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2017.6

第371回 モーツァルティアン・フェライン例会 2017年6月24日
 
 

 事務局レター【第244号】/2017年6月

 【編集者】澤田義博/松永洋一/山崎博康/笠島三枝子/大野康夫 

 

●6月例会(第371回)のお知らせ 

演題「医学からみた、モーツァルトの才能、病と死をめぐる謎」    お話:松永洋一氏

 日時:2017年6月24日(土)午後2時開演(12時30分開場)

 会場:お茶の水「クリスチャンセンター」(JR「お茶の水」下車・徒歩3分) 

 例会費:¥1500(会員・一般共)


モーツァルトの死因は音楽史上最大級の謎とされており、現在でも解明されていないミステリーである。
 音楽鑑賞を交えて独善に陥らないようにしながら、モーツァルトの病死説や毒殺説について論証してみたい。また、科学的・医学的にみた音楽的才能とは何かということや、演奏家の特有の病気に関しても触れてみたい。 

 


例会後は恒例の懇親会へのご参加をお待ちしております。 会場:「デリ・フランス」お茶の水店/03(5283)3051

 

 

●今後の例会のご案内(会場記載のないものはお茶の水クリスチャンセンターです)

  7月15日(土) 加藤浩子氏

  8月        お休み

 9月23日(土) 池上 健一郎氏

 10月22日(日) 江端津也子氏 ピアノ・リサイタル(カーサモーツァルト) 

 

 


【皆様へのお知らせ】 

●会員総会のお知らせ

6月の例会の前に、12時半より13時半会員総会を開催いたします。
 皆様の日頃のご意見をフェラインの運営に活かして行きたいと考えています。
 多数の会員の方々のご出席をお待ちしております。

          会長 澤田義博

 

●季刊「モーツァルティアン」100号記念号
  原稿募集のお知らせ

*11月半ばの刊行に向け編集作業を進めています。モーツァルトとどのようなお付き合いをされているか、聴くヒントから発見・再発見まで切り口は自由。短いエッセーでも。会員の皆様の積極的なご投稿をお待ちしています。7月末の締め切り予定です。

 *モーツァルトとの楽しい広場の集大成にしたいと考えています。読み返したい過去の記事の再録リクエストや、取り上げてほしいテーマなどのご提案も大歓迎です。カット、写真、図版、表紙用の資料もご提供(あるいはアイデアでも)いただけましたら助かります。

 *100号の3ヵ月後に101号(2018年3月1日発行)が控えています。そちらの原稿についてもご検討いただけましたら幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。

           季刊編集部 

 

 

 

5月例会の報告(第370回/5月2日)

 「モーツァルト ピアノ協奏曲の魅力―第9番 変ホ長調 K271ジュノム」 

 出演:久元祐子(ピアノ)、伊藤翔(オケパート・ピアノ)、2台ピアノ版 

 日経電子版掲載: 2台ピアノでモーツァルトのピアノ協奏曲 


9番は確かに名曲である。以前から筆者の好みの曲であったが、今回の例会で改めてその魅力を発見させられた。
このように新たな魅力を引き出せるのはピアノ・デュオ版のお陰もさることながら、演奏により聴衆に新鮮な発見を感じさせる事のできる再生音楽家(演奏家)の腕の見せ所という点が大きい。その意味で今回のお二人の演奏は昨年に引き続き、正に大成功と言っても過言ではない。
 以下お二人の先生方のレクチャーコンサートをまとめながら、その理由を書いてみたい。 

 


 第1楽章 アレグロ 変ホ長調:いきなり、曲の冒頭すぐにピアノ・ソロが登場するのは当時としては革新的で、この曲以降、モーツァルト自身もこのような開始は行っていない。要するにベートーヴェンのピアノ協奏曲を先取りしているのである。この曲にはまだ弱冠21歳のモーツァルトの若々しさがみなぎっている。9番は8番までのピアノ協奏曲と比べると飛躍的に進歩しており、傑作ぞろいのその後のピアノ協奏曲に十分に伍して行ける作品である。
モーツァルトはこの曲が気に入っていたようで、この年の秋から始まるマンハイム・パリ旅行にも携行している。おそらくミュンヘンを始め、様々な機会に演奏したと思われる。オーケストラの構成は、弦以外はオーボエとホルン(それぞれ2菅)のみで、パリから帰国後のような、華やかなオーケストレーションにはなっておらず、むしろピアノを引き立てるような感じである。
ピアノとオケの対話も見事に書かれており、自由な構成となっている。この楽章には3つのカデンツァが残っているが、久元先生はより華やかな2番目のBのカデンツァを演奏された。

 

 

 第2楽章 アンダンティーノ ハ短調:この楽章の特徴はモーツァルトの短調作品にしばしば見られる「溜息の音型」がふんだんに登場することである。
また、モーツァルトのピアノ協奏曲の第2楽章はメロディーが美しいものが多いが、この楽章の主題も哀しげで美しい。しかし、曲の終わりの部分では長調に戻り、明るさも感じられる。カデンツァについては残っている3種類の中のBをお使いになった。

 第3楽章 ロンド 変ホ長調: A-B-A-C-A-B-Aの形式であるが、この楽章の最大の特徴はロンドの中に変イ長調のメヌエットを挿入していることである(上記Cの部分)。
メヌエットは、バロックダンスの様式のひとつで、カンタービレの表示があり、優雅に弾く必要がある。当時の王侯貴族にとってバロックダンスは、必須の嗜みであった。パリジェンヌのピアニストのために敢えてここにメヌエットを挿入したのかもしれない(筆者推論)。

もう一つの特徴は2か所にわたり、アインガングが3種類書かれていることである。これほど多くのカデンツァや、アインガングが残っているのはモーツァルトのピアノ協奏曲ではこの曲だけだろう。このロンドはプレストなので、ピアニストにとってはそのヴィルトゥオーゾを発揮できるチャンスでもあるが、難曲であることは間違いない。今回の筆者の新たな発見はこのロンドの素晴らしさにあった。 

    以上(文責 澤田) 

 

 

 

●例会・懇親会コーナー

 今回の懇親会では、趣旨に賛同する有志一同で、久元氏、伊藤氏を中心に飲み会に早変わり。ビールで乾杯後、楽しく質疑・応答、懇親が行われた。 懇親会においては、皆さん元気いっぱい、話題も豊富で、楽しい賑やかなひとときを過ごすことが出来た。

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2017.5

第370回 モーツァルティアン・フェライン例会 2017年5月21日
 
 

 事務局レター【第 243号】/2017年5月

 【編集者】澤田義博/石津勝男/倉島収/川口ひろ子/松永 洋一/大野康夫/山崎博康/笠島三枝子 

 

●5月例会(第370回)のお知らせ 

 モーツァルトピアノ協奏曲の魅力  ~第9番 変ホ長調 KV271「 ジュノム」~ ( 2台ピアノ版 ) 

久元祐子氏 伊藤 翔氏2台のピアノ 

日時:2017年5月21日(日) 15:00 開演 (14:30 開場)  
←日曜日です! 開始時間に注意! 


例会費:¥4500「全席自由席」 

 会場: セレモアコンサートホール武蔵野 (最寄り駅:モノレール 泉体育館   東京都立川市柏町1-26-4 TEL 042-534-1111) 

 会員同士で、タクシーで会場に向かわれる方は、JR立川駅西改札出口で14:15分に待ち合わせ、人数がそろった順に乗車します。 
 場所: 立川駅改札口 

チラシ:その1 チラシ:その2


 澤田会長からのメッセージ
昨年、ご好評をいただきました モーツァルトピアノ協奏曲シリーズ第 2 弾です。 今回は、第 9 番「ジュノム」を取り上げます。 若き日の溌剌としたモーツァルトの息吹を感じる名曲を お話を交え、2 台ピアノ版でお楽しみください。 出演は、フェラインの皆さんにもお馴染みのピアニスト、 久元祐子さんと昨年第 1 回ニーノ・ロータコンクール 優勝を果たした指揮者、伊藤翔さんです。 

お問い合わせ  090-2223-8101(澤田)  090-5191-3404(石津) 


久元 祐子
piano Yuko Hisamoto
東京芸術大学音楽学部(ピアノ専攻)を経て同大学大学院修 士課程を修了。 ウィーン放送交響楽団、ラトビア国立交響楽団、読売日本交 響楽団、新日本フィル、ウィーン・サロン・オーケストラ、ベ ルリン弦楽四重奏団など、内外のオーケストラや合奏団と多 数共演。知性と感性、繊細さとダイナミズムを兼ね備えた ピアニストとして高い評価を受けている。
 音楽を多面的に捉 えることを目指したレクチャー・リサイタルは朝日新聞・天声人語にも紹介される。 ベーゼンドルファー(1829年製)、プレイエル(1843年製)、 エラール(1868年製)などを所蔵。歴史的楽器を用いての 演奏会や録音にも数多く取り組み、それぞれの時代の中で作曲家が求めた響きと美学を追及する。
2010年、ショパン生誕200年記念年には、全国各地でプレイエルを使っての演奏会に出演。軽井沢・大賀ホールにおいて天皇皇后両陛下ご臨席のもと御前演奏を行う。 2011年ウィーンでのリサイタルは、オーストリアのピアノ専門 誌の表紙を飾りベーゼンドルファー・アーティストの称号を受 ける。2012年、2014年イタリア国際モーツァルト音楽祭に 招かれリサイタルを開催。その模様はイタリア全土に放映され好評を博す。
これまでCD12作をリリース。「優雅なるモー ツァルト」は毎日新聞CD特薦盤、レコード芸術特選盤に選 ばれ、「ベートーヴェン” テレーゼ”” ワルトシュタイン”」はグ ラモフォン誌上で「どこからどう考えても最高のベートーヴェ ン」など高い評価を得る。
 著書に「モーツァルトのピアノ音楽研究」(音楽之友社)、「原 典版で弾きたい!モーツァルトのピアノ・ソナタ」(アルテスパ ブリッシング)、「モーツァルトとヴァルター・ピアノ」「ショパ ンとプレイエル・ピアノ」「リストとベーゼンドルファー・ピアノ」 (いずれも学研プラス)など。
 国立音楽大学准教授  日本ラトビア音楽協会理事、PTNA評議員。 久元祐子ウェブサイト http://www.yuko-hisamoto.jp/ 

指揮 伊藤 翔
Conductor Sho Itoh
 1982年東京都生まれ。 桐朋学園高等学校音楽科及び桐朋学園大学音楽部指揮科 卒業。2005年から3年間ローム音楽財団の奨学金を得て、 ウィーン国立音楽大学に留学。 指揮を秋山和慶、小澤征爾、黒岩英臣、上杉隆治、高階正光、 湯浅勇治、E.アチェル、M.ストリンガー、ピアノを斎木隆、 藤井一興、作曲を三瀬和朗の各氏に師事。
2011年5月、ポーランドで行われた「第5回ヴィトルド・ル トスワフスキ国際指揮者コンクール」で第2位を受賞。 桐朋学園大学在学中に大阪フィルハーモニー交響楽団を 指揮してデビュー。以後国内外の多くのオーケストラに客演。 これまでに大阪フィル、大阪響、神奈川フィル、九州響、 京都市響、群馬響、新日本フィル、仙台フィル、中部フィル、 東京シティ・フィル、東京フィル、名古屋フィル、日本センチュ リー響、日本フィル、兵庫県立芸術文化センター管弦楽団、 広島響等に客演。
 海外では、クラクフ国立室内管やジェショフ・ フィルハーモニー管弦楽団での客演が好評を博した。 2008年7月から2009年3月まで東京シティ・フィルハーモ ニック管弦楽団の指揮研究員を務め、 その後2009年4月から2012年3月まで神奈川フィルハー モニー管弦楽団副指揮者を務めた。 2012年4月より現在に至るまで、東京混声合唱団コンダク ター・イン・レジデンス。上野学園大学非常勤助教。 2016年第1回ニーノ・ロータ国際指揮コンクール優勝。 

 

 

 例会後は恒例の懇親会へのご参加をお待ちしております。
 懇親会会場(午後5時半頃~):立川市曙町2-7-10井上ビルB1F (立川駅北口・伊勢丹裏)イタリアンレストラン・ウエストエンド 042-527-8752 会費は4,500円を予定しています」 

 

 

 
●今後の例会のご案内(会場記載のないものはお茶の水クリスチャンセンターです) 

  6月24日(土) 松永洋一氏

  7月15日(土) 加藤浩子氏

  8月       お休み 

 

 


●4月例会の報告(第369回/4月15日)

 演題:「モーツァルトのオペラ - - - 私の楽しみ方(その1)」
お話: 田辺秀樹氏

 中学生時代はベートーヴェンの交響曲に心酔した。高校生になってから、ベートーヴェン以上にモーツァルトが好きになった。オールラウンドの作品を残した作曲家であり、最初は器楽曲から入っていったが、やがてオペラの魅力に取りつかれるようになった。
  少なくとも、オペラについていえば、モーツァルトのオペラの多くは彼の人生と切っても切れない関係にあると考えられる。
  ほとんどが与えられた台本であったにもかかわらず、それらのドラマの多くはモーツァルトにとって<他人ごとではない>、<のっぴきならぬ>、<自分自身の問題でもある>ものだった。  「なによりもオペラを書きたい」、詩のテキストに対する、幼少時代からの並外れた共感能力、登場人物への「乗りうつり」があった。

 


モーツァルトが彼の人生において抱え込んだ主要な問題を反映して父親との確執は「ドン・ジョヴァンニ」、主従関係(上司・雇用主との関係)に関しては「フィガロの結婚」の伯爵とフィガロがコロレド大司教と自分、姉妹への愛に関しては「コジ・ファン・トゥッテ」のフィオルディリージとドラベルラがアロイジアとコンスタンツェの関連が挙げられる。
  人間 モーツァルトの基本的傾向として、真面目さとふざけ好きの両面性、周到な戦略的配慮と気まぐれな行動、道化的遊戯・演劇・変装への志向、「宗教」「信仰」への微妙な姿勢?(「合理的信仰」としてフリーメーソン?)(カトリック信仰を補完するものとしてのフリーメーソン?)、長調から短調へと急激に変わる気分があげられる。
  後半は、少年時代のモーツァルトのオペラを中心に、主に声楽曲をYoutube映像なども交えながら解説頂き、鑑賞した。

1、最初期(1765年/9歳)の声楽曲から
 ・モテット「神は我らの避け所」 K.20(ライプツィヒ放送合唱団、H.ケーゲル指揮)
・アリア「行け、怒りにかられて」K..21(テノール:トーマス・モーザー)
・アリア「貞節を守ってください」K..23(ソプラノ:ハンナ・シュヴァルツ)
2、ドイツ語歌劇「バスティアンとバスティエンヌ」K.50から
 ・バスティエンヌ、失恋の嘆きの歌(ブラジルのアマチュアによる上演/2012年)、類似のメロディーとしてピアノ・トリオ
K.564 第2楽章の主題
・バスティエンヌとコラの二重唱(ルーアン歌劇場[フランス]/2007年)、モーツァルトとレオポルドのやりとりそのもの。
3、「第一戒律の責務」K.35(1767年)から
 ・世俗精神(悪霊)のアリア
4、「ポントの王ミトリダーテ」K.87(1771年)から
<父に対して敵対する息子と従順な息子>
・シーファレ(弟・良い息子)のアリア、チェチューリア・バルトリ
 ・ファルナーチェ(兄・悪い息子)のアリア、ヨーヘン・コヴァルスキー、ベジャン・メータ

少年時代の作品ではあるが、どれをとっても、名曲である。

 最後に「ヘルナルスの小さな喫茶店で」「プラータ公園の春」「ウィーン、我が夢(と現実!)の町」三曲の楽しいウィーン・メロディーのピアノ演奏をお聴かせ頂いた。

       (文責 大野康夫) 

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2017.4

第369回 モーツァルティアン・フェライン例会 2017年4月15日
 
 

 事務局レター【第243号】/2017年4月

 【編集者】澤田義博/石津勝男/川口ひろ子/山崎博康/笠島三枝子/大野康夫/倉島 収  

 

●4月例会(第369回)のお知らせ 

演題:「モーツァルトのオペラ---私の楽しみ方」  お話:田辺秀樹氏

 日時:2017年4月15日(土)午後2時(午後1時30分開場)

 会場:お茶の水「クリスチャンセンター」(JR「お茶の水」下車・徒歩3分) 

 例会費:¥3000(会員・一般共)


――― お話:田辺秀樹氏

なが年モーツァルトの曲を愛聴し、彼の手紙を読み、関連書籍などもいろいろ読んできた者として私が痛感するのは、オペラについて言えば、彼のオペラはまさに彼の「人生劇場」で、だからこそ力がこもっており、迫真的で面白い、ということです。
ごく初期のころから、他人事ではない問題を扱ったオペラを作曲する巡り合わせになったことで、なみ外れた共感力の持ち主であるモーツァルトは、オペラの作曲に際しておのずと心血を注がずにはいられなかったのだろうと思います。そのような私の持論の観点で、モーツァルトのいろいろなオペラのいろいろな場面をヴィデオで見たりCDで聴いたりしながら、お話をしたいと思います。
お話のあとは、また例によって、お耳汚しのピアノを弾かせていただきくことをお許しください。

 澤田会長のメッセージ
今月の例会は、昨年11月28日にサントリーホールにて、ピアニストとして、鮮烈なデビューを飾られたフェラインの顧問でもいらっしゃる田辺先生のご講演です。皆様奮ってご参加下さい。 

 


 例会後は恒例の懇親会へのご参加をお待ちしております。 会場:「デリ・フランス」お茶の水店/03(5283)3051

 

 

●今後の例会のご案内(会場記載のないものはお茶の水クリスチャンセンターです)


 5月21日(日) 久元祐子氏 伊藤翔氏 2台のピアノ(立川・セレモア)
チラシ:その1 チラシ:その2

 6月24日(土) 松永洋一氏

 7月15日(土) 加藤浩子氏

 8月  お休み 

 

 


♪会員の皆様へのお知らせ♪

1. 5月21日、日曜日例会
 久元・伊藤両先生のコンビで、2台のピアノ版によるピアノ協奏曲シリーズ第2弾(「第9番ジュノム」)が開催されます。当日は日本経済新聞社による我々の例会の取材も予定されています。
チケットは原則前売りですので、4月例会でのお買い求めをお薦めします(会員価格 : 4000円)。
なお、伊藤先生は昨年イタリアのニーノ・ロータ指揮者コンクールで優勝されました。

 2.総会のお知らせ。
 会員総会は6月例会時の6月24日(土)に開催予定です。新役員のご紹介も行いますので、ご出席をお願いいたします。(時間:12:30-13:30、例会の場所にて)。

 

 


♪ 3月例会報告(第368回 2017/3/18) ♪

演題:「《偽りの女庭師》と《イドメネーオ》、そして《ドン・ジョヴァンニ》 ―セーリア役の変容とオペラ・ブッファの新たな展開―」
お話:大津 聡氏

 3月例会はお茶ノ水クリスチャンセンターを会場に、大津聡先生を講師に迎え、上記の演題のお話を聞いた。副題が示すように、非常に学術的なテーマだが、具体例を挙げて解説していただいた。大津先生には2015年9月の例会で、《皇帝ティートの慈悲》の悲劇―市民の意識の高まりとオペラ受容―という演題で、オペラ・セーリアの受容史についてお話をうかがった。今回は主としてオペラ・ブッファをテーマに、最新の研究成果を踏まえモーツァルトの魅力を解明していただいた。

  まず「オペラ作品とジャンル問題」について、現状に鑑みた詳しい説明があった。それによると、実に多様なジャンル名の使い分けがなされていて驚かされた。『新モーツァルト全集』の分類によると、例えば《ルーチョ・シッラ》は「ドランマ・ペル・ムージカ」。実際はオペラ・セーリアと同じものだが、『新全集』では両者が使い分けられている。ただし、オペラ・セーリアは当初からあった概念ではなく、18世紀半ばにオペラ・ブッファが幅を利かせるようになったことから、これと区別するために使われるようになった対立概念であった。

   一方、モーツァルトの劇作品にはブッファというイメージが強いが、実は後期の作品、とりわけ「ダ・ポンテ・三部作」の中、オペラ・ブッファは《フィガロの結婚》のみである。モーツァルトが自作品目録で(恐らくは便宜上)「オペラ・ブッファ」と記載していた《ドン・ジョヴァンニ》、《コジ・ファン・トゥッテ》は、『新全集』では「ドランマ・ジョコーゾ」に分類されている。ドランマ・ジョコーゾは広義ではオペラ・ブッファ、あるいはブッファ系オペラであるが、「諧謔劇」という訳語がしばしば当てられる。諧謔とは「滑稽さのあるしゃれや冗談、機知、あるいは(ブラック・)ユーモア」を意味する。こうなると、オペラ・ブッファとドランマ・ジョコーゾは区別して扱われなければならない問題が生じてくると先生は指摘した。 

 

 

 今回のお話の出発点となった《偽りの女庭師》(以下《女庭師》)は、モーツァルト初のドランマ・ジョコーゾである。この初期オペラについて、「セーリア性とブッファ性の融合」と「ミュンヒェン・カーニヴァル・オペラの伝統」という、主に二つの視点からアプローチがなされた。後者については作品成立の契機から、《女庭師》が後のカーニヴァル・オペラ《イドメネーオ》とジャンルを超えた「姉妹関係」にあることが解説された。
 同地のドランマ・ペル・ムージカの保守的な特徴についての説明の後、まずは、セーリア・オペラである《イドメネーオ》から、例としてエレットラの二つの「激情のアリア」(第1幕、第4番、及び第3幕、第29a)を鑑賞。後者はミュンヒェン初演ではカットされてしまったものであるが、変ホ長調という調性からも、またエレットラの人物像の整合性という意味でも見逃せないという指摘があった。

  次に《女庭師》におけるセーリアの音楽様式に完全に合致する例として、セーリア役、アルミンダのアレグロ・アジタータのアリア(第2幕、第13番)を聴いた後、本オペラにおいて最も独創的な場面として、ブッファ系オペラにセーリア的要素が入り込んだ第二幕フィナーレへのプロセス(第12~16場)が取り上げられた。
この一連の場面は、セーリア的外観ながら半コミック役によって形成される(セーリア役の出番は皆無)とのこと。セーリア的な表現技法を用いながらも、半コミック役のアリアは「型」にとらわれず有機的な流れを作り出している様を、タイトルロール、サンドリーナのアリアを中心として鑑賞した。 

 

 

 後半ではモーツァルトの二作目の(!)ドランマ・ジョコーゾ、《ドン・ジョヴァンニ》が取り上げられ、「サンドリーナからドンナ・エルヴィラへ?」というテーゼのもと、ドランマ・ジョコーゾにおける半コミック役の変容や成熟、オペラ・セーリア由来の表現手段の活用を示すものとしてエルヴィラが関わる二つの場面が解説された。
 時間の都合上、主にエルヴィラの充実したレチタティーヴォ・アッコンパニャートとアリア(第2幕、第21番b、変ホ長調)を鑑賞。

  最後に、用語の多様性の問題を解決するには、私達にモーツァルト以外の作品についての広範な知識が欠けているとされた上で、《女庭師》から《ドン・ジョヴァンニ》への10年には、オペラ・ブッファにおける「共同体としてのオペラ」や変装趣味などの典型の確立、オペラ・セーリアから受け継いだ諸要素のオペラ・ブッファ(ドランマ・ジョコーゾ)での新たな展開、とりわけドンナ・エルヴィラに見る半コミック役の成熟が挙げられるのではないかという問いかけをもってお話は締めくくられた。

 


 鑑賞に用いられた映像資料(DVD)は次の通り。
 《イドメネーオ》ケント・ナガノ指揮 、 バイエルン州立歌劇場管弦楽団 2008年6月11、14日ミュンヒェン、キュビリエ劇場(ライヴ)
《偽りの女庭師》ローター・ツァグロセク指揮、シュトゥットガルト州立管弦楽団 2006年 シュトゥットガルト州立歌劇場 (ライヴ)
 《ドン・ジョヴァンニ》ジェイムズ・レヴァイン指揮 メトロポリタン歌劇場管弦楽団 2000年9月、メトロポリタン歌劇場

 大津先生にはご多忙の中、原稿のチェックととともに、加筆・調整をしていただいた。この場を借りて、厚く御礼申し上げます。

             (文責 山崎博康) 

 

 

 

●例会・懇親会 写真コーナー

 今回の懇親会場は、いつもの「デリ・フランス」お茶の水店に戻り、趣旨に賛同する有志一同で、講師の大津 聡氏を中心に飲み会に早変わり。ビールで乾杯後、楽しく質疑・応答、懇親が行われた。 懇親会においては、皆さん元気いっぱい、話題も豊富で、楽しい賑やかなひとときを過ごすことが出来た。   

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