top of page

2005年 


●2005年12月事務局レター(05/12/01) 講師;牧野成史氏、前回例会結果;若松茂生氏

●2005年11月事務局レター(05/11/01) 講師;若松茂生氏、前回例会結果;栗田久暉氏

●2005年10月事務局レター(05/10/01) 講師;栗田久暉氏、前回例会結果;片野耕喜氏

●2005年9月事務局レター(05/09/01) 講師;片野耕喜氏、前回例会結果;安田和信氏

●2005年7月事務局レター(05/07/01) 講師;安田和信氏、前回例会結果;倉島収氏

●2005年6月事務局レター(05/06/01) 講師;倉島収氏、前回例会結果;江端伸昭氏

●2005年5月事務局レター(05/05/01) 講師;江端伸昭氏、前回例会結果;久元祐子氏

●2005年4月事務局レター(05/04/01) 講師;久元祐子氏、前回例会結果;田辺秀樹氏

●2005年3月事務局レター(05/03/01) 講師;田辺秀樹氏、前回例会結果;三澤寿喜氏

●2005年2月事務局レター(05/02/01) 講師;三澤寿喜氏、前回例会結果;第四回、会員有志による参加型例会

●2005年1月事務局レター(05/01/01) 第四回、会員有志による参加型例会、前回例会結果;牧野成史氏


 

 

第244回 モーツァルティアン・フェライン例会 2005年12月11日

  
 事務局レター【第119号】/2005年12月

 【編集者】倉島 収/塙 雅夫/山本 廣資/古田 佳子 bxp00423*yahoo.co.jp(スパムメールが増えてきましたのでリンクを外しました。お手数ですが*を@に替えて送信願います) 

●12月例会(第244回)のお知らせ 

「悔悟するダヴィデとその周辺」     お話・・・牧野  成史氏(横浜モーツァルトアカデミー主宰)

 日時:2005年12月11日(日)午後2時

 会場:原宿カーサ・モーツァルト(原宿医院)3Fホール(JR「原宿」下車・徒歩5分/地下鉄「明治神宮前」下車・徒歩3分)

 例会費:¥2500(会員・一般共)

例会会場;原宿【カーサ・モーツァルト案内図】


 

今月は「悔悟するダヴィデ」について、牧野先生のお話を伺います。圧倒的人気(?)のハ短調ミサに対して、ダヴィデが取り上げられるのは、フェラインの長い例会の中でも初めてではないでしょうか。それでは牧野先生からのメッセージです。


  ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


今年もまた去年お話ししたハ短調ミサに関連したテーマになりましたが、ダヴィデの成立に関しては皆さんの方が良くご存知だと思いますので、ここでは省略します。

 私が強調したいのは、この優れたカンタータの評価が不当に低いことです。例えば、「ハ短調ミサの編曲」と一言で片付けられてしまうこの名曲のテキストが、何語であるかということも、「イタリア語」と即座に答えられる方は、そう多くはないと思うのです。

お話の中心は、新しく加えられたアリアや、全曲を通しての見事な構成の分析などになると思いますが、今月の初めにザルツブルクで演奏して帰ってきたばかりですので、生誕250周年を控えたかの地の様子なども、合わせてお話できたらと思います。


  ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


楽しみなプログラムですね。大勢のご参加をお待ちしております。例会終了後は懇親会へもどうぞお出かけください。(F) 

 懇親会場:ステージY2(渋谷区神宮前1-13-12 TEL:3478-1031)

 

●今後の例会のご案内

  1月15日 第5回会員参加型例会(生誕250周年記念例会)
  2月12日 三澤 寿喜氏(北海道教育大教授)
  3月12日 田辺 秀樹氏(一橋大学教授)
  4月 9日 福地 勝美氏(本会会員)
  
 

●11月例会の報告(第243回/2005年11月13日)

エルヴィラ歌手カヴァリエリ      お話…若松 茂生氏(本会会長)
 

 昨年は「スザンナ歌手ストレース」と題して話していただいたが、今回は《ドン・ジョヴァンニ》ウィーン初演でドンナ・エルヴィラを歌ったカテリーナ・カヴァリエリについてのお話であった。

カヴァリエリは生涯サリエリの愛人だった筈であるが、モーツァルトのウィーンにおける最初の大きいオペラ《後宮》にコンスタンツェ役で出演し、《劇場支配人》ではサリエリ側のオペラではなくモーツァルト側に出演した。それに《ドン・ジョヴァンニ》ウィーン初演でモーツァルトは至高のアリアを特別に追加してカヴァリエリに捧げており、1789年の《フィガロ》再演では伯爵夫人を彼女が歌っている。

 考えてみれば、モーツァルトのオペラにとって最も重要な役をカヴァリエリが歌っている。どうしてなのか? 彼女と特別な関係があったのかなかったのか? モーツァルト、カヴァリエリ、サリエリとの関係は、興味が尽きない問題である。

モーツァルトはウィーンで独立後、1782年7月16日にドイツ語オペラ「後宮」を上演したが、ヒロインのコンスタンツェ役のカヴァリエリのお陰で成功したとも言える。モーツァルトは同年8月4日にコンスタンツェと結婚式を挙げているが、このオペラの成功により、オペラ作曲家としての名声を上げ、結婚生活の財政的基盤ができたとされる。それ以来、カヴァリエリに恩義を感じ、彼女の歌手としての力量と芸術性を信頼し、それが生涯続いたようである。

サリエリが自分の愛人カヴァリエリをモーツァルトのオペラに協力させたことには裏があった。サリエリはヨーゼフ二世のドイツ語オペラ推進策がモーツァルトの「後宮」で終焉することを見抜き、ドイツ語オペラはモーツァルトに任せ、密かに来たるべきイタリア語オペラの準備を画策していたのである。サリエリと親しかった詩人ダ・ポンテの登場やイタリア人歌手のリストを用意しており、やがてカヴァリエリのライバルとなるイタリアから来たナンシー・ストレースがウィーンに登場することになる。

しかし、サリエリとダ・ポンテの最初のブルク劇場の協力作品は全く不評で、ダ・ポンテは「フィガロの結婚」の実現のためモーツァルトと組むようになる。その最中、1786年の2月、ヨーゼフ二世のザクセン公歓迎の宴で、サリエリとモーツァルトが競演することになった。サリエリはオペラ「はじめに音楽、お次は言葉」で歌手の序列を理由にストレースを選んだので、モーツァルトの「劇場支配人」では、カヴァリエリとランゲ夫人が登用された。

 一方、サリエリ一派の陰謀を出し抜いて、1786年5月に「フィガロの結婚」がブルク劇場で初演されたが、スザンナはストレースが歌い、カヴァリエリは出演しなかった。

しかし、モーツァルトは1788年5月「ドン・ジョヴァンニ」のウィーン初演の際に、カヴァリエリのために追加曲「可哀想なエルヴィラ」という至高の技巧的アリアを書いて出演させている。また、1789年8月の「フィガロ」の再演の際には、伯爵夫人を歌わせており、モーツァルトは機会がある度に常に最高の役を用意して彼女の恩義に応えていた。

カヴァリエリは1792年12月に重病で早すぎる引退をし、1801年に腐敗熱のために40歳で死亡したことになっているが、実は46歳であった。彼女はこの早すぎる引退後に高額の年金を受け取っているが、これは宮廷楽長サリエリのお陰であり、二人は円満な関係であったという。

 講演は2時間で終え、残りの1時間はフェライン会員でもある共同通信の山崎さんの司会により、若松会長への「21世紀のモーツァルト像を探る」と題する公開インタビューが行われた。その内容を記す紙面はないが、幸い若松会長のホームページにお得意の「問いと回答」の形で会長の意見が記されている。当日の概要は、後日「季刊」に山崎会員より投稿願うことになっている。(O.K)

 

 

 

●情報コーナー

 コンサート情報

★1/9(月祝)19:00/フィリアH/M:オーボエ協奏曲、ピアノ協奏曲9番「ジュノム」、フルート協奏曲1番、ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲/古部健一ob、小山三千稚恵p、高木綾子fl、徳永二男vn、店村眞積va、N響メンバーによる室内オーケストラ/\7000~6000フィリアH045-982-9999
 ★1/10(火)19:00/トッパンH/M:交響曲29番、「フィガロの結婚」より、アレルヤ、マーラー=シュタイン:交響曲4番/中島彰子s、四方恭子vn、室内アンサンブル/\6500学3500トッパンH03-5840-2222 (H)

オペラ情報

★プラハ国立オペラ「ドン・ジョヴァンニ」1/10(火)18:30、武蔵野市民文化0422-54-2011
 ★プラハ国立オペラ「フィガロの結婚」1/14(水)18:00、川口リリアH048-254-9900、15(木)16:00、神奈川県民H、神奈川芸術協会045-453-5080 (H)

CD情報(外盤価格は新宿タワー又は渋谷HMV:違いはわずか) ★ こちらからどうぞ(Y)


 

●訂正とお詫び

季刊最新号(55号)で、タイプミスがありました。32頁、左段18行目、「至高の天災又は音楽の媒体ともいえよう。単調の魅力が圧倒的だ」が「至高の天才又は音楽の媒体ともいえよう。短調の魅力が圧倒的だ」となります。お詫びして訂正させて頂きます。(Y)


 

●あとがき

毎回、例会の最後には、次回のお知らせやPRなど、インフォメーションの時間があるのですが、数ヶ月前から時間を少し拡大して、会員同士の交流を深めようという試みが始まりました。

 例会場の原宿へ来る前に、CDショップへ寄って求めたCDやDVDなどを、例会前や休憩中に見せ合っている会員の方が、毎月結構いらっしゃるので、せっかくだから会場で聞かせて頂けないだろうか、という希望から始まったものです。

 話題の新譜はもちろんですが、エアチェックの録音やVTRなどでも結構です。是非、皆さんと一緒に観賞したいという音源、映像がありましたら、例会にご持参ください。ただし、あまり長い時間は割けませんので、CDなら一楽章、映像などは10分程度のもので、よろしくお願いいたします。(F)

トップに戻る

第243回 モーツァルティアン・フェライン例会 2005年11月13日

  
 事務局レター【第118号】/2005年11月

 【編集者】石津 勝男/塙 雅夫/山本 廣資/古田 佳子 bxp00423*yahoo.co.jp(スパムメールが増えてきましたのでリンクを外しました。お手数ですが*を@に替えて送信願います) 

●11月例会(第243回)のお知らせ 

「エルヴィラ歌手カバリエリ」     お話・・・若松 茂生氏(本会会長)

 日時:2005年11月13日(日)午後2時

 会場:原宿カーサ・モーツァルト(原宿医院)3Fホール(JR「原宿」下車・徒歩5分/地下鉄「明治神宮前」下車・徒歩3分)

 例会費:¥1500(会員・一般共)

例会会場;原宿【カーサ・モーツァルト案内図】


 

今月は1年ぶりに会長のお話を伺います。昨年はこちらの告知を見て初めて来場したという、会長のHPの熱心なファンの方もいて、大変盛り上がりました。今年もとても楽しみなプログラムです。それでは会長からのメッセージをどうぞ。


  ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


昨年は「スザンナ歌手ストレース」と題してお話しましたが、今回は《ドン・ジョヴァンニ》ウィーン初演でドンナ・エルヴィラを歌ったカテリーナ・カバリエリについてお話します。

カバリエリは生涯サリエリの愛人だったはずですが、モーツァルトのウィーンにおける最初の大きいオペラ《後宮》にコンスタンツェ役で出演し、《劇場支配人》ではサリエリ側のオペラではなくモーツァルト側に出演しました。それに《ドン・ジョヴァンニ》ウィーン初演でモーツァルトは至高のアリアを特別に追加してカバリエリに捧げており、1789年の《フィガロ》再演では伯爵夫人を彼女が歌っています。

 考えてみれば、モーツァルトのオペラにとって最も重要な役をカバリエリが歌っているわけです。どうしてなのか? 彼女と特別な関係があったのかなかったのか? 興味が尽きない問題です。

 講演は2時間で終え、残りの1時間はフェライン会員でもある共同通信の山崎さんによる「21世紀のモーツァルト像を探る」と題する公開インタビューを予定しております。難しい質問が出そうですが、会員の皆様にもご参加いただきたく、よろしくお願い申し上げます。


  ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


会長ならではの意欲的なプログラムです。どうぞお楽しみに。例会終了後は懇親会へのご参加もお待ち申し上げております。(F) 

 懇親会場:ステージY2(渋谷区神宮前1-13-12 TEL:3478-1031)

 

●今後の例会のご案内

 12月11日 牧野 成史氏(横浜モーツァルトアカデミー主宰)
  1月15日 第5回会員参加型例会(生誕250周年記念例会)
  2月12日 三澤 寿喜氏(北海道教育大教授)
  3月12日 田辺 秀樹氏(一橋大学教授)

 

●10月例会の報告(第242回/2005年10月16日)

オーストリアに音楽旅行(フルート合奏旅行の同行と音楽名所巡り)の体験談    お話…栗田 久暉氏(本会会員)
 

 本会会員の栗田久暉氏はクリスチャンで毎日曜日には目黒カトリック教会へ礼拝に出かけるそうである。その教会のフルート奏者兼聖歌隊指揮者の勝俣敬二先生のフルート・セミナリオ一同のオーストリア旅行(2004年8月)に栗田ご夫妻が同行されたときのお話を伺った。

 行程はミュンヘン、ザルツブルク、リンツ、ウィーンからウィーン南部のマナーズドルフ、チェコのプラハ。後半は奥様とお二人でザルツブルク、ウィーン、メルク、アイゼンシュタットと続き、VHSテープを見ながらの説明があった。

この中でマナーズドルフの聖マルティン教区教会におけるフルート演奏が今回の旅の目的だったが栗田氏の友人でウィーン在住のフルート奏者津久井氏ご夫妻とその教え子で同教会所属のアメリン夫妻のご努力により実現されたとのことであった。

 曲目はグレゴリオ聖歌に始まり、J・ペルティエ作曲レジーナ・チェリ、テレマン作曲フルート・トラヴェルソのための幻想曲、モーツァルト作曲コントルダンス「意地悪の悪い娘たち」K610、ジュリアーニ作曲無伴奏フルートによる喜遊曲op.77からフルートトラヴェルソ・イ長調のソロ、モーツァルト作曲「アヴェ・ヴェルム・コルプス」K618(フルート合奏団による)などを合唱、フルートソロ、フルート合奏で聴くことができたが教会内の素晴らしい音響効果の中でいずれも好演であった。

またアンコールにカタルーニャ民謡でカザルスでもお馴染みの「鳥の歌」があり、教会内の大勢の観客の方々も感銘を受けていた様だった。休憩後はCD、DVDで現地にまつわる名曲を聴かせて頂いた。

 (1)メルク修道院におけるモーツァルトの教会ソナタ・ニ長調K144(CD)・・・オルガンの音色が特に素晴らしい。
 (2)アイゼンシュタットの風景~ハイドン:チェロ協奏曲・ハ長調 第2楽章アダージョ(DVD)・・・静かで心が安まるという栗田氏の推薦。
 (3)エステルハージ伯の宮殿にて~ハイドン:カンタータ「あなたがたの無事に来られた事を祝して」・・・ハイドンがこの館で活躍していた頃を偲ばせる。
 (4)モーツァルト:ディヴェルティメント・ニ長調K136 から第2楽章アンダンテ(CD)・・・シャンドール・ヴェーグ指揮の素晴らしい演奏が聴けた。

 栗田氏のお話と音楽鑑賞は以上でしたが大学の先生方の専門的な講義とは別の形でフェラインのお仲間として同氏の優しいお人柄を反映した楽しい例会となったことをご報告致します。(I) 

 

 

 

●情報コーナー

 コンサート情報

★11/16(水)19:00/サントリーH/中村紘子Pリサイタル/M:K331、K310、K576、リスト:スペイン狂詩曲他/\7000~3000学1000ジャパン・アーツ03-5237-7711
 ★11/19(土)14:00/東京文化(小)/日本モーツァルト協会例会/M:フルート四重奏曲全曲/有田正広fl、山口幸恵vn、森田芳子va、長明康郎vc/\4500学2000日本モーツァルト協会03-5467-0626
 ★11/20(日)16:00/所沢ミューズH/M:交響曲36番、レクイエム他/ユベール・スダーン指揮、東響/高橋薫子S、小山由美A、錦織健T、長谷川顕Bs/\6000~2000所沢ミューズH04-2998-7777
 ★11/23(水・祝)14:00/鎌倉鎖大師青蓮寺/湘南・鎌倉社寺めぐりコンサート/M:ディヴェルティメントK136、フルート協奏曲1番、ドヴォルザーク:アメリカ/N響メンバー、小出信也(flゲスト)/\4500(茶菓子付き/13:00~)ミューズの森鎌倉0467-32-0079
 ★11/24(木)19:00/武蔵野スイングH/ショルンスハイム フォルテPリサイタル/M:ソナタ13番、「メッカの巡礼」の"われら愚かな民の思うは"による10の変奏曲他/\2000武蔵野文化会館0422-54-2011
 ★11/25(金)19:00/王子H/アルテミス・カルテット/M:弦楽四重奏曲11番、22番、リゲティ:2番他/\5000王子H03-3567-9990
 ★12/2(金)19:00/北とぴあ/M:「魔笛」序曲、レクイエム、ハイドン:交響曲98番/寺神戸亮指揮、野々下由香里S、上杉清仁A、鈴木准T、小笠原美敬B、レ・ボレアード(オーケストラ、合唱)/\5000~4000北とぴあ03-5390-1221
 ★12/3(土)19:00/王子H/原田陽子V、イヨルク・デムスPデュオリサイタル/M:K301、K526、ベートーヴェン:ソナタ5番、6番/\4500ミュージックスケイプ03-5464-2070
 ★12/5(月)18:45/東京文化(小)/日本モーツァルト協会例会/M:ミサ・ブルヴィスK49、レクイエム/河地良智指揮、沢畑恵美S、永井和子A、吉田浩之T、稲垣俊也B、堀内奈津美P、浅井美紀Og、東京トロイカ合唱団/\4500学2000日本モーツァルト協会03-5467-0626(H)

オペラ情報

★東京オペラグループ「コシ・ファン・トゥッテ」12/9(金)18:30、10(土)15:00、\12000~4000天王洲アートスフィア03-5460-9999
 ★東京室内歌劇場「コシ・ファン・トゥッテ」12/10(土)18:00、\10000~4000、めぐろバーシモンH03-5642-2267(H)

CD情報(外盤価格は新宿タワー又は渋谷HMV:違いはわずか) ★ こちらからどうぞ(Y)


 

●あとがき

先日、クラシックには何の興味もない友人と話していて、突然「ジュピター」という言葉が出てきて、びっくりしたことがある。

 彼女が言っていたのは日本の新人歌手のことで、ホルストの「惑星」の中の木星(=ジュピター)に歌詞をつけて歌ったものだと分かるのに、しばしの時間を要した。

 「ある程度のクラシック愛好家にジュピターといったらモーツァルトのこと」とやんわりと指摘してみたのだが、釈然としない様子であった。クラシックを好きではない人に、無理矢理聴けというのも気が進まないので、「機会があったら聴いてみて、良ければCDを貸すから」とだけ言い残したが、それ以降興味を持ってくれた様子はない。

 彼女がもうひとつのジュピターを聴く機会は、多分訪れないかもしれないと思うと、何となく悲しくなった。ホルストのジュピターを聴いている若い人たちの中にも、きっとそういう人がたくさんいるのだろうと思う。

 最近、CMでチャイコフスキーのピアノ協奏曲が歌詞をつけて歌われているのを聴いて、またかと思った。柳の下のどじょうを持ち出すまでもなく、これは世の昔からの倣いである。チャイコフスキーは、例の「オー人事オー人事」のCMでも受難に遭っていると思うのは、果たして私だけだろうか。(F)

Topページに戻る

第242回 モーツァルティアン・フェライン例会 2005年10月16日

  
 事務局レター【第117号】/2005年10月

 【編集者】栗田久暉/塙雅夫/山本廣資/古田 佳子 bxp00423*yahoo.co.jp(スパムメールが増えてきましたのでリンクを外しました。お手数ですが*を@に替えて送信願います) 

●10月例会(第242回)のお知らせ 

「オーストリアに音楽旅行(フルート合奏旅行の同行と音楽名所巡り)の体験談」     お話・・・栗田 久暉氏(本会会員)

 日時:2005年10月16日(日)午後2時

 会場:原宿カーサ・モーツァルト(原宿医院)3Fホール(JR「原宿」下車・徒歩5分/地下鉄「明治神宮前」下車・徒歩3分)

 例会費:¥1500(会員・一般共)

例会会場;原宿【カーサ・モーツァルト案内図】


 

キンモクセイの香りとともに芸術の秋がやって来ました。今月は久々に栗田さんのお話を伺います。栗田さんからのメッセージをご紹介致します。


  ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


1年余り前のいささか古くなってしまった話題ですが(2004年8月)、この年の8月13日(金曜日)から、私の所属の目黒カトリック教会の勝俣敬二指揮者(フルート奏者)と、その教え子のフルートセミナリオ9名とそのご家族3名に、私と家内の二人も聴衆側として、一緒にオーストリアに出発しました。

ことの始まりは、勝俣指揮者の要請により、現地のフルート奏者津久井清御夫婦を紹介したことから始まりました。当日は成田10時20分発のJAL403便にて、ロンドンのヒースロウ空港乗換にてミュンヘンに到着、専用バスにてザルツブルク、リンツ、ウィーン見学等を経て、ウィーン南部のマナーズドルフに行き、そこの教会でフルートの演奏会(独奏~12本の合奏)が行なわれました。

その時のご家族のご主人(鷲尾氏)が、道中の名所等を含めて録画録音された1時間20分位のVHSテープを私にお送り下さいましたので、今回はそれをお見せしながら要点をお話しします。これはモーツァルト以外の作曲家のものが多いのですがお許しください。(曲目は例会の時に)

 以上が前半で休憩の後は、行きつ戻りつですが(後半は)、21日にチェッコのプラハで、この団体一行とお別れしてから、私と家内二人だけの個人で又もやザルツブルク、ウィーン、メルク、そして南方のハイドンゆかりの町アイゼンシュタットに、津久井氏のご案内で単独旅行を行なった時のお話をさせて頂きます。

Ⅰ.途上のメルク修道院の聖堂内(音響効果非常に良し)のコンサート風景のある既存の市販のCDを使ってモーツァルトとハイドンの曲(約20分)を。
Ⅱ.さらにウィーンの南方のアイゼンシュタットの風景をこれも市販のDVDでお見せしながらハイドンの曲(内容はその時のお楽しみ)(約10分)を。
Ⅲ.アイゼンシュタットのエステルハージー館内の、これも現地購入既存市販のCDでこれもハイドンの珍しい曲(On your happy  Arrival ) (約10分)を。
Ⅳ.恐らくいくらか時間が余るようですので、本年8月にウィーンから來日された津久井清氏のお土産のシャンドル・ヴェーグ指揮10枚セットのモーツァルトのディヴェルティメント集CDの中から、ディヴェルティメント1~2曲をお聴かせしたいと思っております。(この内容もその時のお楽しみ)(H.K)


  ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


東西に拡がるオーストリアのザルツブルクからウィーンまで、色々な名所が堪能できそうですね。皆様お楽しみに。例会終了後は懇親会へもどうぞお運びください。(F) 

 懇親会場:ステージY2(渋谷区神宮前1-13-12 TEL:3478-1031)

 

●今後の例会のご案内

 11月13日 若松 茂生氏(本会会長)「エルヴィーラ歌手カバリエリ」
 12月11日 牧野 政史氏(横浜モーツァルトアカデミー主宰)
06年1月15日 第5回会員参加型例会(生誕250周年記念例会)
06年2月12日 三澤 寿喜氏(北海道教育大教授)
06年3月12日 田辺 秀樹氏(一橋大学教授)

 

●9月例会の報告(第241回/2005年9月11日)

モーツアルトのカノン    お話…片野耕喜氏(山梨大学助教授)/ピアノ演奏…當山通子さん
 

片野先生のフェラインにおけるお話は今回が2回目。先生のお話では、このカノンそのものは、この会始まって以来、初登場。くわしく言えば本邦初演とも云えるのではないでしょうか・・・とのことでした。確かに種々のクラシック演奏会でも、この種のテーマは筆者としても知る限り初めてと思います。

 片野先生と共に、山梨大学生え抜きの女子学生3名、男子学生1名の合唱を交えての始まりでした。カノンはもともとは歌。即興的に考えて、即興的に楽しむもの、簡単なカノンならばその場で出来るが、美しく作曲することは難しい。そういう意味ではモーツァルトのカノンは人間的な面白味がある。彼としては、はばかれる様な、下らない、汚い、下劣な(云うならばスカトロジー?)歌詞で作曲しているが、20世紀の人としてはそれがあって当たり前という考えもある。そんな気持ちで楽しんで行きましょう・・・と片野先生の前置きがあり、種々の例を出しながらご持参のCD及び、片野先生と上記学生4名の合唱で聴かせて下さった曲は、次のようなものでした。

Ⅰ.Difficile lectu mihi mars K.559(CD使用)「戦記を読むなんてとても俺にはむづかしい」
Ⅱ.続編 K.560 「おお愚かなるマルティンよ」(CD使用)
Ⅲ.Bona nox! Bist a rechta Ox K.561「おやすみ、ほんとのお馬鹿さん」(片野先生、女声3名、男声による5名の合唱) 
Ⅳ.Lacrimoso son'io K.555「私は悲しい」(女声による三重唱)
Ⅴ.Ach! Zu kurz, K.228 4声の2重カノン「ああ、なんて人生は短いのか」(女声、男声による二重のカノン『無限カノン』)
Ⅵ.セザール・フランク作曲のヴァイオリン・ソナタ(終わりにカノンが出てくる)(CD使用)
Ⅶ.モーツァルト作曲のAlleluja K553 「アレルヤ」(片野先生と女声3名、男声の5名による合唱) 
Ⅷ.モーツァルト作曲のAve Maria K554 「アヴェ・マリア」(女声3名、男声の4名による合唱)(上記二曲は何れもモーツァルトが1788年9月2日、31歳の時に彼自身にって『全自作作品目録』に書き入れられたもの。)
Ⅸ.Duett <Nun,liebes WEIBCHEN >K625(529a)(S,Br)二重唱「さあ、かわいい娘よ」(女声と男声、ピアノ伴奏付)(この二重唱は数年前、新たに発見された数名による作曲のジングシュピール『賢者の石』の一部そのもの)
Ⅹ.Terzett<Grazie agli'inganni tuoi>K.532 三重唱「おまえが欺いてくれたおかげで」(女声3名と男声の合唱)
XI.Terzett<Das Bandeln>K.441 リボンの三重唱(片野先生、女声、男声の合唱、ピアノ伴奏付)

 

 

 

さて、カノンというのは、もとはギリシャ語から発祥、イタリア語でカノーネ、ドイツ語でカーノンと言い、均等という意味、部分と全体に対する比率、聖書の聖典と外典にも出てきます。前に出た主旋律を繰り返して全体を作る、それがカノンと言うのにふさわしい定義ということ。バッハの作曲した「音楽の捧げもの」もその代表的なもの。このような片野先生のご説明はかなり専門的なものでしたが、大変良い勉強になりました。

 最後にⅠ.Difficile (K559)のパートを会場全員で合唱して和やかな雰囲気の内に終了しました。筆者の余分な付け足しですが会員諸氏も参考に一度バッハの「音楽の捧げもの」を聴いて見られては如何でしょうか?(H.K)

 

 

 

 

 

 

 

●情報コーナー

 コンサート情報

★10/18(火)19:00/東京文化(小)/M:弦楽五重奏曲4番、P四重奏曲2番他/ベルリン・フィル・ストラディヴァリウス・ソロイスツメンバー/\6000東京RO-ON、03-3204-9933
 ★10/19(水)19:00/東京文化(小)/日本合唱協会147回定期/M:アレルヤ、「魔笛」より、アヴェ・ヴェルム・コルプス他/小泉ひろし指揮、大家浩太郎P、海老沢敏(お話)/\4000~3500、65歳以上\2000(要予約)、高校生以下\1500(要予約)日本合唱協会03-3791-4088
 ★10/23(日)15:00/武蔵野市民文化/カトリーン・ショルツ(V)&ベルリン室内管弦楽団/M:V協奏曲全曲/\4000武蔵野市民文化会館2422-54-2011
 ★10/29(土)16:00/王子H/遠山慶子(P)&ヴィーン弦楽四重奏団/M:PとVのためのソナタ40番、P三重奏曲3番、P四重奏曲2番/\6000王子H、03-3567-9990
 ★10/29(土)14:00/東京文化(小)/日本モーツァルト協会/M:すみれ、夕べの想い、「フィガロの結婚」より/大島洋子S、大島幾雄Br、梅田朋子P/\4500学\2000日本モーツァルト協会03-5467-0626
 ★11/3(木)16:00/浜離宮朝日H/M:交響曲40番、41番、P協奏曲26番/岩城宏之指揮、オーケストラアンサンブル金沢、児玉桃P/\6000学3000浜離宮朝日H03-3267-9990
 ★11/3(木)16:30/三鷹市芸術文化C/M:「コシ・ファン・トウッテ」序曲、オペラ・アリア、シューベルト:交響曲9番/沼沢竜典指揮、トーキョー・モーツァルトプレーヤーズ/\3500学1800三鷹市芸術文化C0422-47-5122
 ★11/5(土)15:00、よこすか芸術劇場046-823-9999、11/6(日)14:00、横浜みなとみらいH045-453-5080/中村紘子Pリサイタル/M:PソナタK331、K310、K576、リスト:スペイン狂詩曲他/\5000~3000(H)

CD情報(外盤価格は新宿タワー又は渋谷HMV:違いはわずか) ★こちらからどうぞ


  

 
  Topページに戻る

第241回 モーツァルティアン・フェライン例会 2005年9月11日

  
 事務局レター【第116号】/2005年9月

 【編集者】倉島収/塙雅夫/古田 佳子 bxp00423*yahoo.co.jp(スパムメールが増えてきましたのでリンクを外しました。お手数ですが*を@に替えて送信願います) 

●9月例会(第241回)のお知らせ 

「モーツァルトのカノン」     お話・・・片野 耕喜氏(山梨大学助教授)

 日時:2005年9月11日(日)午後2時

 会場:原宿カーサ・モーツァルト(原宿医院)3Fホール(JR「原宿」下車・徒歩5分/地下鉄「明治神宮前」下車・徒歩3分)

 例会費:¥2500(会員・一般共)

例会会場;原宿【カーサ・モーツァルト案内図】


 

猛暑も過ぎ涼やかな夜が続いています。皆様どのような夏をお過ごしでしたか。今月は昨年好評だった片野先生をお迎えしました。先生からのメッセージをご紹介致します。


  ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


楽聖モーツァルトの触れてはいけない部分といったら大袈裟かもしれませんが、できれば見たくないという人も多いのではないでしょうか・・・「カノン」。その多くが(残っていて本当に良かったと思うけども)くだらない歌詞や、卑猥な、そして下品な言葉に満ちている!

しかし堅物のまじめ人間でもドリフターズにはまるように、カノンのばかばかしいまでの魅力は大きいものがあります。

カノンというジャンルは彼の音楽遺産からみれば少数で、取るに足らないものかもしれませんが、じつは作曲技法的にはとても職人芸を要する難しいジャンルに属します。ピアノ曲をさらっと書けてしまうような作曲家でも、ちょっとおもしろいカノンを一曲お願いできませんか?---と頼んでも渋い顔をするでしょう。もしかしたら怒られるかもしれない・・・。また、純粋に器楽的なカノンを作ることはひょっとするとできるかもしれないが、歌詞が付いているとどうか?テキストというのは大きな力を持つ反面、その扱いには神経を使うものなのです。

というわけで「カノン」。ちなみにイントネーションは語頭の「カ」にアクセント置いてくださいね。語尾に置くとドイツ語で機関砲Kanoneと間違われます。でも曲によっては矢継ぎ早にしゃべるから、これもあながち下手なジョークではないかもしれません。

 今回はふだんまじめなものしか歌わない私が、コミカルな役に挑戦するという記念すべき(?)機会でもあります。冗談はさておき、ぜひ皆さんにも笑いながら参加していただきたい。カノンなんて、ソファーにどっかり腰掛けてオーディオから聴くものではありませんよ!仲間を見つけて、おなかを抱えながら歌って欲しいものです。ドリンク剤や「コQ10」にすがる前にぜひ、モーツァルトが贈ってくれた「笑い」で、神経ペプチドを分泌させて、健康な毎日 を送りましょう!


  ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


カノンというのは、フェラインの長い歴史でも初登場のような気がしますが、大変楽しみなプログラムです。大勢のお越しをお待ちしております。例会後は先生を囲んだ懇親会へのご参加もどうぞ。(F) 

 懇親会場:ステージY2(渋谷区神宮前1-13-12 TEL:3478-1031)

 

●今後の例会のご案内

 10月16日 栗田 久暉氏(本会会員)
 11月13日 若松 茂生氏(本会会長)
 12月11日 牧野 政史氏(横浜モーツァルトアカデミー主宰)
06年1月15日 第5回会員参加型例会(生誕250周年記念例会)

 

●7月例会の報告(第240回/2005年7月10日)

モーツアルトとヨーゼフ・ハイドン~弦楽四重奏曲を中心に~    お話…安田和信氏(杏林大学講師)
 

 安田和信先生からは、昨年と一昨年を通じて、クラリネットを中心にモーツァルトと管楽器についての話題を取り上げていただいた。今年は少し趣向を変えて、「モーツァルトとヨーゼフ・ハイドン」という演題でお話していただくことになった。

ウイーン四重奏曲(K.168~K.173)は、オットー・ヤーン(1856)以来、モーツアルト研究ではヨーゼフ・ハイドンの四重奏曲の影響で書かれたとされてきた。しかし、最近では、ハイドンとの直接的関連は跡づけられず、多くの作曲家がいたウイーンでの四重奏曲の様式全般に従ったものと考えられるようになってきた。モーツアルトに対するハイドンの影響に関するこれまでの研究者の見解について整理した表がある。例えばモーツアルトのK.168の第二楽章の主題は、ハイドンの作品20の5番フィナーレのフーガ主題と調性まで一致していることがアーベルト・アインシュタイン他の学者によって指摘されている。また、第三曲目のK.170の第一楽章は変奏曲であるが、ハイドンの作品17の第三番の第一楽章は変奏曲で始まっていて類似性があるとされている。しかし、この程度のいわば「作曲のレシピ」を真似る程度で影響があると主張できるのであろうか。例会ではこのように類似性を指摘された部分をCDにより聴かせていただいたが、聴感上では類似性を判別出来るようには思えなかった。

ウイーン四重奏曲は、ハイドンの四重奏曲の影響で書かれたとされてきているが、指摘された部分を追跡するとかなり主観的なものがあり、影響の有無を客観的に明確にすることは非常に難しいと考えられる。

モーツアルトとヨーゼフ・ハイドンの両者の関係は、とくにモーツァルトがウィーンへ移住してからはたいへん親密になっている。優れた音楽家がひしめいていたウィーンにおいて、モーツァルトはハイドンの音楽に関心を抱き続けていた。それを象徴する出来事が、モーツァルトの《ハイドン四重奏曲》の創作と出版である。初版譜に付けられハイドンへの献呈の辞では、《ハイドン四重奏曲》の6曲がハイドンからの刺激を受けて書かれたことが明記されている。

そのためか、この作品集は、モーツァルトがハイドンから受けた影響という観点から眺められることが多いのではなかろうか。しかし、近年では、モーツァルトは単に受動的なかたちで影響を受けただけではなく、尊敬する先輩作曲家への秘かな対抗心をもって、《ハイドン四重奏曲》の創作に励んだのではないかという観点からの分析を行う研究者がいる。

その理由の一つは、献呈文での呼びかけが「師」でなく「友」であり、大先輩に対しては大胆にすぎるとされる。実際、ハイドンへ献呈された四重奏は数多いが、「友」という呼びかけはないようである。また、ハイドン四重奏曲がハイドンのOp.33を模範にしたという類似性の印とされて来た内容について考えてみよう。

ウイーン四重奏曲と同様に、主題、テクスチユア、形式などの類似性は、ハイドンを模範とした印と見なす見方が存在するが、影響を受けたと断定するには曖昧である。

 形式の類似性に着目し、もっと深く具体的に調べた一例として、ハイドンのOp.35の5曲目の第四楽章とモーツアルトのK.421の第四楽章を比較した例がある。ここでは、これら二つの楽章は、調性は異なるものの同じシチリアーノであり、主題の長さが異なるものの第一変奏が第一ヴァイオリン主体、第三変奏がヴィオラ主体であり、最後の変奏が早いテンポの変奏となっており、形式の類似性は認められる。両楽章を聞き比べた感じでは、レシピを一部借り受けたものの、音楽は別物という印象であった。さらにハイドンのOp.20の5の第四楽章とK.387の第四楽章のフーガ風フィナーレにおける全音符主体の主題とより早い動きを持つ断片的な対主題の関係などの類似性の指摘などもある。

 以上のようにハイドンの作品を模範としたモーツアルトの作品が指摘される一方で、モーツアルトが単なる模範を超越して、模範に創造的変容を加えようとした例も指摘されるようになった。その良い例がハイドンのOp.33の3の第一楽章とK.465「不協和音」の第一楽章の冒頭部分との関係である。Op.33の3の第一楽章の冒頭はアレグロ・モデラートであるが、最初は調性不明の不安定な出だしであり、ハ長調の調性の登場を遅らせるハイドンとしては大胆な和声的な新しい試みを行っているが、モーツアルトは冒頭部分を不安定なアダージョの序奏とし、ハイドンから和声的な枠組みを受け取ってから、これを更に効果的に展開して「不協和音」と言われるほど不安定な序奏に仕上げて、続くアレグロや曲全体の構成に望ましい効果を与えている。この序奏部のモーツアルトの意欲的な取り組みには驚かされるが、その裏にハイドンの試みがありそれにヒントを得てもっと高めようとし、自らの優位性を誇示しようとした一つの例と考えることが出来よう。

また、ハイドンのOp.20の2の第四楽章は、4つの素材を使ったフーガ風フィナーレであるが、モーツアルトはK.464の第四楽章において、ハイドンのこの手法を応用し、4つの素材を使った対位法的書法を戦略的に使用してソナタ形式の楽章にまで構成する意欲を見せているとの指摘がある。この例においても、4つの素材を対位法的に組み合わせるという手法的には似た形式を使用しながら、完成されたものには大きな違いがあり、聴感上もモーツアルトの方が遙かに複雑で入念に作られていた。このような例もハイドンの模範からの創造的変容の例に喩えられよう。

 以上、モーツアルトが受けたハイドンの影響を考察しつつ、ハイドン四重奏曲においてはハイドンを超えようとした対抗心について例示的に、スコアを見るばかりでなくCDを聴いて確かめながら、お話ししていただいた。時間の関係もあって、当初に意図した「ハイドン四重奏曲以降のハイドンの四重奏曲」および「1788年の交響曲連作は、ハイドンへの対抗心もあったのだろうか」という興味溢れるテーマは、残念ながら次回へと持ち越されることになった。(O.K)


 

●情報コーナー

 コンサート情報

★9/17(土)16:00/湘南台文化C/M:アンダンテ(ハ長調)、アレグロ(ハ長調)、メヌエット(ヘ長調)、ソナタK331他/小林道夫(fp、p、お話)/\2500藤沢市芸術文化振興財団0466-23-2415
 ★9/17(土)14:00、磯子/杉田劇場、\4000杉田劇場045-771-1212、9/21(水)19:00、紀尾井H、\6000~5000ムジカ03-3225-3636/プラハ・モーツァルティッシモ・アンサンブル/「フィガロの結婚」「ドン・ジョヴァンニ」「後宮よりの誘拐」「魔笛」より/M・ベチニョヴァー、M・ファイトヴァー、A・ヘンドリフ、ノヴァーク・トリオ
★9/22(木)19:00/めぐろパーシモンH(大)/M:FlとHpのための協奏曲、/広上淳一指揮、新日本フィル、白木あいS、高野二郎T、上野由恵fl、篠崎和子hp/\3500~1500車椅子\3500めぐろパーシモンH03-5701-2904
 ★9/20(火)19:00/東京オペラシティコンサートH/M:交響曲35番、41番、モテット「踊れ、喜べ」/岩城宏之指揮、オーケストラ・アンサンブル金沢、森麻季S/\5000~2000東京オペラシティ03-5353-9999
 ★10/2(日)15:00/保谷こもれびH/M:交響曲26番、38番、P協奏曲21番/諸岡範澄指揮、オーケストラ・シンポシオン小倉喜久子pf/\3000保谷こもれびH0424-21-1919
 ★10/7(金)19:00/紀尾井H/寺田悦子Pリサイタル/M:Pソナタ10番~13番/\5500~3500ジャパン・アーツぴあ03-5237-7711
 ★10/11(火)19:00/武蔵野文化会館/M:ディヴェルティメントK137、L・モーツァルト:アルペンホルン協奏曲、シューベルト:「ます」他/ザルツブルグ・モーツァルト・アンサンブル/\3500武蔵野文化会館0422-54-2011
 ★10/16(日)14:00/横浜みなとみらいH/M:V協奏曲4番、5番、交響曲40番他/C・ショルツ、ベルリン室内管弦楽団/\5500神奈川芸術協会045-453-5080(H)

オペラ情報

★バーデン市立劇場「魔笛」9/19(月)17:00、市川市文化会館\8000~6000(047-379-5111)、9/22(木)18:30、武蔵野市民文化会館\10000~7000(0422-54-2011)、9/23(金)17:00、ミューザ川崎シンフォニーH\11000~1000(044-520-0200)、9/24(土)17:00、厚木文化会館\7500~5000(046-224-9999)、10/10(月)17:00、君津市民文化会館\7000~3000(0439-55-3300)
★モネ劇場「ドン・ジョヴァンニ」10/4(火)、6(木)18:30、8(土)15:00、オーチャードH(03-3477-9999)(H)

CD情報

★今月より 別ページにてご案内します。数か月分をまとめて見ることが出来るので、CD選びの参考にしてください。(Y)

 

●第5回会員参加型例会出演者募集中!

 来年1月は恒例となりました全員参加型の例会です。モーツァルトに関するお話・CD/映像鑑賞・演奏等どんな内容でも結構です。

まだ若干定員に余裕がありますので、締め切りを延長しました。できるだけ今まで出なかった方の出演を期待します。(F)


・日 時…2006年1月15日(日)
・募集内容…【1】お話:日頃の思いを熱く語る 【2】CD&映像(DVD、VTR 、LD):お気に入りやおすすめをかける 【3】演奏:楽器や歌(ソロでもアンサンブルでも)
・持ち時間…1人20分以内、10分でも15分でもOK。(応募時におおよその出演時間を自己申告して下さい)
・条 件…モーツァルトに限る
 ・締 切…2005年9月末日

 【1】【2】【3】の参加部門とその内容をメールにて、下記世話人までご連絡ください。

   川口ひろ子:fortuna-h@kuf.biglobe.ne.jp

第240回 モーツァルティアン・フェライン例会 2005年7月10日

  
 事務局レター【第115号】/2005年7月

 【編集者】栗田久暉/塙雅夫/山本廣資/古田 佳子 bxp00423*yahoo.co.jp(スパムメールが増えてきましたのでリンクを外しました。お手数ですが*を@に替えて送信願います) 

●7月例会(第240回)のお知らせ 

「モーツァルトとヨーゼフ・ハイドン」 お話・・・安田 和信氏(杏林大学講師)

 日時:2005年7月10日(日)午後2時

 会場:原宿カーサ・モーツァルト(原宿医院)3Fホール(JR「原宿」下車・徒歩5分/地下鉄「明治神宮前」下車・徒歩3分)

 例会費:¥2500(会員・一般共)

例会会場;原宿【カーサ・モーツァルト案内図】


 

ここ数年、安田先生には管楽器を中心としたお話をして頂いていましたが、今年は違うテーマを取り上げてくださるそうです。先生からのメッセージをご紹介致します。


  ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


私は昨年と一昨年を通じて、クラリネットを中心にモーツァルトと管楽器についての話題を取り上げて参りました。今年は、すこし趣向を変えまして「モーツァルトとヨーゼフ・ハイドン」というタイトルでお話させていただきたいと考えております。

 両者の関係は、とくにモーツァルトがウィーンへ移住してからはたいへん親密になりました。優れた音楽家がひしめいていたウィーンにおいて、モーツァルトはハイドンの音楽に関心を抱き続けていたようです。

それを象徴する出来事が、モーツァルトの《ハイドン四重奏曲》の創作と出版でしょう。初版譜に付けられハイドンへの献呈の辞では、《ハイドン四重奏曲》の6曲がハイドンからの刺激を受けて書かれたことが明記されています(出版に先立っての試演で、ハイドンがモーツァルトを激賞したことも、よく知られたエピソードです)。

そのためか、この作品集は、モーツァルトがハイドンから受けた影響という観点から眺められることが多いのではないでしょうか。しかし、近年では、モーツァルトは単に受動的なかたちで影響を受けただけではなく、尊敬する先輩作曲家への秘かな対抗心をもって、《ハイドン四重奏曲》の創作に励んだのではないかという観点からの分析を行う研究者がいます。

 今回の話では、両者の関係についての基本的な話題だけではなく、新しい見方も積極的にご紹介できればと思っております。現時点で予定している内容を列挙すれば、下記のようになります。

● 両者の最初の接点はいつだったのか?
● ハイドン作品に関するモーツァルトの知識
● 1773年夏、ウィーンのモーツァルトは何を見、聴いたのか?
● 《ハイドン四重奏曲》におけるハイドンからの影響、またはハイドンへの対抗心 
● 《ハイドン四重奏曲》以降のハイドンの四重奏曲
● 1788年の交響曲連作は、ハイドンへの対抗心もあったのだろうか

 モーツァルト愛好家の皆様の前でお話をさせていただく機会は、私にとってプレッシャーではありますが、同時に貴重な体験でもあります。私の拙い話が、少しでもモーツァルトの音楽を楽しむためにお役に立てればと願っております。


  ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


年の差にもかかわらず、互いに尊敬し合っていたといわれるモーツァルトとハイドンですが、対抗心、いわゆるライバルとしてどう見ていたかという興味深いテーマがあって、とても楽しみですね。例会後は先生を囲んだ懇親会へのご参加もお待ちしております。(F)

 懇親会場:ステージY2(渋谷区神宮前1-13-12 TEL:3478-1031)

 

●今後の例会のご案内

 8月   ―――― 夏休み ――――
9月11日  片野 耕喜氏(山梨大助教授)
 10月16日 栗田 久暉氏(本会会員)
 11月13日 若松 茂生氏(本会会長)
 12月11日 牧野 政史氏(横浜モーツァルトアカデミー主宰)
06年1月15日 第5回会員参加型例会(生誕250周年記念例会)

 

●6月例会の報告(第239回/2005年6月12日)

 私の04~05年のベストアルバム〔その4〕 お話…倉島収氏(本会副会長)
 

 

 倉島副会長の大変貴重なコレクションのご披露は今回が4回目。同氏のご自慢は先ず第一からビックリするようなものばかりでした。

 1.最近の素晴らしい映像・珍しい曲目。アルゲリッチとリコ・パウル・グルダによる三台のピアノ協奏曲ヘ長調K242、クリスチアン・アルミンク指揮、新日本フィルハーモニー。
 2.懐かしい人の最上のヴィデオ。クリスティーネ・シェーファーのモテット「踊れ、喜べ…」K165と「エト・インカルナス・エスト」K427(K6-417a)より、ハイティンク指揮ベルリンフィル、1999年ヨーロッパ・コンサート、クラクフ。
 3.珍しい編曲演奏のヴィデオ。「魔笛」のフルート四重奏編曲版、--シュルツのフルートとウィーン・フィルハーモニア三重奏団による演奏会、04年6月4日トッパンホール。  
………休憩をはさんで。………
4.テアトロ・オリンピコ劇場(ヴィチェンツィア)の珍しいライブ映像、チェチーリア・バルトリのヘンデルの歌曲1曲、モーツァルトのリートK307とフィガロの結婚のアリア2曲K579(追加曲)及びK492より。
 5.ポートレート「ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト」、――BBC放送による大作曲家シリーズ(1時間番組)。

スペースの関係上すべてを細かくご説明することはできませんが、これだけの盛り沢山の内容に同氏のモーツァルト名曲に対する熱情こもった心意気には、出席者一同ご満悦という以上に、只々敬服の至り何も言うことなし…の心境でした。これら五本のセットを選出されるのにかなりご苦労されたのでは?とても当方には真似が出来ません。

この内の1.のアルゲリッチとグルダ兄弟の三台のピアノ協奏曲K242については、当筆者も05年2月20日NHKの3chにて鑑賞した記憶あり、三台のピアノ共に呼吸の合った見事な演奏振りと感心していたことを思い出しました。

 2.のクリスティーネ・シェーファーのクラコフのセント・マリア教会内における、モーツァルトのモテットK165とハ短調ミサK427(K6-417a)の歌唱もすべてを忘れてウットリと聴き入っておりましたが、K165の第二楽章のテンポがいくらか速めのように感じられました。しかし、やはり教会音楽はこのように聖堂内で聴くのがベストですね。

 3.のヴォルフガング・シュルツ氏のフルートによる魔笛の編曲版、ソプラノに変ったフルートは、正にモーツァルトの名曲を人々にじっくり楽しませる壺を心得た演奏そのもの。フルートの澄み切った明るい響きには何ともいえない味わいがありました。

 4.のテアトロ・オリンピコ劇場でのチェチーリア・バルトリの感性豊かな歌いっぷりには完全に心を奪われて聴き入ってしまう有様。特にK492のフィガロの結婚の中の有名なアリア"恋とはどんなものかしら"では彼女がすっかりオペラの主人公、ケルビーノ自身になりきっていたのでしょう。

 5.のモーツァルトのポートレートは正に映像による"モーツァルトの生涯"そのもの。当時の歴史的足取りをも含めて色々と学ぶことが出来たのは最大の収益。彼のポートレート以外に現地の様子や、演奏会風景等を織り交ぜてバラエティに富んでおり、一時間内に見事に収めたダイジェスト版として当筆者もどこかの店で何としてでも入手したいもの。

 6.最後に聴かせて頂いたジョルダーニのカーロミオベンは、筆者も持っておりますが(歌手名不明)、人々の心の中に何かを強く訴えるような感情のこもった歌いっぷりは何時聴いても飽きません。(H.K)

 

 

 


 

●情報コーナー

 コンサート情報

★7/12(火)19:00/武蔵野文化(小)/M:ファゴット協奏曲、交響曲29番、ハイドン:交響曲64番他/モルテン・シュルト=イェンセン指揮、ライプチッヒ室内管弦楽団/\5000武蔵野文化0422-54-2011
 ★7/20(水)19:00/東京文化(小)/M:音楽の冗談、ディヴェルティメント「ロビニヒ」、西沢健一:音楽の常談/\4000ハラヤミュージックエンタープライズ03-3587-0218
 ★7/21(木)、22(金)、23(土)18:30/水戸芸術館/M:ホルン協奏曲2曲(21、23日―1番2番、22日―1番4番)、交響曲38番「プラハ」他/小沢征爾指揮、水戸室内管弦楽団、ラデク・バボラークhr/\13000~8000水戸芸術館029-231-8000
 ★7/23(土)18:00/サントリーH/M:「ドン・ジョヴァンニ」序曲、交響曲40番、シュトニケ:モーツァルト・ア・ラ・ハイドン他/井上道義指揮、読売日響/\8000~4000読売日響03-3562-1550
 ★7/30(土)19:00/東京オペラシティリサイタルH/M:ミサ曲K140、「踊れ、喜べ、幸いなる魂よ」他/倉岡信指揮、モーツァルト・ミサ・オルケスタ、高橋薫子S、沼田香奈A、角田和弘T、長谷川顕Bs、合唱コーア・アマデウス・モーツァルト/\4500音楽工房くら042-332-1434
 ★8/4(木)19:00/東京文化(小)/カメラータ・ジオン・モーツァルトシリーズ/M:交響曲1番、ヴァイオリン協奏曲3番、協奏交響曲K364/田部井剛指揮、浜野考史vn、伴野剛va/\4000カメラータ・ジオン0279-54-8703
 ★8/31(水)、9/1(木)19:00/サントリーH/N響Bチクルス/M:「ドン・ジョヴァンニ」「魔笛」「イドメネオ」より、交響曲41番/スタインバーグ指揮、リッバートT/\8150~3460、学・25歳以下1500N響ガイド03-3465-1780
 ★9/3(土)19:00/サントリーH/M:交響曲25番、レクイエム/沼尻竜典指揮、天羽明恵、永井和子、永田峰雄、小森輝彦、日本フィル協会合唱団/\7200~4200、25歳以下2700、65歳以上3500日本フィル03-5378-5911
 ★9/10(土)18:00、11日(日)15:00/NHK-H/N響Aチクルス/M:セレナータ・ノットゥルナ、ピアノ協奏曲23番、ベルリオーズ:幻想交響曲/スタインバーグ指揮、ヘルマンP/\8150~1500、学・25歳以下1500N響ガイド03-3465-1780(H)

CD情報(※外盤価格は新宿タワー価格)

 (工事中) 

 

●第5回会員参加型例会出演者募集!

 来年1月は恒例となりました全員参加型の例会です。モーツァルトに関するお話・CD/映像鑑賞・演奏等どんな内容でも結構です。できるだけ今まで出なかった方の出演を期待します。

 受付は先着順とし、希望者多数の場合は次回に繰り延べさせていただきますので、ご了承ください。(F)

・日 時…2006年1月15日(日)
・募集内容…【1】お話:日頃の思いを熱く語る 【2】CD&映像(DVD、VTR 、LD):お気に入りやおすすめをかける 【3】演奏:楽器や歌(ソロでもアンサンブルでも)
・持ち時間…1人20分以内、10分でも15分でもOK。(応募時におおよその出演時間を自己申告して下さい)
・条 件…モーツァルトに限る
 ・締 切…2005年8月末日
 【1】【2】【3】の参加部門とその内容をメールにて、下記世話人までご連絡ください。

 【郵送の時】
    石津 勝男 〒101-0052 千代田区神田小川町3-2

【Eメール・TELの時】
    川口ひろ子:fortuna-h@kuf.biglobe.ne.jp
        03-3485-4604

トップに戻る

第239回 モーツァルティアン・フェライン例会 2005年6月12日

  
 事務局レター【第114号】/2005年6月

 【編集者】石津勝男/塙雅夫/山本廣資/古田 佳子 bxp00423*yahoo.co.jp(スパムメールが増えてきましたのでリンクを外しました。お手数ですが*を@に替えて送信願います) 

●6月例会(第239回)のお知らせ 

「私の04~05年の映像ベストコレクション(その4)」 お話・・・倉島 収氏(本会副会長)

 日時:2005年6月12日(日)午後2時

 会場:原宿カーサ・モーツァルト(原宿医院)3Fホール(JR「原宿」下車・徒歩5分/地下鉄「明治神宮前」下車・徒歩3分)

 例会費:¥1500(会員・一般共)

例会会場;原宿【カーサ・モーツァルト案内図】


 

毎年この時期は『倉島コレクション』の中から年間ベスト映像のご紹介です。毎回期待を裏切らないプログラムで、待ち焦がれているファンも多いはず。倉島さんからは次のようなコメントを頂きました。


  ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


過去1年間におけるエアチェック映像の私のベストコレクションとして、次の5本のソフトを選定しましたので、お楽しみいただきたいと思います。今回はすべてDVDにしているので、これまでよりも、見やすく聴きやすくなっていると思います。時間が不足しないか、少し心配しています。

 始めに、最近の素晴らしい映像、珍しい曲目として、アルゲリッチとリコ/パウル・グルダによる三台のピアノ協奏曲イ長調K.242、を取り上げる。これは、05年2月20日NHK3CH、芸術劇場の放送であり、三人のピアニストによる豪華なピアノと、亡き父と恩師グルダを偲んだ素敵なカデンツアが珍しい。

 第二曲は、小生にとって懐かしい人クリステイーネ・シェーファーの最上のビデオで、 モテット「踊れ、喜べ」K.165と「エト・インカルナタス・エスト」K.417の2曲が含まれている。第三曲は、シュルツのフルートとウイーンフイルハーモニア三重奏団による演奏会から、珍しい 「魔笛」のフルート四重奏編曲版で7曲収録されていたので、取り上げた。シュルツのウイーン風のヴェテランのフルートの味を楽しんでいただきたいと思う。

 休憩後の第四曲は、昨年のイタリア旅行で訪問したテアトロ・オリンピコ劇場(ヴィチェンツイア)での珍しいライブ映像で、チェチーリア・バルトリが、モーツアルトのリートK.307とフィガロの結婚のアリア2曲K.579&K.492.11、を歌っている。これは市販のDVDから抜粋したもので、演奏も良いが現代でも通用する古い劇場の造りが見事である。

 最後は、ポートレート「ヴォルフガング・アマデウス・モーツアルト」というBBC放送による大作曲家シリーズ(1時間番組)の一つを見ていただく。美しい現地の映像や名曲をバックに、モーツアルトの生涯を著名なモーツアルト学者に語らせ、音楽の素晴らしさを現役の演奏家に語らせた新たな視点の見逃せない音楽番組であると思われる。


  ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


今年のプログラムも盛り沢山で本当に始まる前から時間が足りるかどうか心配です。どうぞお楽しみに。例会後は懇親会へのご参加もお待ちしております。(F)

 懇親会場:ステージY2(渋谷区神宮前1-13-12 TEL:3478-1031)

 

●今後の例会のご案内

 7月10日 安田 和信氏(杏林大学講師)

 8月      ――― 夏休み ―――

 ※以後、9月11日・10月16日・11月13日・12月11日の予定です。

 

●5月例会の報告(第238回/2005年5月22日)

 「モーツァルトにおけるフルートとオーボエの用法」  お話とピアノ…江端 伸昭氏(作曲家)/山田 恵美子氏(神奈川フィル・フルート)/小川 綾子氏(東フィル・オーボエ)
 

 今月は久しぶりに作曲家の江端伸昭先生の講演です。特に今回はフルートの山田恵美子さん(神奈川フィル)、オーボエの小川綾子さん(東フィル)のお二人の協力を得て、フルートとオーボエについて、モーツァルトがこれらの楽器をいかに愛し、知り尽くし、絶妙に上手く使っているかについて、実際に目の前で音を出しながら、お話が進行しました。

 


 始めにオペラの中から「魔笛」を例に取り、まず第2幕、パパゲーノのアリア「可愛い娘か女房が」。オーボエ2本、ホルン2本のアンサンブルのところで、終りにフルートがオクターブ上に加わることによって効果が上がること。またタミーノとパミーナの再開の二重唱でも、オーボエの伴奏に一部フルートが加わって強調されること。「フィガロの結婚」では、第4幕スザンナのアリア「さあ、早く来て、いとしい人よ」を歌いだす前にオーボエ、ファゴットの前奏が始まるが、フルートが加わることによって輝きが増すこと。またフィナーレで伯爵が夫人に許しを乞う場面では、コンテッサはフルートが補い、伯爵はオーボエが音を伸ばして下で支えているといった風に、これら木管楽器の普通には気がつかない素晴らしい効果などを説明して頂いた。

 後半はピアノ協奏曲について。モーツァルトがウイーンに定住したあと、K450あたりから木管が活躍してくる。第17番K453を江端先生がピアノと弦楽部をピアノで演奏し、オーボエ、フルートが加わった室内楽版の型で聴かせて頂く。

 


 第1楽章の出だし、行進曲風のモチーフに、直ちにフルート、オーボエが加わって、流れるような歌の世界に入っていく。第2楽章では、ピアノの間を2つの木管が絶妙に絡み合いながら進む。中間部で突然短調になるが、やがて木管に引き継がれ、柔らかに戻るところは印象的だ。そして第3楽章は、前半が変奏曲で後半はプレストのフィナーレという2つの部分からなっている。主題ではピアノ、フルートに対し、オーボエが音を伸ばして支えている様子が窺える。フィナーレはまったくオペラ・ブッフォの世界のようで楽しさ溢れたもの。

フルートの山田恵美子さん、オーボエの小川綾子さんのお2人の美しい音色と技術はさすがプロと思わせる。特に江端先生のピアノの熱演には大いに感動させられた。最後にアンコールとして、グラスハーモニカのためのアダージョK617を3人の協演で聴かせて頂いたが、その天国的で不思議なハーモニーに時の経つのも忘れる様子だった。(I)

 

 

 

 

 

●情報コーナー

 コンサート情報

★6/14(火)19:00/東京オペラシティ/バッハ:マニフィカ-ト、M/ハ短調ミサ曲/シュナイト・バッハ合唱団、管弦楽団、ハンス=マルティン・シュナイト指揮、平松英子S、寺谷千枝子A、畑儀文T、福島明也B、身崎真理子Og/\7000~1000 シュナイト・バッハ合唱団 03-3444-3291
 ★6/19(日)14:00/浜離宮朝日H/ベートーヴェン交4番、M:オペラアリア/モーツァルト室内管弦楽団、角岳文指揮、白木あいS、沢村翔子Ms、小林由樹B/\1000 間、高山 090-2546-80160
 ★6/24(金)19:00/津田H/吉田浩之テノール・リサイタル「モーツァルトの夕べ」/M:クローエに、すみれ、オペラ・アリア/\5000 ミュゼリス 03-8726-4782
 ★6/25(土)18:45/東京文化(小)/日本モーツァルト協会/M:K13、K478、K493、K498/横川晴児cl、メドーズvn、パスキエva、カンダvc/\4500学2000日本モーツァルト協会03-5467-0626
 ★7/1(金)19:00/東京文化(大)/都民劇場 03-3572-9999★7/3(日)19:00/サントリーH 03-3944-9999/M:P協奏曲25番、23番、2台のPのための協奏曲K365他/ブーニンP、ダグラスP、サーヴィッチ指揮、ドイツ室内管弦楽団/\16000~7000
 ★7/5(火)19:00/横浜みなとみらいH(小)/M:交1番、オーボエ協奏曲K314、ディヴェルティメント17番/アンサンブルdeヨコハマ/\5500 アーデル045-854-7625
 ★7/9(土)17:00/東京芸大奏楽堂/M:13管のためのセレナード変ロ長調/\1800 芸大芸術センター
★7/9(土)19:00/トッパンH/M:オーボエ四重奏曲K370、Pと管のための五重奏曲K452、ベートーヴェン:七重奏曲op20/川崎洋介vn、柳瀬省太va、古川展生vc、吉田秀cb、宮本文昭ob、四戸世紀cl、吉田将fg、阿部磨hr、西条貴人hr、ティル・フェルナーp/\6000学\3000 トッパンH 03-5840-2222(H)

オペラ情報

★国立モスクワ室内歌劇場「ドン・ジョヴァンニ」6/18(土)17:00/パルテノン多摩 042-376-8181、7/7(木)18:30 新国立(中)03-5237-7711
 ★国立モスクワ室内歌劇場「魔笛」7/9(土)18:30、7/10(日)14:00、新国立(中)03-5237-7711
 ★東京国際芸術家協会「フィガロの結婚」6/18(土)17:30、6/19(日)15:30、サンパール荒川、東京国際芸術家協会 03-3822-7414
 ★江東オペラ「ドン・ジョバンニ」6/26(日)14:00、江東文化センター 03-3644-8111(H)

CD情報(※外盤価格は新宿タワー価格)

★M:ピアノソナタK.310、マーチK.408、クーラントK.399、ロンドK.511、ピアノソナタK.533/494/(P)グード! Nonesuch 7559 79831 2 \1838
 ★M:ヴァイオリン・ソナタK.380、ラヴェル:ヴァイオリンソナタ、アクロン:ドラマティックなワルツ、ショスタコーヴィッチ:3つの幻想的なワルツ、バルトークヴァイオリン協奏曲第2番/(Vn)ピエール・ドゥーカン、(P)テレーズ・コシュ Ret P11119 \1290
 ★M:歌劇「後宮からの逃走」/ミネッティ、オルセン他、J・E・ガーディナー:英バロック・ソロイスツ Arch. 00489 477 5593 \1990(2枚組)(Y)

 

●例会前の「オードブル演奏」をご存知ですか?

 会員の岩島富士江さんのオードブル演奏については去年の3月のレターでご案内していますが、先頃、岩島さんご自身よりメッセージを頂きましたのでご紹介します。

 【2004年2月、MOZART4才の作品K1から始まった、講座10分前のオードヴル演奏も、6月で10回目に入ります。MOZARTK1からのピアノの歴史が、カーサモーツァルトに到着したモーツァルティアンのお喋りの横から、ひとりでに、お耳に入って行くことと思います。MOZART8歳の『ロンドンの楽符帳 K15』43曲は、今年いっぱい続きます。】

 

●あとがき

先月のこの欄で取り上げた「ウィーン・ソナチネ」について、会員の端直明さんからご指摘と共に丁寧な解説を頂戴しました。訂正を兼ねてご紹介させて頂きます。(F)

 【先日のレターのあとがきにウィーン・ソナチネについて書かれていました。やや正確さを欠く点に気がつきましたので、補足いたします。

この曲はシプリアン・カツァリスの弾いたCDを持っています(ベルギーのパヴァーヌレーベルで1990年発売)。録音は1974年で世界最初の録音との記載があります。そのライナーノートによると、最初はアルタリアから1805年に「ピアノ用ソナタ」として発行され、その後1931年ショット社から5つのディヴェルティメントの一連の編曲が発行され、その中に「ウィーンソナチナ、オリジナルピアノ版」というのもあったようです。

これに続いてユニヴァーサル社などからも発行されたとあります。編曲者は不明のようで、国内発行の全音版はハンス・カン校訂、市田儀一郎訳になっています。カンは校訂のみで編曲ではありません。 ウィーン・ソナチネの名称で色々な編成の楽譜が出版されており、Vn/Pf、2Vn、3Vn、Vn/Va/Vcなどがあります。

 原曲は25曲の小品が5つのディヴェルティメントとして編成され、知られていますが、ピアノ版は21曲が使用され、6曲にまとめられています。

ディヴェルティメントは色々な形で演奏され、Fl/Vn/Vc、Fl/Gでの録音を持っているほか、リコーダー/ピアノまたはチェンバロのためのソナチネ、第3番をピアティゴルスキーがチェロ用に編曲した楽譜(ソナチナの名称です)を持っています。このチェロ版を聞いて見たいのですが、録音は見当たりません。ただ先日、季刊編集長の山本さんに見せてもらった本に、昭和11年にピアティゴルスキーが来日した際、けしからんことに予定されていたバッハの無伴奏組曲をやめて、モーツァルトのソナチナに変えたとの記事がありました。この曲のことでしょうか。】

トップに戻る

2005.12
2005.10
2005.9
2005.11
2005.7
2005.6
bottom of page