第321回 モーツァルティアン・フェライン例会 2012年12月16日
事務局レター【第196号】/2012年12月
【編集者】澤田義博/富田昌孝/古田佳子 bxp00423*yahoo.co.jp (スパムメールが増えてきましたのでリンクを外しました。お手数ですが*を@に替えて送信願います)
●12月例会(第321回)のお知らせ
モーツァルトの管楽器用法 お話:礒山雅氏
日時:2012年12月16日(日)午後2時
←日曜日です!!
会場:お茶の水「龍名館」(地下鉄・千代田線「新御茶ノ水」B3出口下車徒歩1分)
例会費:¥2500(会員・一般共)
――――― 礒山先生からのメッセージ
オーケストラやオペラを聴いていて「ああモーツァルトだな」という感動を受けるところのひとつは、管楽器が絶妙の音色を奏で、奏で合うところではないでしょうか。モーツァルトの管楽器用法の発展をたどり、その秘密に迫りたいと思います。
例会後は恒例の懇親会がございます。大勢のご参加をお待ちしております。 会場:「デリ・フランス」お茶の水店/03(5283)3051
●今後の例会のご案内(会場記載のないものはお茶の水クリスチャンセンターです)
1月19日(土) 新年会
2月16日(土) 森垣桂一氏(作曲家、国立音大教授)
3月16日(土) 下山静香氏(ピアニスト) ※会場:タカギクラヴィア・松濤サロン
4月(日にち未定) 田辺秀樹氏(一橋大学名誉教授)
●お知らせ
・来年度から、フェラインの会員証を発行することになりました。
・若松編集長の体調の回復まで、まだ時間がかかりそうなので、「モーツァルティアン」3月号と6月号を一緒にして、「モーツァルティアン・フェライン30周年記念号」とする可能性があります。決定次第、正式にお知らせ致します。
●11月例会の報告(第320回/11月20日)
モーツァルティアン・フェライン創立30周年記念例会記録
第1部 フルートとピアノによるミニ・コンサート
①フルート演奏 木村 好伸氏 ピアノ 石黒裕丈氏 フルート協奏曲 第1番 ト長調
一昨年より、恒例となったフェライン会員の木村―石黒両氏によるミニ・コンサートから、記念例会は開始された。今回は、金、銀、木製三種類のフルートの音の聞き比べから始まった。
それぞれ意外に音色が異なり、興味深い体験をさせて頂いた。フルート協奏曲の演奏は木製のフルートで行われた(古楽器ではなく、現代楽器)。演奏はとてもアマチュアの演奏とは言えない素晴らしいもので、一体、現役のビジネスマンがいつ練習しているのだろうと疑問に感じるほどであった。ピアノのフォローぶりも抜群だった。
②ピアノ演奏 石黒 裕丈氏 ピアノ・ソナタK.333 変ロ長調
石黒会員はモーツァルトのピアノ・ソナタの最高傑作と言われるK. 332とK. 333の二曲中、変ロ長調ソナタK.333 を演奏された。石黒さんの演奏は音楽性豊かで、我々はその美しさに、しばし我を忘れて身動きもせずに聴いていた。時間の関係でアンコールをお願いできなかったのが、残念である。
第2部 フェライン創立30周年記念講演
若松名誉会長が体調を崩され、来日中止となったため、急遽、澤田会長が講演した。
①講演「フェラインの過去と未来」
1982年に若松名誉会長の「モーツァルティアン」創刊号を自費出版が当会の事実上の発足となる。記念すべき第1回の例会は翌1983年に飯田橋の「憂陀」で総勢28名の参加者で行われた等々フェラインの過去を簡単に振り返り、主な出来事を紹介した(イタリア・モーツァルト協会との交流の顛末も含め)。
これからの課題は、会員数の一層の増加、フェラインの国際化(フェラインのHPに英文版も掲載した)等であることが説明された。
②講演「ロヴェレート・ツアーの報告」
引き続き澤田会長が上記の報告を行った。イタリア・モーツァルト協会との交流再開の経緯。同協会との友好協定の締結(調印場所はロヴェレート市庁舎で、副市長他、同市の役員も列席)。
イタリアの全国紙である、「CORRIERE DELLA SERA」にロヴェレート・国際モーツァルト音楽祭が紹介され、久元祐子顧問の写真のみが掲載されたこと。久元先生のリサイタルが全世界にネット中継されたこと。
Tafelmusikでの出来事。澤田会長が音楽祭のシンポジウム(司会はアンガ―ミューラー氏)にスピーカーとして参加したこと。故上野会員の油絵が以前イタリア・モーツァルト協会の部屋に飾られていたこと。フェニーチェ劇場でのオペラ鑑賞等々が報告された。
なお、当日は時間の関係上、かなりカットされたので、「モーツァルティアン」12月号に全文が掲載されます。
3.岩島会員による、インテルメッツォ
最近発見された、モーツァルトのピアノ曲断片2曲を弾いて頂いた(2009、2012年発見)。このように、モーツァルトの新発見曲にすぐに触れられるというのも我々フェラインの特徴であり、誇りとするところである。
●情報コーナー
CD情報(外盤価格はHMVの一般価格) ★こちらからどうぞ(T)
●例会・懇親会 写真コーナー
懇親会は、お茶の水のいつもの場所。趣旨に賛同する有志一同で、講師の木村会員と石黒会員を中心にビールで乾杯後、楽しく懇親が行われた。例によって木村さんのコンチェルトに、石黒さんのピアノソナタの演奏が加わって、盛り沢山であった。その上に、会長のフェラインの記念公演の話があり、岩島会員のピアノソロがあって、とても盛会であった。懇親会においても、皆さん元気いっぱい、話題も豊富で、楽しい賑やかな懇談会となっていた。
なお、写真を削除して欲しい方がおられたら、直ぐに担当宛てメールして頂くか、電話でもよいので、いつでも連絡して欲しいと思います。削除するのは実に簡単なので、作業は直ぐ実施します。
なお、写真が欲しい方は、原版はHP担当の倉島が全て保管していますので、例会2列、懇親会4列の今回の場合は、例えば、上から7・右と言うように写真を特定して、下記にメールしていただければ、次回例会までにお届けするようにしたします。ただし、恐縮ですが、Lサイズで30円/枚のご負担をお願い致します。
容量不足のため、09年の3年前の写真から、順番に削除しています。
お問い合わせ:ホームページ担当;倉島 収: メールはここから
第320回 モーツァルティアン・フェライン例会 2012年11月10日
事務局レター【第195号】/2012年11月
【編集者】石津勝男/富田昌孝/古田佳子 bxp00423*yahoo.co.jp (スパムメールが増えてきましたのでリンクを外しました。お手数ですが*を@に替えて送信願います)
●11月例会(第320回)のお知らせ
ミニ・コンサートと講演
第1部:フルートとピアノによるミニ・コンサート(フルート/木村好伸氏、ピアノ/石黒裕丈氏)
第2部:澤田義博会長による講演
日時:2012年11月10日(土)午後2時
会場:お茶の水「クリスチャンセンター」(JR「お茶の水」下車・徒歩3分)
例会費:¥1500(会員・一般共)
――――― 木村好伸氏、澤田会長からのメッセージ
第1部:フルートとピアノによるミニ・コンサート
【1】 木村 好伸 フルート協奏曲第1番 ト長調 K313
一昨年より2回に亘りフルート協奏曲を演奏してきましたが、今回は残る第1番ト長調を演奏することになりました。この曲はオランダ商人のドゥ・ジャンの依頼で他の協奏曲や四重奏と共に作られたとされています。今回はN響やコンセルトヘボウの首席奏者も使用している木製のフルートを使用します。現代楽器ですが、少しは作曲当時の音色に近づけるかもしれません。お楽しみに。
【2】 石黒 裕丈 ピアノ・ソナタ第13番 変ロ長調 K333
ピアノソナタの中では、K331イ長調の次に人気のある曲です。木村さんの演奏するフルート協奏曲と同じ頃に作曲された、明るさと美しさが表れ、最もモーツァルトらしい曲の一つです。
第2部:フェライン30周年記念講演及びロヴェレートツアーのご報告(澤田会長)
若松名誉会長が、一時的に健康を害され、現在静養中ですので、私がピンチヒッターで、まず30周年記念講演を行います。フェラインの歴史については、以前若松名誉会長が講演と季刊「モーツァルティアン」で詳しくお話されていらっしゃいますので、歴史の部分はミニマムにして、フェラインの特徴、フェラインの将来等についてお話したいと考えております。
次の「ロヴェレ―ト・ツアーは全てを網羅的にお話するのではなく、私が特に印象的だと感じたことに絞ってお話します。それだけでもかなりの時間となります。写真、動画もお楽しみ頂くつもりです。
例会後は恒例の懇親会がございます。大勢のご参加をお待ちしております。 会場:「デリ・フランス」お茶の水店/03(5283)3051
●今月のインテルメッツォ(ピアノ演奏:岩島富士江)
※先月お知らせしましたが、都合で中止になりましたので、今月改めて演奏させていただきます。
【ピアノ音楽の歴史連続演奏 第40回】 同じ冒頭を持つ二つの新発見曲の比較演奏
①2012年3月発表新発見曲…無題 アレグロ モルト ハ長調 ザルツブルク、モーツァルト旧住居で発見 11歳作曲と推定。
②2009年7月発表新発見曲…「プレリュード」ト長調 姉ナンネルの楽譜帖に作者不詳と納められたものを モーツァルト7歳~8歳のものと推定。
●今後の例会のご案内(会場記載のないものはお茶の水クリスチャンセンターです)
12月16日(日) 礒山雅氏(← 注:日曜日です)
1月19日(土) 新年会
2月16日(土) 森垣桂一氏(作曲家、国立音大教授)
3月16日(土) 下山静香氏(ピアニスト)
4月(日にち未定) 田辺秀樹氏(一橋大学名誉教授)
●お知らせ
◇この7月にお話しいただいた慶応大学の西川尚生先生が、11月4日(日)21:00、教育テレビ「ららら、クラシック」にご出演されます。お時間の許す方はご覧になってください。
◇会員の上野坦氏が9月27日に逝去されました。謹んでご冥福をお祈りいたします。
●10月例会の報告(第319回/10月20日)
モーツァルトのヴァイオリン協奏曲 ~その成立事情をめぐって お話:石津勝男氏(本会副会長)
10月20日(土)、表記のタイトルで発表させて頂きましたのでその主旨を御報告致します。
モーツァルトは1773年3月、第3回イタリア旅行からザルツブルグに帰郷した。このあと1777年9月マンハイム・パリ旅行に出発するまでの間、4年半ほどザルツブルグに留っていた。その期間に作曲された曲の中で、ヴァイオリン協奏曲については1773年にK207を、1775年に第2番K211~第5番K219を集中的に作曲した。
Ⅰ.ヴァイオリン協奏曲の成立した背景
1)モーツァルトの地位と職務
モーツァルトは1769年10月(13歳)無給の宮廷楽師長、1772年8月有給の宮廷楽師長、1777年8月宮廷楽団を辞職、9月マンハイム・パリ旅行へ向い1779年1月帰郷し宮廷オルガニストに任命され1781年6月解雇されるまでこの職にあった。
宮廷音楽家としての職務はまず教会音楽、特に大聖堂の典礼での演奏と作曲、ベネディクト会大学に於いて舞台作品の作曲や演奏、夏の修了式の時期のフィナールムジークの作曲や演奏があった。そして宮廷音楽会や大司教の食卓での奏楽(ターフェルムジーク)、モーツァルトも自らソロを弾き大司教に披露した。またザルツブルグの親しい貴族や知人や自分の家族のために作曲もした。
2)セレナーデやディヴェルティメントにおけるコンチェルト楽章について
1769年夏、カッサシオンK63以来、同K99やセレナードK185、K203、K204などにコンチェルト楽章がありヴァイオリンが活躍する場面がある。またこれらの曲のメヌエットのトリオ部には明暗があって魅力的なところがある。ディヴェルティメントにもコンチェルタント楽章があり、ロードロン伯爵夫人のためのK247やK287、特に後者のアダージョにおけるVnソロは美しい。モーツァルトはこれらの曲のコンチェルト楽章でVn協奏曲を作曲するための訓練や練習をしていたと思われる。
3)モーツァルトと同時代の作曲家たちからの影響
3回に及ぶイタリア旅行中に聴いたと思われるイタリア後期バロック系のヴァイオリン協奏曲の作曲家としてタルティーニやナルディーニ、ヴィオッティなどがある。またマンハイム楽派のカンナビヒやK・シュターミッツらの作品、パリで活躍していたサン・ジョルジュやJ・ショーベルトらの作品も聴いたと思われる。またモーツァルトは生涯を通じてJ・C・バッハに対する尊敬の念を持ちつづけその作品は作曲上の模範となった。クラヴィーアソナタのほか彼のシンフォニアやヴァイオリン協奏曲もある。
モーツァルトが13歳の時フィレンツェで出会った天才少年トーマス・リンリ(1756~1778年)との友情のエピソードは良く知られている。彼は英国に帰国してから22歳で急逝するまで作曲をしていた。そのリンリが残したヴァイオリン協奏曲へ長調のアダージョを聴いてみる。当時モーツァルトはマンハイムからパリへの旅の途中で忙しく、相手の曲を耳にすることはなかったと思われるが、その美しい旋律を聴くと胸打たれるものがある。
Ⅱ.モーツァルトのヴァイオリン協奏曲について
モーツァルトは父レーオポルトからクラヴィーアと同様にあるいはそれ以上に、ヴァイオリンの教育を受けていた。5曲のヴァイオリン協奏曲は久々に帰郷したザルツブルグで作曲されたがその目的は知られていない。しかし宮廷楽団でヴァイオリンを手にして指揮をしたことだろう。その頃になってヴァイオリニストとしてのモーツァルトの評価が急に高まったのではないかとも言われる。
これらの作品を聴くと、作品年代がある一定時期に限定されているにもかかわらず形式、内容共に急速な変化をとげていることがわかる。はじめは古い協奏曲の伝統を踏襲しているが、次第に古典派協奏曲としての響きに発展していき、ついに完全にモーツァルト自身のものとなっているのである。
Ⅲ.1775年に集中して書かれて以後モーツァルトはなぜこの分野に力を入れなくなったのだろうか
「お前がどんなに上手にヴァイオリンが弾けるのか、自分ではわかっていない」(1777年10月18日レーオポルトの手紙)
心掛次第ではヨーロッパ随一のヴァイオリニストになれるのだと諭している。しかしモーツァルトはその言葉に従わなかった。自分はあくまでも作曲家としての道を歩みたいと考え、ヴァイオリニストという枠の中で限定されたくなかった。ウィーンに定着してからも彼は自分の主な楽器をクラヴィーアに限定している。そうした自分の将来の方向性を主張する一方、ヴァイオリニストである父レーオポルトへ暗黙の反抗ではなかったかと思えるのです。
以上参考用のCD演奏を含め私の話をご静聴頂きありがとうございました。(2012.10.27)
●情報コーナー
CD情報(外盤価格はHMVの一般価格) ★こちらからどうぞ(T)
●例会・懇親会 写真コーナー
懇親会は、お茶の水のいつもの場所。趣旨に賛同する有志一同で、講師の石津副会長中心にビールで乾杯後、楽しく懇親が行われた。フェラインのロベレート旅行も終わり、十月になって秋らしくなってきたこの日に、石津副会長のヴァイオリン協奏曲への長年の思いを込めた発表を聞いた後、皆さん元気いっぱい、話題も豊富で、楽しい賑やかな懇談会となっていた。
なお、写真を削除して欲しい方がおられたら、直ぐに担当宛てメールして頂くか、電話でもよいので、いつでも連絡して欲しいと思います。削除するのは実に簡単なので、作業は直ぐ実施します。
なお、写真が欲しい方は、原版はHP担当の倉島が全て保管していますので、例会2列、懇親会4列の今回の場合は、例えば、上から5・右と言うように写真を特定して、下記にメールしていただければ、次回例会までにお届けするようにしたします。ただし、恐縮ですが、Lサイズで30円/枚のご負担をお願い致します。
容量不足のため、09年の3年前の写真から、順番に削除しています。
お問い合わせ:ホームページ担当;倉島 収: メールはここから
第319回 モーツァルティアン・フェライン例会 2012年10月20日
事務局レター【第194号】/2012年10月
【編集者】川口ひろ子/富田昌孝/古田佳子 bxp00423*yahoo.co.jp (スパムメールが増えてきましたのでリンクを外しました。お手数ですが*を@に替えて送信願います)
●10月例会(第319回)のお知らせ
モーツァルトのヴァイオリン協奏曲 ~その成立事情をめぐって お話:石津勝男氏(本会副会長)
日時:2012年10月20日(土)午後2時
会場:お茶の水「クリスチャンセンター」(JR「お茶の水」下車・徒歩3分)
例会費:¥1500(会員・一般共)
――――― 石津副会長からのメッセージ
モーツァルトが1775年、19歳の時に作曲したヴァイオリン協奏曲第2番から第5番はいずれも各々魅力があって現在私達もよく聴く機会があり楽しんでいます。ところか第1番K207だけは近年の研究の結果では2年前の1773年4月に作曲されたとされている。
これらの曲の成立事情はいろいろ考えられると思います。モーツァルト幼少の頃からクラヴィーア、ヴァイオリンや作曲の手ほどきをしていた父レーオポルトから協奏曲作家としてデビューする準備として例えばJ・C・バッハのクラヴィーア・ソナタの編曲をすすめられていたことや宮廷音楽家という職務の中でオーケストラとのヴァイオリンの協奏もあったことなどもその一つです。
また1769年の初め、モーツァルトはザルツブルグ用に初めてセレナードのジャンルを手がけている。「カッサシオント長調」(K63)この曲の第5楽章アダージオはまさにヴァイオリン協奏曲楽章となっている。この場合でもモーツァルトはコンツェルトマイスターとして独奏パートをみずから弾いたのではないかと思われる。
また1772年頃からセレナード、ディヴェルティメントといったジャンルの音楽を数多く書いている。それらの曲の楽章の中にはヴァイオリンの独奏を伴うコンチェルト・スタイルをとっているものが多い。セレナードではK203、K204、K185皿にはK250〈ハフナー〉など、ディヴェルティメントではK287〈ロードロン〉などの楽章に見うけられる。
そしてモーツァルトの五つのヴァイオリン協奏曲の楽しさには、ザルツブルグの町をはじめとする南ドイツの音楽の反映と共に、かつての豊かな旅の思い出を聴きとることが出来る。ギャラントなフランス音楽やナルディーニ、タルティーニなどイタリアのヴァイオリン音楽の技法もところどころに感じられる。
こうしてヴァイオリン協奏曲を見てきて不思議に思うのは、これらが1775年という年に書かれて以後、モーツァルトはなぜこの分野に力を入れなくなってしまったのかということである。当時のモーツァルトの気持やおかれた状況などをふまえて検証してみたいと思います。
また1770年モーツァルト第1回イタリア旅行の折、フィレンツェで天才少年T・リンリと親しく交流したエピソードはよく知られている。そのリンリは英国へ帰国した後作曲家として大成したものの早逝してしまった。しかし数多くの作品の中には美しいヴァイオリン協奏曲が残されており、昨年初めてCDとなったので皆様と聴くことも楽しみにしております。
例会後は恒例の懇親会がございます。大勢のご参加をお待ちしております。 会場:「デリ・フランス」お茶の水店/03(5283)3051
●今月のインテルメッツォ(ピアノ演奏:岩島富士江)
【ピアノ音楽の歴史連続演奏 第40回】 同じ冒頭を持つ二つの新発見曲の比較演奏
①2012年3月発表新発見曲…無題 アレグロ モルト ハ長調 ザルツブルク、モーツアルト旧住居で発見 11才作曲と推定。
②2009年7月発表新発見曲…「プレリュード」ト長調 姉ナンネルの楽譜帖に作者不詳と納められたものを モーツアルト7才~8才のものと推定。
●今後の例会のご案内(会場記載のないものはお茶の水クリスチャンセンターです)
11月10日(土) ミニ・コンサートと講演
第1部「フルート(木村好伸氏)とピアノ(石黒裕丈氏)によるミニ・コンサート」 第2部「澤田会長による講演」
12月16日(日) 礒山雅氏(← 注:日曜日です)
1月19日(土) 新年会
2月16日(土) 森垣桂一氏(作曲家、国立音大教授)
3月16日(土) 下山静香氏(ピアニスト)
4月(日にち未定) 田辺秀樹氏(一橋大学名誉教授)
●お知らせ
若松名誉会長兼編集長は過日、目の手術をされ、経過は順調とのことですが、当面読書、メール等については医師から控えるようにとの指示を受けていますので、12月号の「季刊モーツァルティアン」は木村さんに編集をお願いしています。つきましては原稿は全て直接、木村さん宛にお送り下さるようお願い致します。送り先の詳細は理事までお問い合わせください。
●9月例会の報告(第318回/9月8日)
グラインドボーン音楽祭の「ドン・ジョヴァンニ」 お話:川口ひろ子氏(本会副会長)
9月8日(土)、表記のタイトルで発表させて戴きました。以下、その主旨を御報告いたします。
2010年夏、グラインドボーン音楽祭で新演出により上演されたオペラ「ドン・ジョヴァンニ」が、秋には映像となって発売されました。2011年にこの音楽祭に参加、素晴らしい舞台に感動した私は、このDVDの鑑賞を9月例会のテーマに致しました。
まずは簡単なプレトークです。はじめに、グラインドボーン音楽祭レポート。1934年「フィガロの結婚」の上演で始まったこの音楽祭は、現在、5月から8月までの4カ月の間、ロンドンの南に位置するグラインドボーンの地で開催されます。上演されるのは6つのオペラです。
程よい革新性と高い芸術性を持つこの音楽祭は、ヨーロッパ各地で開催される夏の音楽祭の中で、特に高い評価を受けています。また、オペラを愛し、広大なイングリッシュ・ガーデンで長い休憩時間をゆっくりと楽しむ聴衆の皆さんの姿は実に優雅で、ほんとうの豊かさを感じさせてくれます。それら諸々のことを、緑鮮やかな田園の映像と共に報告いたしました。
次に、「ドン・ジョヴァンニ」予告編。このディスクは日本語字幕がなく、時間の関係でアリア中心の抜粋上映になりますので、あらすじと勝手ながら私のお勧めポイントをお話しいたしました。
放蕩の限りを尽くす貴族ドン・ジョヴァンニの生涯と、彼に魅せられた人々の心模様を語ったオペラ「ドン・ジョヴァンニ」。時代設定を現代、場所を中部イタリアに移し、生きることに厭きたブルジョワ階級と彼等に反抗する民衆に読み替えた演出は、失ったものへの悲しみを歌い、再生への望みを暗示して幕となります。解りやすい読み替え、強い演出家に屈していない若手歌手たち、活気あふれる古楽演奏など、この舞台の素晴らしさを、映像を使いお伝えしました。
次にDVDを鑑賞。
「ドン・ジョヴァンニ K527」 グラインドボーン音楽祭2010
作曲 ウォルフガング・アマデウス・モーツァルト
演出 ジョナサン・ケント (1788ウイーン版による上演 )
指揮 ウラジミール・ユロウスキ
演奏 エイジ・オブ・エンライトメント
合唱 グラインドボーン合唱団
《出演》ドン・ジョヴァンニ/ジェラルド・フィンレイ
騎士長/ブリンドレイ・シェラット
ドンナ・アンナ/アンナ・サムイル
ドン・オッタヴィオ/ウイリアム・バーデン
ドンナ・エルヴィーラ/ケート・ロイヤル
レポレルロ/ルカ・ピサローニ
ツェルリーナ/アンナ・ヴィロブランスキイ
マゼット/グイド・ロコンソロ
最後に、1)古楽演奏 2)読み替え演出 3)お好みの歌手 の3点について皆様のご意見を伺いました。
古楽演奏は?という質問には、古楽には馴染めない、やはり造形のしっかりしたオーソドックスな演奏が良い、というご発言もありましたが、今回の活きの良い古楽演奏には多くの方が満足されたようでした。また、フラウト・トラベルソなど、古楽器についての専門的な解説もあり大変勉強になりました。
演出に関しては賛否両論で、時代の掘り下げ方が表面的で成功作とはいえない、身分制度やその他当時と社会的な背景が違うので現代に読み替えて真意を伝えるのは無理、「甘い生活」の世界に置き換えた発想が素晴らしい、ドンの地獄落ちがなく意外だ、等の御意見をいただきました。
歌手では、歌唱力、演技力、そしてビジュアル面でも主役を圧倒していたレポレロとの声が多く、プチ・レポレロ談義が展開しました。
春に御指名をいただいて以来懸念しておりました、壇上で頭の中が真っ白になり絶句という場面もなく、無事に発表を終了することが出来ました。皆様、ありがとうございました。(2012.9.29/川口記)
●情報コーナー
CD情報(外盤価格はHMVの一般価格) ★こちらからどうぞ(T)
●例会・懇親会 写真コーナー
懇親会は、お茶の水のいつもの場所。趣旨に賛同する有志一同で、講師の川口副会長中心にビールで乾杯後、楽しく懇親が行われた。九月なのに暑さにもめげず、パソコンを使った男性でも年寄りには難しいデスプレイを使った発表を聞いた後なのに、皆さん元気いっぱいで、。楽しい賑やかな懇談会となっていた。
なお、写真を削除して欲しい方がおられたら、直ぐに担当宛てメールして頂くか、電話でもよいので、いつでも連絡して欲しいと思います。削除するのは実に簡単なので、作業は直ぐ実施します。
なお、写真が欲しい方は、原版はHP担当の倉島が全て保管していますので、例会1列、懇親会6列の今回の場合は、例えば、上から5・右と言うように写真を特定して、下記にメールしていただければ、次回例会までにお届けするようにしたします。ただし、恐縮ですが、Lサイズで30円/枚のご負担をお願い致します。
容量不足のため、09年の3年前の写真から、順番に削除しています。
お問い合わせ:ホームページ担当;倉島 収: メールはここから
第318回 モーツァルティアン・フェライン例会 2012年9月8日
事務局レター【第193号】/2012年9月
【編集者】山崎博康/古田佳子 bxp00423*yahoo.co.jp (スパムメールが増えてきましたのでリンクを外しました。お手数ですが*を@に替えて送信願います)
●9月例会(第318回)のお知らせ
グラインドボーン音楽祭の「ドン・ジョヴァンニ」 お話:川口ひろ子氏(本会副会長)
日時:2012年9月8日(土)午後2時
会場:お茶の水「クリスチャンセンター」(JR「お茶の水」下車・徒歩3分)
例会費:¥1500(会員・一般共)
――――― 川口副会長からのメッセージ
2010年、グラインドボーン音楽祭で上演されたオペラ「ドン・ジョヴァンニ」が、DVDとなって昨年秋に発売されました。今回は、この映像を 鑑賞したいと思います。
モーツァルトの楽しみ方は人それぞれです。フェラインの皆様はLP派やCD派の方が多い様ですが、私はどちらかというとライヴ派です。「足腰の丈夫なうちにとにかく出かけておこう!」とばかり、昨年(2011年)夏、オペラツアーに参加して、グラインドボーン音楽祭の「ドン・ジョヴァンニ」を鑑賞しました。
私が観た「ドン・ジョヴァンニ」は、プルミエを収録したこのDVDの翌年の公演で、出演者はこれとは違う人たちでしたが「我がオペラ体験のベストワン!」とも言いたい素晴らしい舞台でした。歌唱と演技、装置と衣装、全てが最高の出来上がりで、明快なオーケストラ演奏と共に、見事なパフォーマンスを見せてくれました。
「颯爽と現れたまことに活きの良いモーツァルト君」出会えた私は、余震におびえて暮らした2か月半のことはすっかり忘れて、人生最高の喜びに酔いしれたのでした。
今回、DVD鑑賞の前に、以下のような短いプレトークを予定しています。
★「グラインドボーン音楽祭レポート」
この音楽祭は、イギリスが一番美しいといわれる5月から8月までの3カ月間、イギリス南部のグラインドボーンの地で開催されます。此処では、この時期、夜9時過ぎまで日が暮れません。オペラを愛し、花咲き乱れるイングリッシュガーデンで、長い1日を、悠々と楽しむ紳士、淑女たち。その様々をレポートします。
★「ドン・ジョヴァンニ予告編」
爽快な古楽演奏に乗って語られるドン・ジョヴァンニの生と死。彼に魅せられた6人の男女の愛と憎しみ。現代に読み替えられた解りやすい演出と、若手歌手たちの熱演は見応え充分。モーツァルティアンたるもの必見のDVDです。
では、ご一緒にオペラハウスへ!このディスクは通しで3時間近くになる長編ですので、アリア中心の抜粋上映になりますが、どうぞ最後までごゆっくりお楽しみください。
例会後は恒例の懇親会がございます。大勢のご参加をお待ちしております。 会場:「デリ・フランス」お茶の水店/03(5283)3051
●今後の例会のご案内(会場記載のないものはお茶の水クリスチャンセンターです)
10月20日(土) 石津副会長 「モーツァルトのヴァイオリン協奏曲~その成立事情をめぐって」
11月10日(土) 若松名誉会長
12月16日(日) 礒山雅氏(← 注:日曜日です)
以下、1月:新年会、2月:森垣桂一氏(国立音大教授)、3月:下山静香レクチャーコンサート、4月:田辺秀樹氏の予定です。
●お知らせ
◇この度、久方ぶりに9月13日~20日の予定で、会長以下フェライン会員有志の方16名が、ロヴェレートのイタリアモーツァルト協会を訪問予定です。
◇モーツァルティアン・フェライン新年会出演者募集
◎日時 2013年1月19日(土)
◎募集内容 お話・・・15分程度、演奏・・・5分~10分
◎条件 モーツァルトに限る(新人の方大歓迎!例会出席率良好の方優先です)
◎お問合せ 川口 fortuna-h*kuf.biglobe.ne.jp( スパムメール対策です。*を@にかえてください)
●第5回会員総会議事録
1.澤田会長より昨年度から今月までの活動報告、および来年及び再来年の予定について説明。
2.川口副会長より会計報告
川口副会長より補足説明:例会収入の増加については、下山女史のレクチャー・コンサートが特に多くの出席者を集めたことが主要因である。
澤田会長より補足説明:年会費が1人分減っている、つまり、会員数が一人純減したということである。勿論新入会員は年に10名前後はいらっしゃるが、病気、ご逝去などの理由で、退会される方も多く、引き続き会員増強の努力を行ってまいりたい。
・青柳監事より決算内容は適切かつ適法である旨、報告あり。
3.監事の退任と就任について
長期間に亘り、ご苦労頂き、当会の経理、会計システムの向上に多大なる貢献をなされた青柳監事が退任され、新監事として小川恒夫氏が就任することが承認された。
4.その他 ・会則19条の変更について
従来年会費未納会員の未納期間を2年までは認めてきたが、今後は年度内に支払わない会員は退会とみなす旨、変更することにつき、承認された。
・最近、退会した某会員の退会経緯につき、質問があったが、プライバシ―に関わることなので、回答は差し控えた。但し、書面で退会届が出ている事については、明確に伝えた。
・会員より、フェラインのバッジの作成が要望された。澤田会長より次のように回答。ロゴも既に出来上がっており、会員証の発行と共に既にフェラインの宿題の一つになっており、まだいつからとは言えないが、近い将来に実現させる考えである。 以上
●7月例会の報告(第317回/7月21日)
《ハフナー交響曲》をめぐる諸問題 お話:西川尚生氏(慶応大学教授)
7月は作曲家◎人と作品シリーズ「モーツァルト」(音楽の友社)の著者でもある西川尚生先生にハフナー交響曲にまつわる謎についてお話をうかがった。さまざまな謎が潜む森に深く分け入り、解明を試みて行く探検である。先生が冒頭で「学会発表のような堅苦しい」報告と切り出した通り、モーツァルト研究の最前線に立つ先生ならではの成果をふんだんに盛り込んだ内容で、精緻な論旨展開に圧倒された。
相当の予備知識がないと謎解明の手がかりさえ見失ってしまいそうだが、理解した範囲でまとめると概要は以下の通り。
ハフナー交響曲K385は1782年夏に父レオポルトの依頼で作曲された。ザルツブルクの名門ハフナー家の息子が爵位を受けたお祝いのための祝典音楽だった。モーツァルトは楽章が出来上がった順に送ったが、7月29日の爵位授与式には間に合わなかったようだ。このため当日は別の曲が使われ、交響曲そのものは8月7日から24日の間にザルツブルクで初演されたと考えられる。
しかし、12月に入るとモーツァルトは父に楽譜を送り返してほしいと伝える。それを受け取った後の1783年春、ウィーンで初演が行われ大成功を収める。これがおおまかな経緯だ。
交響曲の冒頭は2オクターブ上がる。こうした跳躍はほかに例がない。作曲を始めたのは1782年7月末。コンスタンツェとの結婚を目前に控えていた時期だ。先生は「幸せの絶頂期にあった当時の気分を反映しているのではないか」と指摘した。
ところで、ザルツブルク初演の祝典音楽は果たして、従来から言われている「セレナード」なのか。全体が完全に残っているわけではないので、あとは類推する以外にない。先生はここでニューヨークの図書館にある自筆譜冒頭のコピーを示した。
それを見ると、レオポルトが「シンフォニア」と書き込んでいる。モーツァルト自身、セレナードを作曲するのであれば、必ず「セレナータ」と書いた。ハフナー交響曲について、本人は「シンフォニア」、あるいは「ハフナー音楽」と言っている。最近、非常に重要な筆写パート譜が発見されたが、これも「シンフォニア」とある。
では、楽章構成はどうだったのか。伝わっているのは4楽章の構成しかない。先生は神戸のモーツァルト研究者、野口秀夫氏が展開する興味深い仮説を紹介した。それによると、残された自筆譜の最後の方にレオポルトが書き込んだ42-13=29と読める数式に着目、これをもとに全体で7楽章あったとみる。本来の楽譜42葉のうち29葉が実際の演奏に使われ、これが4楽章分に相当すると推定。除かれた13葉は3楽章分になるという計算だ。
ただ、先生は3楽章分が13葉では「短かすぎると思う」と留保を付けた。そうすると、先生の仮説はどうなのか。ご自身も「ハフナーの原曲は4つ、多くても7つだと思う」との考えだ。
どのジャンル当てはまるのか、という問題もある。先生は本来、「交響曲として作曲されたのではないか」とみる。しかし、行進曲が加わっていて、セレナードと呼ばれた原因もここにある。当時はミラベル宮殿や大学の中庭で夜に野外で演奏された。行進曲はその際の入場、退場に使われたのだ。ハフナー交響曲は独立したチェロ・パートがないのが「最大の特徴」。これも野外音楽だったと知れば、説明が付く。立って歩きながら演奏するには向かなかったからだ。作曲家が「時間がなくて端折ったのではない」。
こうなると厄介である。交響曲でありながら、セレナードの要素も併せ持つ。この矛盾はどう説明できるのか。先生自身も「迷っている」と述べた。「新しい資料が出てくるかもしれないので、答は留保している」と。仮説として言えば、「いわゆる交響曲として作曲された」。しかし、異例なことに野外で演奏されたため、「セレナード風の交響曲となる」わけだ。
研究を極めるほどに浮かび上がる矛盾。その整合性を求めるあまり性急な結論に走るのは避け、矛盾は矛盾としてさらなる研究の対象とする。そうした姿勢に、あくまで当時の時代状況から出発する実証主義の誠実なアプローチを見る思いだった。先生の今後の研究成果とご活躍を大いに期待したい。ここで紹介できたのはほんの一部。あとは割愛せざるを得なかった。
ハフナー交響曲はフルート、クラリネットを加えるなど楽器編成に応じて改作を重ね、繰り返し演奏されたという。行進曲を外した演奏が普通だが、例会では行進曲付きの珍しいバージョンを聴いた(ホグウッド指揮、アカデミー・オブ・エンシェント・ミュジック)。(文責・山崎博康)
●例会・懇親会 写真コーナー
懇親会は、お茶の水のいつもの場所。趣旨に賛同する有志一同で、講師の西川先生を中心にビールで乾杯後、楽しく懇親が行われた。厚さにもめげず、難しいお話を聞いた後なのに、皆さん元気いっぱい。楽しい賑やかな懇談会となっていた。
なお、写真を削除して欲しい方がおられたら、直ぐに担当宛てメールして頂くか、電話でもよいので、いつでも連絡して欲しいと思います。削除するのは実に簡単なので、作業は直ぐ実施します。
なお、写真が欲しい方は、原版はHP担当の倉島が全て保管していますので、例会1列、懇親会6列の今回の場合は、例えば、上から5・右と言うように写真を特定して、下記にメールしていただければ、次回例会までにお届けするようにしたします。ただし、恐縮ですが、Lサイズで30円/枚のご負担をお願い致します。
お問い合わせ:ホームページ担当;倉島 収: メールはここから
第317回 モーツァルティアン・フェライン例会 2012年7月21日
事務局レター【第192号】/2012年7月
【編集者】澤田義博/富田昌孝/古田佳子 bxp00423*yahoo.co.jp (スパムメールが増えてきましたのでリンクを外しました。お手数ですが*を@に替えて送信願います)
●7月例会(第317回)のお知らせ
《ハフナー交響曲》をめぐる諸問題 お話:西川尚生氏(慶応大学教授)
日時:2012年7月21日(土)午後2時 (※12時30分から会員総会がございますのでお早めにお越しください)
会場:お茶の水「クリスチャンセンター」(JR「お茶の水」下車・徒歩3分)
例会費:¥2500(会員・一般共)
――――― 西川先生からのメッセージ
モーツァルトの《ハフナー交響曲》K. 385の成立に関しては、多くの謎が残されています。よく知られているように、1782年夏、《後宮からの誘拐》を初演したばかりのモーツァルトは、父の依頼で、ザルツブルクの名門ハフナー家の祝典音楽としてこの曲を作曲しました。
しかし、この祝典音楽がどのようなジャンルに属するものなのか(一般に言われているように、「セレナード」なのか)、ザルツブルクでの初演はどのような形態でおこなわれたのか、またモーツァルトがいつ頃、どのようにこの曲を改訂し、今日「ハフナー交響曲」として知られるヴァージョンが出来上がったのか、といった問題については、明確なことは何もわかっていません。
今回の講演では、新発見の《ハフナー交響曲》の演奏用パート譜を考察に加えながら、これらの問題を再検討してみたいと思います。
例会後は恒例の懇親会へのご参加をお待ちしております。 会場:「デリ・フランス」お茶の水店/03(5283)3051
●今後の例会のご案内(会場記載のないものはお茶の水クリスチャンセンターです)
9月8日(土) 川口副会長
10月20日(土) 石津副会長
11月10日(土) 若松名誉会長
12月(日にち未定) 礒山雅氏
(8月は夏休みとなります)
●お知らせ
7月21日の例会前に12:30~13:30の予定で、例会と同じ部屋で、会員総会を行います。奮っ てご参加下さい。議題は次の通りです。
【会員総会議題】
・活動報告、および今年の今後の例会予定並びに来年の予定
・会計報告
・監事の退任、及び新監事のご承認
・会則の変更―第19条の2年を1年に変更
・その他
●6月例会の報告(第316回/6月23日)
久元祐子レクチュアー・コンサート・・・ベーゼンドルファー、プレイエル、エラール、スタインウェイでモーツァルトを聴く午後
今回は4つのピアノ(今回演奏された1868年製エラール、1843年製プレイエル及びスタインウェイは久元先生の所蔵)の聴き比べという、とても贅沢かつ素晴らしい土曜のマチネだった。会員一同大満足であったようだ。久元先生は「無謀な企画」と謙遜されていたが、先生の企画力と華麗な演奏に敬意を表したい。以下レクチャー・コンサートの概要を記してみたい。
アヴェ・ヴェルム・コルプス K.618(リスト編曲版)/ピアノ:エラール
モーツァルトがウィーン郊外のバーデン滞在時に地元の教会に贈った小品である。リストは母国ハンガリーでは、「モーツァルトの再来」と言われていた位で、モーツァルトへの敬意からか、編曲といっても、ほとんど音符を加えていない。この曲はリストが愛したエラールで演奏された。エラールの特徴はダブル・エスケープメント(エラールの特許)
で、速いパッサージュの曲に向いている。(注:エスケープメント:鍵盤の運動をハンマーに伝える状態をコントロールするための装置。)宗教曲の小品だが、エラールでリストの編曲を聴くと、また違った響きになるのが興味深かった。
ピアノ・ソナタ、 K.330 ハ長調/ピアノ:エラール、プレイエル
以前はパリ・ソナタの1曲といわれていたが、最近の実証的な研究により、モーツァルトのウィーンでの独立直後に書かれたことが分かっている。
第1楽章:アレグロ・モデラート。エラールで演奏された。後半の美しいパッサージュが耽美だった。
第2楽章:プレイエルで演奏された。プレイエル家とショパンは交流があり、ショパンはとりわけプレイエルを愛用した。このプレイエルには当時のプレイエル社のトップ技術者ドノゴエ氏の焼き印がきちんと記されている。ドノゴエ氏の焼き印があるということはショパン時代のオリジナルのアクションであり、ショパン時代の響きを再現しているという証である。この焼き印を発見した時、久元先生は特別の感慨に浸られたそうである。モーツァルトの父レオポルトは、その著書の中で「フォルテとピアノは光と影である」と述べているが、プレイエルは同音反復の多いこの第2楽章の影の部分を表現するのにふさわしいと久元先生は感じられたそうだ。確かに、アンダンテ・カンタービレでこの曲の白眉ともいえる楽章にプレイエルは最適である。
第3楽章:この楽章はプレイエルとエラールの弾き比べとなった。エラールは音が出しやすく、一方プレイエルは逆なので、ショパンは体調が良い時はプレイエルを、体調が悪い時はエラールを弾いたそうである。アレグレットのこの楽章には筆者には音が伸び伸びとして聴こえるエラールの方が向いているように感じられた。
ピアノ・ソナタ K.331 イ長調/ピアノ:ベーゼンドルファー、スタインウェイ
1828年創業のベーゼンドルファーは音楽の都ウィーンで誕生し、数多くの大作曲家、巨匠と呼ばれるピアニストの助言によって研究と改良を重ね続け、「ウィンナートーン」と呼ばれる美しい音色を生み出した。ウィーンの香りそのものである。本日使用されたのはスペシャル・モデルで、ヨハン・シュトラウス邸にあったベーゼンドルファーの復刻モデルである。
第1楽章:主題と変奏であるこの楽章はそもそもウィーン的であり、ベーゼンドルファーとぴったりマッチしていた。
第2楽章:スタインウェイで演奏された。 因みにスタインウェイは世界各国のコンサートホールで最も頻繁に使用されており、日本も含め多くの国々で90%以上のマーケットシェアを有する。1836年に、ドイツ・ニーダーザクセン州で家具製作を営んでいたハインリヒ・エンゲルハルト・シュタインヴェーク(ヘンリー・スタインウェイ?)が、スタインウェイの第一号となるピアノを製作した。ヘンリー・スタインウェイはその後、ドイツからアメリカ合衆国へ渡り、1853年にスタインウェイ社をニューヨークに設立する。ヘンリー・スタインウェイの死後、1880年にハンブルクに生産拠点が置かれた。ピアノの歴史は先生のご説明では、鋼鉄の歴史でもある。すなわち、時代と共に、使用される鋼鉄の量が増えていくのである。スタインウェイは音の切れ味が鋭い。一方ベーゼンドルファーはまろやかである。この楽章はメヌエットで、スタインウェイでも特に違和感はなかった。
第3楽章:この楽章は有名な「トルコ行進曲」である。スタインウェイとベーゼンドルファーの弾き比べとなった。良く知られているように、当時のウィーンの異国趣味(特にトルコ)を反映して、作曲された曲である。モーツァルトの少しあとの時代のピアノには、トルコペダルがついたものもあったそうでトルコが発祥の地であるシンバルの音を出すような工夫もされていたそうである。この曲には筆者はスタインウェイに軍配を上げたい。
アンコール:ショパン「別れのワルツ」変イ長調 作品69-1(遺作)/ピアノ:プレイエル
ショパンの没後、彼の机の引き出しの奥から発見された「我が哀しみ」と書かれた大きな封筒はリボンで封印され、中身は元婚約者マリア・ヴォジンスカからの手紙の束であった。このワルツはショパンがドレスデンを去るときマリアのアルバムに書き込んだものである。
筆者は4つのピアノの中で、どれを選ぶかと問われれば、やはりプレイエルと応えるだろうと感じた。
最後になって恐縮だが、今回はセレモアコンサートホール武蔵野のオーナーである辻智子さんにひとかたならぬお世話になった。その上ボルドー赤の当たり年2000年のサンテミリオン・グラン・クリュ、銘酒シャトー・デティユーを差し入れて頂いた。ここに改めて謝意を表したい。(文責:澤田義博)
●情報コーナー
CD情報(外盤価格はHMVの一般価格) ★こちらからどうぞ(T)
●例会・懇親会 写真コーナー
懇親会は、いつもと違う会場なので、立川の玉川上水のイタリアン・レストランで、趣旨に賛同する有志一同で先生を中心に行われた。ビールで乾杯後、先生の行きつけのお店と聞いて、楽しく懇親が行われ、途中からいつもより上等の差し入れのワインを飲みながら、楽しい賑やかな懇談会となっていた。
なお、写真を削除して欲しい方がおられたら、直ぐに担当宛てメールして頂くか、電話でもよいので、いつでも連絡して欲しいと思います。削除するのは実に簡単なので、作業は直ぐ実施します。
なお、写真が欲しい方は、原版はHP担当の倉島が全て保管していますので、例会1列、懇親会7列の今回の場合は、例えば、上から6・右と言うように写真を特定して、下記にメールしていただければ、次回例会までにお届けするようにしたします。ただし、恐縮ですが、Lサイズで30円/枚のご負担をお願い致します。
お問い合わせ:ホームページ担当;倉島 収: メールはここから
第316回 モーツァルティアン・フェライン例会 2012年6月23日
事務局レター【第191号】/2012年6月
【編集者】倉島収/富田昌孝/古田佳子 bxp00423*yahoo.co.jp (スパムメールが増えてきましたのでリンクを外しました。お手数ですが*を@に替えて送信願います)
●6月例会(第316回)のお知らせ
久元祐子レクチュアー・コンサート 「ベーゼンドルファー、プレイエル、エラール、スタインウェイでモーツァルトを聴く午後」 ピアノとお話:久元祐子
日時:2012年6月23日(土)午後3時(2時30分開場)
←開始時間に注意!
会場:セレモアコンサートホール武蔵野
※立川駅よりモノレール、またはタクシーが便利です。同乗してタクシーを利用する場合は、立川駅東改札口前(2F)に2時15分までにお集まり下さい。2時頃から、集まり次第次々に出発する予定です。
例会費:¥2500(会員・一般共)
――――― 久元先生からのメッセージ
モーツァルトは、ピアノが使われ始めた時代に活躍しましたが、モーツァルトの死後、ピアノはさらに進化を遂げ、19世紀になると本格的なピアノの時代を迎えます。モーツァルトの人気は死後すぐに高まり、今日に至るまで、さまざまな楽器でモーツァルトのピアノ曲は演奏されてきました。
今回の例会では、19世紀を代表するピアノである(プレイエル・1843年製)と(エラール・1868年製)、そして、現代を代表するピアノ ― ベーゼンドルファーとスタインウェイの4種類のピアノにより、モーツァルトのピアノ・ソナタを演奏させていただきます。楽器の特性がモーツァルトの演奏にどのような違いをもたらすかについて感じていただければと思います。
《プログラム》
「アヴェ・ヴェルム・コルプス」KV618(リスト編曲版)/使用楽器:ベーゼンドルファー
ピアノ・ソナタ ハ長調 KV330 第1楽章/使用楽器:プレイエル
ピアノ・ソナタ ハ長調 KV330 第2,3楽章/使用楽器:エラール
ピアノ・ソナタ ハ長調 KV330 第3楽章/使用楽器:プレイエル
ピアノ・ソナタ イ長調 KV331《トルコ行進曲付き》第1楽章/使用楽器:ベーゼンドルファー
ピアノ・ソナタ イ長調 KV331《トルコ行進曲付き》第2,3楽章/使用楽器:スタインウェイ
ピアノ・ソナタ イ長調 KV331《トルコ行進曲付き》第3楽章/使用楽器:ベーゼンドルファー
(曲目は変更になることがあります)
例会後の懇親会は玉川上水のイタリアン・レストランを予定しております。詳細は会場受付でご案内いたします。
●今後の例会のご案内(会場記載のないものはお茶の水クリスチャンセンターです)
7月21日(土) 西川尚生氏(慶応大学教授)「《ハフナー交響曲》をめぐる諸問題」
以下、9月:川口副会長、10月:石津副会長、11月:若松名誉会長、12月:礒山雅氏の予定です。(8月は夏休みとなります)
●お知らせ
7月21日の例会前に12:30~13:30の予定で、例会と同じ部屋で、会員総会を行います。奮ってご参加下さい。議題は次の通りです。
【会員総会議題】
・活動報告、および今年の今後の例会予定並びに来年の予定
・会計報告
・監事の退任、及び新監事のご承認
・会則の変更―第19条の2年を1年に変更
・その他
●5月例会の報告(第314回/5月12日)
モーツァルトとウェーバー家の人々 お話:樋口隆一氏(明治学院大学教授)
モーツァルトの人生を考えるうえで最も重要な女性は、マンハイムで知り合い、熱を上げたソプラノ歌手アロイジア・ウェーバーと、その妹で妻となるコンスタンツェ・ウェーバーである。この講演では、ウェーバー家をキーワードにモーツァルトの人生を考え、さらにはモーツァルトが作曲家ウェーバーに与えた影響についても考えるものである。
ウェーバー家の家系図を調べると、図(注1)のように表されており、音楽史的に重要な祖先と言えるのは、バーデン辺境伯領出身の父フリドリンであり、彼には二人の息子がいて、それぞれ音楽家となった。兄のフランツ・フリドリンは1733年頃、ヴィーゼンタールで生まれ、バス歌手・ヴァイオリン奏者として生計を立て、モーツァルトはマンハイム(1778)で筆写家として知り合った。その次女が一流歌手となったアロイジア・ランゲであり、三女が妻となったコンスタンツェであった。
弟のフランツ・アントンは1734年頃、ヴィーゼンタールで生まれ、父からヴァイオリンを学び、父の死後主として北ドイツで音楽家・作曲家・劇場支配人として活躍した。1789年には旅回りの「ウェーバー劇団」を組織していた。彼は生涯2度結婚しており、最初の妻マリア・アンナとは、フリドリンとエトムントの二人の息子と通称ジャネッテの娘がいた。この次男エトムントは、音楽家・俳優・歌手・演出家・劇場監督・楽長・作曲家などの肩書きを持つ多彩な芸術家であった。
彼の交友関係を示す「記念帳」(武蔵野音大所蔵)には、ハイドン、モーツァルト、シュタートラー、ランゲ夫妻など著名な音楽関係者の直筆の日付け、言葉、サインなどが記録され、音楽史上の史実として残されていた。
ウィーンで再婚した後妻が、ソプラノ歌手のゲノフェーファで、彼女との間に生まれた末息子が、後年に大作曲家になったカルル・マリア・フォン・ウェーバー(1786~1826)であった。
モーツァルトはマンハイム旅行で、彼がデ・アミーチスのために書いたオペラ「ルーチョ・シッラ」K.135(第11曲)を見事に歌う少女に驚いた旨、父に手紙しているが、これが彼の初恋の娘、フリドリン・ウェーバーの次女アロイジアであった。彼女のためには、沢山の曲を作曲しているが、(1)オペラK.135より第4曲、(2)マンハイム旅行で作曲したコンサートアリアK.294、(3)「ドン・ジョヴァンニ」のウィーン初演時に歌ったドンナ・アンナの第10番のアリアの3曲を聴いた。
モーツァルトは、1781年ウイーンで大司教と決裂し、一人でチェチーリア・ウェーバーの営む下宿屋に飛び込んだが、そこには長女ヨゼファーと、三女コンスタンツェと、四女のゾフィーが同居していた。モーツァルトは同年7月から、皇帝ヨゼフ二世のドイツ劇場のためのオペラ「後宮からの逃走」の作曲を始めていたが、彼の頭の中は、同名の女主人公コンスタンツェと、現実の一家の家事の一切を取り仕切るコンスタンツェが一緒になり、彼女をウェーバー一家から救い出そうとして1782年8月4日に、結婚してしまう。
彼女のために(1)「後宮」K.384の序曲および第1曲ベルモンテのアリア「コンスタンツェよ、我が幸いの人よ!」、および(2)彼女との結婚のために作曲し、ザルツブルグで父と姉の前でコンスタンツェが歌ったとされるハ短調ミサ曲K.427より「エト・インカルナトウス・エスト」を聴いた。
4姉妹の長女マリア・ヨゼファには、コンサートアリアK.580を作曲したほか、「魔笛」K.620の夜の女王を歌っており、この2曲のアリアを聴いた。また、彼の最後に立ち会ったとされる四女のゾフィーのために、「レクイエム」K.626よりラクリモサを聴いた。
カルル・マリア・フォン・ウェーバーは、コンスタンツェと24歳年下の従弟に当たり、モーツァルトが亡くなった時はまだ6歳で、直接の関係はない。しかし、彼はシカネーダーのような劇場楽長を父に、歌手を母に持って生まれ、劇団にはエトムント兄さんの「記念帳」に示される有名人が出入りし、子供の頃から劇団の「後宮」や「魔笛」などドイツ語オペラを聴いて育った環境にあった。従って、作曲家ウェーバーにとっては、モーツアルトの音楽は常に模範であり続けたといえよう。
トルコ趣味が溢れていると言われるオペラ「アブ・ハッサン」序曲とオペラ「オベロン」序曲の二つを聴いたが、「後宮」序曲を聴いた後だったので、どこか似ている感じがした。
先生のお話は、いつもウイットに富んで面白く、時には脱線もするが、特に女性の話は実にお上手でユーモアがあり、とても分かりやすく、楽しい一時を過ごすことが出来た。(2012/05/14 文責;倉島)
※注1…海老沢敏先生傘寿記念論文集(2011)、p195~205
●情報コーナー
CD情報(外盤価格はHMVの一般価格) ★こちらからどうぞ(T)
●例会・懇親会 写真コーナー
懇親会は、いつもの例会通り趣旨に賛同する有志一同でビールで乾杯後、樋口先生を中心に懇親が行われ、ワインを飲みながら、楽しい賑やかな懇談会となっていました。今回の写真は、担当が例会記録で動けなかったので、山田さんに写真の担当をお願いしましたが、いつもより明るく撮れています。
なお、写真を削除して欲しい方がおられたら、直ぐに担当宛てメールして頂くか、電話でもよいので、いつでも連絡して欲しいと思います。削除するのは実に簡単なので、作業は直ぐ実施します。
なお、写真が欲しい方は、原版はHP担当の倉島が全て保管していますので、例会2列、懇親会4列の今回の場合は、例えば、上から6・右と言うように写真を特定して、下記にメールしていただければ、次回例会までにお届けするようにしたします。ただし、恐縮ですが、Lサイズで30円/枚のご負担をお願い致します。
お問い合わせ:ホームページ担当;倉島 収: メールはここから
第315回 モーツァルティアン・フェライン例会 2012年5月12日
事務局レター【第190号】/2012年5月
【編集者】大野康夫/富田昌孝/古田佳子 bxp00423*yahoo.co.jp (スパムメールが増えてきましたのでリンクを外しました。お手数ですが*を@に替えて送信願います)
●5月例会(第315回)のお知らせ
モーツァルトとウェーバー家の人々 お話:樋口隆一氏(明治学院大学教授)
日時:2012年5月12日(土)午後2時
会場:お茶の水「クリスチャンセンター」(JR「お茶の水」下車・徒歩3分)
例会費:¥2500(会員・一般共)
――――― 樋口先生からのメッセージ
モーツァルトの人生を考えるうえで最も重要な女性がふたりいる。マンハイムで知り合い、熱を上げたソプラノ歌手アロイジア・ウェーバーと、その妹で妻となるコンスタンツェ・ウェーバーである。
このウェーバー家は、音楽家を輩出した一族で、ロマン派オペラの傑作《魔弾の射手》を作曲したカルル・マリア・フォン・ウェーバーもそのひとりである。正確に言うと、大天才モーツァルトが親戚となったことから大いに刺激を受けて、カルル・マリア少年はオペラ作曲家としての成功をめざしたとも言える。とはいえ、多岐にわたるウェーバー一族の関係を知ることは簡単ではない。
この講演では、ウェーバー家をキーワードにモーツァルトの人生を考え、さらにはモーツァルトが作曲家ウェーバーに与えた影響も考察したい。18世紀から19世紀にかけてのドイツ・オーストリア音楽史の知られざる一面が浮かび上がれば幸いである。
例会後は恒例の懇親会へのご参加をお待ちしております。会場:「デリ・フランス」お茶の水店/03(5283)3051
●今月のインテルメッツォ(ピアノ演奏:岩島富士江)
【ピアノ音楽の歴史連続演奏 第39回】 「グレトリーのオペラ『ザムニーテの結婚』女声合唱の行進曲主題による8つの変奏曲」K.352(374c)1781年25才、ウイーン作曲
●今後の例会のご案内(会場記載のないものはお茶の水クリスチャンセンターです)
6月23日(土) 久元祐子氏(ピアニスト)※会場:セレモアつくば(立川市)
7月21日(土) 西川尚生氏(慶応大学教授)
8月は夏休みとなります。
●お知らせ
◇今年度より会員総会の時期を変更し、7月例会時といたしました。お間違えの無いよう、ご出席下さい。時間は12:30-13:30です。今後も総会は7月になります。
◇6月の例会は会場が立川なので、JR立川駅で会員同士でタクシー乗合で行くのが一番便利かと思います。待ち合わせ場所、時間は次号でお伝えします。
◇総会でご承認頂ければ、今年度より、年度内に年会費の支払のない方々につきましては、退会として取扱いさせて頂くことになると思います。会費はお早めにお支払下さい。
◇ロベレート・ツアーにご参加頂ける皆様には郵船トラベルより、最終確認および、予約金の支払依頼が5月中にお手元に届くはずです。宜しくお願い致します。(Y.S)
●4月例会の報告(第314回/4月14日)
「後宮からの逃走」と「魔王」・・・1782年の2つの作品をめぐって お話:田辺 秀樹氏(一橋大学院教授)
4月例会は一橋大学院教授で当フェライン顧問の田辺秀樹先生に造詣の深いお話をして頂いた。ドイツの文豪ゲーテは1770年から1780年初頭にかけて、ワイマール宮廷でジングシュピールの台本を書き、カイザーの作曲により、ゲーテ自身が演出して主役を演じていた。それらの活動の中で、北欧の魔王の詩をヘルターがトイツ語翻訳したものをゲーテが読んで1782年に詩を作った。
田辺先生よりゲーテのドイツ語詩と日本語の対訳をもとに『夜遅く父親が体調不良の男の子を抱きかかえて馬に乗っていた。子供が「あの魔王が裾を引いている、魔王のお母さんが金色の服をたくさん持っている、魔王の娘達が君を歓迎してくれる、魔王は君が好きでいやだと言うなら力ずくで連れていく。」と誘ってくるとうなされていた。
父親は「それは夜霧の縞模様や、枯葉の中での風のざわめきや、柳の木が灰色に光っているせいだ。」と説明するが、恐ろしくなり急いで馬を走らせ屋敷に帰り着くと、父親の腕の中で子供は死んでいた。』との説明があった。
ここで、啓蒙主義とは何かの説明をされた。大人は人生経験が豊富で科学的なものの見方ができ、一方、子供は自然に直感的に感じ、迷信など前近代的なものと通じる。そのため、子供の訴えをきちんと聞く必要がある。お父さんは科学者であり、子供は詩人というようなことが考えられる。
啓蒙とは暗いところをはっきり見えるようにする近代化と考えられる。ヨーゼフ2世が啓蒙君主だったため、モーツァルトは「後宮からの逃走」を作曲演奏することができたと考えられる。
シューベルトは18歳のときゲーテの詩「魔王」にメロディーを付けて作曲し、作品1と自ら記録した。シューベルトの最初の自信作と考えられる。【CD鑑賞:ゲーテ作詞シューベルト作曲「魔王」;イアン・ボストリッジ(テノール)ジュリアス・ドレイク(ピアノ) EMI TOEC-9874】
フランクフルトの演奏会での初対面ではモーツァルト7歳、ゲーテ14歳であった。ゲーテは80歳でモーツァルトの天才としてのすばらしさを回想している。1782年ウェーンで「後宮からの逃走」が上演されたが、それまでワイマールでジングシュピール200曲位を上演してきたゲーテは1785年「後宮からの逃走」を上演吟味して、そのすばらしさに、もう自分の出る幕はないと思わざるを得ないことを実感した。
1779年グルック作曲「イフェジュニー」がパリで初演された。当時パリではクルック派とピッチーニ派が論争していたが、このオペラの成功でグルック派の勝利となった。このギリシャ神話のイフェジュニーはアガメムノンの娘で、蛮族に捕われて生贄にされそうになるが、蛮族の王様が啓蒙寛容の精神でギリシャに返してあげるという、3年後に上演された「後宮からの逃走」と似たストーリーになっている。
ヨーゼフ2世はトイツ語圏の民衆を強化させるために、トイツ語のジングシュピール歌劇「後宮からの逃走」の上演を推進した。敵であるキリスト教徒を許すイスラムの太守はヨーゼフ2世と重なる。モーツァルトのオペラは不純な啓蒙主義がおもしろい。後宮はあまり高尚な台本ではなく、大衆を楽しませるために作られていたため、最初ゲーテは評価しなかった。
モーツァルトはオスミンの歌を膨らませた。その1つの理由はフッシャーというバス歌手をクローズアップさせてあげたかったためである。オスミンは脇役から主役へ、太守は歌を歌わず、理念を語るだけになった。ベルモンテの父親と太守は宿敵であるが、この父親と同じことはせず許すという、啓蒙主義の本質である寛容と合理主義に基づいている。オスミンは大衆のトルコへの恐怖心を表現させ、モーツァルトは音楽になると思った。
オスミンはしたがって最終場面にはいない。凶暴な言葉をはいていなくなるのが正しいからである。モーツァルトは父レオポルド宛ての手紙で「大丈夫です、僕は大衆を喜ばせることを知っています」と書いて、オスミンを膨らませた。【DVD鑑賞:モーツァルト作曲 歌劇「後宮からの逃走」K384 クリト・リドゥル(オスミン)、パトリツィア・チョーフィー(ブロンデ)、ズビン・メータ指揮フィレンツェ5月音楽管弦楽団、合唱団 TDK TDBA-0039】
オスミンとブロンデの喧嘩の二重唱、もっとも啓蒙されたフェミニズムのイギリス人女性にオスミンは太刀打ちできない。キリスト教とイスラム教は敵対関係になる場合が多いが、惚れてしまった本音の喧嘩が魅力的なハーモニーをつくる音楽劇である。
キリスト教とイスラム教世界がユートピア的に融合するという音楽劇の特権である。不純であることにより、奥行きが出てくる。モーツァルトの歌劇はより深さがあり、束の間の平和を与えてくれるすばらしさがある。
この後、田辺先生によるすばらしいピアノ演奏がありました。「微笑みの国」「学生王子」「プラタ公園の春」「私のお母さんはウィーン人、だから私もウィーンが大好き」、グルダが得意としたアンコール曲の「辻馬車の歌」の5曲を演奏され、一同ウィーン気分を満喫しました。(大野記)
●情報コーナー
CD情報(外盤価格はHMVの一般価格) ★こちらからどうぞ(T)
●例会・懇親会 写真コーナー
懇親会は、いつもの例会通り趣旨に賛同する有志一同でビールで乾杯後、田辺先生を中心に懇親が行われ、ワインを飲みながら、楽しい賑やかな懇談会となっていました。
例会に先立って行われた理事会に於いて、例会時の写真が掲載されると困る方の話が話題になりました。もし、写真を削除して欲しい方がおられたら、直ぐに担当宛てメールして頂くか、兎に角、電話でもよいので、いつでも連絡して欲しいと思います。削除するのは実に簡単なので、作業は直ぐ実施します。削除依頼があったのは、1月例会のものでしたので、関係の写真は削除しましたので、念のためお知らせします。
なお、写真が欲しい方は、原版はHP担当の倉島が全て保管していますので、例会2列、懇親会4列の今回の場合は、例えば、6・右と言うように写真を特定して、下記にメールしていただければ、次回例会までにお届けするようにしたします。ただし、恐縮ですが、Lサイズで30円/枚のご負担をお願い致します。
お問い合わせ:ホームページ担当;倉島 収: メールはここから
第314回 モーツァルティアン・フェライン例会 2012年4月14日
事務局レター【第189号】/2012年4月
【編集者】山本廣資/富田昌孝/古田佳子 bxp00423*yahoo.co.jp (スパムメールが増えてきましたのでリンクを外しました。お手数ですが*を@に替えて送信願います)
●4月例会(第314回)のお知らせ
『後宮からの逃走』と『魔王』・・・1782年の2つの作品をめぐって
お話:田辺秀樹氏(一橋大学院教授)
日時:2012年4月14日(土)午後2時
会場:お茶の水「クリスチャンセンター」(JR「お茶の水」下車・徒歩3分)
例会費:¥2500(会員・一般共)
――――― 田辺先生からのメッセージ
1782年、ウィーンではモーツァルトの『後宮からの逃走』が初演され、大成功を収めました。同じ年、ドイツのワイマールではゲーテがジングシュピール『漁師の娘』を上演し、その劇中歌としての『魔王』が書かれ、歌われました。シューベルトによる有名な歌曲『魔王』は33年後の1815年です。
2つの作品の間には直接の関係はありませんが、18世紀の支配的思潮であった<啓蒙主義>の観点からみると、両者からはなかなか面白い側面が見えてくるように思われます。先日、一橋大学での最終講義で話したこととほぼ重なる内容ですが、今回はこのテーマで行きたいと思います。お話のあとは、皆さんのお許しがあれば、例によって今回も<酒席ピアノ>でウィーンの酒場の歌など弾かせていただくつもりです。
例会後は恒例の懇親会へのご参加をお待ちしております。会場:「デリ・フランス」お茶の水店/03(5283)3051
●今後の例会のご案内(会場記載のないものはお茶の水クリスチャンセンターです)
5月12日(土) 樋口隆一氏(明治学院大学教授)
6月23日(土) 久元祐子氏(ピアニスト)
7月は西川尚生氏の予定です。8月は夏休みとなります。
●お知らせ
・従来、会員総会は若松名誉会長の来日に合わせて、11月に行っておりましたが、今年から、7月の例会前に行うことと致しました。会員の皆様は宜しくご参集下さい。
・年会費ですが、失念される方が比較的多く、担当理事は毎年苦慮しておりますので、なるべく早めにお支払い頂ければ幸いです。(YS)
●3月例会の報告(第313回/3月17日)
モーツアルトとベートーヴェン お話:幅 至氏(ミュージック・オーガナイザー、アンティーク楽譜コレクター)
講師の肩書をご覧になって、皆さんはどのようなイメージを持たれたであろうか?LP/CDや映像のコレクターはフェラインにもたくさんおられるが、楽譜コレクターとは? まずは自己紹介の弁から。
「私は主に19世紀の当時の楽譜、初版譜を中心に過去30年に渡り収集を続けています。一般にはアンティーク楽譜のコレクターという肩書になりますが、同時に収集した楽譜を基に校訂譜の出版、CDの制作、コンサートのプログランミングの制作等に関わっております。ですから一方で音楽オーガナイザーという肩書で仕事をしております」
ということであるが、日本よりは海外の需要の方が多く、最近ではルガーノ音楽祭でアルゲリッチ音楽祭、セルジオ・ティエンポ姉弟に連弾譜を提供されたそうである。
前半は、M�・lomane(音楽マニア、音楽好き)(仏)の立場で、モーツァルトの「ドン・ジョヴァンニ」とベートーヴェンの「月光ソナタ」との深いかかわりをお話しされた。
初めに、C.ツェルニー編曲版(4手用)で「ドン・ジョヴァンニ」序曲を聴いた。(ピアノ:大石真裕、佐伯麻友さん)ピアノ4手版は楽譜さえあればどこでも弾けるのがメリットで、ツェルニーは小遣い稼ぎにコンサート用、教育用、サロン用に夥しい連弾譜をたくさん編曲しているそうである。
次に、ショスタコーヴィッチのヴィオラソナタ作品147の第3楽章、これは彼の最後の作品で初演を待たずになくなっている。この楽章では「ドン・ジョヴァンニ」第1幕で騎士長が倒れた後の二重唱の伴奏テーマが使われている。
「ドン・ジョヴァンニ」のこの部分をピアノソロ版(オーギュスト・ミューラー編曲)で聴くと、驚いたことに全く月光ソナタ第1楽章と同じである。「月光」の由来は、レルシュタープが第1楽章について「ルツェルン湖の月光の波に揺らぐ小舟のよう」とコメントしたことに由来するが、ここまで同じでは今までのイメージは見直されるべきであろう。
この3曲に共通のものは何か?人間の生死のイメージを取ったものではないかと幅さんはおっしゃる。園田高広と諸井誠との往復書簡にもみられるし、ギーゼキングも同様のことを述べているとのことである。同じところを原曲の月光ソナタで聴いた。この類似性(というより同一性?)について、解説書などで今まであまり触れていないことについては、M�・lomaneとしては疑問に思われるということでした。
後半は楽譜のコレクションをする中で次第に見えてきた当時の音楽生活、より正確には音楽が日常生活の中でどのように演奏され、そこで楽譜がどのような役割を担っていたかについてのお話をされた。
現在のように録音・再生技術が全くない時代では、音楽は実際にPlayしなければ楽しめない状態であった。一般家庭で聴くにはどうするか。楽器と楽譜があればよい。交響曲の楽譜はたくさんは売れない、ということで何とか楽譜を売りたい楽譜屋と音楽を楽しみたい家庭との、両者の思いが一致して、編曲版がたくさん作られたとのことである。ピアノを売ると同時に楽譜も売ることにすれば一石二鳥である。
有名な曲にはほとんど4手版があり、室内楽版も作られている。作曲家本人が編曲したものは少ないが、ブラームスは自分で交響曲を編曲しており、新しい交響曲(第何番ですか?)は、初演前のお披露目をピアノ4手版で行ったとのことである。
ピアノ編曲版は2手版と4手版が(他に6手、8手版もある)あるが、2手では音が足りず、音楽を皆で楽しむには4手版の方がよいので2手版の編曲は少ないそうである。
ベートーヴェンの歌曲「アデライーデ」は初めに、ベートーヴェンの歌曲版で、ピアノ伴奏に歌の部分をピアノで弾くという組み合わせで聴いた。次にツェルニー編曲の4手版で聴いたが、明らかに違いがあり、聴いているうちに独立した曲のようにきこえてきた。この曲には、他にタールベルグ、リストの編曲もある。
モーツァルトの交響曲では、ツェルニー編曲版の第40番の第1楽章を、次にカツァリスが、フンメル編曲の第40番フルート4重奏曲版のピアノパートのみを弾いたものを聴いた。そのほか、レクイエムより「ラクリモーザ」の4手版(ツェルニー編曲)、アンコールは天国と地獄の4手版(ショパンの友人だったエデュアール・ヴォルフ編曲)など聴かせていただいた。ピアニストお二人にとって初見の曲もあり、家庭で名曲を簡単に楽しむといった、ぜいたくな経験のできた楽しい例会であった。質問もたくさん出て盛り上がりました。(Y)
●情報コーナー
CD情報(外盤価格はHMVの一般価格) ★こちらからどうぞ(T)
●例会・懇親会 写真コーナー
懇親会は、いつもの例会通り趣旨に賛同する有志一同でビールで乾杯後、幅先生を中心に懇親が行われ、ワインを飲みながら、楽しい賑やかな懇談会となっていた。
今回の写真は、担当の倉島のカメラに充電中の電池を入れ忘れて持参するという、デジカメで良くある失敗のため、急遽、カメラを持参していた山田健二氏にカメラマンをお願いして、事なきを得た。
なお、写真が欲しい方は、原版はHP担当の倉島が全て保管しているので、例会2列、懇親会4列の今回の場合は、例えば、6・右と言うように写真を特定して、下記にメールしていただければ、次回例会までにお届けするようにしたい。ただし、恐縮であるが、Lサイズで30円/枚のご負担をお願いしたい。
お問い合わせ:ホームページ担当;倉島 収: メールはここから
第313回 モーツァルティアン・フェライン例会 2012年3月17日
事務局レター【第188号】/2012年3月
【編集者】石津勝男/富田昌孝/古田佳子 bxp00423*yahoo.co.jp (スパムメールが増えてきましたのでリンクを外しました。お手数ですが*を@に替えて送信願います)
●3月例会(第313回)のお知らせ
モーツァルトとベートーヴェン
お話:幅 至氏(ミュージック・オーガナイザー、アンティーク楽譜コレクター)
日時:2012年3月17日(土)午後2時
会場:お茶の水「クリスチャンセンター」(JR「お茶の水」下車・徒歩3分)
例会費:¥2500(会員・一般共)
――――― 幅先生からのメッセージ
私はこの30年来ヨーロッパを中心にアンティーク楽譜をコレクションし、それをもとにコンサート及びプログラムの企画、校訂譜の出版、CDの企画等をしています。今回は『モーツァルトとベートーヴェン』と題し、所蔵の1800年代前半の楽譜を用いて講演と演奏を楽しんで頂きます。モーツァルトとベートーヴェンの作曲上の意外な繋がりを、ドン・ジョバンニをベースに展開して行きます。
また演奏はカール・ツェルニーによるピアノ・デュオ編曲版で、大石真裕+佐伯麻友の連弾により『ドン・ジョバンニ序曲』『シンフォニー40番より第1楽章』『歌曲、アデライーデ』等を予定しております。当時の初版譜を実際に見てもらいながら、2人の作曲家が活躍していた音楽世界を考え、体験していただきたいと思います。
例会後は恒例の懇親会へのご参加をお待ちしております。会場:「デリ・フランス」お茶の水店/03(5283)3051
●今後の例会のご案内(会場記載のないものはお茶の水クリスチャンセンターです)
4月14日(土) 田辺秀樹氏(一橋大学院教授)
5月12日(土) 樋口隆一氏(明治学院大学教授)
6月23日(土) 久元祐子氏(ピアニスト)
7月は西川尚生氏の予定です。8月は夏休みとなります。
●お知らせ
・年会費納入のお願い
来月より新年度になります。このあとお送りする季刊80号に年会費の振込用紙を同封させて頂きますので、お手続きをよろしくお願い致します。年会費は5000円、家族会員は6000円になります。
なお、パソコンのメールアドレスをお持ちの方はメール会員への移行をお勧めいたします。郵送のレターより早くご覧になれるばかりでなく、例会時の写真なども楽しんでいただけます。ご希望の方は振込用紙の通信欄に「メール会員希望」とお書きの上、メールアドレスを正確に記してください。(F)
・フェライン・ロヴェレート・ツアーについて
申込者は現状15名ですが、フライトの正確な団体料金がまだ出ないため、申込期間を3月25日まで延長致します。まだ少人数なら受付られます。迷っていらっしゃる方は是非ご参加下さい。次回のツアーは数年後になると思います。今がチャンスです。(S)
・メール会員について
メールをご使用の方で、まだメール会員になっていらっしゃらない方が散見されます。上記の編集者のご依頼の通り、この際是非メール会員への変更をお願い致します。(S)
●2月例会の報告(第312回/2月18日)
バッハのロ短調ミサ曲・メンデルスゾーンとシューマンを中心に お話:江端伸昭氏(作曲家)
私達モーツァルティアンの中にはモーツァルトの他にバッハの曲も愛好されている方が多い。しかしどちらかというとピアノやヴァイオリンなど器楽曲が多く宗教曲についてはあまり深く聴く機会が少ないのではないか。私もその一人でありますが、本日の江端先生のお話を聴かせて頂きその内容をご報告致します。なお江端先生から貴重な資料のご提供や重要な部分の手直しを頂き感謝申し上げます。
バッハの音楽が没後長い間忘れられていたということは決して無かった。バッハの次男エマヌエルはハンブルク音楽監督として父親のマタイ受難曲に基づく自作の受難曲を演奏し続け、また父親の作品の保存と販売に努めた。
1788年のエマヌエルの没後もハンブルクで楽譜販売活動を続けていた一族が亡くなり楽譜が1805年にオークションにかけられると、ペルヒャウがそれを入手し、1791年設立のベルリン合唱協会に楽譜を1811年に寄贈、直ちにツェルターがバッハの演奏を始めた。
1829年3月に弱冠20歳のメンデルスゾーンとベルリン合唱協会が、また5月にJ・N・シェルブレとツェツィリア合唱協会(1817年創立)が、相次いで〈マタイ受難曲〉を演奏し、新しい市民社会にバッハを紹介した。
J・S・バッハ ロ短調ミサ曲BWV232について
【成立】1733年キリエとグローリアのみのミサ曲として作曲、ドレスデン宮廷に献呈。1749年、クレド以降の部分を主として既存の作品からの転用と徹底改作により作曲。(モラビアのカトリック貴族からの依頼か)
【演奏史】1786年ハンブルクにおいてエマヌエル・バッハが〈クレド〉を演奏。〈クレド〉はバッハ最晩年の新作(伝統的な聖歌の旋律に基づく古い様式の合唱フーガ)を含み、一度も演奏されていなかったため。のち、ツェツィリア合唱協会が1828年に〈クレド〉、1831年に〈キリエ〉〈グローリア〉を演奏。メンデルスゾーンは1841年に〈クレド〉から“聖霊により”、“十字架につけられ”、“三日目に甦りたまい”の三曲を演奏し、シューマンの音楽新聞批評で詳しく紹介された。
【CD演奏】ガーディナー指揮で〈クレド〉からこの三曲を聴く。〈信経〉の核心部分にあたり感銘深い。
バッハの後世への影響について
モーツァルトはスヴィーテン男爵を通じてバッハの対位法作品を学び、ロ短調ミサ曲の楽譜も見ていたので、〈ハ短調ミサ〉〈魔笛〉など多くの作品に影響を受けている。〈魔笛〉第二幕試練の場で二人の武士によるコラールの用法はその一例である。
メンデルスゾーンは多数の宗教音楽を作曲し、特にオラトリオ〈パウロ〉〈エリア〉によってバッハの最大の後継者となった。またゲヴァントハウス管弦楽団の指揮者、ピアニスト、オルガニストとしてライプツィヒで数多く音楽会を開催し、バッハの作品を取り上げた。
シューマンは音楽新聞を創立し評論活動を行ない、メンデルスゾーンの活動を詳しく紹介した。例えば1841年のバッハ、モーツァルト、ベートーヴェンの音楽会の批評ではバッハの“十字架につけられ”を絶賛している。晩年には〈ミサ曲〉〈レクイエム〉を作曲した。
以上江端伸昭先生によって最新の研究成果の一部をご紹介頂き私達は大変勉強させて頂いた。
終りに江端先生自身のピアノ演奏でシューマン作曲の〈子供のためのアルバム〉から〈想い出〉を聴かせて頂いた。メンデルスゾーンが好んだイ長調で書かれ彼の命日の日付だけが記されたこの小品は簡潔な美しさの中にやさしさと懐かしい雰囲気がある。早逝したこの作曲家へのシューマンの追悼の気持が込められているのではないかとのことであった。(I)
●情報コーナー
CD情報(外盤価格はHMVの一般価格) ★こちらからどうぞ(T)
●例会・懇親会 写真コーナー
懇親会は、いつもの例会通り趣旨に賛同する有志一同でビールで乾杯後、お馴染みになった江端先生を中心に懇親が行われ、ワインを飲みながら、楽しい賑やかな懇談会となっていた。いつもの会場であったが、写真撮影も予定通り行われ、賑やかに時間いっぱいまで楽しい会が続いていた。今回は、バッハやメンデルスゾーンを始めロヴェレート旅行のことなど話題が豊富で、散会後も最寄りの場所で、有志が懇親を続けたようだった。
なお、写真が欲しい方は、原版はHP担当の倉島が全て保管しているので、例会2列、懇親会4列の今回の場合は、例えば、6・右と言うように写真を特定して、下記にメールしていただければ、次回例会までにお届けするようにしたい。ただし、恐縮であるが、Lサイズで30円/枚のご負担をお願いしたい。
お問い合わせ:ホームページ担当;倉島 収:04-7191-0500(TEL&FAX) メールはここから
第312回 モーツァルティアン・フェライン例会 2012年2月18日
事務局レター【第187号】/2012年2月
【編集者】澤田義博/富田昌孝/宮崎宇史/古田佳子 bxp00423*yahoo.co.jp/倉島 収mozartian_449*yahoo.co.jp (スパムメールが増えてきましたのでリンクを外しました。お手数ですが*を@に替えて送信願います)
●2月例会(第312回)のお知らせ
バッハのロ短調ミサ曲・メンデルスゾーンとシューマンを中心に お話:江端伸昭氏(作曲家)
日時:2012年2月18日(土)午後2時
会場:お茶の水「クリスチャンセンター」(JR「お茶の水」下車・徒歩3分)
例会費:¥2500(会員・一般共)
――――― 江端先生からのメッセージ
バッハの音楽が没後長い間「忘れられていた」ことは決して無かった、ということは、以前もフェラインの例会でお話ししました。今回は、音楽批評家シューマンと演奏家メンデルスゾーンの交流に触れつつ、マタイ受難曲とロ短調ミサ曲の「その後」についての最新の研究をご紹介します。先月刊行の新しいバッハ事典(春秋社)についても、ご報告させていただきます。
例会後は恒例の懇親会へのご参加をお待ちしております。会場:「デリ・フランス」お茶の水店/03(5283)3051
●今後の例会のご案内(会場記載のないものはお茶の水クリスチャンセンターです)
3月17日(土) 幅 至氏(音楽オーガナイザー)
4月14日(土) 田辺秀樹氏(一橋大学院教授)
5月・樋口隆一氏、6月23日・久元祐子氏、7月・西川尚生氏の予定です。
●イタリア「2012ロヴェレート音楽祭」ツアーのお知らせ
トップページでもご案内しておりますが、ロヴェレート旅行のプランが決まりました。行き帰りともヴェニスを経由し、帰りにはヴェニスの新装されたフェニーチェ劇場でオペラ(リゴレット)を鑑賞予定です。
なお、今回はフェラインの顧問をして頂いている久元先生もご一緒され、ロヴェレート音楽祭の公式プログラムで演奏されることになりました。フェラインにとっても記念すべき旅行になると思います。会員の皆様の積極的なご参加をお願い致します。(YS) 【詳細はこちらから】
●1月例会の報告(第311回/1月14日)
モーツァルティアン・フェライン新年会
今年の新年会は会員参加型形式に戻り、発表者・演奏者の熱演で大いに盛り上がりをみせた。まず澤田会長から、新年の挨拶と抱負が語られた。骨子は次の2フレーズであった。
「今年のフェラインのモットーは温故知新です」「温故の好例はイタリア・モーツァルト協会との関係復活が具体化し、本年九月に久方ぶりにロヴェレートを訪れることであり、知新は例えば、例会にご招待する先生方に極力、新しい先生方の数を増やすことです」
♪第1部(司会:石津副会長)
高橋 徹氏・・・・・別府での単身生活を振り返り、当時のモーツァルト体験を語られた。特に仕事がうまく行かない時等、モーツァルトの音楽に癒された。 当時よく聴いていたのは ベーム+ベルリン・フィルの交響曲全集で、就中第34番に魅せられ、現在34番の名演を収集しているそうだ。同じようにモーツァルトに助けられたモーツァルティアンは多いのではなかろうか?
桑原 隆之氏・・・・・「ドン・ジョヴァンニ雑感」というタイトルで、プラハ版とウィーン版の相違点について細かく説明された。またドンナ・アンナとドン・ジョヴァンニの関係についても、ご自身の意見も踏まえ、E.T.A.ホフマン以来の様々な演出に言及された。汲めども尽きぬオペラである。
岡田 斉氏・・・・・モーツァルトが主人公になった映画、或いはモーツァルトの曲が使用されている映画について、網羅的に説明された。映像の入手に相当努力されていることを十分にうかがわせる発表であった。
山田 健二氏・・・・・「フィガロの結婚」第2幕フィナーレの7重唱について、楽譜をテレビ画面に写し、かつご自身の指揮棒で、7重唱の進行状況を示されるという念の入れ方で、かつ各歌手のパートを色分けし、分かりやすく説明され、満場の拍手を浴びた発表だった。特に途中からテンポが速くなってくると楽譜をめくるペースも当然早くなるが、その様子が物理的に見れて、満場爆笑となった。その工夫に敬意を表します。
江端 津也子氏・・・・・新年会ではおなじみの江端さんに第1部を締めて頂いた。曲目はウィーン・ソナチネ.439b第4番変ロ長調で、その第3楽章をピアノで演奏頂いた。この曲はもともとバセットホルン3本用(あるいはバセットホルン2本またはクラリネット2本+ファゴット)の5曲のディヴェルティメントとして作曲されているが、江端さんの編曲でピアノで弾いて頂いた。同じ曲でも江端さんの料理法と相まってかなり違って聞こえるものである。改めてこの曲の良さを再認識させられた。
♪第2部(司会:倉島副会長)
笠島三枝子氏・・・・・第2部は全て演奏である。まずは毎回出演ごとに上達を感じさせる笠島さん。曲目は「春へのあこがれ」。伴奏はおなじみの真部さん。 息の合った見事なお二人の演奏だった。
田中 進氏・・・・・田中さんも常連で、年年歳歳見事なバリトンに磨きをかけていらっしゃる様子。本日はドン・ジョヴァンニのセレナーデをまず軽く歌いこなされ、次に先ほどの笠島さんとデュエットで魔笛の「パッパッパ」を真部さんの伴奏で、髪に鳥の羽を付けて、魔笛の世界を3人で堪能している感があった。
真部 淳氏・・・・・本日も大活躍の真部さんのピアノ独奏。名曲イ短調ソナタ、K310を演奏なさった。この曲のコアをなす楽章で、かなりの音楽性を要求されるパッサージュを難なく弾きこなされた。超多忙なお仕事の中で、一体いつ練習されているんだろうと思わされた。
本日の演奏の部のトリを飾るのは一昨年入会された、後藤芳行ご夫妻と同じく慶應のオケである、ワグネル・ソサイエティのOGお二人(応援)である。
先ずご主人の後藤芳行氏がメンバーを紹介され、奥様の由美子氏のオーボエ、応援の関澤美香氏のピアノ(学生時代はヴァイオリン、現在はプロのピアニスト)、山本真理氏のヴァイオリンのトリオがまず、フィガロの結婚より「恋とはどんなものかしら」、ドン・ジョヴァンニより、「手を取りあって」、それにピアノ協奏曲21番(先ほど、岡田さんが映画「短くも美しく燃え」でお話された曲である)を演奏され、満場の喝采を浴びた。
後藤由美子さんは曲によってオーボエとコール・アングレ(イングリッシュ・ホルン)を吹き分けて、更に彩を添えた。ドン・ジョヴァンニの誘惑ぶりは見事でした。ピアノはさすがに安定感があり、全体をしっかりと支えていらっしゃった。ヴァイオリンの山本さんのツェルリーナはとてもよく雰囲気を出して女心の揺れ動く様子を上手に演奏されていた。アンコールの声がかかるほどの出来栄えだった。フェラインの新年会で、オーボエとコール・アングレが登場したのは初めてではないかと思う。来年も楽しみである。
というわけで、あっという間に新年会は終わったが、多くの会員が出席され、また楽しい会だったせいか、皆さんは懇親会の後も帰りたがらず、幹事の気を揉ませる程だった。(YS)
●情報コーナー
コンサート情報 ★こちらからどうぞ(M)
CD情報(外盤価格はHMVの一般価格) ★こちらからどうぞ(T)
●例会・懇親会 写真コーナー
今回はカメラを新調した佐藤浩理事の写真も加わって、両サイドから発表者の姿を取ることが出来、ステレオ・タイプで写真の掲載が出来たので、発表者の生き生きした姿が良く撮れており、これまでにない充実した写真集となった。
懇親会は、いつもの例会よりも沢山集まった有志一同でビールで乾杯後、発表した皆さん方を中心に懇親が行われ、ワインを飲みながら、楽しい賑やかな懇談会となっていた。いつもの会場であったが、カメラマンが二人もいて、写真撮影もいつもより大勢で撮ったりして、賑やかに時間いっぱいまで楽しい会が続いていた。しかし、皆さんは席を離れたがらず、散会後も最寄りの場所で、有志が懇親を続けたようだった。
今回は佐藤理事からの写真が未圧縮でメール送付されているので、原版はHP担当の倉島が全て保管している。写真が欲しい方は、発表会10列、懇親会7列となっているので、例えば、10・右と言うように写真を特定して、下記にメールしていただければ、次回例会までにお届けするようにしたい。ただし、恐縮であるが、Lサイズで30円/枚のご負担をお願いしたい。
お問い合わせ:ホームページ担当;倉島 収:04-7191-0500(TEL&FAX) メールはここから
第311回 モーツァルティアン・フェライン例会 2012年1月14日
事務局レター【第186号】/2012年1月
【編集者】佐藤浩/澤田義博/富田昌孝/宮崎宇史/古田佳子 bxp00423*yahoo.co.jp (スパムメールが増えてきましたのでリンクを外しました。お手数ですが*を@に替えて送信願います)
●1月例会(第311回)のお知らせ
モーツァルティアン・フェライン新年会
日時:2012年1月14日(土)午後2時
会場:お茶の水「クリスチャンセンター」(JR「お茶の水」下車・徒歩3分)
例会費:¥1500(会員・一般共)
―――――《出演予定表》 敬称略 出演順ではありません
【お話】
♪沢田義博/新年の御挨拶
♪岡田斉/映画の話……モーツァルトを扱った映画のお話と名作映画に挿入された名曲集
♪桑原隆之/オペラのお話……ドン・ジョヴァンニ雑感
♪高橋徹/別府での生活……単身生活でモーツァルトがより身近になったことを紹介します
♪山田健二/1小節1秒……フィガロ第2幕フィナーレの7重唱に見る驚異の進行速度
【演奏】
♪江端津也子/ピアノ独奏……ウイーン・ソナチネK439b 第4番変ロ長調第3楽章
♪笠島三枝子/ソプラノ独唱……「春へのあこがれ」K596(P伴奏:真部淳)
♪田中進/バリトン独唱……ドン・ジョヴァンニのセレナーデK527(P伴奏:真部淳)
♪笠島・田中/2重唱……「魔笛」K620~「パッパ」の2重唱 (P伴奏 真部淳)
♪真部淳/ピアノ独奏……ピアノソナタ・イ短調 K310第2楽章のみ
♪船矢久樹/ピアノ独唱……ピアノ協奏曲23番K488第2楽章のみ (予定)
♪ヴァイオリン、オーボエ、ピアノのトリオ……Ob:後藤由美子、Pf:関澤美香、Vn:山本真理
・ドン・ジョヴァンニK527より~手を取り合って
・フィガロの結婚K492より~恋とはどんなものかしら
・ピアノ協奏曲ヘ長調K467より~第2楽章
♪司会と音響等/石津勝男 ♪司会とオーディオ/倉島収 ♪企画進行/川口ひろ子
例会後は恒例の懇親会へのご参加をお待ちしております。会場:「デリ・フランス」お茶の水店/03(5283)3051
●今後の例会のご案内(会場記載のないものはお茶の水クリスチャンセンターです)
2月18日(土) 江端伸昭氏(作曲家)
3月17日(土) 幅 至氏(音楽オーガナイザー)
4月14日(土) 田辺秀樹氏(一橋大学院教授)
5月・樋口隆一氏、6月・久元祐子氏、の予定です。
●お知らせ
イタリア・モーツァルト協会との関係が復活しました。今年は9月中旬頃、イタリア・ロベレート音楽祭見物を含め、イタリア・モーツァルト協会訪問を計画したいと考えております。計画実現の際にはどうぞ奮ってご参加下さい。(S)
●12月例会の報告(第310回/12月17日)
「モーツァルト、そしてスペイン」 ピアノとお話:下山静香氏(ピアニスト)
杉並区荻窪の“読書の森公園”を囲む様に配置された中央図書館・体育館が形成するカルチャー・コンプレックスの一角をなす“かん芸館”を会場として例会は開かれた。そこにはプレイエル社の販売カタログにモデルとして写真が掲載されているピアノの実物がある。
先生は3歳頃から手を染めたピアノ演奏を生業として今日に至っていると聞くが、その多方面での才能には驚くべきものがある。世に知られているものの一つは、文化庁派遣芸術家在外研修員として滞在したスペイン文化への造詣である。華やかで格調高いと専門各紙で高い評価を得ているピアノ演奏はもとより、「日本・スペイン交流史」「スペイン文化事典」「イギリス検定」等への執筆があり、数々の日西・西日の翻訳による相互文化紹介、通訳、朗読、フラメンコなどいずれも評価が高い。
本業の音楽では独奏・内外著名音楽家との共演など盛んな演奏活動と平行して東京芸大、桐朋学園大で講師を務め、「アルベニスピアノ曲集」「グラナドスピアノ曲集」の楽譜の校訂・解説なども担当している。桐朋卒業後、研究科さらに欧州各地の音楽祭・マスタークラス・演奏会で研鑽を積んだのち、文化庁よりスペインに派遣された。最初、R.M.クチャルスキのもとでスペインの主要な作曲家を研究、ついでバルセロナのマーシャル音学院にて、C.ガリガ、C.ブラーボ(モンボウ夫人)、A.デ・ラローチャに師事。この時期に“スペインの心を持つピアニスト”と称されるようになった素地が作られたのである。
リリースされたCDはスペイン音楽がメインであるが、モーツアルト作品を収めたものに「PERLA~マイ・フェイヴァリッツ・モーツアルト~」◆収録曲:ピアノソナタ 第12番 K.332、ピアノソナタ 第3番 K.281、ロンド ニ長調 K.485、ロンド イ短調 K.511(モーツァルトが後世に託した秘密を解き明かす鍵を差し出してくれる、しなやかな演奏…海老澤敏評)がある。
2006年の“モーツアルト・イヤー”には特に招かれて仙台クラシックフェスティバルの「ピアノソナタ全曲シリーズ」でピアノソナタ13曲とロンド、アダージョを演奏し好評を博した。因みに記憶に新しい2011年3月11日の東日本大震災で仙台フィルはフランチャイズを失い、団員も楽器など多くのものを失ったそうである。心を痛めた先生は被災地の音楽家・音楽愛好家支援のために特別に企画したCD(Shizuka Encore Selection 2011)リリースをもってチャリティーを行い、その賛同者は着々と増えている。暖かい人間性をうかがわせるエピソードである。その仙台から12月例会に駆けつけたファンも居た。
例会では前半にモーツアルト19歳の時のピアノソナタ、“第2番KV280ヘ長調”:仙台クラシックフェスティバルでのオープニングを飾った曲である。ハスキルを聴いたことのある聴衆はしっとりと始まった第1楽章に次なる展開への想像と期待をもったのではなかろうか。その第2楽章シチリアーノは著者の最も好きなパートであり堪能した。不幸に見舞われたパリ滞在中の作品“第8番KV310イ短調”は師のラ・ローチャの演奏を髣髴とさせる素晴しいものであった。
後半はスペインに光を当てた演奏と解説であった。即ち、モーツアルトと生きた時代が重なるモンセラート音楽院出身のパードレ、A.ソレール(1789-1883)のソナタより3曲。1806年1月27日(モーツアルトのぴったり50年後に)バスクで誕生、パリのコンセルヴァトワールで名を馳せ19歳で夭折した「スペインのモーツアルト」と呼ばれるJ.C.アリアーガの“エストゥディオ・オ・カプリチオより”。
スペイン音楽界の重鎮であり来年が生誕100年になるX.モンサルバーチェの作品“イヴェットのためのソナチネ”には壮大な宇宙の嵐を思わせるきらきら星がダイナミックに組み込まれ聴衆の耳をそばだたせるのに充分な迫力であった。
続いてこれぞスペイン音楽の本命と目されるI.アルベニス(2009年が没後100年、2010年が生誕150年)の“コルドバ”、E.グラナドスの“アンダルーサ”、M.de.ファリャの“火祭りの踊り”で締めくくられ、その情熱的演奏に圧倒された。アンコールはグラナドスの名曲“オリエンタル”(スペイン舞曲第2番)であった。
一見、華奢に見える先生の何処からそんなエネルギーが?と驚かされた熱烈且つ流麗な演奏をクラシック歴何十年と言う会員諸氏におかれても精緻な中にも軽妙溢れるレクチャーと共に堪能されたことであろう。※諸兄・諸姉も気付いたであろうが“裸足のピアニスト”の今後の発展と活躍を祈るものである!(文責:佐藤浩)
●情報コーナー
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●例会・懇親会 写真コーナー
下山先生の瑞々しいスペイン音楽と語りのあとの懇親会場は、初めての場所で、「 Shakey's 荻窪店」といい、荻窪駅前ビル2Fの便利な場所で、ヴァイキング形式のお店であったが、我々だけの椅子やテーブルの別室であったので、落ち着いた会場であった。
集まった有志一同でビールで乾杯後、下山先生を中心に懇親会が行われ、ワインを飲みながら、楽しい賑やかな懇談会となっていた。会場が広かったので、先生を始め皆さんが席を自由に移動でき、写真撮影もカメラマンが二人もいて、いつもより大勢で撮ったりして、賑やかに時間いっぱいまで楽しい会が続いていた。(文責、倉島)
以下の写真は、佐藤さんの原版によるものです。