第386回 モーツァルティアン・フェライン例会 2018年11月17日

 

事務局レター【第259号】/2018年11月

【編集者】澤田義博/松永洋一/高橋徹/大野康夫/笠島三枝子/堀尾藍


●11月例会(第386回)のお知らせ

演題「モーツァルトとフリ―メイスンリー」   お話:澤田会長

日時:2018年11月17日(土)午後2時開演(1時30分開場)

会場:お茶の水「クリスチャンセンター」(JR「お茶の水」下車・徒歩3分)

例会費:¥2500(会員・一般共)


講演の概要:
 「モーツァルティアン」に論文の一部を掲載して頂きましたが、その後、かなり大きな発見もありましたので、必ずしも「魔笛」に限らず、フリーメイソンリーのモーツァルトに対する影響、彼の活動状況等についてお話しするつもりです。本邦初公開の情報や写真をご紹介致します。


例会後は恒例の懇親会へのご参加をお待ちしております。 会場:「デリ・フランス」お茶の水店/03(5283)3051
 

 


 

 


●今後の例会のご案内(会場記載のないものはお茶の水クリスチャンセンターです)

 12月16日(日)  久元祐子氏ピアノリサイタル(セレモア立川)午後3時開演
          チラシ:その1 チラシ:その2

 1月19日(土) 会員出演の新年会

 2月23日(土) 池上建一郎氏(クリスチャンセンター416号室)

 3月30日(土) マリステラ・パトゥッチツィ・上野優子のヴァイオリン及びピアノ /デュオ・コンサート(カーサ・モーツァルト)
         チラシ:その1 チラシ:その2

 4月20日(土) 田辺秀樹氏

 5月18日(土) 海老沢敏氏

 9月21日(土) 宮谷理香ピアノリサイタル:1995年ショパンコンクール5位入賞

♪ 新年会のお知らせ

◇モーツァルティアン・フェライン新年会出演者募集

 ◎日時     2019年1月19日(土)
 ◎募集内容  お話・・・20分程度   演奏・・・5分~8分
 ◎条件     モーツァルトに限る
   新人の方大歓迎! 例会出席率良好の方優先です
 ◎締切     2018年11月17日(土)

 ◎お問合せは 高橋 徹  takat2@siren.ocn.ne.jp TEL090(4661)7525

 


モーツァルティアン・フェライン10月例会(第385回)報告
例会報告(2018年1 0月20日)

「バッハ・モーツァルト・ベートーヴェン  3つの『大ミサ曲』とその背景」     講師:樋口隆一氏 明治学院大学名誉教授
 モーツァルトの《ミサ曲 ハ短調》K.427(K.417a)(1782~83年)は未完に終わったものの、ロバート・レヴィンによる復元版によれば、約76分もの「大ミサ曲」に成るはずであった。プロイセン王国のアンナ・アマーリエ王女の音楽監督を勤めたバッハの弟子ヨハン・フィリップ・キルンベルガーの勧めにより、楽譜コレクターであったスヴィーテン男爵が、ベルリン駐在オーストリア公使時代にバッハの楽譜と写譜を集めたと言われており、《ミサ曲 ハ短調》はスヴィーテン男爵の写譜楽譜を用いてモーツァルトがバッハのフーガやヘンデルのメサイアの研究を行った成果と言われてきた。
 これまで、バッハの《ミサ曲 ロ短調》BWV232(1733~49年)との関係については推定の域を出なかったが、近年、モーツァルテウムのライジンガー博士によってアイゼンシュタットの教会からバッハの《ミサ曲 ロ短調》の筆写楽譜が発見されたことにより、ハイドンが所蔵していたと考えられる筆写楽譜を、モーツァルトが知っていたという可能性が出てきた。
 《ミサ曲 ロ短調》のうち、キリエはザクセン選帝侯強健王アウグストの追悼のための、グロリアはその子アウグスト3世の選帝侯継承の祝賀のための作品である。なお、アウグスト3世はポーランド王位継承のためにカトリックに改宗していた。バッハはこの作品をアウグスト3世に献呈する際に「ザクセン選帝侯宮廷音楽家」の称号を望んだとされるが、ウィーンのために書いたとする説があり、プラハの貴族との関連も言われている。

 モーツァルトの《ミサ曲 ハ短調》は破天荒な大曲だが、ヨーゼフII世はミサを40分以内に行うよう指示していたらしく、当時上演困難な状況であった。

ベートーヴェンはモーツァルトに師事していないが、ハイドンには会って弟子になった。彼はバッハの研究を行っており、ルドルフ大公にフーガの教科書や《ミサ・ソレムニス ニ長調》op.123(1819~22年)を献呈している。この曲もバッハとの関係が推測されていたが、上記の発見により、ハイドンを介してバッハの曲の存在を知っていた可能性も考えられる。
こうした背景を考慮に入れながら、3曲の「大ミサ曲」の比較を通じて、バッハ、モーツァルト、ベートーヴェンの音楽のすばらしさをあらためて考える。




★構成
○バッハ:Missa(Kyrie;Gloria);Symbolum Nicenum (Credo; Sanctus;Ossanna;Benedictus,Agnus Dei et done nobis pacem (4部分)
○モーツァルト:Kyrie;Gloria;Credo(未完);Sanctus;Benedictus (Agnus Dei未完)、ザルツブルクで演奏したのはKyrie;Gloriaのみ
○ベートーヴェン:Kyrie;Gloria;Credo;Sanctus;Agnus Dei (通常文5部を完全に通作した)  上記のうち比較可能なのはKyrie,Gloria,Sanctus,Benedictusであるが、本日はKyrieとGloriaを比較した

★キリエの比較
○バッハ:
・Kyrie I (SSATB=ダブルソプラノパート・アルト・テノール・バス),h、4/4拍子、短い序奏とフーガ(バッハはペルゴレージの《スターバトマーテル》やヴィルデラーのミサ曲を写譜して勉強したと言われる)
・Christe (S1とS2のソプラノ二重唱),D,4/4拍子, 父と子の同一性(ナポリ派オペラやペルゴレージの影響あり)
・Kyrie II (SSATB),fis, 2/2拍子 古様式、十字架の音型と言われる(3部分がまったく異なる原理に基づく)

○モーツァルト:
・Kyrie I (SATBとソプラノ),c , 4/4拍子、短い序奏とフーガ(一筆書きのよう)
・Christe (ソプラノとSATB),Es,4/4, コンスタンツエを想定した、ソプラノ独唱と合唱の対話
・Kyrie II (SATBとソプラノ),c,4/4拍子,序奏主題とフーガの結合(シンメトリカルな構成だが、全体の一体感が特徴)

○ベートーヴェン:
・Kyrie I (SATBとソリスト) ,D, 2/2拍子、序奏と合唱と独唱の対話
・Christe ,h,3/2拍子、ソリストと合唱の対話、ポリフォニック
・Kyrie I (SATBとソリスト) ,D, 2/2拍子、序奏と合唱と独唱の対話(ABA形式、《魔笛》のザラストロの神殿の雰囲気で始めるべきだと考える)
◎1819~22年の3年をかけて作曲したベートーヴェンは、この曲を自らの最高傑作と考えていた




★グロリアの比較 ○バッハ:
・5.Domine Deus.二重唱(S.T),D, 4/4拍子(シンメトリーの中心)
・9.Cum Sancho Spiritu. (SSATB), D, 3/4拍子, フーガ(息が続かないため難しい) (主と精霊を賛美して終わる)

○モーツァルト:
・4.Domine Deus,Allegro moderato:(S.Sの二重唱),d,3/4(シンメトリーの中心)
・5.Qui Toris, Largo:(SATB+SATB),g,4/4拍子、合唱曲で《ドンジョヴァンニ》の影響
・8.Cum Sancho Spiritu. (SATB), C, 2/2拍子、トロンボーンが入り、フーガが難しい

○ベートーヴェン:
6部よりなり、第6部の大変充実したフーガ後半ではテンポがプレストへと加速され、第1部の爆発的な主題も加わって、ベートーヴェンらしい華々しいクライマックスを築く
★結語:3つの「大ミサ曲」の構造を調べてみると、いろんな発見があった。「大ミサ曲」は3人の作曲家の信仰心の現れであり、生きていた証(あかし)の曲と言える。
(樋口隆一氏指揮・明治学院バッハアカデミー合唱団・合奏団によるライブ盤を視聴、2005~2014年)

   (文責:松永 洋一)

 


●例会・懇親会コーナー

 今回の懇親会場は、いつもの「デリ・フランス」お茶の水店に戻り、樋口隆一氏を囲んで、飲み会に早変わり。ビールで乾杯後、楽しく質疑・応答、懇親が行われた。 懇親会においては、皆さん元気いっぱい、話題も豊富で、楽しい賑やかなひとときを過ごすことが出来た。  



 

第385回 モーツァルティアン・フェライン例会 2018年10月20日

 

事務局レター【第258号】/2018年10月

【編集者】澤田義博/松永洋一/高橋徹/大野康夫/笠島三枝子/堀尾藍



●10月例会(第385回)のお知らせ

演題 「バッハ・モーツァルト・ベートーヴェン 3つの「大ミサ曲」とその背景」  お話:樋口隆一氏

日時:2018年10月20日(土)午後2時開演(1時30分開場)

会場:お茶の水「クリスチャンセンター」(JR「お茶の水」下車・徒歩3分)

例会費:¥3000(会員・一般共)


講演の概要:
 モーツァルトの《ミサ曲 ハ短調》K.427(K.417a)〔1882~83年〕は未完に終わったものの、ロバート・レヴィンによる全曲復元版によれば、約76分もの「大ミサ曲」となるはずであった。スヴィーテン男爵のもとでのバッハ、ヘンデル研究の成果と言われているが、バッハの《ミサ曲 ロ短調》BWV232〔1733~49年〕との関係については推定の域を出なかった。しかし近年、モーツァルテウムのライジンガー博士によってアイゼンシュタットの教会からバッハの《ミサ曲 ロ短調》の筆写楽譜が発見されたことにより、ハイドンが所蔵していたと考えられるもの筆写楽譜を、モーツァルトが知っていたという可能性が出てきた。
 ハイドンの弟子だったベートーヴェンも《ミサ・ソレムニス 変ホ長調》〔1821~23年〕を作曲している。この曲もバッハとの関係が推測されていたが、上記の発見によって、ハイドンを介してバッハの曲の存在を知っていた可能性も考えられる。
 この講演では、こうした背景を考慮に入れながら、3曲の「大ミサ曲」の比較をつうじて、バッハ、モーツァルト、ベートーヴェンの音楽のすばらしさをあらためて考えたい。


例会後は恒例の懇親会へのご参加をお待ちしております。 会場:「デリ・フランス」お茶の水店/03(5283)3051
 

 


今年度人事に関して(再掲)
 澤田会長が定年制により、来年の改選期4月に退任予定のため(名誉会長兼理事として、理事会では引き続き活動する予定です)、松永副会長が後任となる予定です。
 会員総会時に会員の皆様のご承認を得ることが条件です。引継期間として1年間は必要であるため、松永氏は1年間、会長代行として活動いたします。

 


●今後の例会のご案内(会場記載のないものはお茶の水クリスチャンセンターです)

11月17日(土) 澤田会長「モーツァルトとフリ―メイスンリー」

12月16日(日) 久元祐子氏ピアノリサイタル(セレモア立川)午後3時開演
           チラシ:その1 チラシ:その2

1月19日(土) 会員出演の新年会

2月23日(土) 池上建一郎氏

3月30日(土) マリステラ・パトゥッチツィ氏ヴァイオリン・上野優子氏ピアノのデュオ・コンサート(予定)(カーサ・モーツァルト)
 

 


♪ 新年会のお知らせ

◇モーツァルティアン・フェライン新年会出演者募集

 ◎日時     2019年1月19日(土)
 ◎募集内容  お話・・・20分程度   演奏・・・5分~8分
 ◎条件     モーツァルトに限る
   新人の方大歓迎! 例会出席率良好の方優先です
 ◎締切     2018年11月17日(土)

 ◎お問合せは 高橋 徹  takat2@siren.ocn.ne.jp TEL090(4661)7525

 


モーツァルティアン・フェライン9月例会報告(第384回)報告

♪上野優子ピアノリサイタル♪(2018年9月8日)

 暑かった今年の夏を思い起こすような気候となったこの日、原宿のカーサ・モーツァルトで上野優子さんのピアノリサイタルが開催された。当会の会員でもある上野さんの例会への登場は、2014年10月の第341回(銀座・十字屋)、2016年9月の第362回(原宿・カーサ・モーツァルト)についで3回目である。今回は、「音楽史に流れるモーツァルトのDNA」と題して上野さんがプログラムを立案。前半はモーツァルト、後半はショパン、ドビュッシー、プロコフィエフと、古典派からロマン派、近・現代音楽と音楽史をなぞる興味深い内容となった。




 最初は、モーツァルトの幻想曲 ニ短調 K397でスタート。この曲は、自筆譜がなく、未完、最後の10小節が誰かによる補筆とミステリアスだ。アンダンテ、ニ短調の序奏は、何か深みから浮き上がるような分散和音により即興的に始まる。その後、まるでオペラのシェーナを想起させるようなアンダンテの美しい歌が続く。そしてニ長調のアレグレットが春のような、あるいは天国的な装いで現れ終わる。上野さんのピアノはこの曲の変化を自然に表現しており好感が持てた。
 2曲目は、パイジェッロの歌劇『哲学者気取り』の「主に幸いあれ」による6つの変奏曲ヘ長調 K398である。この曲は、1783年3月23日にウィーン・ブルク劇場で行った演奏会で即興したものを後で楽譜に書き留めた作品だ。チャーミングな主題を変奏曲の定石にとらわれず、かなり自由に変奏しており演奏会での即興の雰囲気が一層感じられる曲である。上野さんは、ベヒシュタインピアノの特徴である透明感をうまく利用して演奏し、当時のフォルテピアノを思わせた。




 3曲目は、ピアノソナタ 第18番 ニ長調 K576である。この曲も作曲の動機には決着がついていない、言わば謎に満ちた曲である。従来から1789年にプラハ、ドレスデン、ライプチヒ、ベルリンと旅をし、フリードリヒ・ヴィルヘルム2世に謁見して、弦楽四重奏曲6曲と王女のための易しいピアノソナタ6曲の依頼を受けた・・・という話が伝承されてはいるが、モーツァルトがコンスタンツェに宛てた手紙以外に資料がない。現在ではソロモン始め多くの学者がこの手紙の記述にさえも疑問を呈している。
 ちなみに、新全集では、この曲は王女のための作品ではないとしているが、それは、この曲がモーツァルトのピアノソナタ全18曲中、屈指の難易度を誇るからである。当会の顧問である久元祐子さんは、著書の中で、「奔放に見えながら動機の関連や全体の構成などかなり緻密に構築されている。 冒頭のロンド主題は歯切れの良い軽快な動機だが、繰り返されるとき、すぐに左手は自由自在なパッセージを伴い、この応答が曲の中であらゆる形に変化して発展を遂げる。 対位法的な処理も著しく、相互に関連した動きと、意表を突いて動機が現れたり、リズムが変化したりで、下手をするとバラバラになるか支離滅裂になりそうな危うさを秘めている。」と第3楽章のロンドについて述べている。
 上野さんの演奏は、タッチも明快であり、破綻する事もない。第1楽章冒頭のファンファーレ主題は颯爽としており気持ち良い。対位法的処理も歯切れが良い。第2楽章アダージョは、モーツァルト独特の美しい旋律と和声の微妙な変化を素晴らしく表現していた。第3楽章は、左手のパッセージが素晴らしく、モーツァルトがバッハ・ヘンデル体験を元に新しく作り直した対位法の世界を十分堪能する事ができた。




 後半の1曲目は、ショパンの2つのノクターンOp.27から第7番 嬰ハ短調と第8番 変ニ長調。ノクターンというジャンルは、あのクレメンティの弟子でもあったジョン・フィールドが創始したが、現在ではやはりショパンの一連のピアノ作品が有名である。
 第7番は、開始部に半音階の旋律を使い、分散和音とともに進行する。この旋律+分散和音はモーツァルト時代から繋がっている。中間部はかなり盛り上がり、3部形式の主部に戻る所は、大幅に短縮されているが、この短縮の手法もモーツァルトの作品に見られるものだ。第7番は第2番などと比較すると有名ではないが、「夜」を感じさせる曲としては、ノクターン全21曲の中でも上位なのではないだろうか。上野さんの演奏は、ほの暗さ、静謐感の巧みな表現により、まさにノクターンに相応しい「夜」を感じられる演奏だった。

 次の第8番は、分散和音の伴奏に乗ったメロディーの美しい事!A,Bという2つの旋律が交互に変奏を伴って3度繰り返される。Aの単旋律に対し、Bは3度6度の重音からなる旋律で対比する。Bは音量も大きく転調も伴って気分が高揚していくのがわかる。上野さんの演奏は、この対比が素晴らしい。第7番と比べると華やかな、ロマンチックな印象を感じる事ができた。




 次は、ドビュッシーの版画より、塔・グラナダの夕べ・雨の庭を続けて3曲演奏。
 塔は、ドビュッシーが、パリ万博でガムラン音楽を通して興味を持った東洋趣味が作曲に繋がったようだ。インドネシア、中国、そして日本をも感じさせる曲調、トルコに行かなくてもトルコ風の音楽が書けてしまうモーツァルトと共通する感性があると思われる。
 2曲目のグラナダの夕べも同じだ。ハバネラのリズムやギターの掻き鳴らしをイメージしたようなところは、いかにもスペイン。
 3曲目はフランスを念頭に庭木に降り注ぐ雨の様子だ。日本の雨に比べるとじめじめ感のない雨の印象。上野さんの演奏は、そんな曲の特徴を存分に楽しませてくれた。特に印象的だったのは、雨の庭での細かいアルペジオによる雨の表現。音量の変化も伴って一様ではない雨の降り方が良く表現されていた。上野さんの想像力が十分に発揮された演奏だった。

 次は、プロコフィエフのサルカズム全5曲。サルカズムとは風刺とか皮肉といった意味だそうだが、音楽の「癒やし」効果と対極にあるような打楽器的な奏法を駆使した鋭い和音が中心の曲だ。上野さんは、今までとは一変して力強い演奏。刻々と変わるテンポ、激しい強弱、突然の休止など変化に富む難曲を見事に弾ききった。

   聴衆からの大拍手を送られた上野さんがアンコールに選んだのは、ショパンの幻想即興曲Op.66。おなじみの旋律を聴きながら、このまま続いてくれればと思わずにはいられなかった。幻想曲で始まり、幻想即興曲で終わるという素晴らしい演出。大変満足のリサイタルであった。   (文責:高橋 徹)

 



●例会・懇親会コーナー

 今回の懇親会場は表参道のレストランで、上野優子さんを中心に飲み会に早変わり。ビールで乾杯後、楽しく質疑・応答、懇親が行われた。 懇親会においては、皆さん元気いっぱい、話題も豊富で、楽しい賑やかなひとときを過ごすことが出来た。  















  

 

第384回 モーツァルティアン・フェライン例会 2018年9月8日

 

事務局レター【第257号】/2018年9月

【編集者】澤田義博/松永洋一/高橋徹/大野康夫/笠島三枝子/堀尾藍


●9月例会(第384回)のお知らせ

上野優子氏 ~ピアノリサイタル~

日時:2018年9月8日(土)午後2時(午後1時30分開場)

会場: 原宿 カーサ・モーツァルト (JR山手線「原宿」徒歩5分、東京メトロ千代田線「明治神宮前」徒歩2分
ラフォーレ原宿裏東京中央教会前 電話03-3402-1756  

チラシ:その1

リサイタル会費:¥3500(会員・一般共)


プログラム

モーツァルト :幻想曲ニ短調 K、397(385g)
モーツァルト:パイジェッロの歌劇『哲学者気取り』の「主に幸いあれ」による6つの変奏曲  へ長調 K.398(416e)
モーツァルト :ピアノ・ソナタ第18番 ニ長調  K.576
ショパン   :2つのノクターン Op.27
ドビュッシー :版画
プロコフィエフ:ピアノ・ソナタ第4番ハ短調 Op.29 「古い手帳から」

上野優子氏プロフィール
桐朋女子高校音楽科を経て同大学2年次に渡欧、イモラ国際ピアノアカデミー(伊)ピアノ科ディプロマ取得、パリ・エコールノルマル音楽院ピアノ科コンサーティスト課程ディプロムをアルゲリッチ、エル=バシャ、カツァリス各氏に認められ取得。'09年同音楽院室内楽科コンサーティスト課程ディプロムを首席・審査員満場一致で取得。
全日本学生音楽コンクール、浜松国際ピアノアカデミーコンクール、フンメル国際ピアノコンクール他入賞多数。これまでストレーザ・マッジョーレ湖音楽祭、イタリア・モーツァルト協会例会マチネー、パリ・サルコルトー、ブールジュ・サンボネ劇場、都民芸術フェスティバル、ラフォルジュルネ「熱狂の日」エリアコンサート等々、ソリスト、室内楽奏者として出演する他、モルドヴァ共和国ナショナルオーケストラ、スロヴァキアフィルハーモニー管弦楽団、日本フィルハーモニー交響楽団などオーケストラ協演も多数。またイタリア国営テレビRAI3、スロヴァキアFMに出演するなど、国内外での活躍ぶりが音楽専門誌、新聞など各メディアで高く評価されている。
現在、演奏活動の他、音楽雑誌など専門媒体での執筆、コンクール審査、レクチャーなども行い、'08年のデビューCDが「レコード芸術」誌において準推薦盤に、'15年のセカンドアルバムが準特選盤に選出されるなど、録音も積極的に行っている。
'17年にスタートした「プロコフィエフ・ソナタ全曲シリーズ」は、これまでの「ココロノヒビキ」('10~'14年)、「上野優子with Friends・リストの系譜」('15年~)と共に注目のツィクルスとして話題になっている。
これまでにピアノを鬼村弘子、鍵岡眞知子、深沢亮子、有賀和子、F.スカラ、L.マルガリウス、B.ペトルシャンスキー、故J.ムニエ、M.リビツキー、J.M.ルイサダ各氏に、フォルテピアノをS.フィウッツィ氏に、室内楽を故G.マルティニー氏に師事。
全日本ピアノ指導者協会(PTNA)、日本アレンスキー協会、日本演奏連盟、日本ショパン協会、日本ピアノ教育連盟、日本・ロシア音楽家協会各正会員。昭和音楽大学・大学院及び同短大で教鞭を執るなど、後進の指導にも力を注いでいる。


モーツァルティアン・フェライン会員各位

満員御礼
9月8日(土)カーサ・モーツァルトで開催される 9月例会「上野優子ピアノリサイタル」はおかげ様で 50名の予約を頂きました。ありがとうございました。
当日、予約を頂いていない会員様がいらした場合の対応
若干名(4,5名分)の方は、ピアノに近いお席を準備できますが、 あらかじめ、ご了承下さい。

担当:高橋(090-4661-7525)

リサイタル終了後には、上野氏もご出席のパーティーを開催します。 お一人3,500円です。
パーティー会場:原宿バル SUN HOUSE(カーサ・モーツァルトから徒歩4分) 〒150-0001 東京都渋谷区神宮前3-26-11 ホノラリー原宿ビル3F ℡050-3461-4550

 


今年度人事に関して(再掲)
澤田会長が定年制により、来年の改選期4月に退任予定のため(名誉会長兼理事として、理事会では引き続き活動する予定です)、松永副会長が後任となる予定です。会員総会時に会員の皆様のご承認を得ることが条件です。引継期間として1年間は必要であるため、松永氏は1年間、会長代行として活動いたします。

 


●今後の例会のご案内(会場記載のないものはお茶の水クリスチャンセンターです)

10月20日(土)  樋口隆一氏

11月17日(土)  澤田会長

12月16日(日)  久元祐子氏ピアノリサイタル(セレモア立川)午後3時開

1月19日(土)   会員出演の新年会

2月23日(土)   池上建一郎氏

3月30日(土)   Maristella Patuzziさん・ヴァイオリンリサイタル(予定)(カーサ・モーツァルト)

2018年7月14日(土) 第 383回例会

  見直される「傑作」としての価値~《皇帝ティートの慈悲》
講師:加藤浩子氏

<講義要旨>
モーツァルト最晩年のオペラ・セリア《皇帝ティートの慈悲》は、レオポルド2世がボヘミア国王として戴冠することを祝うオペラとして作曲されたが、オペラ・セリアならではの紋切り型のストーリー、定型に応じた音楽づくりが古臭いと思われており、最近まで上演頻度が多いとはいえない作品であった。
 しかし1960年代以降、(例えば2006年のコンヴィチュニーの斬新な演出では)読み換えにより新しい生気が与えられ、その真価が見直されてきた。
 DVD視聴①レヴァイン指揮、ポネル演出、ウィーン国立歌劇場盤(1980)、現在もMETで上演されている画期的な演奏から、合唱とセストのアリア
 DVD視聴②アンノンクール指揮、クシェイ演出、ウィーン国立歌劇場(2003)から、序曲と最初の2重唱
 DVD視聴③クルレンティス指揮、ピーター・セラーズ演出、ムジカエテルナ、ザルツブルク音楽祭(2017)

 

この演出のコンセプトとして「人種差別」「宗教対立」「難民問題」を扱っている。ティートのモデルはネルソン・マンデラであり、セストはティートを刺して、最後にティートは自死してしまう。  演出はピーター・セラーズで、コンセプトに従って再構成を行い、ジェスマイヤー作のレチタティーヴォをカットし、別の曲を挿入している。「曲を変えたこと」で、今回の演出は大きな議論を呼んだ。  挿入された曲は、第1幕:《ハ短調ミサ曲》KV427より「ベネディクトス」、「ホサンナ」、「ラウダムス・テ」、《アダージョとフーガ》KV546、第2幕:《ハ短調ミサ曲》より「キリエ」、「クィ・トリス」、フィナーレ後に《フリーメイソンの葬送曲》KV477。

 

 あらすじを見たくて《ティート》を観る観客はいないため、普通の演出では厳しい台本である。モダン演出による再解釈として成功した例と言える。ザルツブルク音楽祭の後、アムステルダムでも同様のキャスティングで上演された。
 ムジカエテルナ合唱団の巧さが光る演奏で、「パルト」では、バセットホルン奏者がステージ上に出てきてセスト役(マリアンヌ・クレバッサ)と掛け合っている(視聴)。  ティートの殺害シーン後、2幕冒頭に挿入された「キリエ」は唐突の様に思えるが、文脈から行くと納得がいく演出であった。

 

18世紀モーツァルトは、《ティートの慈悲》において理想の権力者像を表明したが、今回のピーター・セラーズ演出は現代の解釈の可能性を示したと言える。大胆なカットと宗教曲の挿入を行ったことは、《ティートの慈悲・セラーズ=クルレンティス編曲版》と言えるのかもしれないが、見過ごすことが出来ない重要な制作と評価されるだろう。
 クルレンティスとムジカエテルナは来年2月に初来日予定であり、来年ザルツブルク音楽祭で《イドメネオ》、再来年以降《トリスタンとイゾルデ》や《ロ短調ミサ曲》の公演が決まっていることを付け加えておきたい。   (文責・松永 洋一)

●例会・懇親会 写真コーナー

 今回の懇親会場は、いつもの「デリ・フランス」お茶の水店に戻り、加藤浩子氏を囲み趣旨に賛同する有志一同で、飲み会に早変わり。ビールで乾杯後、楽しく質疑・応答、懇親が行われた。 懇親会においては、皆さん元気いっぱい、話題も豊富で、楽しい賑やかなひとときを過ごすことが出来た。

 
 

第383回 モーツァルティアン・フェライン例会 2018年7月14日

 

事務局レター【第256号】/2018年7月

【編集者】澤田義博/松永洋一/高橋徹/大野康夫/笠島三枝子/堀尾藍


●7月例会(第383回)のお知らせ

演題「見直される「傑作」としての価値~《皇帝ティート の慈悲》」   お話:加藤浩子氏

日時:2018年7月14日(土)午後2時開演(1時30分開場)

会場:お茶の水「クリスチャンセンター」(JR「お茶の水」下車・徒歩3分)

例会費:¥2500(会員・一般共)


講演の概要:
 モーツァルト最晩年のオペラ・セリア、 《皇帝ティートの慈悲》は、つい最近まで、上演頻度が多いとはいえない作品でした。オペラ・セリアならではの紋切り型のストーリー、定型に応じた音楽づくりが古臭いと思われていたこともあるようです。
けれど近年、アーノンクール、クルレンツィスら古楽畑の指揮者、コンヴィチュニーら斬新な演出家によって、その真価が見直されています。今回はこの《皇帝ティートの慈悲》の近年の公演をご紹介し、名作再発見の新たな可能性をさぐります。


例会後は恒例の懇親会へのご参加をお待ちしております。 会場:「デリ・フランス」お茶の水店/03(5283)3051
 

 

【会員総会のお知らせ】
7月例会開始前の7月14日(土)12時30分より、今年度の会員総会を開催いたします。会員の皆様のご出席をお願いします。

【人事について】
澤田会長が定年制により、来年の改選期4月に退任するため(但し、名誉会長兼理事 として理事会では引き続き活動する予定)、
松永副会長が後任となる事になる予定です(以上の人事は会員総会時に会員の皆様の ご承認を得ることが条件です)。
引継期間として1年は必要な為、松永氏は1年間、会長代行として活動致します。     澤田

【季刊誌編集長より】
「モーツァルティアン第100号」(2017年12月発行)はまだ在庫があります。頒価1500円で、例会会場や演奏家でもある会員の方の演奏会場などで取り扱っています。
郵送(送料当会負担)も可能ですので、ご関心のありそうなご友人の方々にぜひお薦めください。
先日、音楽書専門の神田・古賀書店をのぞいたところ、店内の一角に第100号のほか、季刊誌のバックナンバーがずらりと並んでいて壮観でした。アピール効果も抜群。書店と長年お付き合いのある石津勝男・名誉顧問のお力添えによるものです。(編集部)

 


●今後の例会のご案内(会場記載のないものはお茶の水クリスチャンセンターです)

 7月14日(土) 加藤浩子氏

 9月 8日(土) 上野優子氏ピアノリサイタル(原宿カーサ・モーツァルト)

10月20日(土) 樋口隆一氏

11月17日(土)  澤田会長

12月16日(日)  久元祐子氏ピアノリサイタル(セレモア立川)午後3時開演

 1月19日(土) 会員出演の新年会

 2月23日(土) 池上建一郎氏(クリスチャンセンター416号室)

 3月30日(土) Maristella Patuzziさん・ヴァイオリン・リサイタル(予定)(カーサ・モーツァルト)
 

 


モーツァルティアン・フェライン5月例会報告(2018年6月23日)第382回

「モーツァルト評伝の中のオスミン -オペラ《後宮からの逃走》受容の一側面―」
 大津 聡(立教大学、桐朋学園芸術短期大学)  

<講義要旨>
 本例会のテーマの核心は、オペラ《後宮からの逃走 Die Entfuhrung aus dem Serail》(以後《後宮》)のオスミンについての言説の歴史、つまり言説史を再構成すること通して、《後宮》受容の一側面、さらには、モーツァルト受容の精神史側面をも視野に入れようとすることにあった。
 《後宮》の登場人物の一人であるオスミンは、言うまでもなく、モーツァルトの全オペラを通しても、ひときわ異彩を放つ強烈なキャラクターである。彼を端的に描写するとしたら、規律や職務には忠実なイスラム教徒だが、粗暴で残酷、気が短くて、怒らせると手の付けられない恐怖の門番というところだろう。
現代の私たちにとって、彼は道化役で、本気で怒りを爆発させる一方、ユーモアがあり、豊かな感情や表情を見せる姿から憎めない人物であるが、驚くべきことに、19世紀の市民社会では、長らくそのような多様で、肯定的な見方は生まれてこなかったというのが、この日のテーマの言わば出発点であった。

 


 まず、シュテファニーの台本を前提としたオスミンを、モーツァルトはいかに理解し、音楽によってどのような舞台上の人物に仕立て上げようとしたのかが書簡を手がかりに検証された。モーツァルトは、オスミンについて父レーオポルト宛てに二通の書簡を送っているが、それらの内容を踏まえると、モーツァルトにとってオスミンは、元来「愚鈍で粗野で意地悪」なキャラクターではあったが、残虐な歌詞や振る舞いばかりがクローズアップされる憎むべき悪役ではなく、何より彼のコミカルさも意図していた。
 そして、シュテファニーと、何よりモーツァルトが思い描き、創り出したオスミン像が、19世紀以降の市民社会ではどのように変容していったかということの紹介と分析が本講演の中心であった。それは、言わば「モーツァルト以後のオスミン」という問題であろう。その際、ほとんど途切れることなく書かれてきたモーツァルト評伝の中で、オスミンは、主人公カップル、つまりベルモンテやコンスタンツェと並んで、時には彼らを押し退けるほどに、常に話題となってきたという話は、驚くべき事実であった。また、かくして、オスミンは各々の社会や、そこに生きた人々のセンスや価値観を映し出す鏡となる。(言説の引用は、スライド、あるいは口頭によって提示された)
 ここではその詳細には立ち入れないが、紹介された初期のモーツァルト評伝に出て来るオスミンは、時にあまりの嫌われようで、気の毒になるほどであった。(以下、紙面の都合から講演で紹介された一部の例を要約)J. F. ライヒャルト(1808)が、オスミンをまだコミカルな存在として捉えていたことは残された書簡から窺われる。が、彼はむしろ例外で、芸術に厳しいモラルが求められた 19 世紀初頭にあっては、オスミンは時に散々な言われ方であった。その典型例がI. F. アーノルト(1803)で、そこにはオスミンのコミカルさなど微塵も感じられない。彼のオスミン像は、第一に「残酷なアリア」(♪「こういう風来坊共ときたら "Solche hergelahf´ne Laffen"」)に由来するものであった。

 

 時代は下り、初めてモーツァルトの作品を詳しく論じたウリビシェフ(1843)は、オスミンに「最高度に独自でおもしろい道化役」を見出したものの、同アリアの歌詞と音楽は、依然オスミンの総合的な人物像に決定的な影響を与え、彼のイメージは異常なサディストにまで増幅された。さらに空前絶後の規模を誇る記念碑的なオットー・ヤーンの評伝(1856/59)でも、オスミンについての美的評価は、依然として従来の性格付け、つまり何より残酷であるという 19 世紀の市民社会と結びついたモラル観を抜きには考えられなかった。
 歌詞の内容と、実は何より、強力なリアリティーを創り出した音楽によって、皮肉にも一義的に「残酷」という悪のレッテルを貼られてしまった、アリア「こういう風来坊共ときたら」が「ドイツ語によるオペラの中で、初めての大規模でコミカルなアリア」(カール・シュトルク)という新たな評価が与えられたのは、ようやく20世紀になってのことであった。同時にオスミンへの新たな眼差しも生まれてきた。オスミンを「作品におけるエートスの担い手」とし、複雑で独創的な人物像を見出したレルト、さらには「オペラ全体を通して最も重要な人物」、「最も独創的な人物像の一例」(プフォルデテン)とまで評価されるに至った。そして、評伝の意味や役割、オペラの記述方法が19世紀とは変わった21世紀の現代でも、オスミンを巡る議論は途絶えることはない。
 講演の中で紹介されたオスミンについての議論の歴史、言わば言説史は、オスミンという人物のみならず、《後宮》というオペラの受容、すなわち、市民社会でこのオペラが上演され、鑑賞され、語られた歴史のパラドックスに他ならない。
 19世紀のオペラ記述においては、しばしば音楽以前に、その筋書きや登場人物の人間像が真剣に語られ、その時々のモラルに関するイデオロギーから作品が評価された。逆に言えば、モーツァルト評伝の著者たちは、オペラについて、モラルの問題を抜きには語れなかったということも出来る。そんな中、モーツァルトの音楽によって、単に台本から浮かび上がってくるイメージを超えて、強力、かつ多面的に描かれ、今日に至るまで、パラドックスをはらみながらも、極めて持続的な注目を集めてきた《後宮》のオスミンは、やはり特異な存在であることが確認された。   (文責・松永 洋一)

 


●例会・懇親会コーナー

 今回の懇親会場は、いつもの「デリ・フランス」お茶の水店に戻り、大津 聡氏を囲んで、飲み会に早変わり。ビールで乾杯後、楽しく質疑・応答、懇親が行われた。 懇親会においては、皆さん元気いっぱい、話題も豊富で、楽しい賑やかなひとときを過ごすことが出来た。  

 

第382回 モーツァルティアン・フェライン例会 2018年6月23日

 

事務局レター【第255号】/2018年6月

【編集者】澤田義博/松永洋一/高橋徹/大野康夫/笠島三枝子/堀尾藍


●6月例会(第382回)のお知らせ

演題「モーツァルト評伝の中のオスミン-オペラ《後宮からの逃走》受容の一側面-」   お話:大津 聡氏

日時:2018年6月23日(土)午後2時開演(1時30分開場)

会場:お茶の水「クリスチャンセンター」(JR「お茶の水」下車・徒歩3分)

例会費:¥2500(会員・一般共)


講演の概要:
 モーツァルトのオペラ《後宮からの逃走》の登場人物オスミンは、作品成立当時から今日に至るまで、ひときわ異彩を放ってきたキャラクターである。一方、父レーオポルトとの書簡に鑑みても、オスミンという強烈なキャラクターは、単に台本から飛び出してきたものではなく、モーツァルト自身の創造に他ならなかったことが分かる。他方で、モーツァルトの手から離れたオスミンは、19世紀以降の市民社会において、常に脚光を浴びながらも、長きにわたり、厳しい評価にさらされることとなった。
本講演では、モーツァルト評伝における《後宮からの逃走》についての記述、就中、オスミンについての価値判断を手がかりに、人々がモーツァルトのオペラに何を重ね合わせて観てきたのかを考えます。


例会後は恒例の懇親会へのご参加をお待ちしております。 会場:「デリ・フランス」お茶の水店/03(5283)3051
 

 

【会員総会のお知らせ】
7月例会開始前の7月14日(土)12時30分より、今年度の会員総会を開催いたします。会員の皆様のご出席をお願いします。

【人事について】
澤田会長が定年制により、来年の改選期4月に退任するため(但し、名誉会長兼理事 として理事会では引き続き活動する予定)、
松永副会長が後任となる事になる予定です(以上の人事は会員総会時に会員の皆様の ご承認を得ることが条件です)。
引継期間として1年は必要な為、松永氏は1年間、会長代行として活動致します。     澤田

 


●今後の例会のご案内(会場記載のないものはお茶の水クリスチャンセンターです)

 7月14日(土) 加藤浩子氏

 9月 8日(土) 上野優子氏ピアノリサイタル(原宿カーサ・モーツァルト)

10月20日(土) 樋口隆一氏

11月17日(土)  澤田会長

12月16日(日)  久元祐子氏ピアノリサイタル(セレモア立川)午後3時開演

 1月19日(土) 会員出演の新年会

 2月23日(土) 池上建一郎氏(クリスチャンセンター416号室)

 3月30日(土) Maristella Patuzziさん・ヴァイオリン・リサイタル(予定)(カーサ・モーツァルト)
 

 


モーツァルティアン・フェライン5月例会報告(2018年5月26日)第381回

「やり抜く力の達人モーツァルト ー“GRIT”による新しい 天才論―」
 高橋徹副会長  講義要旨

 本例会では「GRIT」とは何か?「GRIT」と天才との関係を探る。まず天才は、優れたスキル、記録、業績に大別できる。モーツァルトの天才伝説では、鋭い音感:1/8音程の相違を指摘。神業演奏:鍵盤を布で覆って演奏。即興能力:バリントン卿の前で即興演奏。暗譜能力:システィーナ礼拝堂のミゼレーレ伝説。作曲スピード:3大交響曲の作曲。最年少記録:黄金の軍騎士勲章授章。作曲方法:楽器を使わず頭の中で作曲などがある。
 これらは、スキルに関する事が多い一方で業績がない。「フィガロの結婚」のヒットや、予約演奏会の活況は、一時的で地域限定の成功だ。18世紀の作曲家の評価は、大きな宮廷の楽長になる事とオペラで成功する事だった。1781年から10年間ウィーン宮廷劇場での作曲家別オペラ上演回数で、モーツァルトは7位。オペラで成功しなかった上に、楽長も経験できなかった。つまり当時の基準では成功とは言い難い。
 当時の天才は、高度なスキルを持った人だったが、現代では、偉業を達成した人に与えられる称号である。現代の基準でモーツァルトを評価すると、作曲家別オペラ上演回数等のデータで軒並み上位だった。従って、現代のモーツァルトは、様々なジャンルで多数の傑作を残し、世界中で聴かれるクラシック音楽作曲家の第一人者である。
 では、この偉業がどうやって達成されたのか「GRIT」に沿って考える。まず、著者アンジェラ・ダックワースが重要という努力と才能の「達成の方程式」とは、才能と努力によってスキルが培われ、それと同時にスキルは努力によって達成を得るという事だ。モーツァルトでは、才能(音感、演奏能力、即興能力、暗譜能力)は努力により作曲というスキルが培われ、作曲に更に努力を重ねる事で作品の数と傑作が増えた。

「GRIT」は、日本語で「やり抜く力」と言う。構成する要素は、「情熱」と「粘り強さ」の2つ。そして、「やり抜く力」の強い人が偉業を達成する。それでは、先程の「達成の方程式」の「努力」との関係は?「情熱」とは、ひとつの事にじっくりと取り組む姿勢だ。一方、「粘り強さ」は、挫折後の継続の事。この2つから導かれるのは、「生涯をかけ、たゆまぬ努力ができる」事である。「やり抜く力」は、達成の方程式の「努力」と密接である。
 「やり抜く力」を構成する「情熱」は、「興味」と「目的」から生まれ、「粘り強さ」は、「練習」と「希望」から生まれる。「情熱」を持ち続けるために必要な「興味」について、モーツァルトの幼年期を見ると、レオポルトは遊びで音楽に興味を持たせた。音と戯れる事から始め、楽器に親しんだ。そして、ごく自然に演奏や作曲への興味が増した。次の段階では外の世界を体験する。6歳で初めて演奏旅行をして、旅先の宮廷や館で多くの演奏会に出演。聴衆を満足させるスキル、好みを感じ取った。また、オペラや演劇をよく鑑賞し、流行や、舞台の全要素を取り込んだ。幾多の出会いで、善悪をつぶさに観察し、後にオペラにおける人間感情の的確な表現に繋がった。一方、貴族と会話や晩餐を共にし、褒賞で少しずつ職業としての音楽家を感じ始めていた。
 16歳までの旅を追うと、大きな宮廷への才能のお披露目で始まり、その後各地の音楽事情を吸収し、巨匠と出会い直接の指導も受けた。3回のイタリア旅行は、3作品によってオペラ作曲を習得した。こうして、気楽な音楽の初心者が「興味」を発見し、旅を経験する事で発展させ、作曲への「情熱」が醸成された。
 次は「目的」を見出し、自分の仕事が重要だと確信すると、常に最高傑作を目指して仕事をする。天職である。モーツァルトの手紙には「情熱」と「最高傑作」が出てくる。作曲が天職だったのだ。

 

また、同じ「目的」を持った手本となる人物に出会う事も必要であり、ヨーゼフ・ハイドンとの関わりが注目される。モーツァルトがハイドンに惹かれたのは、作曲では弦楽四重奏曲の父、交響曲の父として。一方、人間性では、穏やかな性格、謙虚さ、誠実さなどである。レオポルトに代わって、ハイドンを作曲や人生のお手本として捉えたであろうか?この人のようになりたいと考える事が「情熱」を燃やす。
 次は、「粘り強さ」を獲得する「意図的な練習」とは何か?最初に現状を少し上回る目標を設定。第二段階ではその達成を目指して努力をする。第三段階ではできるまで繰り返し練習をする。モーツァルトの「意図的な練習」は対位法の習得、弦楽四重奏曲の作曲、ピアノ協奏曲の自作自演などである。
 更に「粘り強さ」を得るため、毎日同じ時間、同じ場所での「習慣」を作る。習慣化する事で意識せず「意図的な練習」を継続できる。モーツァルトは、作曲を朝の2時間と、深夜の2時間と決めており、「習慣」の重要性を認識していた。
 次は、「粘り強さ」を生む「希望」で、無力感を乗り越える事が重要である。楽観的に考えると逆境でも粘り強くがんばれる。悲観的に考えると困難な事は最初から避ける。モーツァルトは1778年2月4日、1781年6月2日レオポルトに宛てた手紙で、楽観的で困難に遭遇しても作曲への情熱が衰えない。
 「やり抜く力」の達人モーツァルトはどうやって誕生したか。彼が「情熱」を傾けたのは作曲だった。そして、「粘り強さ」は、失恋や母の死があっても作曲を継続した所に感じる。モーツァルトの偉業は、「生涯をかけて、作曲にたゆまぬ努力をした」から達成できたのだ。我々はモーツァルトが作曲を継続した恩恵を大いに享受している。
 アンジェラ・ダックワースの父親は、凡庸な我が子は大成しないと悩んだ。「おまえは天才じゃあない」と言われ続けた少女は、やがて、天才賞を受賞する。人生で何を成し遂げられるかは、生まれ持った才能よりも「情熱」と「粘り強さ」によると突き止めて。この本は、新しい天才論だ。最後の一文で「私は・・・」を「モーツァルト」と置き換え結びとする。

 


 天才という言葉を「努力もせずに偉業を成し遂げる事」と定義するなら、モーツァルトは天才ではない。しかし、天才とは「自分の全存在をかけて、たゆまぬ努力によって卓越性を究める事」と定義するなら、モーツァルトは天才だ。 (文責:高橋 徹)

 


●例会・懇親会コーナー

 今回の懇親会場は、いつもの「デリ・フランス」お茶の水店に戻り、高橋徹氏を囲んで、飲み会に早変わり。ビールで乾杯後、楽しく質疑・応答、懇親が行われた。 懇親会においては、皆さん元気いっぱい、話題も豊富で、楽しい賑やかなひとときを過ごすことが出来た。