方が変わってきた。すなわち、崇められる神のような存在から、人間的な身近に感じられる存在に変わってきており、そのことが演奏法にも反映されていると思われる。オペラにおいても、「愛」や「人間関係」の描き方が、演出における「読み替え」が盛んになったこともあり、多様化してきた。

 休憩後は、ムーテイ・ハンペ演出のザルツブルグ音楽祭のDVD(1983)を見て、伝統的な海のある演出の美しさ、シンメトリーな美しさを第1幕の始まりの三重唱、フィナーレの始まりの二重唱などで確認しながら、これが1980年代を代表する伝統的な演出という評価がなされていた。 

これに対し、「読み替え」のはしりの例として、P.セラーズ演出のニューヨークのバー「デスピーナ」の「コジ」のDVD(1990)をさらりと見たが、最初から真面目な恋愛劇や、シンメトリーなどの伝統的なものを避け、現代の都会の人間的な自由な恋愛ごっこの姿を描いているようだった。続いて、「読み替え」の傑作の例として、デーリエ女史演出のベルリン国立OPのDVD(2002)の一部を見たが、飛行場のカウンターでいきなり男の三重唱が始まって驚かせ、ジャンボの「コジ」号にのって戦場に出発する特色ある明るい映像であった。先生は、この演出が女性の心理状態を良く表出して説得力があり、これだけ行き届いた現代風な「読み替え」演出なら、共感を持つ人が多いであろうと述べておられた。(ただし、男性にはその良さが理解できぬ演出でもあった。)

 冒頭からこの「コジ」は、愛の結末がすっきりしないオペラであることでお話しが始まっていたが、先生はこのオペラがどう終わろうと必ず疑問に思うところがあり、広い解釈が許されるので、余り詮索せずに、人間とはそういうものと考え、余り結果を決めつけない方が良いのではないかと、結ばれていた。時間がなくて残念ながら、先生のメモに残されていた音楽的には完璧な「アンサンブル・オペラ」の側面(重唱の素晴らしさ)のDVDによる確認が抜けてしまっていた。普段、個人的には見過ごしてしまう重要な場面の見較べ・聴き比べが楽しめて、先生の熱意あるお話しに感謝しながら、素晴らしい例会であったとご報告して結びとする。 (以上)

    (2016/07/24、文責、倉島 収) 

 

 

 

 

 ●例会・懇親会 写真コーナー

 今回の懇親会場は、いつもの「デリ・フランス」お茶の水店に戻り、趣旨に賛同する有志一同で、 講師の加藤浩子氏を中心に飲み会に早変わり。ビールで乾杯後、楽しく質疑・応答、懇親が行われた。 懇親会においては、皆さん元気いっぱい、話題も豊富で、楽しい賑やかなひとときを過ごすことが出来た。

     なお、写真を削除して欲しい方がおられたら、直ぐに担当宛てメールして頂くか、電話でもよいので、 いつでも連絡して欲しいと思います。削除するのは実に簡単なので、作業は直ぐ実施します。 

  なお、写真が欲しい方は、原版はHP担当の倉島が全て保管していますので、例えば、懇親会4列の 右側の写真の場合は、例えば、懇上から4・右と言うように写真を特定して、 下記にメールしていただければ、次回例会までにお届けするようにしたします。ただし、恐縮ですが、 Lサイズで30円/枚のご負担をお願い致します。

 容量不足のため、09年の3年前の写真から、順番に削除しています。

お問い合わせ:ホームページ担当;倉島 収: メールはここから 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

第363回 モーツァルティアン・フェライン例会 2016年10月29日
 
 

 事務局レター【第 238号】/2016年10月

 【編集者】澤田義博/石津勝男/川口ひろ子/高橋徹/笠島三枝子/大野康夫/ 倉島 収 mozartian_449*yahoo.co.jp  (スパムメールが増えてきましたのでリンクを外しました。お手数ですが*を@に替えて送信願います) 

 

●10月例会(第363回)のお知らせ 

♪平野 玲音 リサイタル♪
チェロで奏でるモーツァルト  ピアノ 村本麻里子

 日時:2016年10月29日(土) 午後2時30分 開演 (午後2時 開場)  
←土曜日です! 開始時間に注意! 


会場: 原宿 カーサ・モーツァルト (JR山手線「原宿」徒歩5分、東京メトロ千代田線「明治神宮前」徒歩2分
ラフォーレ原宿裏東京中央教会前 電話03-3402-1756   

 例会費:¥3500(会員・一般共)「全席自由席」 会員以外の方大歓迎 

 主催 モーツァルティアン・フェライン
 お問い合わせ  090-2223-8101(澤田)  090-5191-3404(石津) 

チラシ:その1 チラシ:その2


 「Message」
モーツァルティアン.フェラインの例会にお招きいただき、ありがとうございます。モーツァルトは、残念ながら、チェロとピアノのための作品をほとんど遺していないのですが、今回は少し視野を広げ、彼と深いかかわりを持つプログラムを組みました。 前半は、オペラ「魔笛」の主題による楽しい変奏曲と、モーツァルトの息子フランツ・クサーヴァーの知られざるチェロ・ソナタ。後半のベートーヴェンのソナタ第2番は、モーツァルトのカルテットでお馴染みの「プロシャ王」に捧げられた名曲です。

《プログラム》

ベートーヴェン:「魔笛」の主題による12の変奏曲

フランツ・クサーヴァー・モーツァルト:チェロ・ソナタ

 ベートーヴェン:チェロ・ソナタ 第2番 


 「プロフィール」

 平野 玲音 Reine Hirano (チェロ)
  チェリストの両親のもと東京に生まれ、9歳よりチェロを始める。山崎伸子女史、藤原真理女史に師事する傍ら、東京大学で美学芸術学を専攻し、同大学院表象文化論コース修士課程修了。2002年よりウィーンに留学、ウィーン・フィルのG. イーベラー氏に師事、ウィーン国立音大で室内楽をM. フェルナンデス女史、J. マイスル氏に師事。S. イッサーリス、G. クルターク、A. ビルスマ各氏のマスタークラスを受講。
  2003年東京で、皇太子、皇太子妃両殿下の御前リサイタル。2004年オーストリア国際室内楽フェスティヴァル「アレグロ・ヴィーヴォ」賞を受賞、ホルスト・エーベンヘーの演奏は作曲家自身の賛辞を得、ラジオ�・1で全国放送される。
  2005年「国際夏期アカデミー プラハ‐ウィーン‐ブダペスト」でアルティス賞ならびにジーメンス・ウィーン古典派賞を受賞。
  ソロ、室内楽で、ウィーンのコンツェルトハウスを始めヨーロッパ各地で活躍し、一時帰国してNHK-FM「名曲リサイタル」やラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン等に出演。2011年よりシリーズ公演 “Reine pur”(レイネ プーア)を開催。バーデン・バイ・ウィーンのベートーヴェンターゲや「オストフリースラント夏の音楽祭」といった音楽祭に招聘され、パイヤーバッハ・マスタークラスでチェロと室内楽の講師を務める。
  深みのある美しい音色と、ウィーン仕込みの自然な解釈が、聴き手を純粋な「音楽の享受」へと誘い出す。異色の経歴を活かし、作品の歴史的・文化的背景を汲み取ろうとする真摯な姿勢は、独自のストーリー性を持ったプログラミングにも表れている。フックスやアイネム等の“知られざる名曲”を次々と発掘し、今年春には、ペーター・バルツァバから捧げられた《チェロ・ソナタ》を作曲者と共に初演した。

  CD「レイネ デビュー」、「赤いはりねずみ――ウィーンのブラームスと仲間たち」、「春なのに」、「ディヴェルティメント」をリリース。
  E. メルクス氏率いる「カペラ・アカデミカ・ウィーン」のメンバー、東京‐ウィーン四重奏団団員。また冊子『百味』に、ウィーンの音楽と食にまつわる軽妙なエッセイを連載、多才な一面をのぞかせている。
  ファンクラブ公式サイトは http://reine-h.com/

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村本麻里子(ピアニスト)
 兵庫県立西宮高校音楽科、東京藝術大学卒業。ベルリン・ハンスアイスラー音楽大学卒業。これまでに鈴江美子、故片岡みどり、小林仁、K.ベスラー、K.リヒターの各氏に師事。帰国後、神戸学院グリーンフェスティバルにおいてソロリサイタルを行うなどソロ活動の他、室内音奏者としても、声楽や管弦楽器など様々な楽器奏者と共演している。
  2014年広島県尾道市「平山郁夫美術館」に於いて平山郁夫没後5年の追悼記念コンサートに出演。2010~2016年「ベートヴェン室内楽シリーズ」を開催し、ヴァイオリンソナタ、チェロソナタの全曲演奏を行う。2012年より地元所沢で「ブランチコンサート」を主宰し、既に19回、自身のソロや室内楽コンサートを開催している。 

 


 例会後は引続きカーサ・モーツァルトでの懇親会へのご参加をお待ちしております。

 

 

 

●11月例会(第364回)のお知らせ 

演題:「『魔笛』とフリーメイソンリー」  お話し:澤田義博氏(当会会長)

 日時:日時 11月 5日(土)  午後2時開演(午後1時半受付)   

 会場:お茶の水「クリスチャンセンター」(JR「お茶の水」下車・徒歩3分) 

 例会費:¥1500(会員・一般共)


 講演概要

  「魔笛」はモーツァルトのオペラの中で、最高傑作であり、一番奥深いオペラであると 私は考えています。音楽が美しいのは当然ですが、子供はおとぎ話として楽しめますし、大人も美しいだけではなく、人生について考えさせられる深いオペラであると感じると思います。そして、フリーメイソンにとっては、その仲間であるモーツァルトが作曲した、誰もが知っている自慢のオペラです。
 今回の講演では、なぜこのオペラ「魔笛」がフリーメイソンリーと密接にかかわっており、そして、なぜこのオペラが「フリーメイソンのオペラ」であると考えられているかという点についてDVDを観ながら、可能な限り、具体的に例証しようと考えています。この講演により、このオペラに隠された仕掛けを明らかにし、皆様のこのオペラについての理解がよりクリアになることを願っております。 

 


 例会後は恒例の懇親会へのご参加をお待ちしております。 会場:「デリ・フランス」お茶の水店/03(5283)3051

 


 
●今後の例会のご案内(会場記載のないものはお茶の水クリスチャンセンターです) 11月と12月の予定が入れ替わりました。お気を付けください。

  11月 5日(土) 澤田義博氏(モーツァルティアン・フェライン会長)「『魔笛』とフリーメイソンリー」

  12月10日(土) 礒山 雅氏(国立音楽大学名誉教授、芸術学 関連学会連合会長等)

   1月21日(土)  新年会

   2月11日(土) ジェラール・プーレ氏 ヴァイオリン・リサイタル(代官山教会ホール) 

 

 


 ◇モーツァルティアン・フェライン新年会出演者募集

  ◎日時   2017年1月21日(土)

  ◎募集内容
   お話の部・・・ 20分程度  (例)CDを聴きながら想いを語る
  演奏の部・・・ 5分~8分

  ◎条件  モーツァルトに限る  新人の方大歓迎! 例会出席率良好の方優先です

 ◎申込の締切日  2016年11月12日(土)

  ◎お問合せは
  川口 ひろ子  fortuna-h*kuf.biglobe.ne.jp(スパムメール対策です。*を@にかえてください)03(3485)4680

 

 


―事務局からお知らせー
訃報
モーツァルティアン・フェライン会員の小林 敬様
 肺炎のため7月19日86歳でご逝去されました。謹んでお悔やみ申し上げます。 

 

 


●9月例会の報告(第362回)

♪上野 優子 ピアノリサイタル♪

 9月24日(土)に上野優子さんによるピアノリサイタルが開催された。
 会場は原宿駅近くのカーサ・モーツァルト。約40人の参加があった。演奏楽器はベヒシュタインS(1920年代、London Bechstein 145cm、マホガニー)

★ W.A.モーツァルト:ロンド イ短調 K511
 この曲は、ウィーンで1787年3月11日の作。誰のために、何の目的で書いたものかは知られていない。これはK485のニ長調ロンドと対曲をなして広く親しまれているもので、ニ長調ロンドが明るく単純明快なのに反して、こちらはメランコリーな詩があり、基本主題における半音進行には、感性の高まりがある。上野さんは粒のそろった、安定感のあるタッチで演奏された。

★ W.A.モーツァルト:ピアノソナタ第6番「デュルニッツ」ニ長調 K.284
 ザツツブルク時代のソナタ6曲の最後の作品。1775年2月か3月にミュンヘンで作曲された。音楽愛好家のデュルニッツ男爵のために作曲されたもので、作曲の動機は先行5曲とは多少異なるとともに、内容的にも大きな飛躍を遂げた画期的な成功作である。
  モーツァルトは後にアウスブルクで、ピアノ作製家シュタインのピアノで演奏して、その効果のすばらしかったことを報じているが、このソナタは性能の良いフォルテ・ピアノによってこそ発揮できると思われる。
  上野さんは1楽章アレグロを明るく、軽やかで流れるように、2楽章アンダンテを安定したテンポで、3楽章アンダンテの主題による変奏曲を適度なテンポにより、最後は快活に締めくくられた。 

 


10分程の休憩の後、ショパン、ヒナステラの作品が演奏された。

★ ショパン:バラード1番ト短調 Op.23、スケルツォ2番変二短調
  2曲ともショパンの代表作品であり、難易度も高い
 上野さんはダイナミックなタッチで、迫力のある華麗な演奏をされ、ショパンの魅力を充分堪能できた。

★ ヒナステラ:ピアノソナタ第1番 Op.22
 アルベルト・エバリスト・ヒナステラ(Alberto Evaristo Ginastera,1916年4月11日 - 1983年6月25日)は、アルゼンチンのクラシックの作曲家。ヒナステーラとも呼ばれる。ブラジルのヴィラ=ロボス、メキシコのチャベスやポンセらと並び、ラテンアメリカでもっとも重要なクラシック作曲家の一人である。荒々しく、力強い演奏であった。

  アンコールとして、ドビッシーの代表的ピアノ曲「月の光」を演奏された。ベヒシュタインのピアノの特性を引出し、まろやかで甘美な素晴らしい演奏で締めくくられた。

  モーツァルト作品解説の引用文献:属啓成著「モーツァルトⅢ 器楽篇」1975年12月1日 音楽の友社刊 他   (文責 大野康夫) 

 

 

 

 

●例会・懇親会 写真コーナー

 今回の懇親会場は近くの中華料理店「南国酒家」で、趣旨に賛同する有志一同により、 ピアニストの上野優子さんを中心に飲み会に早変わり。ビールで乾杯後、楽しく質疑・応答、懇親が行われた。 懇親会においては、皆さん元気いっぱい、話題も豊富で、楽しい賑やかなひとときを過ごすことが出来た。

     なお、写真を削除して欲しい方がおられたら、直ぐに担当宛てメールして頂くか、電話でもよいので、 いつでも連絡して欲しいと思います。削除するのは実に簡単なので、作業は直ぐ実施します。 

  なお、写真が欲しい方は、原版はHP担当の倉島が全て保管していますので、例えば、懇親会4列の 右側の写真の場合は、例えば、懇上から4・右と言うように写真を特定して、 下記にメールしていただければ、次回例会までにお届けするようにしたします。ただし、恐縮ですが、 Lサイズで30円/枚のご負担をお願い致します。

 容量不足のため、09年の3年前の写真から、順番に削除しています。

お問い合わせ:ホームページ担当;倉島 収: メールはここから 

2016.10
2016.7

第361回 モーツァルティアン・フェライン例会 2016年7月23日
 

 

 事務局レター【第236号】/2016年7月

 【編集者】澤田義博/石津勝男/川口ひろ子/笠島三枝子/高橋徹/大野康夫/倉島 収 mozartian_449*yahoo.co.jp  (スパムメールが増えてきましたのでリンクを外しました。お手数ですが*を@に替えて送信願います) 

 

●7月例会(第361回)のお知らせ 

演題:「コジ・ファン・トウッテ」の過去と現在」  お話し:加藤浩子氏

 日時:2016年7月23日(土)午後2時(午後1時 開場)

 会場:お茶の水「クリスチャンセンター」(JR「お茶の水」下車・徒歩3分) 

 例会費:¥2500(会員・一般共)


――― お話し:加藤浩子氏

ダ・ポンテ三部作の最後を飾る作品で、究極のアンサンブル・オペラともいえる「コジ・ファン・トウッテ」。物語の結末がすっきりしないこともあり、演奏解釈もさまざまに行われる余地がある作品でもあります。
 以前、フェラインでお話しさせていただいた「ドン・ジョヴァンニ」と「フィガロの結婚」に続き、今回はこの論議を呼ぶオペラをとりあげ、いくつかのCDとDVDを聴き比べ、見比べながら、時代を追っての演奏の変遷と、なぜそのような解釈が出てきたか、その背景を考えます。 

 


 例会後は恒例の懇親会へのご参加をお待ちしております。 会場:「デリ・フランス」お茶の水店/03(5283)3051

 

 

●今後の例会のご案内(会場記載のないものはお茶の水クリスチャンセンターです)

  8月          夏休み
 9月24日(土)  上野優子氏(ピアニスト)原宿カーサモーツァルト
10月29日(土)  平野玲音氏(チェリスト)原宿カーサモーツァルト
11月 5日(土)   礒山 雅氏(国立音楽大学名誉教授、芸術学 関連学会連合会長等
12月17日(土)   澤田義博氏(モーツァルティアン・フェライン会長)「『魔笛』とフリーメイソンリー」

 

 

 

●会員総会のお知らせ 

今月の例会の前に、13時より会員総会を開催いたします。

    会長 澤田義博 

 


●6月例会の報告(第360回/6月11日)

 演題:モーツァルトのザルツブルク時代の宗教音楽-ミサ曲変ロ長調を中心に
 お話:国際音楽学会副会長 樋口隆一氏

  今月の例会は、国際音楽学会副会長の樋口隆一先生をお迎えして開催された。先生は、明治学院大学を昨年退官され、現在は大学院での指導を続けながら、指揮者としての活動も行っている。今年3月には「マタイ受難曲」を演奏、6月21日には今例会の中心K275変ロ長調ミサ曲等を演奏予定である。

  モーツァルトのミサ曲で、一般に知られているのは、K626レクイエム、K427大ミサ曲・ハ短調、K317ミサ・ハ長調《戴冠式ミサ曲》である。しかし、ザルツブルク時代に多数書かれたミサ曲は意外と聴く機会は少ない。先生はそこを指摘され、「盲点」だと言われた。今回は、第2回ウィーン旅行(1767-1769)以降から歌劇「イドメネオ」上演のためミュンヘンへ旅立つまで(1780)のミサ曲を概観し、次にK275を始め、この期間のミサ曲をCDで聴く講義となった。(CDはアーノンクール指揮ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス演奏の宗教音楽全集による。)

 


 1、ザルツブルク時代のミサ曲概観
  モーツァルトのミサ曲は1768年のK49から、K139、K65、K66と続く。更に第2回イタリア旅行(1769-1771)、第3回イタリア旅行(1772-1773)を経てK140、K167、K192、K194、K220が作曲された。1776年9月4日付の恩師マルティーニ師への手紙は、ザルツブルクのミサ曲について述べており、大司教が自ら執り行うミサでも45分を超えてはいけない事、トランペットとティンパニを使用しなければいけない事に触れている。
これは、コロレド大司教のお金と時間をかけず、派手な効果があるミサ曲という要求=作曲上の制約であり、この時代のミサ曲を理解する上で重要である。その後K257、K258、K259、K262とミサ曲の作曲が続き、K275はマンハイム・パリ旅行(1777-1779)直前に作曲された。就職活動の失敗と失恋を経験し帰郷したモーツァルトは、1779年以降、約1年11カ月に渡る最後の宮仕え期間にK317とK337を書いた。

 2、ザルツブルク時代のミサ曲を聴く
 最初聴いたのは、K167ミサ・ハ長調《三位一体の祝日ミサ》である。この曲は、ソロパートを用いず、合唱のみという特徴がある。これは、コロレドの要求に応じるためであろう。(キリエを鑑賞)全体が緊密で簡潔であり、交響的手法が際立つ。細かい対位法的処理や矢継ぎ早なモチーフが連続するヴァイオリンパートなど、17歳の作品だが、技術的にはすでに相当な水準にあるとの先生の見解である。

  次にK220ミサ・ブレヴィス・ハ長調《雀ミサ》であるが、サンクトゥスでのヴァイオリンの伴奏音形が鳥の鳴き声に似ている為この別称がある。(キリエ、サンクトゥス、ベネディクトゥスを鑑賞)モーツァルトのサービス精神が、ザルツブルクの聴衆にはきっと受けた事だろう。

  そして、K275ミサ・ブレヴィス・変ロ長調である。マンハイム・パリ旅行に出かける直前完成した曲で、作曲手法に更に磨きがかかり、一見簡単そうではあるが印象的な曲である。(全曲を鑑賞)編成は合唱4部、独唱4部、ヴァイオリン2部、バッソ、オルガン、(トロンボーン3)である。キリエの冒頭はソプラノ独唱で始まるという型破りな手法。その後解り易いメロディーが次々と現れる。強弱の対比も効果的である。
グローリアの冒頭ではフォルテで始まる慣習を破り、ピアノで柔らかく開始し、堅苦しくない。まるでオペラの一場面のような生き生きとした独唱、合唱が続く。
クレドは歌詞が長く応々にして退屈するが、この曲はそれがない。途中の「そして聖霊によりて・・」から一転テンポをアダージョに落として変化を付けた独唱、「われらのために十字架につけられ・・」からは同じメロディーをハーモニーで劇的に表現している。さらに「そして聖書にありしごとく・・」からテンポが上がりキリスト復活の秘蹟を歌っている。その後、キリスト教の信仰宣言がまるでオペラのように語られる。
サンクトゥスは感謝の気持ちをしみじみと歌い始め、途中から華やかな曲調に変化する。
ベネディクトゥスは、ソプラノ独唱で始まる。合唱はなく独唱がオペラアリアのように進行する。「美しいだけのメロディーではなく人間そのもの が音楽になっているでしょう?」と先生は問う。
このオペラ的な音楽がミサ曲に相応しいか微妙だが、「宗教は人間そのもの。難しく考える事はない!」というのがモーツァルトの考えだったと先生は話された。アニュスデイは、冒頭から痛切な合唱で始まり、人間の罪を救うため自ら生贄となったキリストに対する叫びである。半音階を多用して願いを歌い、短調から長調へ転調して「我らに平和を与えたまえ・・」のソプラノ独唱が始まる。その後、独唱のかけ合いと合唱が入り乱れて進む。まるで、オペラ・ブッファのフィナーレである。最後は静かに消えるように終わる。

マンハイム・パリ旅行後に書かれたのは、K317ミサ・ハ長調《戴冠式ミサ》である。(アニュスデイを鑑賞)歌劇「フィガロの結婚」の伯爵夫人のアリア「美しき日はいずこ」のメロディーで始まり、ミサ曲の歌詞を大事にしながら、今までにはない生々しいメロディーに溢れている。 最後に、K337ミサ・ソレムニス・ハ長調を聴いた。(アニュスデイを鑑賞)これも、歌劇「フィガロの結婚」の伯爵夫人のアリア「愛の神よ、御手を」のメロディーで始まる。ソプラノ独唱は旋律的装飾が素晴らしい。途中から3拍子に変り、やはりオペラのフィナーレのような盛り上がりを見せる。

 


 3、最後に当時、ザルツブルクの聴衆にはミサは正統な音楽に触れる唯一の機会だった。それまでの音楽家は形通りの厳粛な音楽を書いたが、モーツァルトは正味20分の音楽で必要な歌詞を省略する事なく、しかも独唱あり合唱ありの充実した音楽を書いてコロレドの要求に見事に応え、聴衆にも満足を与えた。

また、モーツァルトにとっては、人間的である事が大切であって、それが最も宗教的な事であると考えた。これは、現代人の宗教に対する感覚に近いと先生は解説した。先生は、改めて今回、ミサ曲を最初から聴いてみて、そこに若きモーツァルトの作曲家としての苦難の跡と勝利の宣言を確かめる事ができたと、講義を結ばれた。

  今回、K275を中心にミサ曲を聴き、率直に、まだまだ知らない名曲がたくさんあると思った。もっと聴く機会を多くして宗教音楽の理解を深めたいと思った。また、コロレドに理不尽なミサ曲の制約を課せられたにも関わらず、見事に解決して既存のミサ曲とは一線を画す作品を残したモーツァルトの精神力には脱帽である。ここで困難を乗り越えた精神が、一見何の制約もなく自由な環境と思えるウィーン時代に、作曲毎に自ら制約を課し、決して妥協しない精神へと更に成長したと思われる。1781年以降の傑作群はその証しであろう。もしそうならば、モーツァルトはコロレドに感謝しなければなるまい。

 最後にK275始め新しい気付きの機会を与えて頂いた事と、印象的、感動的な言葉で語られた樋口先生に感謝を申しあげる。 

                    (文責)高橋 徹 

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