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第387回 モーツァルティアン・フェライン例会 2018年12月16日
 
 

 事務局レター【第260号】/2018年12月

 【編集者】澤田義博/松永洋一/高橋徹/大野康夫/笠島三枝子/堀尾藍  

 

 

12月例会(第387回)のお知らせ                                 
★日本人で唯一、ベーゼンドルファーアーチストの称号を受けた久元祐子氏のピアノ演奏をご一緒に堪能しませんか?
コンサート内容と演題: 久元祐子氏ピアノリサイタル・「戴冠式」の魅力 ←クリック
日時: 12月16日(日) 15時開演(14:30開場)  
場所: セレモアコンサートホール武蔵野 
演目:モーツァルト ピアノ協奏曲 第26番ニ長調  K.537
例会費:3,500円 (一般)、 3,000円(会員)


★今後の例会予定
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 2019年1月19日(土)  会員出演の新年会 OCC416号室
◎お問合せは、高橋 徹 takat2@siren.ocn.ne.jp ☎090(4661)7525
2月23日(土)  池上健一郎氏 OCC416号室
3月30日(土)  マリステラ・パトゥッチツィ氏・上野優子氏の   
ヴァイオリン及びピアノ /デュオ・コンサート       
(カーサ・モーツァルト)会員価格は3,500円
    4月20日(土) 田辺秀樹氏 OCC416号室
    5月18日(土) 海老沢 敏氏 OCC811号室
   6月15日 (土)  田村和紀夫 尚美学園大学教授 OCC811号室
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第386回例会記録(2018.11.17)
「モーツァルトとフリーメイスンリー」
今回の講演は澤田会長の「モーツァルトとフリーメイスンリー」(その2)だった。その要旨は以下の通りである。欧米ではフリーメイソンリーはかなり正しく理解されており、英国では英国王室が認めているほどである。オーストリアでは昨年その300周年を記念して、国立図書館で「フリーメイスンリー展」が開催される等、国民の間で根付いている。いわんや、「魔笛」については、フリーメイソン・オペラである事はもはや常識である。多くの中の一つの解釈では断じてあり得ない。ところが、わが日本では、フリーメイスンリー及び「魔笛」について正確に理解している方々は極めて少ない。
I.フリーメイスンリーの主要な基礎知識
1.その起源は少なくとも旧約聖書の時代まで遡る事ができる世界最古・最大の友愛組織。 昨年2017年にはロンドンに初のグランド・ロッジ(注)創設後300周年を迎えた。現在、全世界で約3百万人の会員がおり(日本では1600人)昨年10月のロンドンにおける300周年記念式典には全世界から6000-7000人のフリーメイスンが参加した。 (注)複数のロッジをまとめて統括している組織 2.フリーメイスンリーは独自の思想、哲学をきちんと有している。また会員が遵守すべき厳しい規律もある。3.フリーメイスンリーの目的は「善き人々を更に善き人々にする事」にある。その信条は兄弟愛、救援、真理の3つ。詰まるところ、人類愛という事になる。4.陰謀をたくらむ怪しげな団体ではあり得ない。5.フリーメイソンリーは宗教ではなく、どんな宗教を信じている人でも会員になる事が出来る。6.フリーメイスンには徒弟、職人、親方という3つの階級があり、昇級するには難度が比較的高い試験がある。入会する際も入会候補者の人物が吟味される。7.主として数字の3またはその倍数が伝統的、かつ慣習的に大事にされて頻繁に使われている。8.フリーメイスンの会員になるためには、一度死を体験する必要がある。それは本当に死んでしまうのではなく、疑似的な死である。なぜなら、フリーメイソンは一度、疑似的な死を体験し改めて、フリーメイスンとして生まれ変わる必要があるからである。9.フリーメイスンリーの考え方の論理的背景には魂の不滅という思想がある。
II.「魔笛」について
「魔笛」については、前回の講演で詳説しているので、2点だけ強調するなら、1. 第2幕第1場:ここで、一番大切なのは僧侶たちが神殿(=ロッジ)に入場し、ザラストロと僧侶たちはタミーノとパミーナを入信させるべきかについて議論している場面である。この場面は、フリーメイソンへの入会候補者の審査を彷彿とさせる。ザラストロはロッジの最高責任者、僧侶たちはフリーメイスンのマスター会員達である。 2. 第2幕第3場:第14番アリア、夜の女王が「復讐のアリア」を激しく歌う。同上:第15番アリア、その夜の女王の「復讐のアリア」に対し、ザラストロが「この聖なる殿堂には『復讐』という言葉は存在しない。支配しているのは友愛だ。」と歌い、夜の女王の言葉を正す。この思想は現代にも通じる重要なもので、事実ロンドンで行われたフリーメイスン300周年記念式典でもこの夜の女王とザラストロのアリアは特別に歌われた。
III.「魔笛」の後
実際のフリーメイソンリーでは、「魔笛」の二人はやっとスタートラインに立っただけで、実は本当の試練はこれから始まる。これらの多くの試練を乗り越えて初めて1人前のマスターになる事ができる。しかも試練はその後もまだまだ続く。言わば一生勉強することとなる
IV.モーツァルトとフリーメイスンリー
1.モーツァルトはどういう道を辿ったのか?
(1)1784年12月にロッジ「慈善」に入会。なお1786年にロロッジ「慈善」は他の3つのロッジと統合され「新・戴冠された希望」となっている(ヨーゼフ2世の政令のため)モーツァルトはその生涯の最後まで、フリーメイスン活動に積極的であり、熱心な会員だった。兄弟愛、対人関係、正義、慈善活動、等を自ら実践する善きメイソンであったことは、書簡その他の一次資料から明らか。
(2)モーツァルトがフリーメイスンリーについて残した言葉
以下のモーツァルトの死生観を示す手紙はあまりにも有名。「死は(厳密にいえば)僕らの人生の最終目標ですから、僕はこの数年来、この人間の最上の友とすっかり慣れ親しんでしまいました。その結果、死の姿はいつの間にか僕には少しも恐ろしくなくなったばかりか、大いに心を安め、慰めてくれるものとなりました!そして死こそ僕らの真の幸福の鍵だと知る機会を与えてくれたことを(僕のいう意味はお分かりですね―当時の手紙は検閲を受けるというのが常識だったので、モーツァルトは敢えてフリーメイスンという言葉は使っていないが、文脈からその意味は明らか)神に感謝しています。―僕は(まだ若いとはいえ)ひょっとしたら、明日はもうこの世にはいないかもしれないと考えずに床につくことはありません。」(1787.4.4付父レオポルトへの手紙―当時レオポルトは重体だった)。このモーツァルトの手紙はフリーメイスンリーの本質の一つを鋭く指摘している。
(3)モーツァルトが仲間のフリーメイスンに対して残した言葉は少なくとも二つ現存している。モーツァルトがフリーメイスンの仲間クロナウアーに対して残した貴重かつ現存している言葉。モーツァルトは自筆、かつ英語で書いている。1つだけ紹介すると、
“Patience and Tranquillity of Mind contribute more to cure our distempers as the whole  art of Medicine”  1787年3月30日  翻訳は(澤田訳)「忍耐と心の平安は心身の病に対して、医学のいかなる療法にも勝るものである。」この文書はフリーメイスンの友人であるクロナウアーの記念帳(フリーメイスン会員間の記念帳)にモーツァルトが書いたものと考えられる。この言葉の右下にモーツァルトの自筆の署名がなされている。
(4)フリーメイスンのためにモーツァルトが作曲した曲及びフリーメイスンの音楽のための楽器   K.148, 468、429,471、477、483、484、619、620、623、の10曲。更にK.410, K.411(K.484a)、K.440b,K.440cもフリーメイスンのために書かれのではないかと推測されている。但しK.623aは偽作。楽器:クラリネット、バセット・ホルン、オーボエ、バスーン、フルート
V.他の作曲家への「魔笛」の影響
(1)強い影響を受けたのは他ならぬワーグナーであった。:ワーグナーの次のコメントは最大級の讃辞だと思われる。「何と多彩で、何と多様なことか。………実際、天才(注:モーツァルト)はドイツ・オペラを生み出すことによって、途方もなく偉大な一歩を踏みしめたのだ。そして彼はオペラの最も完全な傑作を作り上げた。この傑作を凌ぐ事などできないし、この分野をこれ以上に拡大したり、継承することももはや出来ない。」しかも、ワーグナーはフリーメイスンではなかったのである。(2)しばしば、このオペラを表面的にしか見ない人々はこの台本の内容が首尾一貫しておらず、第1幕と第2幕の間で、登場人物の悪人と善人がひっくり返るなどと皮相的な見方で批判しているが、他方、このオペラの深さを理解していた人々も多く、哲学者ヘーゲルはこう述べている。「例えば、『魔笛』の台本は全く嘆かわしいものである、といった発言を耳にする。然し、この所謂『不手際』な台本はオペラの台本の中で最も素晴らしいものに数えられる。(3)またゲーテは「魔笛」についてこう言っている「このオペラの台本の価値を否定するよりも、それを認識する方がはるかに教養を要する。」換言すれば、一般の観客も大いに楽しめるが、フリーメイスンはその何倍も楽しめると述べているのである。
(4)最後に、モーツァルト自身はどう位置付けるべきなのか?
彼は、フリーメイスン・オペラ「魔笛」を書けるという事に強い喜びを覚えていた。熱心なフリーメイスンであったモーツァルトは極めて真剣にこのオペラに取り組んだと考えられる。そして、最も喜びを得たのは、聴衆の「静かな称賛」だったのではないだろうか?彼は人生に対する愛と言う点においてはパパゲーノであり、疾風怒濤あるいは啓蒙主義への誠実な希求と言う意味ではタミーノだった。モーツァルトの「魔笛」における成功の原因の一つはタミーノとパパゲーノという二人の全く異なる人間を真に輝かしく、悲劇的ではない形で結び付けているという点にあるのではないだろうか?モーツァルト個人はタミーノとパパゲーノの両面を備えていたと思われる。ここでモーツァルトの有名な手紙(妻のコンスタンツェ宛)を引用すると、「僕を一番喜ばせてくれたことは、沈黙による称賛です。このオペラが段々世間の評判になることは誰の目にも明らかです」。この沈黙による称賛は、このオペラがフリーメイスンの深い教義を基にしていることがその理由だと思われる(観衆がフリーメイスンリーを知っていようといまいと感動すると思う。勿論フリーメイソンは一般の聴衆の2倍も3倍も感動したと思われる)。
VI.フリーメイスンリーがモーツァルトに与えた影響
 モーツァルトの音楽の3つの変化点:1)パリ滞在(1778年)、2)バッハ、ヘンデルの音楽との出会い(1782年)、3)フリーメイソンとなる(1784年)
(1)暗闇から光へ(フリーメイスンリーの常套句)
フリーメイスンリーに関係のある曲は上述の10曲のみではない。K.466 ピアノ協奏曲20番、K.465 弦楽四重奏曲第19番(ハイドン・カルテット第6番)「不協和音」 などが代表例である。
(2)シリアスかつ深みのある曲が急速に増えてくる。K.482 ピアノ協奏曲 第22番 変ホ長調(フラット3つ)、K.488 ピアノ協奏曲 第23番 イ長調(シャープ3つ)、K.491 ピアノ協奏曲 第24番 ハ短調(フラット3つ、変ホ長調の平行調)、K.595 ピアノ協奏曲 第27番 変ロ長調(フラット2つ、「職人」の調性)、K.543 交響曲第39番 変ホ長調(フラット3つ)、K.550 交響曲第40番 ト短調(フラット2つ)、K.546 アダージョとフーガ ハ短調  最も厳粛かつ荘重な曲の一つ。K.581 クラリネット五重奏曲 イ長調(シャープ3つ);クラリネット奏者のシュタッドラーもフリーメイスンだった。 等々
(3)上記以外にフリーメイスンの影響を受けていると思われる曲
K.345 「エジプト王、タモス」のための合唱と幕間音楽-
「魔笛」の原型。K.492 オペラ「フィガロの結婚」ニ長調;作者のボーマルシェもフリーメイスンだった。啓蒙主義の典型的な作品。K.410 アダージョ ヘ長調 2本のバセット・ホルンとバスーン。27小節(3X3X3)K.411 アダージョ 変ロ長調 同
上。K.440b アレグロ・アッサイ 変ロ長調 クラリネット2、バセット・ホルン3。K.440c アダージョ ヘ長調 クラリネット1、バセット・ホルン。上記4曲は1785年にフリーメイスンの儀式用に作曲されたと考えられており、特にK.410についてアインシュタインは「モーツァルトの最も燦然と輝く曲のひとつ」と評している。K440bとK.440cについては、パウル・アンゲラーが補筆により一つの作品としたものがある。上記4曲はフリーメイスンの儀式用に書かれたものと考えられている。最後に、モーツァルトにウィーンのロッジ「新戴冠された希望」が贈った感動的な弔辞の一部を引用する。「彼(モーツァルト)は生前善良で、慈悲深く、誠実だった。理性と感覚に従ったメイスンの一人だった。音楽の申し子だ!なぜなら彼は再び我らの感性をより高くするのだから。」(文責:澤田)
 

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